フィギュア達の生活   作:GIZEN

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今回はワイルドタイガー主人公。


I will move a new home(私は引越しをする) 前編

「納得できませんよ虎徹さん!ちょっとボディに傷が付いただけで……貴方が売られるなんて!!」

 

「落ち着けバニー。俺達フィギュアには良くある事なんだ。今回は俺の番だっただけで…」

 

「貴方は……いえ、皆さんは何故そんなに冷静でいられるんですか!?もう……会えないんですよ!!」

 

「まあ……そうなんだけどさ。ほら、心配すんな。もうじきピッカピカの俺が代わりに来るんだから…」

 

「それは、貴方ではないじゃないですか!僕の相棒は虎徹さんです!!他の貴方じゃない!!」

 

「はぁ……。まあさ、そう言ってくれんのは正直嬉しいよ。いや、本当本当、マジで嬉しいんだわ。でもな、慣れろ。俺たちフィギュアは……そう言うのに慣れるしかないんだよ。いいか、これが……俺がお前に教えてやれる最後の事だ」

 

「……くそっ!持ち主の勝手に……何で僕達が振り回されるんだ。分かりませんよ……虎徹さん!!」

 

 

 

 

 

 

これは、この店に三年前に売られた中古のフィギュア、ワイルドタイガー又の名は鏑木・T・虎徹と相棒の最後の会話である。

傷ありで売られた彼は日に日に増えていく仲間達を箱の中からぼーっと眺めている毎日だった。

折角、マスクの脱着も出来る仕様なのに今は常に被っていて……最後に外したのもまた三年前。

手足を拘束する白いワイヤーモールも半年もの間緩んだ事はない。

 

「(気が狂いそう……ってのはこういう時に使うんだろうな)」

 

そうやって考えるのもほぼ毎日。

とは言え、実際に狂う事はない。いや、狂ってはいけない。

一度、自分達おもちゃが狂ってしまえばメリーさんへと化してしまう。

それは、元の持ち主への憎しみしか宿ってはいない亡霊。

偽物とはいえ、スーパーヒーローが堕ちていい筈などないのだ。

 

「(お、もう開店の時間か。今日は誰が買われて、誰が売られてくるんだろうな)」

 

虎徹は目の前に現れる大人と子供達をぼーっと眺める。

もう、それは日常となった事。

ゲームの棚に集まる学生。目の前のピンクのカーテンを潜る大人。

馴れた光景は目の前に広がる。

三年間見続けた光景が。

 

「(ん……おぉ!)」

 

いや少し違う。

今、今確かに虎徹の入っている箱は持ち上げられた!

虎徹の目の前には中学生くらいの子供と大学生くらいの青年の姿。

 

「兄貴!ほら、ワイルドタイガーあるじゃん!しかも、傷ありで安くなってる」

 

「ああ、あまり気にならないな。と言うか、ヒーローは傷があってナンボだし……買うかな?」

 

「(……頼む、買ってくれ!久し振りに外の空気を吸いたいんだ!!)」

 

大学生くらいの青年は財布を取り出して渋い表情を浮かべた。

そして……

 

「やっぱいいや。コールオブデューティー買いにきたんだし要らね」

 

「(はあ……だよな)」

 

希望は一瞬で絶望へと落とされた。

また、自分はあの棚で埃を被る日々に逆戻りなのだろうと。

 

「え?兄貴要らないの?じゃあ、俺買う」

 

「(へ?)」

 

絶望へと落ちた時間は僅かに数秒。

虎徹の入った箱は中学生の手に渡る。

そのまま、レジに向かう箱。

 

「(え?本当に俺買って貰えるの?)」

 

そのまま、店員の手に渡り雑に袋に突っ込まれる。

 

「あ、箱要りません」

 

訂正。雑に袋に身体を突っ込まれた。

痛みでつい声をあげそうになるのを必死に堪える。

が、実はこれまだまだ序の口であったりした。

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜!そしていってきまぁ〜す!!」

 

虎徹の入った袋を床に雑に放り投げ中学生は部屋を去った。

沈黙が続き……

 

「あ〜。みんな、持ち主は友人と一緒に遊びに出かけ…」

 

「痛ってぇぇぇぇぇ!」

 

少年の声を聞き届けて、我慢していた声を思う存分吐き出した。

虎徹の叫びに辺りの住人達は驚き視線を向ける。

 

「あ……その、どうもTIGER&BARNABYの足に黒子のある方、虎徹です」

 

「いや、まあ……それはどうでも良いんだけど…」

 

「はじめまして。BANTYOU&JUNESの日本刀の方、悠です」

 

「ノリ良いな相棒……て、俺はジュネスかよ!」

 

「FREAKS&FATHERの血を吸う方、アーカードです」

 

「同じく、殴って良いのは化物と異教徒の方、アンデルセンです」

 

「あんたらも乗るのかよ!」

 

「RE……何をする、アムロ!」

 

「これ以上話をややこしくするな……シャア!」

 

そのままズルズルとアムロはシャアとアーカードを、陽介は悠とアンデルセンを引き摺って去って行った。

まさか、自己紹介でここまで話が続くとは思っていなかった虎徹がぽかんとしていると、エミヤは後ろから彼の肩を叩いて質問を投げかけた。

 

「虎徹……と言ったかね?その……キミの製造日は何時だろう?」

 

「え?……ああ、詳しくは覚えてないけど…もう、四年は経つな」

 

「………そうか」

 

そのままエミヤは落胆したようにスルスルと退場した。

正直、虎徹からしたらこの空間はカオスでいっぱいである。

前の持ち主は、フィギュアは作品毎に区分けしていたためかあんまりここの住人達のように新入りにフレンドリーなことは無かったし、自分がそうしようとしても周りに嫌がられる事しかなかった。

が、ここは……。

 

「よろしくな。俺は衛宮士郎だ」

 

「私はなのは。高町なのはです」

 

「よもや、アメリカンヒーローに出逢えようとは……敢えて名乗らせて貰おう…グラハム・エーカーであると!けして、早乙女アルトでも岡崎朋也でもない……グラハム・エーカーであると!!」

 

「エーカー大尉。彼はアメコミのヒーローじゃ無いのだが。僕はクロノ・ハラオウンだ」

 

「名前を凄く強調したわね……御坂美琴よ」

 

「それだけ普段から消耗してるんだろうな……俺は上条当麻です」

 

「ど、どうも。此方こそよろしく」

 

何となく、自分のオリジナルの居た場所に似ている気がしていた。

 

 

 

 

 

後編予告

どうも!TIGER&BUNNYの自転車カゴの中で痛い目にあった方、虎徹です。

お、みんな俺の為に歓迎会をしてくれるって?

嬉しくて涙がでそうだ。

次回、フィギュア達の生活

あい うぃる む〜ぶ あ にゅー ほ〜む ……これ合ってる?

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