真・恋姫†夢想 正義の後継者   作:シバヤ

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49話

 

袁紹が劉備さんたちの国、徐州の州境を超えたらしい

劉備さんには生き残って欲しい

まだあの人の答えというものを聞いていないから

 

こちらは今近いうちに攻めてくるであろう袁紹への対応を決めてる

稟は徐州の遠征軍に袁紹、文醜、顔良と主力が揃っているから南皮へ攻め、徹底的に袁紹さんを叩くべきだと

それに反対して桂花が、袁紹も袁術も先見の明のない小物ゆえ、放ってくべきだと

けれど劉備さんの脅威を感じたのか、そちらを討つべきとも

けれども華琳は今は力を溜めるべきという

次の動きで最善手を打てるように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさきしゃまぁ……むにゃ……」

「理央、着いたぞ。いい子だから起きてくれるかー」

 

いまオレは寝てる理央をおんぶしている

何故かと言うと魔術が容易に使えないからその時間を趣味である料理に回し、料理の仕込みも終えて寝ようとした時に大至急の集合命令がかかった

夜は早く寝るこの子の部屋に行ってみたらもちろん深い深い眠りの中だったからこうして連れてきたわけ

 

「理央さん?そろそろ起きてくださいまし」

「はーい……、ねむいですよぉ……」

「ごめん栄華。この子夜遅くは無理な体質だから」

「いいのですのよ。それにこうしていると、あなたとの……こ、子どもをあやしてるみたいで……」

 

それって夫婦ってことだよな

桂花とも、星ともいずれそうなるって言った

だからいずれはみんなとの子供ができる……のかもしれない

 

「おや、正騎殿何をお考えで?」

「な、なんだっていいだろ?」

「それは構いませぬ。ちなみに私は少なくても2人ほどは欲しいですな」

「やっぱり全部わかってるじゃないか……」

 

星には勝てない

オレがまぁ女の子に強く出れないっていうのもそうなんだけど星は何故か軍師みたいに先が読めてるから何を言っても勝てそうにない

 

「正騎殿がわかりやすいのです。とはいえこの話は世が平穏になってから、今はこの軍議に意識を向けましょう」

「そうだな。こんな夜更けに呼び出したんだ、何か起きたんだろう」

 

みんな定位置に揃ったところで華琳、春蘭、秋蘭の三人が入ってきた

華琳を見ても特に怒ってたりしてる訳じゃない

さて、一体何が起きてるやら

 

「全員揃ったようね。急に集まってもらったのは、他でもないわ。秋蘭」

「先ほど早馬で、徐州から州境を超える許可を受けに来た輩がいる」

「……州境を?」

「ええ。入りなさい」

「……は」

 

入ってきたのは綺麗な黒髪をした女の子

あの人は見たら忘れるわけがない

 

「見覚えのある者も多いでしょうけれど、一応、名乗ってもらいましょうか」

「我が名は関雲長。徐州を治める劉玄徳が一の家臣にして、その大業を支える者である」

 

そう。蜀の武神、オレたちの時代では軍神と呼ばれた青龍偃月刀の使い手、関羽さんだった

彼女がここに来た理由、それは華琳の領地を通って益州、蜀の地に行くために領地の通行許可を求めに来たという

 

これを許可するということは、劉備さんたち有力な将を率いた一大集団を敵国に送る手伝いをするということになる

関羽さんは、この無茶な願いを劉備さんのためにと

 

「だからこれから、その返答をしに劉備の元へ向かおうと思うのだけれど……。誰か、付いてきてくれる子はいるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜を徹しての行軍なのに、準備は早く、誰も文句を言わず、しかも全員付いてきた

理央も眠いと言ってたけどオレが行くからと付いてきた

ちなみに今は星の背中で少し仮眠中

劉備さんの本陣があるのは、州境ギリギリ

これ以上奥に張ると問題が起きそうになるってところぐらい

本陣に付いていくのは

春蘭、季衣、流琉、霞、燈と稟

それから一刀とオレと星に理央

 

「曹操さん!」

 

劉備さんは前と同じで、優しさの雰囲気を出していた

後ろに控えてるのは諸葛亮、それと同じ背丈に服装も似ている子は龐統か?

それから虎牢関で一緒に戦った張飛もいる

今ならあの子の強さも感じられる。背丈は小さいがその中にはとてつもない力があるな……

 

「久しいわね、劉備。連合軍の時以来かしら?」

「はい。あの時はお世話になりました」

「それで今度は私の領地を抜けたいなどと……また、随分と無茶を言ってきたものね」

「すみません。でも、皆が無事にこの場を生き延びるためには、これしかなかったので……」

「とはいえ、それを堂々と行うあなたの胆力は大したものだわ。……いいでしょう。私の領を通ることを許可しましょう」

 

簡単に即決したけど、劉備さんとその陣営を見れば長々と話す余裕はないくらいわかったからだけど、何か考えがある……のか?

華琳は移動の街道を指定、物資と糧食も手配するという

そこで兵は何人かと聞いたら

 

「十五万です」

 

と諸葛亮が答えた

兵は二万もいないくらいで後は、徐州の都の民だという

長坂橋の出来事がここに関連してる……と考えるべきかな

平原から付いてきた人もいる、それらを救うために……か

理想に囚われてる、オレにはそう見える

 

「通行料は……そうね。あなた、董卓と天子様たちを匿っているでしょう?彼女たちでいいわ」

 

なるほどな、そこできたか

関所を通るにしても、通行料は必要

それを今回は董卓さんと天子様たちでいいと言ってるんだ

劉備さんはいないという、けれどそれは嘘だってことがわかる

彼女の性格が出てるんだろう、誰もが嘘をついてるってわかる

 

「……まあいいわ。ならば、そういう事にしておきましょう。なら、そうね……他に代価として相応しいとなると…………関羽でいいわ」

「…………なんと」

「ふふっ。目の前にいるのだから、今度はいませんでは通させないわよ」

 

本命はこっちだったか

確かに関羽は曹操の元、顔良と文醜を討ち取ってそれで借りを返し関所を抜け劉備の元に戻るという逸話がある

いろいろな出来事が別の形で集まってるって感じだな

 

「そ、曹操さん……?」

「あなたの大切な十五万が無事に生き延びられるのよ?先ほどの条件はもちろん、ここから追撃に来るだろう袁紹と袁術もこちらで何とかしてあげましょう。その代価をたった一人の将の身柄であながえるというなら……安いものだと思わない?」

 

一人をとるか十五万をとるか……か

オレが王の立場なら関羽さんを渡すな

もちろん、交換条件を出したりするけど

たとえそれを拒まれたとしても、生きてさえいれば引き戻す方法なんていくらでもあるから

 

「ありがとうございます、曹操さん……でも、ごめんなさい」

 

けれど彼女は、渡さない選択を取った

誰一人欠けさせないための作戦、だから関羽さんもいなくなっては意味がないから

「朱里ちゃん、他の経路をもう一度調べてみて。袁紹さんか袁術さんの州境あたりで、抜けられそうな道はない?」

「……はい、もう一度候補を洗い直してみます!」

「劉備」

「……はい?」

「甘えるのもいい加減になさい!」

「……っ!」

「たった一人の将のために、全軍を犠牲にするですって?寝惚けた物言いも大概にすることね!」

 

いまのオレならわかる、これが如何に間違ってるかが

昔の、この世界に来たばかりなら同じ選択か似たようなことをしてると思う

けれど今は、桂花や星、理央に栄華と出会っていろいろと考え方が変わってきているんだ

全てを守るってことは、何かしらの代償を払わねばならない

 

「稟、理央。地形に詳しいあなたたちならわかるわよね?」

「もちろんです、まず安全な道などありません。それにたとえ袁紹、袁術を振り切ったとしても、そのあとの地略に拒まれて、そうですね……かの益州にたどり着く頃には、多くて一万あれば良いでしょう」

「稟様の言う通りですね。それに辿り着いた所であそこの太守がすんなりと渡してくれるとは思えません。そこから戦闘が始まるとして勝ち負けどっちにしてもさらに被害があることは間違いないでしょう」

 

十数万から一万、さらに戦闘の後の被害も考えれば……

これでは救うという意味は消える

つまりもう劉備さんに残された選択肢は関羽さんを渡す

ただそれだけしかない

もちろん、率いてる自身が代わりになるなんてのもダメだ

それこそ、付いてきた人たちが道を迷えることになる

 

「なら…………」

「なら?」

「徐州は……いりませんか?」

 

国を売る……か

確かに袁紹なんかに渡すより華琳に渡して少しにでも通行料代わりになればいいと思う

それに華琳なら治められるから

 

「ふむ……。なら、それはありがたく受け取っておくわ」

「だったら……」

「そうね。それで、以前兵を貸した時のぶんと利子くらいは帳消しにしてあげましょう」

「…………っ!」

「とはいえ、少し多いかしら?釣りは、袁紹と袁術を退けるので穴埋めとしましょうか」

 

領地もなくなった

これはもう詰みだな、関羽さんを渡すしかない

 

「だったら…………戦いましょう」

 

劉備さんが……戦いを選んだ?

いや、考えがあるからこそのことか

この人には諸葛亮、龐統がいる

何かを考えていてもおかしくはない

 

「私たちは、もう一度国を興します。平原でも、徐州でも出来なかったけど……今度こそ、みんなが穏やかに笑って暮らせる場所を作るために」

「それを益州で成すというのね。……そして、私と戦うつもり?」

「はい」

「何?そんな出来るかどうかも分からない事に賭けろと?」

「それなら大丈夫です。わたしには……みんながいますから。これが、今のわたしに払える全部です」

 

顔に迷いがない

なるほど、それが彼女の答えということか

オレとは違う、彼女なりの人を救う答え

 

「…………くっ……」

「華琳さま?」

「くくくくく………………あはははははははははっ!ああ可笑しい」

 

華琳がこんなに笑うなんて……

それにしてもこんな華琳初めて見るな

 

「こんなに笑ったのは久しぶりだわ。……まったく。劉の姓を持つ者にそう断言されては、漢の臣としてはその通りとしか答えようがないわね!」

「曹操さん……?」

「いいでしょう。貴女とその国の未来、確かにこの曹孟徳が買い取らせてもらうわ」

「ありがとうございます!曹操さん!」

 

こうして、話は終わり、オレたちは戻ることになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諸葛亮と龐統……劉備に仕込んできましたか」

「やっぱりあれは劉備さんの演技ってこと?」

「そうでしょう。あの人が戦おうなんて言うはずがありませんから」

「なぁ理央、理央から見てあの2人はどう思ってる?」

「諸葛亮と龐統ですか?あの2人は華琳さまの最大の障害になるでしょう。彼女たちがいなければ関羽や張飛と猛将がいても正騎さまに星さま、それに春蘭さまがいるのでどうとでもできましたが軍師が有能であれば最強の駒に近いですからね。……このような場所と時代でなければいいお友達になっていたかも知れません」

 

歳も近そうだし、お互い知識を高めあえれる友人だったかもしれないが、やっぱり戦乱の世ってのは嫌なものだな

……ん?星が劉備さんの陣営をただじっと見ている

 

「星、向こうが気になるのか?」

「いえ、ただ正騎殿がいなければ私は向こう側にいたのかもしれない……そう思っただけです」

 

星、趙子龍という存在は本来なら劉玄徳の元にいるべきだった

けれどこの世界では曹孟徳の元にいる

だからこそそう思ったのかもしれない

 

「その表情から正騎殿の知っている趙子龍はあちらにいたのでしょうな」

「えっ!?」

「薄々気がついていたのですよ、正騎殿が我々とは違う我々を知っていると。私の名を聞いた時に少し変化を見受けられましたしな」

「オレってそんなにわかりやすかったのか……?」

「いえ、あれは私のような手練であるから見えたものでしょう」

 

あの時は衝撃の連発だったしな

ありえないとか常識から離れたものが幾つもあったんだし

 

「それに今となっては正騎殿の隠し事は分かりやすいですからな。これも恋の力なのでしょう、ハッハッハッ」

「そうは思ってないでしょ……、それはそれとしてさっきの話はその通り。オレは恐らくこことは別の、みんなが男性としてあった世界から来たんだ。さらにそこからかなり未来から」

「なるほど、それならば確かに私たちの名を聞いて多少の反応があるのがわかりますな」

「だけど未来から来たからって全てがわかる訳じゃない。みんなが女の子であることやオレと一刀という存在がいる、もうこれだけでオレが知っている歴史じゃない」

 

ただ戦場と衝突する軍といった全ての条件が満たされる場合は警戒している

魏は大国ではあったが、戦死している者ももちろんたくさんいる

星はまず蜀ではなく魏にいるというイレギュラーであるから、この先の未来はその時点にならないと何も分からない

けれど他のみんなはオレが知っている未来通りになる可能性も0とは言えない

 

「そんなに難しく考えなさるな、貴方の隣には私がおります。我が槍は貴方が望む未来を導くために振るいましょう」

「星……。そうだな、オレが知っている歴史はもう当てにならない事の方が多い。ならオレたちがこの先の未来を、平和な世の中になるために切り開いていこう」

 

そのためには力が使えなければ……

父さんはどうやってこの力を扱ってきたんだ

今は答えは自分で見つけなければならない、けれどもこの戦乱の世だからゆっくりなんてしていられない

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