「はああああっ!」
「ごはっ!」
相手も決戦と決めてることもあり士気が高い
そのせいで今は弓じゃなくて干将・莫耶を使っている
「真桜!左翼はもう大丈夫だ!右翼の沙和の援護に向かえる!」
いくら士気が高いといっても戦力差は揺るがない
オレもこれなら何とか指示を出しつつ戦える
──────────
「……すまんな、待たせたか?」
「ええで。それよりあんた、あとどのくらい戦えそうや?」
「貴様の限界の倍でも打ち合ってみせるわ!そんなことを気にする前に、掛かってこい!」
「ええなぁ……それ、良すぎるわ……!なら、遠慮なく行くで!」
「……くっ。やはり、姉者でもなければ足止めで精一杯か」
「…………っ!」
「通る」
「秋蘭さまっ!」
──────────
「なんだ……今のは……」
春蘭と張遼が、秋蘭と季衣、流琉が呂布と戦ってた?
これは、直感が見せた未来予知ってことか……?
セイバーのサーヴァントとして呼ばれたアーサー王はその直感で本来回避不能の剣技である多重屈折現象の秘剣を避けたって聞いたことがある
未来予知ぐらいなはずだが……未来視に偶然なったのか?
春蘭と張遼は一体一で戦ってる、そこにオレが行っては邪魔になるかもしれない
それにさっき見せたのが春蘭に何が起きるのか、邪魔が入るのかの選択肢になるかもわからない
なら確実に危険になる秋蘭の方に助けに行かないと!
「正騎殿!戦場においてぼんやりなされるな!」
「春蘭と秋蘭に何かが起きるかもしれない……」
「正騎殿……?」
「星!春蘭の所に行ってくれ!確証は無いけど張遼との一騎打ちで何かの邪魔が入るかもしれない。それを止めて欲しいんだ!」
「いえ、私が秋蘭の方に向かいますゆえ正騎殿が春蘭の元へ」
「それはダメだ!!オレが行かなきゃ……!」
「正騎殿!」
星まで失うわけにはいかない。だから、オレが行って何とかしないと
オレが行って……何になる……?オレが行ったところでみんなを助けられるのか……?
わからない。でも命を懸けてでも守らなきゃ
早く行かないと、あれはホントにわずかな先の未来
あの後どうなるかはわからない
「頼む……間に合ってくれ!」
身体強化をし、ひたすらに走る
ただ戦場は広い、いくら速くなってもどこも戦っているし景色は変わらない
「はぁ────はぁ、はぁ」
どこだ、どこにいるんだ!
あの一瞬の映像だけじゃわからない
城の中じゃないから目印となるものもなかった
「はぁ、はぁ、はぁ………クソッ」
考えるんだ
呂布はおそらく袁紹を狙って進軍して、そこに秋蘭たちが止めたとすれば──
近くから音が聞こえる
これは鉄と鉄、剣どうしがぶつかり合う音じゃない
「矢を落とした音か!──頼む、間に合ってくれ!」
音の方向に向かうと本能と直感が危険を察知したように足を止めようとする
進めば危険だ、死ぬかもしれないと
でもそんなのはどうでもいい、まずはみんなを助けないと!
「あれは────秋蘭!」
秋蘭、季衣、流琉に文醜と張飛が呂布と戦っている
名のある将が5人もいるというのに、呂布は苦戦してる様子は無い
あれは、大切なものを守るための目をしている
きっと彼女も何かを守っているんだろう
ポケットの宝石は目くらまし程度にはなるはず
今はこれを使って!
「
「……!」
閃光が走って呂布が怯んだ
「秋蘭!」
「衛宮、どうしてここに」
「直感で秋蘭が危ないってわかったんだ。でもこれだけの将が揃ってるのに眉一つ動かさないとかなんなんだよ」
あんなのと戦っても勝てるはずがない、本能がそう言ってる
一か八か……少し賭けに出てみるか
「呂布、もう戦いはやめよう」
「……?」
「君が何かを、誰かを守ろうとしてるのはわかる。洛陽が落とされるのは時間の問題、だからその人を連れて逃げれば……」
「それは、できない」
「どうしてだ!」
「恋が戦わなきゃ、月が死んじゃう」
多分だけど董卓さんの真名なんだろう
確かに、どういう経緯があったか分からないがきっと董卓さんは捕まったら処断されてしまうはず
彼女がここで押えていないと董卓さんがまず逃げられないんだろう
だから、それをさせない為に戦っている
「なら、オレたちが先に見つけ出して保護してやる!華琳にも話せばきっと!」
「信用……できない」
「そう、だろうな……だったらオレの腕でも足でも差し出す。その代わりになっちゃうがオレを信じてくれ」
何か恩があったり、借りがあるわけじゃない
会ったのだってほんの一瞬で、会話もした訳じゃない
でも国の為に悪逆になって今にも殺されそうな子を、放っておいていいわけがない
「…………お前、良い人?」
「正義の味方目指してるからな」
「…………?でも、周りは違う」
「そんな……」
「衛宮無駄だ」
「だけど!」
「話が通じてたら私たちがとっくにやっている」
「クソっ……戦うしか、ないのか……!」
相手は三国志最強、天下無双の飛将軍呂布
ならオレが今使える最強の宝具で攻撃するべき
ただイメージするために時間が少しだけ必要だ
「季衣!流琉!一瞬だけでいい!呂布を足止めしてくれ!」
「正兄ちゃん何か考えがあるの!?」
「一か八かの賭けになってしまうがやってみないとわからないんだ!」
「わかった!正兄ちゃんやってみて!流琉、いっちー、ちびっこ!もう一度だけ仕掛けるよ!」
「正兄様のお考えがあるなら!」
「よく分からないけどもう一回攻撃すればいいんだな?よっしゃ!」
「チビチビうるさいのだ!」
これでダメだったらあと一つだけ回避不可の技があるけど、あれは近距離技
なるべく使いたくないしな
「秋蘭はオレが矢を放つ前にみんなに下がるように言ってくれないか?」
「うむ。わかった」
イメージするんだ
その武器は螺旋の形をした魔剣
その性能は空間をも貫く矢と化すけど贋作の贋作じゃさらに威力が落ちる
だから出来るだけ強い物をイメージしなければ──
「全員下がれ!」
「我が骨子は捻じれ狂う────
その武器の真名解放しながら矢を放つ
けれどその威力はかなりのものでそれにさらに──
「────
「…………!!」
呂布が矢を弾く寸前に宝具を爆発させた
「な、何が起こったのだ!?」
「今のも魔術なのか?」
「ああ、魔力の塊である宝具を爆発させたんだ。本来はこういう使い方はしないんだけど、投影できるオレとかは別さ」
ただ、父さんやサーヴァントならこれで即死級のダメージを与えられるはずだけど、未熟で劣化したオレの力じゃ足止めぐらいには──
「………今のは危なかった」
「くそっ、やっぱりあんまり効いてなかったかよ」
「直撃してたら、恋でも危険だった」
つまりあそこから回避なりして軽減したってことか?
……なら、もう一つの方を使うしかないか
「オレがたたみかける、秋蘭たちは隙を見つけたら撤退するんだ。いまからやる技は不可避の技、例え呂布と言えど1発なら!」
「待て!衛宮!」
両手に干将・莫耶を構える
──これしかない
「行くぞ!呂布!」
「…………来い!」
「────山を抜き」
持っている干将・莫耶を左右から同時に、それぞれ魔力を込めて一投
弧を描く二つの刃は敵上で交差するように飛翔する
それを、呂布は当然のように防ぐ
左右から襲いかかる干将と莫耶を迎撃し、その軌道をずらした
弧を描いて戻ってくるはずの双剣は、起動を狂わされて敵の背後へ飛んでいく
呂布が間合いをつめてくる
「────
呂布の一撃を受け止める
投影をしたのは同じ干将・莫耶
複数作るために投影の準備をしていた
「それじゃ恋を止められない」
もう一撃くる呂布の猛攻
その直前に
「────水を割り」
「…………!」
呂布はもはや未来予知に近い勘の良さで、背後から飛翔した干将を躱す
その出来た隙をつき、莫耶を叩きつけるが
「はぁっ!」
方天画戟の前に贋作物は砕ける
いくら身体能力、戦闘経験全てにおいて差があるとはいえ
背後からの奇襲、全力で放った一撃をほぼ全く同時に敵は防いだ
加えて、正面から切り伏せにいった莫耶までもが打ち砕かれた
これはもはや人間を超えた存在だ
だけど
「────なお墜ちることなきその両翼」
「また同じ物……!」
二度背後から飛翔する莫耶
それは投擲し、一度目に弾かれた双剣
干将・莫耶は夫婦剣。お互いを引き寄せ合う性質を持つ
つまり──この手に干将がある限り、莫耶は自動的にこの手元に戻ってくる!
「くっ…………」
人間離れした反応速度を以って、背後からの奇襲を避ける
これ以上ない無防備な胸元へ、残った干将を叩きつけるが──呂布はこの一撃さえ打ち砕いた
二つの干将・莫耶、四つの刃による前後からの同時攻撃を防がれ、全ての武器を砕かれた
オレの攻撃はここで限界
けれど、敵もこれ以上にない無防備な状態で、こちらの一撃を打ち砕いた
されど、この手にはその先を用意してある
三度目を超えて、その先へ
無の両手に、再び双剣を作り上げる
「
呂布を目掛けて、左右から双剣を振り抜く
「が──────」
手の干将・莫耶は壊れ砕け散った
いつの間にか地面に倒れている
斬られたであろう箇所がとても熱い
「衛宮!」「正兄ちゃん!」「正兄様!」
……オレを呼ぶ声が聞こえた
呂布は……少しだけ血が出ている。回避不能なら喰らうのを前提にしてオレに攻撃したんだろう
実力に差があると……そういう方法も出来ちゃうのか
回避不可の剣技があれば通用する、なんて考えたのが甘かった
今も星や春蘭に防戦一方なんだ、そんなオレが呂布に勝てるはずなんてない
わかってたけど……これはやっちゃったな
「正騎殿!正騎殿!!」
「…………星?」
「春蘭は──!──か──!」
意識が遠のいてきた……守るって、決めたのに、言ったのに……
ごめん、みんな……ごめん、理央、桂花……
──────────────
「でりゃあああああっ!」
「だあああああああっ!」
春蘭と、あれは張遼か!
一騎打ちをしているな、正騎殿のお言葉通りなら何かが起こるらしいが……
「むっ、星か!もうすぐ華琳さまと御前にこ奴を連れていけそうだ!残念だがお前の番はないぞ!」
「さすがだな。私のことは気にせず思う存分張遼と戦うといい」
「もちろんだ!待たせたな張遼」
「ええで。それよりあんた、あとどのくらい戦えそうや?」
「貴様の限界の倍でも打ち合って見せるわ!そんなことを気にする前に、掛かってこい!」
もうじき決着も付く、だが何も無い……
いや、正騎殿のあの様子から何も起こならないはずが……あの光は!
「春蘭!!」
春蘭の元に駆け寄り、その光を弾く
やはり……これは矢の光だったか
「何をする星!お前の番はないと言っただろう!」
「あれを見よ。お主たちの戦いを邪魔しようとしたのを防いだまでだ。……聞け!この場にいる者共よ!この一騎打ち、邪魔立てするならばこの趙子龍がお相手致そう!」
「借りが出来たな。さあ張遼!一騎打ちの続きと行こうではないか!」
「ええで、まだまだこれからや!」
あとは春蘭が勝てば、こちらは無事に終わることができる
秋蘭の元に向かわれた正騎殿は無事なのだろうか……
その後も一騎打ちは続き、春蘭の勝ちでようやく終わった
「無事に勝利したようだな」
「なんだ、私が負けるとでも思ったのか?」
「いいや?春蘭が負けるとは思ってもおらん。ただ先程の横槍は正騎殿が気づいてな」
「衛宮が?」
「うむ。私は正騎殿の元へ向かう。春蘭は張遼を華琳さまの元へ連れていけ」
春蘭が無事で、張遼も生きている
こちらは無事に終わったと言えるだろう
ならば急いで正騎殿の元へと行かねば!
先程の場所に戻り、私とは反対に別れてその先にいると思っていたのだがどこにもおらぬ
魔術を感じ取れる術があれば!
「────!」
戦場に合わぬような声……?もしや……!
背中に悪寒が走る。ダメです、あなたはまだ生きておられるべきお方なのです!
ようやく見つけた秋蘭に、季衣と流琉
そして────倒れ伏せている正騎殿の姿
「正騎殿!正騎殿!!」
「…………星?」
「春蘭は無事です!お気を確かに!」
直ぐに反応がなくなってしまったが、まだ鼓動はある。息はか細くだがしている
助かるかわからないが、まずは呂布を何とかせねば……!
「恋殿!恋殿はいずこに!」
「…………ねね。恋はここ」
「既に城門は突破され、作戦は失敗です。月殿のお言葉通り、恋殿もお退き下さいませ!」
「…………続ける?」
「行け。むしろその方が助かる」
「…………わかった。…………そいつ、まだ助かる」
「なに!?」
「…………敵なのに、月の事心配してた。でも敵だから斬った。…………良い奴だから、運がいいのか即死じゃなかった。ただ遅ければ死ぬ」
そう言い捨て、呂布とその連れの小さいの、おまけに華雄がいたが、こちらを放っておくなら好都合
今は正騎殿を本陣にお連れせねば……!
「正兄ちゃん!」
「正兄様!しっかりしてください!」
「私が本陣にお連れする。春蘭が張遼を連れて戻っている。秋蘭たちはそちらと合流して戻ってきてくれ」
「姉者は上手いことやったのか、わかった。衛宮を頼む」
「うむ、正騎殿は必ず私が」
正騎殿をしっかりと背負う
もう少しだけ辛抱して下され、絶対私があなたを生かしてお連れ致します!
「邪魔をするなら容赦せぬ!趙子龍、いざ参る!」