今日は柳琳のお仕事の手伝いに
もう前の事になるのだが、春蘭との戦いでぶっ倒れた後、お詫びに一日付き合うことになった
『正騎さんは戦いがある度に怪我したり倒れたりしていますし……私だって心配する事多いんですよ?』
『うっ……うーんと、なら今度1日柳琳に付き合うよ。ここにいるみんなとはよく過ごしたりしてるけど柳琳とはそういう日なかったしな』
『えっ!?……は、はい。なら今度1日お願いします……』
と、いう話があった
それで今日はそのお詫びを使う日になったから柳琳の執務室に来ている
「ん?一刀は何しにいるんだ?」
「俺は勉強がてら柳琳の仕事を見学に来たんだよ」
「じゃあ今日は警備はあの三人主体か、オレたちがいない時の状況判断ができる訓練にもなるしちょうどいいかな」
普段の戦のときはオレか一刀が指示してる時が多い
今や小隊長の三人で新兵の強化にも関わってるんだしこういう機会があってもいいだろ
「う〜ん……春蘭さまはちょっと気前が良すぎるわね。いくら活躍したからって、この隊の兵士一人一人に、ここまで褒美を与えるのは……、逆に秋蘭さまは厳しすぎかしら。せっかく敵の部隊長を討ち取ったのだし、この兵士にはもっと金を与えてもいいでしょうね」
と柳琳は呟いている
今柳琳がしているのは戦いにおいて、働きのよかった兵士に与える褒美の査定
各将からの報告書に目を通し、チェックしていっている
全てチェックし終わったあとに書類にまとめ、栄華のところに提出するのだ
オレがやっている手伝いは、すぐにまとめあげられるものと、こうして悩んでいるものを分けて、同じものをチェックしないようにするだけの手伝い
報奨ってなるとさすがにオレは関われないからな
「柳琳!お待たせっすー!」
大きな声を出して、勢いよく部屋に入ってくる華侖
これには毎回驚くんだよな
「ね、姉さん、扉はもうちょっと静かに……」
いつも注意してる柳琳は大変だよな
だけどこういうのってなかなか治らないんだ
うちも藤ねえちゃんとかそうだったし
「お待たせっす!報告書っす!」
「だ、だから静かに…………でも良かった。覚えていてくれたのね」
「当たり前っす!はい、どうぞっす!」
覚えていてくれたという柳琳の発言から、華侖はこういうことを提出するの忘れる時があるのか
昨日が締切だったけど、今回はこうして報告書を持ってきたんだから、珍しいものだ
「ええと………………ね、姉さん……?」
「これでいいっすよね?」
柳琳の顔が引きつっていく……
ちょっと予想はしていたんだけど、覗いて見たらどう見ても殴り書きのもの
だって「みんな頑張ったっす!」って書いてあるのが見えたんだから……
「もうちょっと詳しく書けないかしら?」
「詳しく?」
「どの兵士がどんな手柄を上げたのか。敵を何人討ち取ったとか、大将首を取ったとか……そういうことをきちんと正確に書いて欲しいの」
「ほら、そこに書いてあるじゃないっすか」
「書いてない。『敵をやっつけたっす!』じゃ、何もわからないじゃないの」
「え〜〜〜〜〜?」
柳琳は何一つ間違ったことは言ってない
けれど華侖はまだ不満がありそうだな
「あたしの部下はほんとにみんな頑張ったっす。だから、みんなにご褒美あげて欲しいっす」
どの隊の兵士でもみんな頑張ってる
だから華侖も部下が頑張ってるって見てるんだから華侖の言いたいこともわかる
「うん、そのご褒美をね?兵士それぞれの働きに対して、公平に授ける必要があるの」
「そんなのわかってるっすよ。公平にドーンとみんなに同じご褒美をあげたらいいっす」
「それじゃあ公平にならないでしょう?」
確かに公平にはならないよな
華侖がいいって言ったとしても納得しない人がでるはず
手柄が違うのに皆が皆同じ褒美なら、手柄を多く取った人が不公平になるし
「これで公平なんす!あたしの隊はみんな仲良しっす。誰かだけが多くもらっても、喜んだりしないっす。誰かだけの手柄じゃなくて、みんなで頑張ったからいい活躍が出来たんっす!」
「言うことはわかるけど、これはお友達ではなくて軍隊なの。姉さんがいる場合はそれでもいいかもしれないけど、いなくなったときはどうするの?」
「…………??」
そこで分からなくなっちゃうか
華侖はそこの区別がついてないのかもな
でも、仲間思いというのは本当に伝わってくる
けれど軍隊としてある以上、そういう融通なことは効かないし……
「どれだけ頑張っても同じだけしかもらえないなら、頑張る意欲がなくなるでしょう?兵士はみんな同じではないの。中には農村出身で、大きく手柄を立てて故郷の家族を養う。それを原動力にしている人も少なくない……ううん、とっても多いの。そういう兵士にはどうするの?」
「それは……あたしが特別にお給金をあげるっす」
その考えもいいと思ったんだけど、実際にオレがやろうとしたら怒られた
桂花と栄華にとてつもなく怒られたんだ
……今ではその意味も理解出来てるはずだけど……な
「……姉さんだってそんなことは出来ないってわかってるでしょう?」
「…………わかんないっす」
「姉さんっ」
「わかんないっすー!」
「ちょっ、華侖!」
感情と言われてることに戸惑いが追いつかなくて逃げてしまったか
「はぁぁぁぁ〜〜〜〜……」
柳琳も頭を抱え込んでしまった
柳琳の方が言い分は正しいはず
けれど華侖の方だって仲間と思ってれば素晴らしい考えだと思う
柳琳が一刀に教えるために華侖の報告書を読み上げると
『戦いが始まったっす!』『突撃っす!』『怪我したっす!』『敵をやっつけたっす!』『勝ったっす!』『みんな頑張ったっす!』
という報告書
何もわからない、けれど華侖にはこう見えているからそう書いたのだろう
「仕方ないです。姉さんの部隊の兵士たちに、私が直接、聞いて回ろうと思います」
「それなら、オレが聞いて回ってこようか?」
「でも、ご迷惑じゃ……」
「先に迷惑をかけたのはオレの方だ。これはそのお詫びでのお手伝いってこともあるしな。それにまだ他にも報告書は見ないといけないんだろ?」
まだまだ報告書はあるし、それをまとめなければならない
ならオレが聞き回って行った方が効率が良くなる
「……わかりました、お願いしてもいいですか?」
「もちろんだ。それじゃあ早速行ってくるけど、少し休憩した方がいいかもしれないぞ。柳琳、疲れというか心労が──」
「ふふ、心労だなんて。そんなものはありません♪」
「そ、そういうならオレの気の所為だったかな」
笑顔の裏の圧に怯んでしまった
でも明らかに疲れは見えてるが、どうにかしてあげられないもんか
聞き回り、すぐに柳琳の元へ報告に
無事に終わったというもの結構時間がかかってしまったな
「今日はありがとうございました。正騎さん」
「力になれたならよかったよ。……それにしてもお腹がすいてきたな」
日はもう沈んで夜
夕飯を食べててもいい時間だ
「そうですね。どこか食べに行きましょうか?」
「いや、オレが作るよ。前に和食を食べさせてあげるって約束したからせっかくだしいい機会だ」
約束もあったし、今日一日は柳琳になにかしてあげないと
仕事を手伝っただけなんてオレの気が収まらない
「それじゃ作り始めるから座って待ってて」
厨房に向かって早速調理開始
和食の定番といったらやっぱりアレだよな
冷蔵庫から豚肉を取り出す。どこ産かわからないが、貂蝉の店の事だから何故かの日本産なんだろう
豚肉には薄力粉をまぶして寝かせておく
その間にタレ作りだ。この間作った醤油に、喜雨に作ってもらった生姜をすりおろし砂糖と酒を少しと混ぜ合わせる
後は肉を焼き、タレを入れ炒め合わせる
盛りつけに野菜を、これもまた手作りをした味噌で作った味噌汁、白米と日本なら馴染みのある定食の出来上がりだ
「お待たせ、出来たよ」
「とっても美味しそうですね、なんて言う料理なのですか?」
「これはしょうが焼き、オレの国の食事処でもよくあるものだよ」
柳琳は肉じゃがを作ってくれたからな
それに負けない知名度のしょうが焼きを作ってみたのさ
「いただきます。……美味しい!これが本物の和食なのですね」
「オレが作るんじゃ一般家庭の味止まりだけどな。でも基本はだいたい同じなんじゃないかな」
同じところも多いけど作る人によっていろいろと味は変わるもの
それにプロの料理人なんてもっと凄いもの作れるし
「私にもこのしょうが焼きの作り方、教えていただけませんか?」
「もちろん、そしたら柳琳の作ったの食べてみたいな」
「はい。その時は正騎さんに一番に作りますね」
と、こうしてまた約束したりして柳琳と楽しく会話した
最近柳琳と話す機会が増えてきたけど、とても落ち着くというか気分が安らぐ
理央も柳琳には結構お世話になっていることが多いらしいし、理央から見たらしっかりしてるけどとても優しいお姉さんなんだろう
これも柳琳がそういう人柄だからだろうな
次の日
「みんなお疲れ様」
「ハッ!」
「隊長と副隊長もおつかれなのー」
「はー、終わった終わった。早く部屋戻って、うまい酒でも飲みたいわー」
「今日はもう解散だから、ゆっくり休んでくれ」
午後の巡回も終えて、城に戻ってきた
今日は凪と一刀、沙和と真桜の二手に、オレが高台からと治安の良くない地域を重点的に回ったんだ
特に異常はなく、真桜がかっぱらいを捕まえた手柄をたてたらしい
「沙和は巡回中に、変な話を聞いたの」
「変な話?」
「そうなの。旅芸人が言ってたんだけど、このお城に来る途中、山で妖怪を見たって」
妖怪ね……
実在しないものが怖い理央が聞いたらきっと怖がっちゃうよな
「妖怪だと?」
「せや、その話。ウチも行商人から聞いたで」
「………………。その妖怪ってもしかして恐ろしい声で叫んだり、呪文を唱えたりする妖怪?」
妖怪がいるだかなんだかって言うのは聞いたけど、そんな変なものになってたんだ
被害が出た訳ではないけど、そこの山はここに来る途中通る旅人が多い
結構噂が広まってたんだな
「隊長、副隊長、退治しましょう」
「え……た、退治ぃ?」
「そのような妖が城のそばに潜んでいるとは……警備隊として、放ってはおけません」
「妖怪……ねぇ……」
確かに、妖だろうがそういう悪いものがうろついてるとなると、行商人とか減るかもしれない
それに干将・莫耶は巫術礼装としても使用できるし、贋作だから多少効力は落ちるけど、オリジナルが対怪異専用の宝具だから妖程度なら倒せるだろう
現代にはいないが、過去には妖精や竜種などまさにファンタジーなものが存在していたと言われている
なら約2千年近く離れているこの三国志の時代にも妖怪の1体2体ぐらいいるかもしれない
「妖怪退治か、おもろいやないか♪」
「ふ、ふたりとも本気なの?」
「今からでも早速」
真桜は何故かやる気、沙和はちょっとびびってるかな
「北郷、あんたひとりで退治しに行ったら?行って逆に、食い殺されたらいいのよ。満腹になって妖怪が去ったら、あんたも少しは役に立ったことになるんじゃない?」
桂花が通りかかって一刀に一言言うけど、相変わらずだ
「桂花ちゃんも、妖怪の噂知ってるの?」
「私は宰相よ。城下の噂ぐらい、どんな些細なことでも把握してるに決まってるわ」
やっぱり上の立場になるとそれぐらい把握してないといけないのか
桂花は頑張りすぎるところがあるからちゃんと休憩させるときはさせてあげないと
桂花は妖怪はいないと言うし、一刀は華琳を困らせるために広げた噂じゃないのかとも言う
「それじゃあ日を改めて、オレが見てくるよ」
「正騎あなた本気で言ってるの?妖怪なんていないわよ?」
「わかってるよ。でも何かしらあるかもしれない。それにこの干将・莫耶は対怪異専用の宝具だから妖がいたとしたら一番効果があるんだ」
「でも、本当にいたとしたら……」
そっか、さっき一刀に食い殺されるとかなんとか言ってたから心配してくれてるのかな
「大丈夫だよ桂花。オレはそんなに弱くないだろ?」
「そうね……けど、行くときはちゃんと気をつけて行くのよ?」
「あぁ。何があっても桂花のいる所に絶対戻ってくるから」
ということで後日に妖怪退治?に行くことに
魔術師がいる訳じゃないから使い魔とかはないだろうし……
でも謎の呪文とかってなんなんだろう、魔術に関係あるものなのだろうか?気になる