後書き、本編を少し修正しました。
「おい、ロメ男!こっから出せ!!」
「す、すんません、ルフィ先輩。
トラファルガーに『勝ち目がないまま突っ込むだけだ』と言われたモンで…」
球状のバリアの中に閉じ込められたルフィが、感情のままにバルトロメオに抗議するも突っぱねられる。
今のウタは強すぎる。
多くのウツロイドで周りを固め、更には正体のわからない万能の能力。
無策で突っ込んで勝てるような相手ではないことは確かだろう。
しかし、冷静ではないルフィは「出せ!」と言って聞かない。
しかし、バリアの外にいるくもも、二度の激突で不利だとわかっているのか、バリアの後ろにくっついていた。
「くっそぉ〜…!あのクラゲ!
次に会ったら刺身にして食ってやる!!」
「やめておけ。ヤツは岩石のように固く、食用には向かん」
「じゃあやめる!!」
腹の虫が収まらないのだろう。
ルフィはぎゃーぎゃーと騒ぎ立て、ウツロイドに対する怒りを、あらん限りの語彙を振り絞ってぶちまける。
ローがソレに呆れていると、ふと、あることに気づく。
「おい、そっちは…!」
「「へ?」」
「ラ?」
バルトロメオ、ルフィ、くもの3名が、崖へと向かっていたことに。
「「あぁぁぁあああーーーーっ!?!?」」
「ラリオォォォオーーーーナっ!?!?」
三つの絶叫が轟き、その姿が消える。
残されたローとダルスは顔を合わせ、互いにため息を吐いた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ひぎゃぁあああ…!!」
「た、助けて…、たすけてぇえええっ!?」
「────♪」
その頃、曇天のエレジアにて。
海兵たちの悲鳴が響く中で、ウタは軽快なリズムで歌を刻む。
彼女を取り囲むのは、大量のウツロイド。
島を覆い尽くさんばかりの群れが渦巻き、海兵たちに襲いかかる。
そんな中、ウツロイドが放った紫色の奔流…「ベノムショック」を弾き、海軍本部大将の一人、藤虎が呟く。
「こりゃあまずい…。考えたくもねぇことではありやすが…。
『バスターコール』を発令したとして、殲滅は叶わんでしょうな、黄猿殿」
「救いなのは、コイツらは覇気を使えない…いや、『知らない』ということだねェ〜。
ただ、あっしはどうにも、コイツと相性が悪いみたいでねェ〜…。
こっちからも手出しが出来ないよォ〜」
言って、海軍本部大将『黄猿』は、指先からウタに向けて光線を放ってみせる。
しかし、その一撃はウツロイドがガラスのようになった膜で屈折させ、あらぬ場所へと着弾させた。
黄猿は「おぉ〜…。ゼファー先生に叱られちゃうねェ〜」と、あいも変わらず飄々とした態度で吐き捨てる。
バスターコールを発令する隙すらない。
エレジアを取り囲む絶望を前に、ふと、藤虎は眉間に皺を寄せる。
「まずい…!奴さん、一般市民を取り込んでやしやせんか…!?」
「…こりゃあ、まずいねェ〜」
藤虎は見聞色の覇気で気づいたのだろう。
黄猿たちの前には、ウツロイドが被さり、歪な形へと変貌した観客が浮かんでいた。
彼らは謎のエネルギーを身に纏うと、その剛腕で藤虎たちに襲いかかる。
一般市民を攻撃することを良しとしない藤虎にとっては、これ以上ないほどに面倒な一手である。
と。その時だった。
「失せろ!!」
「ルナアーラ!!『シャドーレイ』!!」
赤の一閃と青の奔流が、彼らの眼前を襲ったのは。
青の奔流が観客を取り込んだウツロイドに直撃すると、観客は解放され、ウツロイドが倒れ伏す。
海兵らがその発生源を見ると、三日月のような翼を広げたコウモリの背に立ち、愛剣グリフォンを構えたシャンクスがいた。
否。シャンクスたちだけではない。
その背には、赤髪海賊団のクルーと、不気味な肌色の少女が立っている。
シャンクスは剣の鋒をウツロイドの群れに向けると、かつてないほどの怒気を乗せ、覇王色の覇気を放った。
「おれの娘に手を出したのはお前らか…?」
静かな怒りが、まだ未成熟なウツロイドを軒並み刈り取る。
一部海兵も気絶してしまったが、今はそんなことを気にしている暇はない。
シャンクスはルナアーラの背から飛び降りると、近くにいたウツロイドの脳天に向け、剣を振り下ろした。
「おーおー…。荒れてんなぁ、ウチの船長」
「そりゃあ荒れるだろうよ…。
おれたちだって荒れてんだからなァ!!」
ベックマンが怒鳴ると共に、弾丸がウツロイドの一体を撃ち落とす。
しかし。ウタは赤髪海賊団には目もくれず、忌々しげに三日月の翼を持つコウモリ…ルナアーラを見上げた。
「あれも、ダメなんだよね…?
…みんなー!!もっともっと悪いコウモリが来たよー!!」
ウタの叫びと共に、ウツロイドが観客に覆いかぶさり、その体を取り込む。
その光景は、まさに悪夢。
広がる絶望に慄くこともなく、シャンクスは吠えてみせる。
「野郎ども!ウタを取り戻すぞ!!」
「「「おう!!」」」
♦︎♦︎♦︎♦︎
「サニー!」
「ラリオーナ!」
なんともかわいいデザインのライオンが、くもに跨って興奮を露わにする。
鳴き声や見た目からわかるように、この摩訶不思議な生物は、麦わらの一味の船…サウザンドサニー号そのものであった。
どういうわけかはわからないが、港にはサニー号を含めた船が一隻も停まっておらず。
その代わりと言わんばかりに、海からこの「サニーくん」が飛び出してきたのだ。
同じライオンのような生き物としてシンパシーを感じたのだろう。
くもはサニーを背中に乗せ、まるで赤子をあやすようにして歩いていた。
「ソルガレオの機嫌がいいな」
「弟ができたみたいで嬉しいんだろ」
「ら、らひへ〜…」
グロッキーになったルフィを放り、ウツロイドやウタの先兵から隠れられる場所を探すローとダルス。
と。その時だった。
空気が扉のように開き、そこから見覚えのある二人と、見覚えにない一匹が姿を現したのは。
「お久しぶりです、ルフィさん!」
「べのっ!」
「コビー…!らひへ〜…」
「ベベノムがなぜここに…?
それに、これはウルトラホールの亜種…?」
一人はコビー。その側には、紫色の妖精のような生命体…ベベノムが浮かんでいる。
コビーは「僕自身は、別の場所にいるんですけど」とよくわからない言葉を付け足し、苦笑する。
一方、ダルスがまじまじと空気の扉を見つめ、考察を広げていると、低い声がその推測を否定した。
「違う。これはおれの『ドアドアの実』の能力だ」
そこから現れたのは、かつてルフィと敵対した世界政府直属の諜報組織…サイファーポールの一人。
ドアドアの実を食べたブルーノであった。
しかし、ルフィは彼のことを覚えていなかったのか、疲労困憊ながらも首をかしげてみせる。
「だれだっけ…?」
「……サイファーポールのブルーノだ。
ドアドアの」
「ドアドア〜…。出して〜…」
ブルーノに懇願するくらいには余裕がないらしい。
ローはそれをスルーして、コビーとブルーノに問いかける。
「どうやってここがわかった?」
「ルフィさんの存在を感知してここに」
「見聞色か…。それにしても、海軍とサイファーポールがつるむなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「縄張り争いなど気にしている余裕がない。
それほどまでに切羽詰まっている。
こちらの持っている情報と、そちらの持っている情報を交換しながら移動するぞ」
ブルーノが言うと、ウツロイドや兵士たちが飛び回っているのが見える。
流石に、このまま相手取るのはまずいと判断したのだろう。
ローは苦々しく頷き、茂みへと駆け出した。
その最中、コビーがウタの能力に関しての情報を並べる。
ウタウタの実の能力者は、歌によって対象を眠らせ、その意識を能力で作った仮想世界…通称「ウタワールド」に閉じ込める。
その解除方法は、能力者が眠ること。
しかし、能力の発動中に能力者が死んでしまうと、永久に閉じ込められてしまう。
ここまで説明したブルーノは、少しばかり呆れたように息を吐く。
「当初は、ネズキノコという猛毒のキノコを食し、眠れなくなった上で死のうと画策している…という情報があった。
……だが、それは間違いだった」
「ええ。ウタは『パラサイト』に魅入られていました…!
彼女はこのライブで、人々をパラサイトの奴隷とする計画を立てたんです…!」
その言葉に、ルフィが反論しようとするも。
ダルスがそれを手で制し、淡々と告げた。
「この計画を立てたのは、確かにウタという少女だろう。
しかし、計画の行き着く果ては違う」
「ど、どういうことですか…?」
ダルスの言葉に、コビーが首を傾げる。
ダルスが思い浮かべるのは、ウルトラディープシーと呼ばれる空間。
かつては栄えたはずの文明が、ウツロイドによって滅ぼされた姿を想起し、ダルスは言葉を続ける。
「お前たちの言う『パラサイト』…、正式名称ウツロイドは、対象に寄生して、自分に都合のいい環境を作り出す習性がある。
…ウタの計画の行き着く果ては、『ウツロイドにとっての危険が排斥された世界』だ」
「つ、つまり…」
────全生物の殲滅こそが、真の目的だ。
ウツロイドの食性は、少し特殊だ。
それこそ、岩山さえあれば最低限の生命活動が可能になっている。
それを全て、誰にも邪魔されず食い尽くすために、ウツロイドは文明が崩壊しかねない所業を、寄生した相手を介して行う。
その実は、ただ寄生対象が暴走した結果なのだが、ダルスからすれば差異はない。
世界転覆どころの騒ぎではない計画に、コビーはあんぐりと口を開け、動揺を露わにした。
「ま、まさか…、そんなに危険な生物だったなんて…!?」
「それもこれも、麦わら。
お前のつれているペットが、ウルトラビーストをこの世界に招き入れたから…」
「それも違う。
お前たちの言うウルトラビーストがこの世界に来たのは、『ネクロズマ』が原因だ」
ブルーノがルフィとくもを責め立てようとするも、ダルスがそれを遮った。
「『ネクロズマ』とはなんだ?」
「『光を喰らう者』…と言えばわかるか?」
光を喰らう。
そう聞いて思い浮かぶのは先日、大将緑牛に深傷を負わせたウルトラビースト。
ブルーノも驚愕に目を丸くし、ダルスに問うた。
「まさか、『暗黒』か!?」
「『暗黒』…。あの、島一つを闇に閉ざしたとか言ってたヤツか」
「すでに被害が出ているのか…。
思ったよりも事態は深刻らしいな」
ダルスは言うと、「参った。時間がないな」と頭を抱えた。
「ネクロズマはとある理由で、四六時中走る身を裂くような激痛に苦しんでいる。
ヤツはその激痛を和らげようと、手当たり次第にウルトラホールを開き、さまざまな世界を回って光を奪っているのだ。
光は奴にとっての栄養であり、鎮痛剤でもあるからな。
そこのベベノムも、そのウルトラホールに飛び込んでこの世界に迷い込んだのだろう」
「べべっ!」
「えーーーっ!?この子、ウルトラビーストなんですかぁ!?」
コビーが絶叫するも、ブルーノとローの白い目が飛び、「すみません…」と静かになる。
ウルトラビーストは揃って、異質な生態を持っている。
コビーが心配そうに周りを飛び回るベベノムを見ていると、ダルスが口を開いた。
「安心しろ。ベベノムは人懐っこく、目立った悪性がない生物だ。
お前がここまで来れたのも、ベベノムの力があってこそなのだろう?」
「あ、はい…。詳しい事情は言えませんが、僕の体はエレジアから遠く離れた場所に居まして…。
ウタワールドに取り込まれた際、この子が僕を運んでくれたんです」
「べべっ!」
コビーが言うと、ベベノムは「えっへん」と言わんばかりに胸を張って見せた。
しかし、戦力は揃ってはいるが、これで全てが解決したわけではない。
コビーは表情を固くし、ため息を吐く。
「しかし、困りました。ウタの説得を図ろうにも、『パラサイト』が寄生しているなんて…。
一体、僕たちはどうすれば…?」
「ウタに白くなったくもをぶつけるんだ!
それなら、ウタは元通りになる!!」
ルフィの言葉に、皆がサニーくんと戯れているくもを見やる。
ダルスが「事実だ」と告げると、コビーはバリアの中のルフィに詰め寄った。
「そ、それなら早く…」
「ウタワールドのウタを治療しても意味がないと聞いたぞ」
「あ、そっか…。って、八方塞がりじゃないですかぁ!?」
「案ずるな。希望はまだある」
頭を抱えるコビーに、ダルスが告げる。
────現実世界には、ルナアーラがいる。
シャンクスおよび赤髪海賊団の皆様…ガチギレ。海兵の皆様をドン引きさせるくらいにはキレてる。アマモも若干引いてる。
ウツロイド…やっべーヤツ。ウタを使ってワンピ世界をウルトラディープシーみたいな環境に作り替えようとしてる…というわけではなく、ただ都合のいい場所が欲しいなーって思ってたらこーなってた。
ウタ…赤髪海賊団が来たのに、全然動揺しない程度には精神汚染が深刻化している。
コビー…所在先でウタのライブを聞いてしまい、ウタワールドに。たまたま拾ったベベノムのおかげで、なんとかエレジアに来れた。ヘルメッポとは合流済み。海賊に襲われていたところを助けたため、ベベノムにめちゃくちゃ懐かれてる。
ベベノム…コビー大好き。以上。