ブルーアーカイブ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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ユウカ先輩が気づかなかった場合


if:初恋  (コユキちゃんと)

 

 

 

 

 

「ああ、そういえばね、私先生とお付き合いすることになったの。」

 

いつの日か、こういう日が来るとは思っていたつもりでした。

それでも、なんだか、

 

ユウカ先輩は、少しだけ恥ずかしそうに。大半をなんでもないことを告げるような素振りで上書きして、それを私に告げました。

 

いつの日かに自分の耳を疑うという言い方をしたことがありましたが、このウサギ耳はよほどのことでないと波長を間違えることはありません。なので心配するなら私の脳みそのほうだったのでしょう。

口をつけようとしていたカフェオレが入ったマグカップを、そっと、机の上に置きました。

 

 

いつかこういう日が来ると覚悟していいました。なのでもちろん笑顔程度つくることは容易く、いつも通り表情筋を繰り、いつも通りぎこちなく口角を緩ませて見せて。これが本当に笑顔になっているのか最後まで信じることなんてできませんでしたけど、にっこりと笑いました。

 

申請書類の新しいフォーマットの作成だとか、午後買いに行く予定のセミナーの備品だとか、何も考えられなくて、

じくじくと頭が痛む時のような、あるいはぬるい寒天で思考を固められてしまったように、その感情で脳を塗りつぶされて、

 

本当は、もっと先輩に伝えたい言葉を用意していたはずなのに。

 

「……おめでとうございます」

 

 

 

 

気づいた時には私は外にいました。先輩はここまで追ってきてはいないようなので、愛想をつかされたのでなければ、角が立たないようにここまで来れたのでしょう。

 

どうしようもないまま目の前の自動販売機に学生証を押し付けて、電子マネーで何か購入しようかと思い、ドロドロに甘くてただ溺れるだけのエナジードリンクも、炎天下に先輩が用意していてくれたスポーツドリンクも、あの日の夜の紅茶も。コーヒーも、

何も飲む気になれず立ち尽くしていると、横から可愛らしい指が伸びてきて、缶のココアのボタンを押しました。

 

「はー、もう、ほんっとうに、ユウカ先輩あり得ますか?こんなにかわいい子をほおっておくなんて、」

 

いつの間にか、本来は反省部屋の中にいるはずの子ウサギちゃんが隣にいました。

 

「知ってますか?ココアにはセロトニン分泌を刺激できる成分が含まれているのでストレスの解消にはもってこいで私もユウカ先輩に怒られた後はエナジードリンクかこれを飲んでいて、……あーもう、今泣くような話なんてしてないじゃないですか?」

 

どうして、と聞く余裕もなく、子ウサギちゃんの顔を見ると涙が流れてしまいました。

子ウサギちゃんは私の手から学生証を取るとココアのボタンをもう一度押し、人通りを気にしたのかそのまま私の手を引いて近くのベンチに座らせました。

 

「ほんとに。感謝してくださいよね。C&Cの先輩方に  のためだって言って出てくる作戦、本当はもう少し先にとっておくはずだったんですよ。…それにしても先輩あり得なくないですか!?先輩の何倍も役にたってるこの私よりも頑張ってる後輩のうさぎちゃんをほっといてなーんにも役に立たない先生なんかに求愛したんですよ?先生がいたって爆発で壊れた壁の穴も陥没したグラウンドも直らないし申請周りのことなんてなーんにも…しかも、自分があんなに乙女なアプローチしておいて、こんなにも、こんなにも自分を慕ってくれてる女の子に『気づかない』なんてありえますか????」

 

ぐしぐしと私が涙を垂れ流す間、子ウサギちゃんはずっと話を続けてくれました。

きっと半分は思ってもいないことを。

 

「あ、  、廊下でC&Cの先輩に会ったのに挨拶もしなかったんでしょ。すごく心配してたから、あとでちゃんとお話ししといたほうがいいですよ。いつもはお姉さまって慕ってくれてるのにって。まあそれがあったから脱走も上手くいったんですけど。ほんとなら次の脱走に協力してもらおうかとも思ってたけど、今回のは、この前のカップケーキが美味しかったからそれで赦してあげます。あそこのごはん、毎食同じ味がするからたまったものじゃないんですね。何回か先輩に抗議したけど結局差し入れなんて  しかくれないし、ベッドは固いし、ちょっと外に出るたびにあんなに大勢で追っかけてきて、」

 

「私が覚悟できてなかっただけだから」

 

涙声で子ウサギちゃんの声を止めると、子ウサギちゃんは、は?、と本当に理解できなかったように声を漏らし、私の顔を覗きこみました。

 

「本気で言ってます?言い方アレなので言いませんでしたけど、ユウカ先輩やってることやばいですよ?ラブレター受け取って返事はナシ、セミナーの労働力のためにキープだけして本命にはしっかりアプローチしちゃって、なーんにも悪びれずに、お付き合いしますって、」

 

「それでも。好きだから」

 

きっと。セミナーの仕事では私のほうが役に立てるけど、先生といるときのほうが、先輩は笑顔になれるんだと思います。

それに、この先何かが変わることなんて何もありません。ただ、私がユウカ先輩が好きでも叶うことなんて何もなくて、休日に写真を贈る相手はきっと先生のほうが多くなって、そして変わらずセミナーで仕事をするだけ。先輩の幸せは私ではなかっただけ。そして卒業してしまったら、もう二度と、

 

「じゃあなおさらありえないじゃないですか!ほんっとにもう!」

 

子ウサギちゃんはどこかからか、バニー服の時に着けていたウサギの耳を頭部に着けると空き缶をゴミ箱に向って投げつけ、私の手を引き、

 

「行きますよ!」

 

自動ドアに駆け込み、エレベーターを時間も耐えられなかったのか階段を駆け抜け。廊下を走っている時には周りの人の視線をいっぱい感じましたが、それでも子ウサギちゃんは止まらず、目的地の扉を蹴り開け、

 

手元の端末でだれかと話していたユウカ先輩と目があいました。

 

「…よかった。アカネ。  は見つかって…コユキ!?なんで外に、…出した!?なんで、

「先輩!いっつも理不尽な目にあってきましたけどもう許しませんからね!大切な振りしてかわいいウサギちゃんの話なんて、なんにも聞いてないんですから!」

 

コユキちゃんは私の背中を押してくれました。驚いている先輩と目があいます。

 

「先輩のこと、大好きです」

 

きゅっと先輩の目が丸くなりました。でもすぐに子ウサギちゃんが私のセリフを継ぐように、そのまま私の手をとって一面ガラス張りの窓に向って子ウサギちゃんは駆けていき、

後ろから、コユキ、待ちなさいと聞こえたけれど

 

「にははー!」

 

子ウサギちゃんはサイレンサーのついたハンドガンをガラスに撃ち、蹴り破って飛び降りました。

 

「もう遅いですからね!  は私が幸せにしますから!」

 

結構な高さがありましたが子ウサギちゃんは私を片手に、もう片方の手で『AMAS』と書かれたドローンにぶら下がり、人ひとりでも墜落しそうなものなのに落下とは程遠い速度で緩やかに滑空して、グラウンドに着地しました。

 

子ウサギちゃんが手を離すとドローンは一度私たちを眺めるようにカメラを向けた後、緩やかに飛び去りました。

子ウサギちゃんは、にははと笑ったまま、それにつられて私も小さく笑いました。

 

 

涙を笑い声で押しつぶしたまま、子ウサギちゃんと二人で逃げました。

子ウサギちゃんは先輩から逃げ慣れているのか、私を連れたままでも軽々と先輩から逃げ切ってみせました。

でも、先輩から逃げ切ったのにどうしても心は囚われたままで、やっぱり泣いてしまう私を子ウサギちゃんはぎゅっと抱きしめてくれて、

 

「ほんとにあれでよかったんですか?もっとユウカ先輩に、算術使い~とか、もっということあったんじゃないですか?」

 

泣きじゃくるだけの私に寄り添ってくれて。

 

「…あー、もうそんなに泣かなくていいじゃないですか!これから私が幸せにしてあげるんだから!」

 

大切なお友達なのに、初めて、今まで欲しかったものをくれる彼女に

 

きゅんと、ときめいてしまったんです。

 

 

 

 

 

 

 




今一番危惧しているのはセイアちゃんとリオの同時ピックアップとコユキちゃんが先生になびいて「  」ちゃんが先輩だけでなく大切なお友達も寝取られることです。
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