太陽×2   作:鳩胸な鴨

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邪神も添えたよ。どっちも来んな。


月食

「おっ…と」

 

落下するウタを残った右腕でなんとか受け止めるシャンクス。

隻腕となったことも相まってか、12年前よりも遥かに重いその体に、安堵を吐き出す。

と。どさっ、と音を立て、その側にウタに取り憑いていたウツロイドが落ちた。

シャンクスは咄嗟にウタを庇うように身を翻すも、震える手がその襟を掴む。

 

「大丈夫、だから…。やめて…」

 

まだ神経毒が残っているのだろうか。

シャンクスは長い顔をして、ウタを説得しようと口を開く。

 

「ウタ。アイツは…」

「…私が…、頼んだだけ、だから…」

 

息も絶え絶えに紡がれた言葉に、シャンクスが目を丸くする。

と。ウツロイドがゆっくりと立ち上がったのが見えた。

シャンクスは警戒を込めて睨むも、ウツロイドはウタを見つめるのみ。

どうやら、このウツロイドだけはウタに操られていたわけではないらしい。

ウツロイドは謝るように、ウタとシャンクスに頭を下げる。

 

「べのめのん…」

「ど、どういうことだ…?」

「謝ってるのか…?」

 

動物の言葉が理解できるメンバーがいないため、皆一様に困惑を露わにする赤髪海賊団。

しかし、シャンクスは何かに気づいたのか、ウツロイドに向けて申し訳なさそうに微笑んだ。

 

「すまなかった。お前はお前なりに、ウタを救おうと考えてくれてたんだな」

 

ウツロイドはシャンクスの問いに頷くと、ウタへとその触手を伸ばす。

シャンクスたちがソレを拒むことはなく。

ツルツルとした触手が、ウタの頭を優しく撫でた。

 

「…ごめんね。あなたも、トットムジカも、悪者にしちゃって」

 

ウタの懺悔に、気にするな、と言わんばかりに揺れるウツロイド。

と。そんな彼らを掠めるように、光条が軌跡を描き、海に着弾する。

シャンクスたちがそちらを見ると、銃を構える海兵に、獲物を構える大将二人がこちらを囲んでいるのが見えた。

 

「感動的な再会の途中、野暮なようで申し訳ないけど、ウタの身柄を渡してくれるかねェ〜?」

「市民の皆様が眠る中、刃を交えるつもりは毛頭ありやせん。どうか、聞き入れてはくれやせんでしょうか?」

 

先ほどまで、ウルトラビーストの対処に当たっていたのだろう。

彼らは肩で息をしながらも、余裕を崩さずにシャンクスとウタに迫る。

と。その時だった。

 

「リノ!!」

 

黄猿の体に、黒の剛腕が突き刺さったのは。

本来ならば自然系の悪魔の実…「ピカピカの実」の能力で、全身が光に近い物質で構成されている黄猿。

だがしかし。覇気も纏わぬその一撃は、確かに黄猿の体を捉え、吹き飛ばした。

藤虎が咄嗟に刀を抜くも、その黒は掌から黒い光の塊を放つ。

藤虎がそれを避けると、その光はエレジアの一角に着弾し、そこを跡形もなく消しとばした。

 

「ま、まさか、このタイミングで…!?」

 

アマモが顔を驚愕に染め、口を開く。

竜の体を無理矢理にくっつけたかのような、歪な体躯。

唯一色彩を放つ眼光は、真っ直ぐにウタを見つめていた。

 

「『暗黒』…!」

「おォ〜…。痛いねェ〜…。覇気も纏わぬ拳で、わっしを殴り飛ばすとは…」

 

その真の名は『ネクロズマ』。

のっぺりとした黒の体に、人一人を簡単に握りつぶせるほどの剛腕。

前腕以外の四肢は全てが細く、そのアンバラスなデザインが異質さを強調させる。

大将二人がネクロズマへと駆け出すと、アマモが叫ぶ。

 

「だめっ!手を出しちゃ…」

 

その忠告は遅く、黄猿と藤虎の一撃がネクロズマの体に炸裂する。

が。ネクロズマには傷ひとつつかず、硬い音が響いた。

ネクロズマは認識できぬ程の速度で二人の体を掴むと、思いっきり海へと叩きつける。

ぼちゃん、と音を立てて沈む二人を見て、モモンガ中将が叫ぶ。

 

「た、大将二人を引き上げろ!早く!!」

 

能力者が海に沈むことは、死を意味する。

ぶくぶくと二人の息であろう気泡が表面に浮かぶのに目掛け、何人かの海兵が飛び込む。

ネクロズマは海兵に興味を無くしたのか、ウタへと視線を戻した。

 

「な、なんでウタを…?」

「もしかして、ルナアーラとソルガレオのZ技を受けたから…!?」

「どういうこと…っ!?」

 

シャンクスが問おうとするも、ネクロズマがウタへと迫る。

咄嗟にグリフォンを抜き、その爪を受け止めたシャンクスに、アマモが叫んだ。

 

「ネクロズマの狙いは『光』なの!

今のウタちゃんには、ソルガレオとルナアーラ…2匹のゼンリョクの光が体に残ってる!

ネクロズマはソレを狙ってるの!!」

「そういうこと…か!!」

 

シャンクスはネクロズマに蹴りを入れ、無理矢理に距離を取る。

流石に四皇の一撃は通じるようだ。

ネクロズマは海に落ちることなく、空へと飛び上がり、周りに宝石を顕現する。

 

「ウツロイドがやってたヤツか!」

 

シャンクスは言うと、覇王色の覇気を纏った斬撃を飛ばす。

ネクロズマが放った「パワージェム」をかき消すことはできたものの、肝心のネクロズマには避けられてしまう。

アマモはシャンクスへと迫るネクロズマを指すと、ルナアーラに叫んだ。

 

「ルナアーラ!『シャドーレイ』!!」

「マヒナペ!!」

 

ルナアーラが咆哮と共にその体を青く染め、月光が如き光条を放つ。

ネクロズマの体に直撃すると、彼は苦しそうに呻き声をあげる。

 

「リノ……」

「効いてる…のか…?」

「違う…!刺激を受けて、体に走っている激痛が強くなってるだけ…!

今のネクロズマは、『かがやきさま』は、体のほとんどを無くしちゃったから…」

「体のほとんどを無くしたって…、じゃあなんで生きてるんだよ!?」

 

ホンゴウが問いかけるも、アマモは「わかんない…」と首を横に振る。

今、シャンクスたちの目の前にいるのは、生命としての格そのものが違う存在。

人間の理解の枠に押し込もうとしても、理解が及ばないのは当たり前のことである。

苦痛から立ち直ったネクロズマはルナアーラへと目を向け、襲いかかった。

 

「ルナアーラ、危ない!」

「マヒナペェェ……ア…」

 

ルナアーラですら反応しきれないほどの斬撃が、その体に炸裂する。

ルナアーラが地面へと崩れるのを待たず、ネクロズマはその顔を掴み、押さえつけた。

と。ルナアーラの体が、刺すような激しい光を放ち、ネクロズマの体を包み込む。

軈て、その光が収まると。

そこには歪な影が鎮座していた。

 

「ルナ…アー……ラ…?」

 

アマモが震える声で問いかける。

佇んでいたのは、ルナアーラのようであって、ルナアーラではない。

ネクロズマに支配されたその姿は、まるで星の影に覆い尽くされた月のよう。

ネクロズマはその瞳をウタに向けると、天に吠えた。

 

「リノマヒナペェエーーーア!!」

 

その名は、「暁の翼」。

咆哮に呼応するように、空間に幾つものウルトラホールが開き、そこからウルトラビーストが降り立つ。

地獄絵図としか言いようのない光景を前に、海兵が唾を飲む音が聞こえた。

 

「べのめのん!」

 

と。ウタに取り憑いていたウツロイドが彼女を守るべく、ネクロズマへと迫る。

が。ネクロズマの腹部から伸びた鉤爪がその体を弾き飛ばし、そこらの岩山へとウツロイドを叩きつけた。

 

「べの…」

「クラゲちゃん!!」

 

ウタが叫ぶも、ウツロイドの体は動かない。

ウタは能力を発動すべく、息を吸い込もうとするも、思うように呼吸ができない。

神経毒が抜けたことで、溜まっていた疲労が襲って来たのだ。

ネクロズマは目にも止まらぬスピードでウタへと迫ると、鉤爪でその体を握る。

 

「シャンクスゥウーーーっ!!」

「ウタァ!!」

 

シャンクスがウタを握ったネクロズマの腕に向けて、剣を振るう。

が。ネクロズマはソレを歯牙にもかけず、その口から黒の光を放つ。

エレジアの一角を消しとばした一撃。

シャンクスは咄嗟にグリフォンで天へと弾くも、相当なダメージを受けたのか、地面に転がった。

 

「シャンクス!?」

「ぐっ…、さっきのダメージか…」

 

ルナアーラのZ技をモロに食らった影響か、シャンクスの体はダメージに耐えきれず、悲鳴を上げていた。

思うように動かない体に、顔を顰めるシャンクス。

そんな彼らを嘲笑うかの如く、ネクロズマから放たれた黒の瘴気が世界を包み込む。

 

「リノマヒナペェエーーーアッ!!」

 

その咆哮と共に、光が奪われていく。

一寸先も見えぬほどの闇があたりを包み込む中、海兵の持つ電伝虫が鳴った。

海兵は通話先から聞こえた報告に目をひん剥き、声を張り上げる。

 

「た、大変です、モモンガ中将!!」

「どうした!?」

 

────世界から、あらゆる『光』がなくなりました!!

 

すでに、この世界に光はない。

唯一煌めくのは、目の前に佇む絶望のみ。

ネクロズマはこの世界にはもう用はないと言わんばかりに、ウルトラホールをこじ開け、その中へ消えようとする。

ウタが必死になってもがくも、彼女の体を握る剛腕はびくともせず。

ゆっくり、ゆっくりとその体がウルトラホールへと沈んでいく。

シャンクスがダメージを受けすぎたせいで、まともに動かないであろう体を引き摺り、その体へと手を伸ばす。

が。ネクロズマが放ったパワージェムが、その体を弾き飛ばした。

 

「ぐぁっ!?」

「シャンクス!シャンクスゥーーーっ!!」

 

ウタが半狂乱になって、倒れ伏すシャンクスへと手を伸ばす。

絶望。そうとしか例えようのない光景を前に、ウタの心が折れかけたその時。

 

「何やってんだお前ェエ!!」

「ラリオォオーーーナッ!!」

 

ルフィの怒声と、くもの咆哮が轟いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

トットムジカを撃破したことにより、ウタワールドが崩壊した少し後。

気を失っていたルフィは、ふと目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。

 

「ん〜…。肉ぅ〜…」

 

あいも変わらずなうわ言を呟き、寝ぼけ眼であたりを見渡すルフィ。

その隣には、よだれを垂らしたくもがキョロキョロとあたりを見渡している。

大方、大量の金平糖の海に飛び込んだ夢でも見ていたのだろう。

似たもの同士にも程がある。

クルーがこの場に居れば、そんな呆れを吐き出したことだろう。

 

────きこえますか?

 

と。男とも女とも取れない声が響く。

ルフィとくもは膨らませた鼻提灯を破ると、咄嗟に構えを取る。

しかし、声の主の姿は一向に見えない。

ルフィたちが顔を合わせ、首を傾げていると、再び声が響く。

 

────きこえているようですね。わたしは…。

 

「あ、そうだ!ウタはどうなった!?」

「ラリオ…」

 

響く声を遮るように、ウタへの心配を心配を吐き出すルフィ。

くもは「自分に言われても知らない」と言わんばかりの困り顔で、首を横に振った。

と。一際大きな声が、彼らの鼓膜を揺らす。

 

────わたしはアルセウス。あなたたちひとがそうよぶもの。

 

アルセウス。

その文字列に聞き覚えはない。

元より、世間に疎いの一言では済まされないレベルの世間知らずであるルフィならば、なおさらである。

脳を直接震わせるような不思議な感覚に、ルフィは顔を顰める。

 

「アルセウスだかホトトギスだか知んねーけど、どっから声出してんだ!!

なんか気持ち悪いから出てこい!!」

 

────それはできません。わたしはここでせかいのバランスをたもち、いじょうをかんそくするやくわりをになっています。

 

不躾なルフィの態度に顰蹙を出すことなく、淡々と告げるアルセウス。

「出て来れねーならいいや」と、ルフィもアルセウスの事情に納得したのか、それ以上文句を垂れることはなかった。

 

────モンキー・D・ルフィ。あなたにかたりかけたのは、ほかでもありません。「太陽の神」とよばれるほどのちからをもつあなたに、あるそんざいをすくってもらいたいのです。

 

「太陽の神ぃ?」

 

ルフィが食べたのは、ゴムゴムの実…もとい、ヒトヒトの実幻獣種モデル「ニカ」。

かつてニカは太陽の神と崇められ、人々を苦痛から解放する戦士として信仰された…などという闇に葬られた歴史をルフィが知るはずもない。

ルフィにその自覚がないことに気づいて尚、アルセウスは言葉を続けた。

 

────そのなは「ネクロズマ」。いま、げんじつせかいで「ウタ」というしょうじょをねらっているそんざいです。

 

「ウタに何かあったのか!?

…ん?フクロヅメ…って、どっかで聞いたことあるよーな、ないよーな…?」

「ラリオ…」

 

「フクロヅメじゃなくてネクロズマ」と言わんばかりに、ルフィに半目を向けるくも。

ルフィが悶々と記憶を漁っていると、アルセウスが言葉を紡いだ。

 

────ウルトラビーストがあなたたちのせかいにおとずれるきっかけとなったそんざいです。

 

「……あぁ!ドアドアが言ってた『あんころもち』ってやつ!」

 

あんころもちではなく、『暗黒』である。

くもはツッコむ気力もないのか、呆れたように半目をルフィに向けた。

 

────ひとびとのあやまちにより、おわることのないくるしみのなかにいるネクロズマをとめなくては、あらゆるせかいがやみにとざされることでしょう。

 

「ずっと暗いまんまってことか!?」

 

ソレは困る、と言わんばかりに目をひん剥くルフィ。

光がなくては、未知がよく見えない。

五感全てで冒険を感じたいルフィからすれば、迷惑極まりない話である。

ルフィが「せっかくの冒険が台無しだ!」と憤っていると。

アルセウスが弾かれたように、声を上げた。

 

────ひじょうにきびしいじょうきょうになりました。はなしをしているよゆうはなさそうです。

 

「どうかしたのか?」

 

────せつめいしているじかんがありません。あなたたちをいちはやくげんじつへとおくりとどけます。まにあうかはわかりませんが…。

 

その言葉と共に、温かい光がルフィたちを包み込む。

ルフィたちがゆっくりと目を閉じる中で、神々しいシルエットが見えたような気がした。

 

────ふたつのたいよう。あなたたちのかがやきが、あのかなしきそんざいをすくうことをいのります。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

時は戻り。

赤髪海賊団のクルーたちの困惑をよそに、ルフィは膨らませた拳に炎を、くもは額に念力を纏わせる。

 

「"ゴムゴムのォ…!!」

「ラリオォオ…」

 

ネクロズマがソルガレオであるくもを見上げ、翼に光を纏う。

が。ソレが放たれる前に、拳と額がその体に突き刺さった。

 

「業火拳銃"!!」

「ォオオーーーナッ!!」

 

ぐらり、とその体が揺れる。

が。ネクロズマは即座に体勢を持ち直し、開いていたウルトラホールへと飛び込んだ。

 

「ルフィーーーっ!!」

「ウタァアっ!!」

 

ウタが手を伸ばすも、既に遅く。

その体はウルトラホールへと消えていく。

ルフィがソレに飛び込もうと駆けるも、ウルトラホールは即座に閉じてしまった。

 

「ネクロズマァアアアアアア!!」

 

ルフィの怒声を受け止める敵はいない。




アルセウス…皆さまご存知の創造神様。あらゆる世界を観測しているので、ワンピ世界も範囲内。ネクロズマの危険性を憂慮して、渡り合えそうなルフィたちに接触した。しかし、具体的な対抗策を授ける前にネクロズマがルナアーラを吸収したので、「こりゃやべぇ」と判断してルフィたちをいちはやく現実へと帰した。

ネクロズマ…実はウルトラサン・ウルトラムーンの世界線ではなく、サン・ムーンの世界線の個体。封印を無理矢理解き、ウルトラメガロポリスを崩壊させ、多くの世界の光を奪った。大将を海に勢いよくぶん投げることで無力化したのは、「あの服着たやつ、海に入るとめっちゃ弱るな」と思い込んでるから。緑牛がやられたのも、ネクロズマに海に叩き落とされたから。四皇クラスじゃないとまともにやり合えないほどに強い。フォトンゲイザーで小島一つは簡単に消し飛ばせるし、なんなら手負いの四皇を掠っただけで動けなくすることができる。ウルトラ調査隊が保有していた中で最も強かったルナアーラを吸収したので、やべーくらい手がつけられなくなってる。

ウツロイド…ウタに取り憑いていた個体のみは、ウタの辛い記憶を読み取っていたので、純粋な善意で神経毒を与えていた。そのほかは単純に寄生相手が欲しかったからついてきた。

シャンクス…手負いの上に月食ネクロズマのフォトンゲイザーとパワージェム食らったらそりゃ動けなくもなりますわ。逆に言うと、こんだけやって漸く動けなくなる。

ウタ…シャンクスに謝る暇もなく、ネクロズマに攫われた。さらにはシャンクスが自分のせいで手負いの上にボッコボコにされたのを見て、心が折れかけたところ、ルフィによって精神崩壊を免れる。ルウタは友人がドン引きするレベルで大好物だけど、この作品で書けるかな…?
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