主人公の元ネタはいません、登場も途中からです。
山梨県のとある地方都市に二階から交差点を見渡せるカフェがあった。
特に文句をつける所はないが褒める所もない一見普通のカフェだ。
ただ一点だけ特筆するべき点があった。
その交差点がガイア連合山梨支部へと繋がる交差点であり、長距離バスの発着場や駅も見えるという点だ。
全国にある支部の中でも一番の古株であり、ガイアグループによる城下町を持ち、ブラックカードの殆どが籍を置く山梨支部。
ガイア連合の本部の所在は未だに不明ながら、現世における中心は明らかである。
情報を扱う者でここに目をつけないのは無能だけだろう。
ガイア連合相手にスパイ等の完全に黒い手段は無謀である。
しかしながら白と言い張れる範囲ならば、例えばお気に入りのカフェに通うことはできる。
その結果、このカフェには情報屋やその関係者が海外からも集まっている。
「なあ、見たか?」
「ええ、ゴトウの腹心ですね」
「やっぱりガイアと自衛隊が組むってのはマジらしいな、どこまでだと見る」
全体で見れば上澄みの、ここでは普通の情報屋達が探り合う一般席。
その上の個室で二人の人間が密会していた。
「あのボディーガードさんには待っていてもらっちゃって悪いね、でもこの部屋二人用なんだ。さて、直接会うのは初めてだね。骨川だ。よろしくね、サトウさん」
「今日はよろしくお願いします、骨川さん」
髪型も顔もそうだが何より目が鋭い青年に歓迎されながら、丁寧ながらも堂々とした壮年の男性が席に着いた。
「政治家先生の遊説の最中に時間を取るのも申し訳ないからさ、さっさと本題に入ろうか。護衛の仲介って話だっけ?わざわざ足を運んでまで、となると普通の護衛じゃなさそうだね。」
「始めに言っておきますが、私はお察しの通り覚醒しています。しかしながらそちらについては素人でして貴方と我々の共通の友人である狩尾殿をお頼りするより他に無い状況なのです」
「アハハハ、覚醒者が仲間でもなく護衛なんて言うからよっぽどかと思ったよ。カリおっさんったらこの話を持ってきたくせに律儀に秘密を守っててね、直接聞けばいいって面倒くさがっているんだろうと思ったら目覚めているときたものさ。ちょっと勘違いしちゃったよ。事情を聴いてもいいかい?」
「これは申し訳ない。しかし、私がお願いした事を守っていただいているようで、有難いことです」
サトウの目が鋭くなる、本題に入る合図だ。
「今回は私の息子の覚醒とパワーレベリングを考えていまして、その為の異界で戦闘しながら護衛可能な人材をお願いしたい。素質格差は大きいという話ですから、無事に帰ってくるならば成功とするつもりです」
青年は少し驚いたような顔をした。
「確かにもうすぐ終末が来るって言ってるのは僕らだけどさ、随分と思い切った事するなあ」
「覚醒しているだけでも目をつけられる事は身をもって知っています。しかしながら覚醒者の子という時点で既に目をつけられているようです。メシア教信者の子が同級生にいるようで調べました。確証は得られませんでしたが少々不自然な点がいくつか」
まだ過激派が多く残っていた時代のメシアの勧誘は強引なものであった。
洗脳を厭わない彼等からすれば嫌々だろうととにかく入れてしまって「信心」など後から植え付ければいいと考えていたのだろう。
それの対象でなかったが目の当たりにした者、それから幸運にも逃れる事ができた者、彼等が反メシアを旗印に集うのも当然であった。
メシアに頭を押さえられてメシアに尻尾を振るのが出世の道であるこの国の政界にも、不利を承知で活動する筋金入りの反メシアの派閥が生き残っているのだ
「覚醒による恩恵も多い。昔一服盛られた時に覚醒しなければ私はそのまま死んでいたでしょうし、悪魔を自力で察知することもできないのでは脆弱に過ぎる。それに覚醒者特有の存在感は人を動かすのにとても役立ちます。一般人にこの人は一味違うと思わせるくらいならレベル1でも可能です」
まさにそうして反メシア派の中で影響力を得たのがこの男だ。
メシア教穏健派が反メシア派の過激化を避けるためにこの男を支援したのもゼロではないが。
「安易な思い付きじゃないのは分かったよ」
そこまで話して青年は考え込んだ。
カリオストロによるとこっちに引き込めそうだし反メシアだし年齢の割には力を持つ政治家らしい。
自衛隊との提携は結構本格的だと睨んでいたが、ここで政治家を一部でも引き込めればガイア連合が動きやすくなるか?
こっちの力を見せつけるくらいで頼むとも予め言われていた事を思えばその可能性は高い。
護衛を任せるとなるとレベル以上に信用が欲しい、万が一息子に何かあればガイア連合の信用に傷がつく。
野比や剛田を誘って自分でやるべきか?
だが、力を見せつける・・・単に高レベルというだけではそれがどれだけ凄いのか伝わらないかもしれない。
それを目にする息子には伝わるだろうが、人伝に話で聞くこの政治家やその派閥の者にも伝わりやすい力か。
よし、太陽運輸に頼もう。
「いいよ、カリおっさんの頼みでもある。僕の伝手で一番のを送るよ」
一緒に命を懸けるならあのメンバーだし、実力ならまだまだ上がいるが。
まあ、このくらいはリップサービスというやつだ。
俺の名前は田中太郎、転生者だ。
前世は禿デブミリオタでサバゲの度にダイエットの誓いを立てていた。
しかし、転生すると若い肉体の性能に感動、運動大好きの少年時代を過ごした。
更に酒が駄目でもせめて肴だけでもと煮干しを食い続けた果てに190㎝に迫る筋肉モリモリマッチョマンの肉体を手に入れた。
ハッキリ言うとあの頃の俺はフィジカルエリートになれた事で内心調子に乗っていた。
しかし、今世の父の後ろ姿に前世でも悩まされた若禿の影を見出してしまう。
嘆き悲しんだ俺は無駄な抵抗を試みた。
俺は転生オリ主なんじゃないのか、禿げ程度どうにでもなるはずだ、と本気で考えたのだ。
しかし現実は非常であり、寧ろ気にしすぎた事がストレスになったのだろうか。
前世の俺よりもどちらの父よりも早く禿げ始めた。
世の中にはどうにもならない事があると、そんな当たり前の事を思い知らされた。
そして俺はスキンヘッドになった。
うだうだ効率がどうこうと考えるより実際に体を動かすべきと2世かけて学んだ俺はいっそ思い切った行動をとってみることにしたのだ。
すると何と気が楽なことか、禿げているんじゃないそういう髪型なんだと胸を張って頭を見せることができるようになったのだ。
その後就職どうしようかなと思ってたら、親戚の兄ちゃんで転生者でミリオタ仲間の嵐一郎から転生者掲示板の事を聞いた。
何か転生者は他にもいっぱいいて悪魔がいる世界らしい。
メガテン?タイトルは知ってる。
まあ物騒な世界に生まれちまったのはどうしようも無い。
思い切って第三回オフ会に参加し新卒の一年を費やして住み込み修行すると半年ちょいほどで覚醒者になれた。
や っ た ぜ 。 投稿者:筋肉モリモリマッチョマンの変態糞土方というタイトルのスレを立てる誘惑に駆られたがなんとか自重した。
嵐は俺が覚醒したことよりもマジで参加した事に驚いていた。
暫く迷っていたが覚醒した俺の超身体能力と隣町での悪魔による一家惨殺事件のニュースを見てからは休職して厳しい方の覚醒修行に参加して僅か一週間で覚醒してきた。
嵐は後日に「まだ厳しいコースの悪名が知れ渡る前だったからできた無謀だ」と言っていた。
今は四人組でチームを組んでいる活動している。
俺たち二人は鎧型シキガミを選び残りの二人も鎧型シキガミという共通点で集まった。
気が合ったので長く組んでいる。
今日も異界ボス(チン)をレベルの暴力で片付け、現地人運転手が待つ太陽のロゴが大きく描かれたトラックへと歩いていく。
異界も抜けたし、警戒はシキガミに任せていいだろう。
「この異界攻めも今回で終わりだな、次どうするよ?」
青い装甲服・・・鎧型シキガミのインペレイターに体を包んだ俺が問いかけた。
元ネタを知る者はスペースマリーンと呼ぶだろう。
左腕に装着した放電銃からの【ショックバウンド】と【ぶちかまし】で戦闘で虐殺を繰り広げた張本人なのだ。
「特に予定はなかったはずでは。それにしても全域毒ガスで視界不良と吐き気でデバフしてくる以外はどうということもなかったですね」
また違ったデザインの・・・EDFのフェンサーを元ネタする鎧型シキガミを装備した嵐が応じる。
両手の銃でチン配下の鳥系悪魔を七面鳥撃ちにした男だ。
本当はもっとでかい銃を使いたいらしいが今は何とか手に入れた密輸品のアサルトライフルで我慢している。
「全身を覆うって性質上鎧型は搦め手に強いっすもんね。私たちじゃないと厳しかったんじゃないっすか」
フォールアウトのT-60を模した鎧型シキガミを着ているのは紅一点の金平だ。
背中に大きな箱型のパーツを背負っていて、複数のドローン(アガシオン)を運用する空母みたいな機能を使いこなす。
「うむ、だからこそ俺達に回ってきたのだろう。平均レベル相応の報酬だが、すでに何組も攻略を断念した異界を潰したのはいい営業になるはず。それでこれからの事だが、丁度スネ夫殿から話が来てるぞ。パワーレベリングだ!」
西洋甲冑のような鎧型シキガミを着ているのはソラールだ。
デザインは言うまでもなく太陽の騎士で剣と盾を使いこなし、最近は元々習得していたジオ系を強化し始めている。
物理メインに電撃サブのタンクよりの前衛と役割が俺と被っているが、機械を組み込んだら電撃弱点がついてきたインペレイターに電撃耐性をつけようとした結果電撃適性がついちゃったので仕方が無いのだ。
「パワーレベリングってことは護衛と似たようなもんすか」
「レベル0の現地人を覚醒させるため、護衛しながら異界で戦闘してほしいそうだ。素質は未知数だから無事生還すればよしという話だが・・・ふむ、親も覚醒者だそうだ。覚醒は十分期待できるな!」
「・・・私たちってレベル30間近ですし、雇うとなると結構しますよね。どこのお偉いさんですか」
「政治家先生というやつだな!親御さんはカリオストロ殿の友人らしい」
「未覚醒となると範囲が飛んでくるレベルは無理だな。本当に俺達じゃ過剰じゃないか」
「俺たちは見た目が派手だからな、アピールにはいい!報酬もいい!元々現金とは言えいい額だったがスネ夫殿からも追加で報酬が出るぞ!くれぐれもよろしくという事だ」
ソラールの一存で次の予定が決まったわけだが、うちでは珍しい事ではない。
嵐とソラールは家庭持ちで、可能性は低いとはいえ自分の死の可能性はありうると考えている。
ガイア連合には制度として殉職した際の保証もある。
ブラックカードへのそれは他よりも手厚く、そもそも適応されたことがないほどブラックカードは守られている。
例えガイア連合の方針が変わったとしてもブラックカードの遺族が捨て置かれるような変化が急に起きるとは考えにくい。
それでも転生者の遺族という大きい括りではなく、自分たちの遺族のために動いてくれる実力あるブラックカードが欲しいと二人は考えたのだ。
俺はミリオタなので共に戦うような仲間なら高い連携があってほしいと思ったし、規律や最低限の上下関係がないまま命を懸けて戦うのは流石に不安だと考えて同意した。
金平はその集団に開発部を作ってそこの部長にして予算を回すことを条件に賛成した。
結果としてこのチームは来るも去るも自由というよくあるチームよりははっきりとしたルールを持つに至った。
ガイア連合の傘下企業として太陽運輸を作り、そこの社長であるソラールという形で明確に上下関係を持つのだ。
4人で作った社内の規定の内幾つかは呪術的な拘束力も持つほどだ。
とは言え拘束力を持つ条文はわざと曖昧にしてあるし、ソラールはワンマン社長ではなく説明や話し合いを厭わない。
会社化したお陰かこのチームは連携という点においては中々いい線行っていると思っている。
なんせどの異界にも行ってない時も頻繁に会社での訓練をしているからな。
さらに言えば専任のベテラン運転手と荷台が客室に改造されたトラックのような支援も行き届いている。
「まあ詳しい話は中でしよう」
トラックに乗り込むと一斉にシキガミが変化していく。
俺と嵐のシキガミはごつい腕時計に、ソラールのは太陽のメダルだ。
三人はさっさと自分の席に座ってくつろぎ始めた。
金平はパワーアーマーステーションでシキガミを脱ぐと早速肩の増設パーツを弄り始めた。
「さっき報酬がいいという話をしたな。今の土地は賃貸で持ち主が普通の現地人投資家だからな、色々制限もあって自由にできん、俺達で買い取る話があっただろう」
「あ、もしかして値上がりですか。今ガイア連合があちこち開発してるんでその関係ですね」
「ああ、特に山梨の開発は一番大きいからな。人里から離れている上にプレハブオフィスと工場(こうじょう)というよりは工場(こうば)というのが似合う安物件だったが、これからもそうとは限らんと考えているようだ。あの山を管理できなくなった老夫婦から格安で譲り受けた事と俺たち太陽運輸がガイア連合傘下の事も併せて、この先の開発予定を知っていて買おうとしていると考えているようだ」
金平が振り返って叫び始めた。
「えっ!じゃああたしにプレス機買ってくれるって話はどうなるんすか!旋盤にフライス盤にボール盤にザンハンマーにアギ炉にグライクレーン!もう場所ないっすよ!」
金平はシキガミが遅れたとかで元々作成班だったが、自分のシキガミを手に入れると元々付き合いのあった俺たちと前線にでるようになった。
鎧型シキガミと言っても最初期は折りたたんで運べる紙製だったのを、フォルマを添加した鋼板や合成繊維で本物の鎧にしてくれたのは金平だ。
本物の鎧になってからは物理耐性が無効に変わった上HPや防御力が目に見えて増えた。
更に金属系の霊装の名匠として太陽運輸の経営に貢献してもいる。
「もちろんその為でもある。キャンセル料もシャレにならん!とにかく割のいい仕事を見逃すわけにはいかない」
「まあ不思議に思ったってだけで元々嫌ってわけじゃなし、気は使いそうだけど安全に稼げそうでいいんじゃないか」
「おお、そういってくれると嬉しいよ。」
金平もひと段落したのか作業を終えるとパワーアーマーをピップボーイに変化させ自分の席で休憩し始めた。
一先ず今日でこの仕事はお終い、大した損耗も無し、次の飯のタネも当てがある。
悪くない一日だった。