太陽×2   作:鳩胸な鴨

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強い上にクソギミックとか、そりゃあ一国滅びますわ。

後書きを修正しました


トットムジカ

「…どういうことだ?

配信で見ていたウタと、あまりにも思考が違いすぎる…」

「まるでガキみてーだ…」

 

遡ること数分。

子供のように癇癪を起こすウタに、赤髪海賊団の皆が困惑を露わにする。

そんな中、ルナアーラの背に乗ったアマモが神妙な面持ちで告げた。

 

「ウツロイドの毒のせいだよ。

侵食が進むと精神が幼くなって、ゆっくりと思考が破綻していくの。

今のウタちゃんは、多分…、『嫌われたくない』って思う年ごろ…9歳くらいにまで戻ってると思う。

今まで築き上げた『大好きなもの』、『大切な思い出の相手』が、殆どウツロイドにすり替りつつあるの」

 

その情報は、シャンクスの地雷を的確なまでに踏み抜いていた。

アマモの言葉を聞いてか、ぴく、と肩を震わせるシャンクス。

クルーたちも感じたことのない怒気を前に、生唾を飲み込んだ。

 

「…おい、クラゲども…。お前らが何をしようが、俺たちにとっちゃ関係ない…。

俺たちも世界を荒らす海賊。好きにすればいいさ。だがな…」

 

覇気に呼応して、海が揺れる。

顔中の血管が浮き出ているのかと思うほどに怒りを露わにしたシャンクスが、剣に炎のようなオーラを纏わせて振るった。

空間さえも切り裂くような一撃を前に、何匹ものウツロイドが落ちていく。

その中心で、シャンクスは怒声を張り上げた。

 

「おれから『娘を奪う』ことだけは、断じて許さん!!」

 

右腕であるベックマンですら、あそこまで怒ったシャンクスを見たことがない。

吐き出した怒りに反して冷静ではあるのか、見聞色の覇気によって感知したウツロイドの攻撃を避け、斬撃を叩き込むシャンクス。

かつて、カイドウと縄張り争いを繰り広げた時ですら、ここまで苛烈ではなかった。

喉が張り裂けんばかりに叫びながら、ウタへと向かうシャンクス。

が、しかし。今のウタには、その姿は見えていなかった。

 

「っ、だめだめだめっ、だめぇっ!!

起きて、起きてよみんな!!"新時代"はすぐそこなんだ…!!

はやく、はやくおきて!!」

 

シャンクスは知らぬことだが。この時、奇しくもウタワールドでも同じように、ルフィの覇気によってウツロイドが落ちていた。

彼女は半狂乱になって、落ちていくウツロイドへと手を伸ばす。

その姿にシャンクスは泣きそうになりながら、ウタへと迫る。

 

「ウタ、もうやめてくれ…。お前の歌声は、そいつらのためにあるんじゃない…」

「うるさい…。死んじゃえ…。死んじゃえ…!

死んじゃえェエーーーーーッ!!!」

 

隠し持っていたのだろう。

ウタは懐からナイフを取り出すと、シャンクスの心臓めがけて突き出す。

が。シャンクスはそれを弾き飛ばし、ウタの手を取った。

 

「……そっか。そんなに、邪魔したいんだ。

そんなに、私が嫌いなんだ…!!」

「ウタ…っ!!」

 

シャンクスはウタを止めようとするも、ウツロイドによって放たれた攻撃を避け、手を離してしまう。

その隙を縫うように、一際巨大なウツロイドがウタへと降り立ち、彼女を取り込んだ。

 

「あは、あはは、あはははははっ!!

死んじゃえ…!死んじゃえ…!!」

「……っ!!」

 

シャンクスの顔が険しいものへと変わる。

慣れないながらも、いつも整えてあげていた自慢の髪が、黒く染まる。

このクラゲだけは、八つ裂きにしても飽き足らない。

シャンクスが強く剣を握ったその時。

ウタが叫ぶように、あの歌を奏で始めた。

 

「ウタっ、…!?」

 

シャンクスがそれを止めようとするも、彼女を中心として生まれた黒の渦は止まらない。

雷鳴とともに姿を表すその影は、エレジアにとっても、シャンクスたちにとっても悪夢そのもの。

鍵盤のような剛腕に、ピエロのような巨顔。

負の感情を媒介に生まれた、古の魔王。

 

その名も、トットムジカ。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「だずげでオーブンお兄ぢゃーーーん!!」

「ぐっ…!キリがないぞ…!」

 

殺到するウツロイドと音符兵に、ブリュレが大声でオーブンに助けを求める。

オーブンは拳でそれらを何とか撃退するも、一向に減る気配のない敵影を前に冷や汗を浮かべた。

コビーたちも数の多さに苦戦しているようで、ウタはおろか、トットムジカにさえも近づけていない。

そんな中、トットムジカに向けて、斬撃と蹴りが放たれた。

 

「三刀流…!"煉獄鬼斬り"ッ!!」

「"悪魔風脚"…!"一級挽き肉"ッ!!」

 

ゾロとサンジの一撃が、トットムジカに直撃するかと思われたその時。

障壁のようなものが現れ、カイドウにも通用するほどの一撃をあっさりと受け止めた。

どうやら、現実世界と同時攻撃でなければ突破できないというのは本当らしい。

二人は舌打ちすると、向かってきたウツロイドたちに攻撃を放つ。

 

「くそ…!数が多すぎる…!」

「もうバテたか、ヘナチョコ!!」

「うるせぇ、4番!!テメェこそ、息が上がってんぞ!!」

「テメェもだろ、迷子マリモ!!」

 

言い合いながら、ウツロイドたちを捌いていくサンジとゾロ。

と。そんな二人の間を縫うように、陽光の光を纏ったくもが猛スピードで駆けていった。

 

「ラリオォオオーーーーナッ!!」

 

メテオドライブ。

ソルガレオのみが放つことの出来る一撃が、トットムジカに直撃する。

しかし、現実世界と同時ではなかったらしく、その衝撃はあっさりと殺されてしまう。

くもが距離を取ろうとするも、既に遅く。

トットムジカの剛腕から放たれた拳と赤い音符が、くもに襲い掛かる。

が。それ阻むように、腕を膨らませたルフィがくもの背から飛び上がった。

 

「ギア3!"ゴムゴムのォ…!!」

 

その一撃が、炎を纏う。

カイドウを殴り倒した一撃が、トットムジカへと振り下ろされた。

 

「業火拳銃"ッ!!」

 

一際大きな衝突音が響く。

衝撃が会場を揺らすも、トットムジカにはその一撃は届かず。

赤の音符と剛腕がルフィとくもの体に襲いかかった。

 

「ラリオォオオーーーナッ!!」

 

まもる。

くもが吠えると共に防壁が顕現し、ルフィと自身に向けて放たれたトットムジカの攻撃を受け止める。

ルフィはその隙に両腕を膨らませ、手当たり次第に拳を放った。

 

「"ゴムゴムのォ…象銃乱打"ッ!!」

 

覇王色を纏った連撃。

しかし、やはりと言うべきかトットムジカには通用せず。

その剛腕がルフィとくもを弾き飛ばした。

 

「ぐっ…!?くっそぉ…!!」

「ラリオーナ!」

「おう!もう一回だ!

"ゴムゴムのォ…!!」

 

ルフィは再びくもの背に飛び乗ると、今度は膨らませた腕を同時に引き伸ばす。

くもはもう一度全身を白く煌めかせると、陽光を纏い、駆け出す。

ルフィはその勢いに任せ、ギリギリまで腕を引き絞る。

くもの体がトットムジカに触れる直前。

ルフィは高く飛び上がり、トットムジカの顔面目がけ、両腕を突き出す。

同時に、くもの一撃がルフィの腕の間を縫い、トットムジカの鼻っ柱へと炸裂した。

 

「灰熊銃"ッ!!」

「ラリオォオオーーーーナッ!!!」

 

瞬間。びしり、トットムジカの障壁が砕け、その顔面に拳と体が突き刺さる。

大きく怯むトットムジカを前に、ルフィは手を伸ばし、帽子の上で佇んでいたウタへと駆け出す。

 

「ウタァ!!」

「ぁゔ、ぅ、ゔぅ…っ!?」

 

トットムジカを通じて、くもの一撃が響いていたのだろう。

ウタが頭痛を堪えるように悶える。

ルフィはウツロイドの膜に突っ込むようにして、ウタへと手を伸ばす。

 

「そこから…出ろ…!!

シャンクスたちも待ってる…!!」

「ルフィ……っ、い…ぃや…っ!」

 

正気に戻りつつあるのか、ウタはルフィの姿に心底安堵したような表情を浮かべるも、即座に拒絶する。

まだウツロイドの毒が残っている。

そう考えたのか、ルフィは矢継ぎ早に言葉を紡ごうとする。

 

「何でだよ!?そこは、お前の…」

「今更どんな顔して会えばいいの!?

『捨てられた』って、ずっと、ずっと恨んでたのに…っ!!」

 

返ってきたのは、狂気に満ちた声ではない。

ウタの懺悔のような叫びに、ルフィは困惑を露わにする。

 

「捨てられた…?

馬鹿言え!!シャンクスがそんなこと…」

「そんなことわかってるよ!!もうとっくに!!

だから…、だから…、ぁ、ぐっ!?」

 

ウタが涙をこぼすと共に、びくんっ、と彼女の体が跳ねる。

ルフィが膜の中を見ると、ウタの首筋には、ウツロイドの触手が刺さっていた。

神経毒を注入されたのだろう。

その瞳は焦点が合わず、この世界ではないどこかを見るようにあらん方向を見つめる。

ルフィが即座にウツロイドを攻撃しようとするも、トットムジカがウタを取り込んでしまった。

 

────たすけて。

 

ウタの唇が、小さく動く。

今。世界は飲み込まれた。




ウツロイド…神経毒追加入りまーす。ふざけんなこの野郎。

ウタ…「トットムジカを呼び出してエレジアを滅ぼした上に、その罪を父親に押し付けて勝手に恨んでた」と言う現実を再び直視したので、精神崩壊に拍車がかかってる。そもそも、ウツロイドの神経毒を過剰に摂取していること自体、その現実から逃げようとしてのこと。

トットムジカ…お前が一番悪い。一回攻撃が通ったのは、シャンクスとルナアーラの攻撃が、ルフィとくもの攻撃と重なったから。
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