「……というわけなんだがこの石窯を作る許可を貰えないか?」
先日完成した設計図
それを華琳に見せ、作れるか許可を貰いに来ていた
「なるほどね、窯の中に熱を集めて高温で焼きあげる……あなたが料理する時は城のみんなに振る舞うからそれなりの広さも必要になるってことだから聞きに来たのね」
「あぁ。小さいのも出来るがそれだとみんなから食べたいって要望が来た時絶対に追いつかないからな。ならいっそ大きいのを作った方がいいと思って」
「あなたと一刀の時代の料理、それがより増えるのなら構わないわ。それでどういう料理が出来るのかしら?」
「オレが忙しかったり、後華琳も片手間に食べたことあるサンドイッチがあるだろ?あれの挟んでるパンがまず作れるな。他にはそのパンの生地に似てるやつを円形に伸ばしてその上に具材を乗せて焼くピザって料理が主にだな。他にも日持ちがいい燻製料理とかも出来たはずだ」
温度調節が難しそうだが、他にもローストビーフとか肉料理に確か専門店はケーキとかも作ってるって聞いたことあったな
「あれも石窯でできたのね。なら天の国の料理を作る時には私と流琉にも教えなさい」
「それはもちろん。ただ作るための耐火の石材とか作るのに時間が必要だからそれなりに待ってくれよ」
「ええ。でもそうね、教えてもらうだけなのも悪いわけだし私も何かあなたに教えようかしら」
「家臣が君主に献策するのは当たり前だろ?だからいいって」
「今の場合はお互い料理が出来る立場としての会話よ。だからあなたから教えを乞う分私からも返すわ」
確かに今は君主と家臣じゃなくてお互い知識を増やしたい料理人としてか
オレが知らなくて華琳が知ってそうなもの……あっ、そうだあれを聞いてみよう
「なら酒の作り方は知っているか?」
「そうね、酒造の研究はするつもりだったからそれなりには知っているわ」
「ならそれをオレに教えて欲しい」
「わかったわ。それにしても正騎はお酒を飲んでいるところを見た事がないから興味無いと思っていたのだけれど作ろうとは思うのね」
「あー、実はオレ酒にかなり弱いんだ。だから自分から飲もうとは思わなくて。今回の件も星に作ってくれないかって頼まれたからだな」
メンマに酒も渡してあげたらきっと星はものすごく喜んでくれるだろうからな
それに桂花もお酒は飲めるしオレの作った酒を飲ましてあげたい
「やっぱり女の子関係ね。予想はしていたけれど」
「おいおい、変な予想はやめてくれ。まるでオレが女の子のために頑張ってるみたいじゃないか」
「違うの?」
「いや、まぁ結果そうなってるからあまり言えないけど……」
城のみんなに何かするってなると基本女の子に何かしてあげるってことになってしまうからな
城の中で主に関わる同性って一刀しかいない気がするし……
「でも純粋にみんなのためにってのは分かっているわ。ただ酒蔵はまだないの。だからこっちの事もあなたに任せていいかしら?構造とかは説明すればあなたなら理解できそうだし」
「わかった。なら栄華に予算のこと話す時に酒蔵の事も伝えておくよ」
「ええ、お願いね」
さてと、石窯作る許可を華琳から貰えた
それに星やみんなに作ってあげる様のお酒の件も解決だ
となると次は……栄華の所に報告して予算を組んでもらうだけか
「正騎さま、華琳さまの許可はどうでしたか?」
「無事に許可を貰えたよ」
「良かったですね正騎さま。後は栄華さまに予算を頼むだけですか?」
「ああ。だから今から栄華の所に行くけど一緒に来るかい?」
「はい。お供させていただきますね」
予算がどれだけかかるか分からないからついでに使わない資材とかも聞いておいて使えそうなものは貰ったりしておくか
他にもみんなは使わなくてもオレには工房に必要だったりするものもあるかもしれないしな
栄華の執務室に着き、部屋に入る前にノックする
これがちゃんと当たり前のように通じるって言うのが三国の時代って雰囲気から外れるんだよな
「どうそ、開いてますわ」
「失礼します。栄華、華琳から許可降りたからこれについての予算の話をしたいんだが──」
なんだろう、栄華の顔色がいつも通りのはずなのに少しだけ悪く見える
もしかして、疲労が溜まってるんじゃないのか?
「栄華、もしかして疲れてるんじゃないのか?」
「そんなことはありませんわ。それより、それを見せていただけます?」
普通の人なら判断ができない程だけどオレにはわかる
人の顔色とか良く見てることが多いからな
それに栄華とも随分長い付き合いになる、多少の変化でもわかる
「ごめん、この話はまた今度にしよう。理央、今日は栄華の仕事を手伝おうか」
「わかりました。計算も得意なのでお任せ下さい」
計算となると最近作ったそろばんが必要になるな
一回取りに戻らないと
「て、手伝いは不要ですわ!これはわたくしの仕事ですので、わたくしがやります」
栄華はこの仕事に誇りを持ってやってるんだろうな
だからこうして手伝いを拒んでる
けれどそれで無茶して倒れるのはよくないはず
「でも栄華だって疲れてるはずだ。いつまでも無茶をしてはいけないはず」
「でも──」
「それに洛陽で自分を大切にって教えてくれたのは栄華、君だ。だからこういう時ぐらいオレに言った言葉通りにして欲しい。それにオレも変われたって教えてやりたいしさ」
自分を大切に、自分を大切にしない人がが他の人を救えるなんて思えないってことに気づかしてくれたんだ
なら、彼女自身にもそれに気づいてほしいとオレは思う
「オレは部屋に戻ってそろばんを取ってくるよ。理央みたいに頭がいいわけじゃないからさ」
「わたしの知略はあなた様のためにあるのですからお気になさらず。先に始めて仕事量を減らせるようにしておきますね」
「さすがだね。それじゃすぐ戻ってくるから」
早足で戻ればそんなに時間はかかることはないな
早く戻って栄華に少しでも休んでもらわないと
──────────
なんですのあの方は……
わたくしはまだ疲れていないのに、疲労が溜まってるなんて仰って
確かに前にあのような事は言ったのけれど、その言葉を返されてしまうなんて……
「正騎さまは本当にお優しいことです。これからもご期待に応えれるようにわたしも頑張らないといけませんね」
この子は本当に衛宮さんを慕っていますのね
どれだけ信頼しているかがわかりますわ
「けれど衛宮さんは、どうしてわたくしを手伝ってくださろうとなさったのですか……」
「それは相手が栄華さまだからだと思われますよ?正騎さまは前とは違い、正騎さまを大切に想ってくれる方を優先しております。その中には栄華さまも含まれているのですよ」
「そんな、わたくしは衛宮さんを──」
「ご自分ではそう思ってても大切に想っておられると思います。そうでなければ正騎さまに対して、ご自分を大切になんて仰らないと思いますよ?」
気が付かないでわたくしはそう思ってたというの?
あの方をどう思って……
理央さんはどう思っているのでしょう
「あの、理央さんは衛宮さんのことをどう思われているのですか?」
「わたしは正騎さまの事を愛しています。命を助けて頂いたあの日から、わたしの全ては正騎さまが隣にいてくれることですから。」
やはり、理央さんは衛宮さんのことが……
けれどもあの方なら、桂花さんと一緒に幸せにしてくださると思うのですが……
いえ、わたくしが言うことではありませんね
「でも栄華さまも正騎さまのことが好きなのですよね?」
「な、何をおっしゃられますか!?」
「違うのですか?よく正騎さまのことを目で追っかけられてることを見かけたことがございますし、お気遣いしてあげられるからてっきりそうかと」
わたくしが目で追ってる?お気遣いをなさってる?
自分でも気が付かないのに……まさか無自覚で!?
「もしかして自分で気がつかないうちに無意識で見てたのではないですか?けれどどうであれ、栄華さまは一回ご自分に素直になってみたらいかがですか?本当は助けを求めてたり、いろいろと気がつくことも多いはずですよ」
自分に素直になって、向き合う……
いろいろと気がつくこと……
──────────
「お待たせ。ん?何話してたの?」
「ふふっ、女の子同士の話ですので、こればっかりは正騎さまでも内緒ですよ」
なんかすごくご機嫌になってる気がするけど、女の子同士の話ならオレは聞いちゃいけないよな
「じゃ、始めよっか」
「え、ええ。お願いしますわ」
「わたしも頑張りますね」
それから数時間、オレと理央は栄華の仕事の手伝いをした……が、国の資金に関することが多いため桁がそれはもう凄いからそろばんじゃなかなか追いつかない。これほど電卓が欲しいと思ったことは無かった
周りを見ると手を止めず、かといって計算に時間がかかるような素振りもない……オレは政に関してはやらない方がいいかもしれない
「つ、疲れた……」
「終わりましたね。正騎さま、栄華さまお疲れ様でした」
わかりきってたことだけど、オレは疲労が溜まったがこの子にとっては何の問題もなさそう
これは桂花かこの子に頼んで勉強を見てもらうなり、そろばんをもっと上手く使えるなりしておかないと……
「あ、あのお二人とも、……今日はありがとうございました」
「お礼はいいって。オレなんかよりも今日はこの子が頑張ってくれたから」
「わたしはいつもより頑張りましたけど、当然のことをしたまでですよ」
さすが司馬仲達、頭の良さは本当に底が知れないな……
「それよりも、オレが言うのもなんだけど無理はするなよ」
「はい。あなたに無茶をしてはいけないなんて仰ったのに、わたくしが無茶をしては説得力がありませんわね。それに少しだけ、自分と向き合ってみますわ」
「そうだな、自分のことが一番わかるのは自分だから」
オレもあれから気づかされた事が何度もあるし、きっと栄華なら納得いく形になるだろう
「それじゃあ、オレたちはそろそろ行くよ。また明日な」
「それでは栄華さま、失礼しますね。……わたしは栄華さまのこと応援してますからね」
何か最後に栄華に小声で話してたけどなんだろう
さっきの二人だけの会話の続きかな?
「あっ、石窯の件忘れてたや」
「わたしもすっかり忘れてました!でも華琳さまから許可はいただけてるのでまた今度の機会にいたしましょう」
「そうだな。予算貰えた所ですぐにできる訳でもないし急ぎでもないからな。さて、今日はもう休む準備でもしますか」
一日体験しただけで結構疲れたからな
栄華はいつもこんな仕事をしてたのか
これからはもっと頼ってくれたらいいんだけど……いや、オレも頼られる前に勉強しておかないとな