「ぐっ……」
左半身が痛い
今日の戦いの影響か……
桂花たちはもう部屋に戻って自室にはオレ1人ってのが助かったな
こんな姿見せたら心配させるだろうし
「とにかく頑張って寝よう……明日になってれば多少はマシになるだろ」
目をつぶり感覚を遮断する
意識が遠くなるように感じ、段々と身体と意識が離れるのがわかる
そして意識がハッキリして目を開けた時は朝だ
「……少し重いか?けど痛みは無くなってんな」
身体の半分だけこう軽く重りを持ってるみたいな感覚だ
だけどそれぐらいだから日常生活は何とかなるだろう
さて、みんなの朝ごはんを作りに行くか
「正兄様!おはようございます!」
「おはよう流琉」
今日は流琉がいるのか、ちょうど良かった
流琉は華琳の親衛隊だから忙しいため厨房に来ない時もある
そんな時はオレが作り、またオレがいない時もあってそんな時は流琉が作ってたりする
もちろんオレと流琉2人ともいない時があるが、城の料理人にはちゃんとオレたちの技術は教えてるし、元々の腕前があるからな。心配せずに任せている
というかオレがほぼ毎日作りに来てて何かと仕事を奪っている気がするからな。オレが持ってる技術を提供して仕事を奪っている分を返さないと
さて、城の料理人としての朝は1番大変だ
昼や夜は街で食べたり、時間がまばらだからオレが作ってる時に一緒に作るとかが多いが朝はみんな揃ってるからな
それに一人一人食べる量が違う
まず春蘭や季衣、華侖なんかはかなり食べる。これはよく分かるだろう
次に理央なんかは少食で、他は一般で言う普通の量から大盛りって量で食べてるな
華琳は忙しい時はサンドイッチとか仕事中にも食べれる物を、朝時間取れる時にはみんなと同じようなものを食べたりしている
まぁ後はうちが他の国よりも優れてるのは冷蔵庫があるのだな
この時代には存在していないが、貂蝉と卑弥呼というもう何でもありの2人組によって助けられている
「正騎!流琉!今日のご飯はなんだ!」
「もうお腹すいて待ちきれないっすー!」
「おはよう。今日は白米に汁物、後は焼き魚と付け合せの定食だな。オレの故郷だとこういう朝ごはんがよくあったんだ」
料理人さんが魚を仕入れたって言ってたから今日はそれを使った日本ならよくある定食を作ってみた
味噌はまだないがそれに近い物を作って味噌汁風の汁物を作ったりとしたがやっぱり味噌は欲しいな
大豆は喜雨に任せれば生産できるが麹が……これは貂蝉に言ってみるか
「朝からこんな美味しいもの食べられるなんてボク毎日幸せだよ!」
「そう言って貰えると作ってるこっちの身としては最高だな。これが春蘭、季衣、華侖の大盛り方、秋蘭はこっちだ」
「いつもすまないな衛宮。姉者達が満足するぐらいの量にしてもらって」
「気にしないでくれ。作った料理を美味しそうに食べてもらえるのが嬉しいからさ」
この3人の食べっぷりは見ていて気持ちがいい
食べ放題とかやったら……それはそれで栄華がブチ切れそうになりそうだからやめとこう
「そういえば姉者、先程衛宮のことを名前で呼んでたがいつからだ?」
「私の弟子ってちゃんと認識してからだな。北郷と違って正騎はちゃんと強くなれるし教えがいがある」
「ふむ……ならば私も正騎と呼ぼうか。私も正騎の師だからな」
「秋蘭もだと!?だが弓になると秋蘭しか教える人がいないからそうなってしまうのも仕方ないか……?」
この時代で弓の名手といったら夏侯淵である秋蘭か黄忠、あとは呂布辺りが有名だな
甘寧や太史慈も上手と聞いたことがあるがこの世界ではどうなんだろうか?
「というわけで、呼び方を変えるが改めてよろしく頼むな正騎」
「ああ。こっちこそな」
呼び方を変えてもらっただけだが、この世界には名前にも真名と違うものがあるがとても大切にしている
そんな真名に値するオレの名前を呼んでくれるってなるからな、信頼されてるのが分かるし嬉しいものだ
その後もみんなが朝ごはんを食べにやってくる
と言っても大食らいはいないから後からの方が忙しくない気がする
「おはよう正騎。今日はちょっと忙しいから簡単に食べられるもの作れるかしら?あと理央を1日貸してほしいの」
「わかったよ桂花。それなら急いで作るからな」
やはり領地が増えたり、人員が増えたりすると頭を使う仕事の立場の桂花はだんだんと忙しくなってくる
そんなだからこそオレが1番に支えないとな
まずは美味しいご飯を作って栄養をちゃんと取れるようにしていかないと
「お待たせ、これなら手づかみで食べられるよ。あとはなるべく1口ぐらいの大きさで、味も飽きないようにいくつかの種類作っておいたから」
「そんな手間かけなくてもいいのに。でもありがとう、嬉しいわ」
「理央にはオレから伝えて桂花の所に行くように言っておくよ」
「わかったわ。それじゃあ行ってくるわね」
桂花のためにオレが何かしてやれればいいんだが
今はお互いができることをやるのが1番か
「正兄様と桂花さま、本当に仲良しですね」
「まぁ、な。ただ周りから言われると少し恥ずかしいな」
「おや、まだ慣れていないのですか?正騎殿の事ですから知れ渡ったら堂々としていらっしゃると思っていたのですが」
「うわぁ!?星、いつの間にいたのか!?」
「えぇ。つい先程に」
ホント星って神出鬼没だよな
しかも気配もわからないし、星レベルの強さになるとそんなことが可能になるのか……?
「では正騎殿、流琉。朝食を頼みます。ああ先程理央も見かけたので準備しておかれると」
「わかった。なら流琉は理央のを頼めるか?」
「はい!理央ちゃんだから少し少なめにしときますね」
そういや麹があれば醤油も作れるよな
ふむ、少し調味料の研究も没頭して作れるものは作って味はなるべく再現したいものだ
「おはようございます……ふわぁ……」
「おはよう理央。理央の分は流琉が今準備してるから待っててくれ」
「はーい。ありがとうございます〜」
「まだ眠そうだなこの子は。桂花が今日は1日仕事手伝って欲しいって言ってたからご飯食べて身支度整えたら向かってくれ。よし、星できたぞ!」
「……正騎殿、私の勘違いならそれで良いのですが少し身体の動かし方に違和感が見られますが?」
「うっ、バレたか……いや昨日の戦いで初めて見せた投影使っただろ?あれのせいで魔術回路がちょっと反動貰ったって言うか。でも半身がちょっと疲れて重いぐらいだから気にする事はないよ」
ご飯作ってる時も別に気にすることは無かった
ちょっとだけ重いなぐらいで、包丁とか使うのは右手だからな、切るぐらいじゃ問題なかったし、食器準備するとかでも落とすこととかはなくできたしな
まっ、そのうち治るだろう
「正騎殿が気にするなと言うのなら。ですが何か起こるか分かりませんので用心してくだされ」
「あぁ、ありがとう星。今日は警備隊の仕事ぐらいだし何ともなさそうだけど気をつけておくよ」
料理人としての仕事が終わった次は警備隊としての仕事だ
でも街は平和、争いも何も起きていない
あるとすれば初めて訪れた人に道を聞かれたり、あとはいつものようにお店の人から声をかけられ買ってかないかみたいに言われるぐらいだ
「後は別地区を回って、早めに戻って報告書とかまとめて……ん?」
何やら周りを気にしているような奴がいる
どう見ても動きが怪しいな……少し尾行してみるか
周りを少しばかりキョロキョロ見るようにして、少しばかり早歩き
角を曲がったが確かここは路地裏のようで人もあまり通らないような場所……これは何かあるな
走って追いかけ、路地裏通りに出る
「まんまと引っかかったと思えば極上の餌じゃねーか!」
「副隊長さんだなぁ!こいつに仲間何人も連れていかれたことか!!」
複数人の気配を感じ取れたが、数十人はいそうだ
それにオレが今までに捕まえた人が仲間でそれの憂さ晴らしもありそうだな
「犯罪などしてなかったからあえて見逃していたが、警備の仕事中に手を出してくるってことは捕まりたいってことだな?」
「いくらお前でもこの人数は勝てないだろ!」
「やっちまえぇ!」
「はぁ……仕方ない、トレース──ぐっ!?」
魔力を回路に流した時に、昨日の夜中に続いた激痛が出てきた
これは魔術回路が使えない……?
クソっ、面倒な時に!ならば母さんから教わった八極拳で!
「せやっ!!」
「こいつ素手でも強ぇ……!」
「数で囲め!いくら強くてもいっせいに攻撃すりゃ倒れるだろ!」
まずいな、流石にいっぺんに来られると対処しきれない
だが魔術は使えないしこういう時を想定してなかったから武装はしてきていない
速攻で方をつけるしか……!
「もしやと思いましたが、やはり魔術も使えないようですな」
「なっ!誰だ!」
「私は正義の使者、華蝶仮面。そのお方の右腕となる者だ。とぅ!」
「星!?なんでここに!」
「朝の動きからしてもしやと思いましてな。後をつけていたのです。警邏が終わったら戻ろうかと思いましたがやはり平和に終わることがありませんでしたな」
「そっか、なら手を貸して欲しい。星がいるならさっさと終わるしさ」
「無論です。では」
その後は一瞬にして終わった
オレも八極拳をある程度使えるから数で圧倒されなければ相手が武人じゃなければ負ける気はしないし、後ろにはオレが信頼における武人の星がいたんだ
さて、こいつらは公務執行妨害とこれから先に罪を着させないために連行していくか
「助かったよ星。これで街の治安もよくなるし、仕事も何とか終わりそうだ」
「それは何より。ところで正騎殿、夜は空いておりますかな?」
「特に予定は無いけど」
「でしたら城壁にて、以前お付き合いしていただいた場所にてお待ちしております」
「わかった。それじゃあオレはこいつらを連れていくからまた後でな」
夜か、何かツマミでも持ってった方が……作ったメンマがあったっけな
新作だし味見も兼ねて持っていくとするか
夜、城壁に繋がってる階段を上った先に星は腰掛けて待っていた
「お待たせ。酒もあるかと思ってツマミ持ってきたよ。新作のメンマだ」
「それはなんと!ですが後に致しましょう。まずは別の用がありますゆえ」
星がメンマを後回しにした……!?
オレに用事と言ったけど、一体どんな内容なんだ……!?
とりあえず聞いてみよう
「それで用ってなんだ?オレを呼ぶってことはオレが関係してると思うけど」
「正騎殿、少し近くに寄って頂けませぬか?」
「ん?わかった────んっ!?」
口に柔らかい感触、そしてお互いの顔が触れる近さ……
えっ!?オレ今……星にキスされた!?
「せ、星……さん?」
「正騎殿、私をあなたの側室に、無理ならば妾でもいい。隣にいさせて欲しいのです」
「……本気……なのか?」
「はい。今までのような言動は正騎殿と桂花のために、ですが言葉の意味は全て言葉通りの意味でした」
確かに星はオレを慕っているみたいなことを言っては冗談と言ってた
その時のオレは他人の気持ち、特に恋愛絡みなんかは特に鈍感だった。正直今でもそう思ってるが
「星の気持ちは凄く嬉しい。でもオレはそんな気持ちを比べたりとか、順列をつけたくはないんだ」
「ふむ、ならば私も正室になれば良いということですな」
「いや、違っ、というか一夫多妻制がまずいんじゃ」
「正騎殿の故郷である日本では禁じられているかもしれませぬが、こちらでは権力者はしている者もおります。それに正騎殿は天の御使いのおひとり、文句を言う者もおりますまい」
確かに昔の時代は日本も中国も大名やら将軍なら正室の他に側室や愛人なんかも多くいたって歴史書にも記されてる……
オレは……もう戻るつもりはない。ならば──
「わかった。星のオレを思ってくれてる気持ちに応えたい。順列とかなく、オレを思ってくれる人みんなを幸せにしてみせる」
「貴方が私を慕っている、その事が分かれば大丈夫です。桂花の代わりに私が戦場にてお隣でお支え致しましょう」
「星が隣にいてくれるならオレはどんな時でも戦える。えっと、その、これからもよろしくな」
恋人が2人……これ現代だったら刺されるか批判とかまぁ受け入れられないだろう
だけど後漢末期の時代だから大丈夫、オレはオレを好きになってくれた人をちゃんと愛せるように、幸せにできるようにしていこう
ただ……桂花はなんて言うかなぁ……