「やはり魔法...!魔法は全てを解決する...!」
何処かで聞いたようなセリフを零しながら、白い少女は満面の笑みを浮かべる。
純白の衣に身を通した少女の微笑ましい光景は、足元の血溜まりと散乱した肉片とのアンバランスさを強調している。
「さて、次は何処に行こうか。」
家無し、名無し、身元不明。
此処が何処かも知らない少女は、唯自身の赴くままに行動するだけである。
「こういう時は、高い所に行こう。そうすりゃあ面白いもんでも見つかろうという物。」
妖精の様な外見とは裏腹に、ロケットもかくやという速度で飛び立つ。
一度雲を突き抜けたが、雲が邪魔で大地がよく見えないので下がる事とした。
見渡す限りの大自然。
遠くには大陸を二つに割く山脈や、天を衝くと言わんばかりの大樹が見える。
「う〜ん、ファンタジー。あの木、自重で崩れねーのかな?」
他愛無い事を考えていると、ふと、呼ばれた様な気がする。
気のせいでは無い。
呼ばれている、確実に。
何かはわからないが。
「よし!暇だし呼ばれてやるとするか!目標、なんか呼んでる奴!進めぃ!」
暫くして。
もともと居た森林よりもさらに深い森林。
あちらに比べて、木々も太く、大地には根が張り巡らされ、入る木漏れ日も少ない。
「どっかで見た事あるような気がするな...こんな感じの森林。何処だったか...。」
空中よりも感覚は強まり、道なき道を勝手知ったる様に、半ば操られるように進む。
「また遺跡...いや、壁画か?それなりに古そうだな。」
コレだ。
俺を呼んでいたのはこの壁画だ。
さて、何があるのかね?
「むう...。」
のそりと巨体を起き上がらせる。
ゴゴゴ、と地響きのような音がして、辺りの土がひび割れ、隆起する。
一際大きな樹木は揺れ、土はボロボロと零れ落ちた。
象も踏み潰せるだろう4本の足に、大樹を乗せて尚有り余る巨体。
全身には蔦が絡まり、その荘厳さを覆い隠す不気味が蔓延っている。
完全に立ち上がると、その巨体に見合わぬ速度で侵入者の元へ移動を開始した。
「不届き者め、此処を誰の領域と心得る。」
なんだこいつ。
ひと目見て、出てきた感想はこれだった。
地震でも起きたのかという振動と、響く爆音が迫って来たと思えば。
木々を薙ぎ倒して現れたのは、土と蔦に塗れた何かよくわからん奴。
「知るかよ。てか邪魔だ、どけ。」
「此処は我が領域である。立ち去れ。」
あっコイツ一方的に喋るだけで会話出来ないタイプの奴だ。
少女は面倒だ、という顔を隠しもしない。
会話できねーならいいか、無視しよ。
「我を無視するか。よかろう、その愚弄をあの世で後悔するが良い。」
己に比べて遥かに小さな白は、己の忠告を聞かぬらしい。
ならば一息に潰すのみである。
山のような体躯と、人間の少女。
前足が少女に向けて、振り下ろされる。
手応えが無い。
あれだけ小さいのならそれも当然か。
そう心の中で納得した。
「グッ...!?」
そして、自身の身体が吹き飛ぶという、あり得ない事象を観測した。
何が起きた...!?
「ふむ...身体能力は高いのか?検証が必要だな...。」
白の声が聞こえる。
すかさず周囲の蔦を伸ばし、捉えようとした。
枝々は急成長し、その身を貫かんとする。
だが、その全てが少女に当たった瞬間朽ち果てるようにボロボロと崩れていく。
二発目。
やはりだ。
消えている。
侵食魔法。
闇魔法の一種で、今現在アイツの武器を朽ち果てさせた魔法だ。
「山みてーにデケェ奴がポンポン吹っ飛ぶのは見てて面白い物があるな。」
殴った感触は岩、その重量は本物。
ならばこちらの馬力がおかしいのだろう。
「面倒だから一撃で沈めるか。」
死体でも検証はできる。
多分、きっと、おそらく、maybe。