太陽×2   作:鳩胸な鴨

2 / 14
そりゃ来るよね。


ウルトラビースト

「…で。UTAのライブに行くために、くもの力を借りたいと」

 

麦わらの一味航海士、「泥棒猫のナミ」は、眼前で頭を下げる二人を見やる。

狙撃手「"ゴッド" ウソップ」と、船医「"わたあめ大好き" トニートニー・チョッパー」は、深々と頭を下げ、懇願した。

 

「頼むっ!もうこれを逃したら、二度と見れねぇかもしれねぇんだ!!」

「おれからも頼むっ!!」

「もう天候棒の代金催促しねぇから!!」

「おれのお小遣いから、好きなモン買っていいから!!」

 

必死になって頭を下げ倒す二人に、ナミは眉間を押さえ、ため息を吐く。

彼らがここまで必死になる理由は明白。

この二年で世界的に有名となった歌姫…通称「UTA」のライブが開催されることとなったからである。

いつもは特殊な電伝虫によって、歌声を発信するUTA。

そんな彼女による、現地開催での生ライブ。

ファンとして、二度あるかどうかもわからない機会を逃す術はない。

しかし、開催地は偉大なる航路の前半…音楽の国エレジア。

新世界から向かうのならば、それなりに引き返さなくてはならない。

そのため、彼らは異空間を行き来出来るソルガレオ…もとい、くもの能力に目をつけたのだ。

 

「アタシじゃなくて、くもに頼みなさいよ」

「いや、勝手に偉大なる航路前半に戻りてーって無茶言ってるし、悪いなーって」

「なら我慢しなさい。

第一、ライブなら映像でもいいじゃない。

現地開催だと、無駄にお金かかったりするんだから」

「やだ!生で聴きてぇ!!」

「おれも聴きてぇ!!」

 

ウソップたちは不満を露わにし、ぎゃーぎゃーと駄々をこねる。

見苦しさに苦々しい表情を浮かべると、ナミは観念したかのようにため息を吐いた。

 

「あーもー…。ルフィ!

そういうわけだから、くもの力借りてもいい!?」

「いいぞー。くも」

「ラリオ」

 

むくり、と、船大工…フランキーより少しばかり大きい体が立ち上がる。

くもは甲板を軽く蹴って飛び上がると、その体に太陽を纏う。

クルーたちは一斉にその姿を見上げ、感嘆の声を漏らした。

 

「くもってば、あんなことも出来るようになったのね」

「前までは『こっぐー』っつって、泣いてばっかだったのにな」

「おれもあんな風になれるかな?」

「お前、ライオンじゃなくてトナカイだろ」

 

そんな雑談の傍らで、彼らの船…サウザンドサニー号の進路に、一筋の光が放たれる。

瞬間。空間に亀裂が走った。

その光景に、ルフィとジンベエ以外の皆が目をひん剥くも、それだけでは終わらない。

くもは光をまといながら、その亀裂へと凄まじい勢いで迫る。

くもが亀裂へと激突すると、何かが割れるような音と共に、空間に穴が開いた。

 

「ラリオーナ」

「ロビン。くもが『サニー号と繋いでくれ』って言ってるぞ」

「…こんな感じでいいかしら?」

 

考古学者、「"悪魔の子" ニコ・ロビン」。

彼女が食したハナハナの実の能力によって、サニー号から生えた幾重にも重なる手が、くもとつながる。

その姿はまるで、ソリを引くトナカイさながらである。

くもは咆哮すると共に、開いた時空の穴…「ウルトラホール」へと飛び込んだ。

 

「リノ……!」

 

それが混沌を招くとも知らず。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「おーおー…。どうなってんだ、こりゃ?」

「全部まわってみたいけれど…。

流石に多すぎるわね」

 

星屑が漂う空間を見つめ、皆が感嘆の声を漏らす。

ナミとロビンの女性陣は漂う星々に夢中だが、男性陣はというと、空間に空いた穴に興味津々だった。

 

「あーっ!あそこの穴ん中、筋肉みてーな木がたくさんあるぞ!行ってみよう!」

「いや、そっちよりも、生きてる刀みてーな折り紙が見えた。

おれはそっちに行きてェ」

「わかっちゃいねェな、テメェら。

あそこの穴に、ミサイルみてーなモンが飛んでるのが見えた。

おれはスーパーあそこに行きてェ」

「あの穴なんて、見目麗しい女性が駆けていたのが見えましたね。

いくら速くとも、ワタシのこのつぶらな瞳は誤魔化せませんよ。

ワタシ、瞳、ないんですけど。

ヨホホホホっ!!」

「うぉ〜〜っ!!全部行きて〜〜〜〜!!」

「却下!!」

「「「「えーーーーーっ!?!?」」」」

 

ナミの一喝に、全員が不満げに声を上げる。

が。彼女は般若のような顔で男性陣を叱りつけた。

 

「ライブに行くだけなのよ!?

無駄に危険に飛び込まないの!!」

「んだとぉ!?おれぁ船長だぞ!?

くも!船長命令だ!全部まわるぞ!!」

「くも!!真っ直ぐ向かわないとおやつ抜きだからね!!」

「ラリオ!?」

 

ナミの並々ならぬ怒気に負け、あわよくば寄り道をしようと思っていたくもは、バレないように軌道を修正する。

大食漢のくもにとって、食事を抜くことは、身を斬るより辛い罰である。

ルフィはそれにぶーぶーと文句を垂れるも、ナミの眼光で即座に口笛に変わった。

 

「…今、ちょっと軌道修正したような」

「言ってやるな、ウソップ。

くもにとっての『おやつ抜き』は、ルフィに『メシ抜け』っつってんのと同義だ」

「あー…。死ぬな」

 

コック「黒足のサンジ」の言葉に、ウソップはなんとも言えない表情を浮かべ、不貞腐れたルフィとくもを見やった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「では、『暗黒』、及び各地に現れた超生物への対策会議を開始します」

 

その頃、海軍本部会議室にて。

本部准将及び会議の進行役を務めるブランニューの言葉に、揃う海兵が揃って気を引き締める。

現在、世界情勢は混沌を極めている。

世界のパワーバランスの一つを担っていた、世界政府公認の海賊…王下七武海の撤廃から始まった動乱。

その中でいくつか、特に異彩を放つ事件があった。

 

「皆さまご存知の通り、突如として現れた謎の生命体…『暗黒』。

かの存在はカイドウ、ビッグ・マムが倒れた当日に、東の海に位置する農業大国…ソナイ・クエヘン公国の『光を奪い』ました。

これにより、収穫を予定していた多くの作物に影響が出るものと思われます。

今のところ、光が戻る気配はありません」

 

太陽の光も、月の灯りも、自然が発するすべての光が奪われ、閉ざされた世界。

一寸先も見えぬほどの闇が、一つの島を包み込んだ。

幸い、火や電灯と言った人工の光はあるが、それもいつまで保つかわからない。

陽光の有無は、精神にも健康にも響いてくるのだ。

海軍所属の科学班、SSGの奮闘により、なんとか生活はできているが、島の空気は重くなるばかり。このままでは、暴動に発展する恐れすらある。

万が一、聖地マリージョアに『暗黒』が訪れたならばどうなるか。

海軍からすれば、考えたくもない惨状になることは間違いないだろう。

しかし、脅威は『暗黒』だけではない。

ブランニューは続けて、9体の摩訶不思議な生命体の写真を、映像電伝虫で拡大し、プロジェクターに写す。

 

「では、先日の決定により、『暗黒』含め、これら9種を特殊指定害獣として扱い、以後『ウルトラビースト』と称することとします。

その被害は…現場で働くあなた方の方がよくご存知かと」

 

ブランニューの言葉に、皆が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

ソレも無理はない。

クラゲのようなウルトラビーストの神経毒により、一国で大規模な暴動が発生し。

蚊のようなウルトラビーストにより、多くの家畜が皮と骨だけとなって死に絶え。

誰もが名を呼びたくない虫のようなウルトラビーストのフェロモンにより、一国がかの生命体に全てを捧げ。

イルミネーションのようなウルトラビーストにより、各地の発電所が襲われ。

折り紙のようなウルトラビーストの斬撃により、多くの軍艦が真っ二つに斬られ。

竹のようなウルトラビーストの突進により、都市一つが倒壊し。

歪な竜のようなウルトラビーストにより、一国の全てが食い尽くされ。

道化師のようなウルトラビーストにより、島一つが花火となり。

石垣のようなウルトラビーストにより、各地に巨大なクレーターが出来た。

先述した『暗黒』含め、その被害は今なお拡大しており、大将含む海軍の戦力が対応にあたったものの、結果は芳しくなかった。

 

「各種対応にあたったものの、対象は逃亡。

海軍総出の捜査を掻い潜ったことから、知性は揃ってかなり高度なものと見られます」

「…それもこれも、麦わらが連れていたあの『ほしぐも』のせいじゃないか?

聞けば、ウルトラビーストは頂上戦争の時に開いたのと同じ、『空間の穴』からやってきたと聞いたが…」

 

一人の海兵がルフィの過去の手配書を取り出し、その帽子の中に見える、笑顔を浮かべる煙型の生命体を指差す。

ブランニューは頷くと、続けて獅子の姿が全面に写し出された手配書をプロジェクターに写した。

 

「ええ。我々が確認するウルトラビーストよりも厄介なのは、麦わらの一味のペット…『くも』なのです」

「…麦わらの一味には、もう1匹ペットが居たような?」

「議題とは関係ない質問は慎んでください」

 

質問をバッサリと切り捨て、ブランニューは言葉を続ける。

 

「話を続けます。

これらウルトラビーストの危険性も加味して、麦わらの一味ペット『くも』に高額の懸賞金が課せられることが決定されました」

 

DEAD OR ARRIVEの文字が踊る下には、くもの名前とともに、0が幾つも並んだ額が並んでいる。

億超えと称される、賞金首の中でも一線を画す危険性を示す金額。

誰かの喉から、唾を飲む音が響く。

 

「『"太陽の獅子" くも』!懸賞金、9億3300万ベリー!!」

 

こうして、ソルガレオの姿は賞金首として広まることとなった。




懸賞金の端数は太陽→サンサン→33です。
ウルトラビーストが出した被害全部の責任がくも1匹に押し付けられてるので、懸賞金が馬鹿みたいに高くなってる。尚、本人は全く気にしてない模様。コスモッグ時代の懸賞金は10ベリー。コスモウム時代の懸賞金は、ウルトラホールを開けて興味を持たれたせいで5000万ベリーにアップされた。


あったかもしれない一幕

ナミ「えっ!?ちょっと待って!?
あそこ、宝石が山のように埋まってるわよ!?」
ウソップ「おいお前…。まさかとは思うけど、あんだけルフィたちを叱っといて『寄れ』とか言うつもりじゃねーだろーな?」
ナミ「言うに決まってるじゃない!くも、寄せて寄せて!」
くも「ラリオーナ…」
チョッパー「『そんな急に言われても出来ない』って。あ、あと…」
サンジ「…ナミさん。あそこはやめといた方がいい」
ナミ「え?なんでよ?」
サンジ「見えたんだよ…。人くらいのデカさのゴキ…」
ナミ「よしっ!ライブ会場に急ぐわよ!!」
ウソップ「変わり身早ぇな!?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。