ブルーアーカイブ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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受け身で女々しいって言われました。ので


完治の見込みなし
拾得


 

ある日、私は恋の病に罹患した。

つい先日、私服で街の中を歩いていた時。ふと街中で救護騎士団の装飾によく使われるピンク色を見かけた。

 

どうやらそれはかいがいしくも道端で騒ぎを起こしていたゲヘナの生徒を治療しようと試みているようだった。

 

気恥ずかしさ、傷を負ったこと、トリニティへの敵対感。もしくはほかに何かあったのかもしれないがゲヘナ生徒はピンク色の彼女を蹴り飛ばし、今までケンカ相手のゲヘナ生徒に向けられていた銃口が彼女に向く。

 

……まあ、おそらく後輩だし。彼女を医療者を撃った愚か者にするのも、騎士団が(ミネが)出張ってまた騒ぎが起こるのも心地よくはない。

急いで背負ったバッグを体の前に回し、それごと後輩を抱きしめる。

背中で熱が膨れて弾けた。

 

そのとき、私は心臓を撃ちぬかれた。

マガジンひとつ分、もしかすると冷静になった彼女はもっと早く引き金を止めていたのかもしれないが、弾丸に揺さぶられながら腕の中身の様子を窺う。白衣の天使様はとても射撃がお上手なようで、みごとかばった味方の心臓を射止めて見せた。

 

いつの間にか銃撃が止み、後輩を隠したままゆっくりと振り返る。ゲヘナ生はよくわからない表情で私を見ている。

ふいに、ふつふつと何かが滾った。

 

手元に抱えたバッグの中の銃身が長い愛銃をひっつかみ、抜刀するかのようにそれを抜き放ち、引き金を引かない理性が残っていたのかもっと原始的な欲求につき動かされたのかそんなことはどうでもよく銃床をしっかりと握りしめたままこいつの頭をカチ割るために全力で振りぬこうとして…

私を止めた優しい天使様のおかげでゲヘナ生の頭はカチ割られることなく済んだのだが、そのゲヘナ生はケンカ相手とともに一目散に駆けていく。

こちらになんの妨害もなく逃げる背中ほど撃ちやすいものはないのだけれど

走れるくらいには元気で、ケンカ相手ともそうわるい関係ではなさそうじゃない。

 

銃を確認し無意識に外していたセーフティをかけ、それをバッグの中にしまいこむ。

 

ピンクの天使様は慌てたように私の撃たれた箇所を覗き込んだ。消毒液か何かで背中を拭ったのか、ひりひりと痛んだ。ガーゼか何かが当てられたのか、固定するためにテープも貼られて。

 

「ごめんなさい、今はこれくらいしかなくて、」

 

彼女は私の前で上着を脱いで、私に手渡す。ああそうか、撃たれた部分が露出しているから、彼女も慌てて手当てをしてくれたのか。

好意に甘えて少し小さいサイズの上着を羽織った。嗅いだことのない果実のような香りがした。

 

不意に冬の風が私たちを擽った。

火照った私は寒くは無いのだけれど、羽毛のない天使様は身体を震わせる。

はやる鼓動と気持ちと言葉と手と、すべてを抑えることができなかった。

彼女の手をぎゅっと握り、目線を合わせるために少しかがむ。

 

「ありがと。私の家がすぐそこだから、そこまで貸して頂戴」

 

拒む素振りか、彼女が何かを表明する前にカバンを背負って彼女を胸元に抱いた。

 

そのまま抱き上げた。

 

 

 






次回「愛玩」
セリナちゃんの運命は
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