「ここが公孫賛さんの天幕……で合ってるんだよな」
「はい、間違いありませんよ」
オレと理央は公孫賛さんに情報を話すためにここに来た
なぜかと言うと──
──────────
「桂花、その役目オレにやらせてくれないか?劉備さんが気になるから少し会ってみたいんだ」
「はぁ!?劉備が気になるですって!?やっぱりあんたも他の男共と同じだったってことね!」
「い、いや!違う!そういう意味じゃないから落ち着いてくれ!」
「じゃあ何よ!」
「あの人からオレと似てるような気がして、それがどういうのか確認したいんだ。もちろん情報収集はしてくるから!理央を連れていくつもりだし!」
「あんたと似てる……つまり劉備は誰彼構わず救おうと考えてるとか正義の味方にでもなるつもりでこの戦に参加したとかってこと?」
「どっちかとかはまだ分からないし違うのかもしれない、でもオレは確かめたいんだ」
「はぁ……わかったわよ。行ってきなさい」
──────────
劉備さんに会ってみたいと思ったからだ
こんなこと始めてだから
さて、あまり遅いと桂花に怒られそうだから早めにすませるか
「それより理央に話す役目任せちゃってすまないな」
「いえ、相手には軍師がいます。正騎さまは人が良すぎるから、そこに漬け込んでくる可能性も十分にあります。なので相手の力量も測れるしここはわたしにお任せ下さい」
久しぶりに張り切ってるな
この子ならあの諸葛亮相手でも負けたりしなはず
そう、この子を諸葛亮に合わせてみたいとも思ったのだ
正史だと後半の舞台でぶつかりあった軍師たち
それがここにいま揃ってるんだ
理央が諸葛亮を見てどう思うかも気になる
っと、その前に公孫瓚さんに情報の提供をしないとな
「すみません、公孫賛さんはおられますか?」
「私が公孫賛だが、お前は曹操の所の?」
やっぱり天の御遣いっていうので多少なりとも覚えられてるか
でも華琳の所にいるってわかって貰えたのなら話しやすい
「はい、衛宮正騎と申します。こちらは補佐の司馬仲達。主である曹孟徳から伝令として参りました」
「曹操からだって?……わかった、とりあえずこちらに来てくれ」
公孫賛さんの案内で天幕の中に入ることはできた
……公孫瓚さんって言いづらいな
「さて、曹操は私に何を伝えようとしてるんだ?」
「公孫賛さん劉備さんが担当する汜水関についてです。あとはこの子から説明します。理央、お願い」
「はい。汜水関に籠ってる大軍を攻略するのは難しい、それで曹操さまの指示により、我が軍が掴んでいる情報を共有します」
そこから理央は斥候からの情報、華雄について、袁術軍が軍を動かし、撤退したことを嘘偽りなく、そして拡張せずにそのまま伝えてくれた
「すごいな、曹操はここまで情報を掴んでたのか。非常に助かった、特に敵将について教えてくれたのはこの後の作戦も立てやすくなったよ」
「いえ、オレたちは指示に従ったまでのことです。それよりこの情報を劉備さんの元にもお伝えしたいのですが」
「桃香にもか?いや、あいつも先鋒の軍だから教える必要があるか……少し待っててくれるか?」
と言って公孫賛さんは席を外した
何かあるのか?
でも今は無闇な詮索は辞めておこう
「公孫賛さんは話してみてどうだった?」
「そうですね。あの方は特に長ける所は見当たりませんが、軍を率いてるお方です。それなりのことは出来るという所ですかね。それにわたしたちの情報も素直に使ってくれそうです」
「なるほど、器用貧乏と言ったところか」
──足音が聞こえる
こちらも話してるうちに戻ってきたかな?
「待たせてしまってすまない。今から桃香の元に案内しよう」
とうとうの後の蜀の皇帝、劉玄徳と臥龍諸葛孔明と対面か
天幕に向かい、少し歩く
劉備さんのいる天幕の前に、長い黒髪の女性が立っていた
「公孫賛殿、お待ちしておりました。……そちらが曹操軍からの伝令ですね?」
「オレは衛宮正騎、こちらは司馬仲達。我が主曹孟徳より伝令として参りました」
黒髪が綺麗な人だなぁ
それに強さも感じる
こちらへの警戒心があるようだけどこれが普通か
「こちらへ、我が主がお待ちしている……が、一応その背の剣は置いて頂きたい」
「寄せ集めの連合軍だからそうなるのが普通か。わかりました。ではあなたに預けます。これなら一番確実でしょう?」
「……確かに預からせて頂きました」
投影できるから理央を守る事ぐらいはできる
それにあの剣はオレじゃないと抜くことは出来ないからな
中に入ると先程軍議の時に顔を合わせた劉備さんと諸葛亮がいた
「あなたは先程の天の御遣いのお兄さん!」
「覚えていただきありがとうございます。改めてご挨拶を、衛宮正騎と申します。こちらは司馬仲達。此度は伝令として参りました」
「わたしは劉玄徳、こちらは軍師の諸葛亮で先程お二人を案内したそちらにいるのが義妹の関羽です。よろしくお願いしますね!」
話しただけでも優しい人というのが伝わる
仁徳と呼ばれる劉玄徳にあってる雰囲気だ
そして、諸葛亮
どうやらこちらを試してるか警戒しているかの目をしてる
いや、理央を見ている?やっぱり何か因縁でも感じるのか?
そして先程
美髯公じゃなくて美髪公とでも言うべきかな
人は揃った。そろそろ始めるか
「ええ、こちらこそよろしくお願いしますね。我が軍が掴んでいる情報を伝えるべく伝令として参りました」
そこから理央に説明を頼み、情報を伝えた
三人ともそれぞれ別の表情を
劉備さんは話を真剣に聞いてる、誰にでも優しい人だからちゃんと本当のことだと信じてくれるはず
諸葛亮は理央のことを探ろうとしてるのか、そのように見える
関羽さんは……なにか下手なことをすればすぐに斬るぐらいの警戒心、それを感じとれた
オレが思えるのはこれくらいだろう
あとはこの子がどう見てくれるか……
「──以上が我が軍が掴んでいる情報の全てです」
「これは罠ではないのですか?この反董卓連合とやら、どうにも胡散臭い事が多すぎる」
「待ってください愛紗さん。曹操さん程の方がわざわざ連合軍に不利になる様なことをして、自らの評価を落とすような方とは思えません」
「おや、さすが軍師殿ですね。この情報は嘘偽りなく本当の情報ですよ。曹操さまの事もよく分かってらっしゃいます」
「なら虎牢関の情報も正しいと?」
「そうでしょうね。作戦は曹操さんの情報が正しいことを前提に立てて、違っていた場合も対応出来るようにしておきます。それでいいですか、桃香さま?」
「うん、それでいこう」
さすがは諸葛亮だな
ちゃんと華琳の人柄も理解しているからこそ、このような自分の陣営以外信用出来ない状況でもオレたちが持ってきた情報が本物だと信じ取れると
それにもしも違っていた場合も想定して作戦を立てる……やっぱりこの子はいずれ華琳の厄介な敵になりそうだな
「話すことは以上かな。それより一つだけ聞きたいことがあります。劉備さん、あなたは何故この連合軍に参加なさったのですか?」
「それは、都で董卓って人が暴政を働いたせいでたくさんの困ってる人がいて、その人たちを助けたいからです。それと、どうして突然そんなことをやってしまったかの理由が知りたくて」
「なるほど、わかりました。もしもです、董卓がやってしまったこの暴政、その理由に納得せざるを得ないものだったらあなたはどうするんですか?」
「わたしは……許せないけど、董卓さんには罪を償わせたい。そう思います」
困っている人がいたら助け、どんな悪党でも殺さずに罪を償わせる……か
似ている気がしたのはそういうことか
この人は昔のオレと同じように全ての人を救おうとしてる
「それはオレも同じ考えです、目の前だろうが大陸のどこにいようが関係ない。助けなければいけない人がいたら手をさし伸ばすし、なるべく悪人だろうと殺したくは無い」
「そうなのですか!わたしと同じ考えで嬉しいです!」
「全ての人を救えるのなら救いたい。だけどそれは無理なのは分かっている、だから今はオレが手の届く範囲の人だけ救えるのならそれを選びます。それに例え全てを敵に回しても味方になると決めた子がいるからです」
「全てを敵にしても……ですか?」
あの子は絶対に守ると決めた。それと今隣にいるこの子も
それがどんなことになろうと
「劉備さん、あなたはこの戦いが終わったら平和になると思っていますか?」
「そ、それはもちろんです!昔みたいに平和に──」
「なるはずがない。それはアンタのただの理想だ。劉備さん、アンタは理想を抱いて溺死する覚悟はあるか?」
「え……?」
「貴様、桃香さまになんて事を言う!」
「今俺は正義の味方として、同じ平和を目指しているこの人に聞いてるんだ。いくら妹とはいえアンタは黙っててくれ」
これは、正義の味方を目指しているオレと平和を求める理想高い劉玄徳の平和を求めている者同士の会話だ
いくら関雲長といえど話には割り込ませない
「理想を抱いて溺死しろ。この言葉の意味は『その理想は他人を巻き込む、理想に他人を巻き込むくらいなら一人で死ね』。アンタは周りを巻き込まず1人で死ねる覚悟はあるか?」
「私は……」
「……これで失礼する。行くよ理央」
「えっ、あっ、はい!」
聖剣を取り、理央と天幕を出る
────理想を抱いて溺死しろ
この言葉は父さんから聞いた言葉だ
とある人から言われたらしい
オレは自分が持ってる理想でみんなを巻き込むくらいなら一人で死ぬ、その覚悟を持っている
今は守る人の範囲は確実にしてるから、理想なんて小さすぎるものになってるが
だけどあの人はそれを持っていなかった
それが決定的な違いか
「正騎さま、大丈夫ですか?顔色が優れないように見えますが」
「劉備さんの事を考えていたんだ。あの人は理想ばかりでかいけれどその力は無い。ならその理想を他人を巻き込まず死ぬ覚悟はあるか?きっとないんだろうな……って」
「正騎さま……」
「けどオレは違う。今は手が届く人を助けれるようにならないとって頑張ってるからな。それにさっき言った全てを敵にしても守るものがある。桂花と理央、2人はオレが守ってみせるから」
そう言い、理央をギュッと抱きしめる
こんなにも小さくて、か弱い存在
本当ならこんな戦場にいるのが場違いなのにオレのために着いてきてくれてるんだよな
「星さまはよろしいのですか?」
「星は……逆に守られる側になっちゃうから。でもいつか守られるんじゃなく、隣に並び立てるようにしないとな」
「正騎さまならすぐできます。みんなが認めてなさってるお方ですから」
「……ああ。さて、そろそろ戻ろう。あんまり遅いと桂花に怒られちゃうからな」
「ふふっ、そうですね。桂花さまは怒らせると面倒ですものね」
陣営に戻ったあと理央には公孫瓚さんや劉備さんの情報をまとめに一旦別れ、オレは桂花に報告しに
「それで?ちゃんと仕事はして情報収集はしてきたんでしょうね?」
「もちろんちゃんと伝えてきたよ。報告に関しては理央が今まとめてくれてる。後で桂花の所にも来るよ」
「そう、それであんたと劉備はどう似てたのよ」
まぁあの時言ったし、言わなきゃいけないよな
「あの人は全ての人を助ける。そういう理想を持ってたよ」
「……そういうことね」
「けどオレと劉備さんは違うってことはわかったよ、それだけでも確認できて良かった」
オレは全ての人は救えなくてもいい
だが守れるみんなの幸せを、みんなの笑顔を見れるようになりたい。ただそれだけだ
その笑顔が見れるために死ねるか?ってなったらこの命ぐらいくれてやる
そう覚悟はできてるから───