ブルーアーカイブ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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次回、「愛玩」とか言ってたような気がする。


セリナちゃんは瞬間移動に類する何かができるものとして扱っています。


紛失

 

 

 

可愛い天使様を引き連れてできるだけ早く自分の『巣』へと帰る。

 

小さな集合住宅の一室。適度に人付き合いという概念がなく、適度に無法でもない。

私にとって、人通りの少ない不便な立地を我慢するほどの価値があると思っている。

 

現に今、誰に構われることも咎められることもなく彼女を部屋に連れ込むことができた。

 

上着を借りるときに自宅までという表現を使ったのだったか、玄関先までは不審なく案内でき、

 

「寒いでしょう。狭いところで悪いけれども、外よりは温かいわ」

 

物理錠のシリンダーに鍵を差し込み解錠、扉を開けて彼女を誘うと少し迷った素振りをした。もちろん。他人の部屋だもの。

 

キヴォトスで自分の銃を誰かに預ける人はそういないのでずっと抱えていたカバン。

それを肩からおろすときに先ほどまでこらえていた苦痛を口の端から漏らすと、患者さんを救わない理由がないのか、優しい彼女は一緒に部屋の中に入ってくれる。

 

お邪魔します、と小さく吐かれた声。

 

大きなカバンを引きずるように歩く素振りで彼女を置いて部屋に入ると、後方で物理錠が閉められる音がし、そしてもう自室だからと遠慮しなくなったのか私の手からカバンを取り上げる彼女。

 

まるで、怪我人が無理をするなと言わんばかり。

 

ご丁寧にドアチェーンまでしっかりとかけたうっかりさん。

 

部屋までたどり着いてすぐ照明をつけ、空調のスイッチを入れた。そこで緊張がきれたようにローテーブルの隣に座りこんでみせると、カバンを運ぶ彼女が慌てて私のそばに寄ってくる。

 

「大丈夫ですか?」

 

なるほど、しっかりした子だ。聞こえた声は落ち着いている風に聞こえ、患者に対して焦燥は与えないもの。

 

でも、救護対象者が襲い掛かってくることを常に想定しているのはミネくらいか。

 

別に私が嗜むわけではないのだけれど、インテリアの感覚でローテーブルの上に置いていたガラス製の灰皿をそっと掴み、私に視線を合わせるためにかがんだ彼女の頭部にめがけて、

 

丸くなって焦点が合っていない可愛らしい視線。

 

突然の苦痛に理解が及んでいない彼女の表情はとても美しかった。

 

 

鈍く点滅する光臨が掻き消えたのを確認して頷き、倒れ伏した彼女をベッドの上にのせた。

 

寝顔を確認すると、目元に涙が溢れている。拭った指先をそっと口に含んでみる。もしかすると砂糖水のような甘さがするかと思ったが、そんなことはなくただしょっぱいだけだった。

 

血を洗うなら早い方がいいか、灰皿を抱えてシンクへと向かった。その一瞬目を離しただけだったのだけれど。

 

「……あら」

 

気が付くとベッドに安置した彼女の身体は音もなく消えていた。

 

 

 

 

 

 









セリナちゃん愛してるはーと


次回は「愛玩」か「鹵獲」
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