ネギま!~もうひとりのネギ~   作:gankon

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プロローグ

視界にいっぱいに広がる炎。

 

人々が恐怖し逃げ惑い、助けを求める声。

 

なんとか戦えない者だけでも逃がそうと魔法を放ち異形に抗う魔法使い達。

 

そして、それを嘲笑うかのように殺戮を繰り返す異形の悪魔達。

 

まさしく、そこは地獄だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

その日、ぼくは湖に遊びに行っていた。釣り糸を垂らしお父さんの歌を歌っていたが途中で従姉のネカネお姉ちゃんが来ることを思い出し慌てて片付けをして村へ向かう。村へ戻る道中、ふと空を見上げると黒い大きな雲が村の空を覆っていた。その雲を見ていると何だか分からないけど不安な気持ちになり、ネカネお姉ちゃんやスタンさんのいる村へ急ぎ丘を登る。丘を上りきり、そこで見たものは村を大量の悪魔が襲撃しているところだった。

 

不安を誘う黒い大きな雲の正体は悪魔の群れで村は炎に包まれていた。危ないと思ったがお姉ちゃん達を探すため、燃える村へ足を踏み入れる。

怖くて泣きそうになったがピンチになればお父さんが助けてくれると思い村の中を歩く。

村の中は無事な建物など無く良くて半壊、殆どの建物は崩れ落ちているか焼け落ちていた。

ナニかが焼ける匂いと鉄のような匂いで吐きそうになるが、我慢して震える足を進めた。

 

「ネカネおねちゃーん!スタンさーん!アーニャー!みんなー!どこにいるのー!」

 

声を上げ、お姉ちゃん達を探すが聞こえてくるのはパチパチと炎が燃える音と誰かの悲鳴。

そこら中に横たわる村人だったモノは頭や腕、足が無かったりで頭があっても恐怖に引きつっていたり、腹部に穴が空いていたりと体の一部が欠けているモノばかりであったがネカネお姉ちゃん達を探すことに夢中で周りの死体は目に入らなかった。

 

しばらく燃える村を探し回っていると悲鳴が聞こえなくなり炎の燃える音と建物の崩れる音しか聞こえなくなる。いまだ皆は見つからないが幸いにも悪魔とも遭遇することがなかったので更に歩き続ける。長時間歩き、疲れが溜まり休憩したくなったが頑張ろうと気合を入れ直し進むとクチャクチャと何かを咀嚼する音やときおりゴキンと何かを砕く音が聞こえた。その音がなる方向を見ると家の向こう側に炎で照らされ壁に映し出された影が動いていた。誰かいるかもしれないと思うが心のどこかで近づいてはいけないと警鐘が鳴り続ける。だがやっと見つけた動いている人影を無視する事がぼくにはできなかった。一応注意してこっそりその影に近づき物陰からそっと覗き込むとそこには。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーニャヲタベテイルイギョウノアクマガイタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

とっさに声が出そうになったが物陰に隠れ口に手を当て何とか叫び声を上げずに済んだ。その気配に気づいたのか悪魔はこちらに顔を向けてきたが気のせいだと思ったのか食事を再開する。物陰から悪魔を覗いたとき明るく元気だったアーニャの目を見開き濁った目の視線が重なってしまい、その目がずっと離れない。この場からすぐに離れなければと思ったが物陰に座りこんだまま立ち上がることができずガチガチと歯が鳴り、その音で気づかれるかもしれないと口に手を突っ込んだ。そのおかげで音が止んだがここから一歩も動く事ができない。恐怖でその場から動く事ができなくなったぼくは目を瞑り心の中で願った。

 

(たすけて!おとうさん!)

 

すると何かの影に炎の光が遮られたのか目を瞑っていたが視界が暗くなったのを感じ目を開けた。光を遮ったのはぼくの願ったお父さんではなく食事が終わったのだろう口から血を垂らした悪魔がいた。

 

「あ、あああああああ!!」

 

その姿を見たぼくは今まで力が入らなかったのが嘘かのように全力で逃げる。だが子供であるぼくの全力疾走なんて悪魔には遅すぎてすぐさま捕まった。

 

「ひぐっ・・・・ああああ」

 

捕まえたぼくを自分の顔に近づけ悪魔は口を開ける。その口からはむせ返るような血の匂いがする。だんだんと近づく口に全てを諦めた。

 

「ネギ!!」

 

「 魔法の射手・戒めの風矢!」

 

ぼくを呼ぶ声が聞こえた瞬間、ぼくを捕まえていた腕に魔法の射手が当たりぼくは地面に放り出された。

 

「っぐ、かはっ・・・ゴッホゴホ!」

 

地面に激突した衝撃でむせてしまいその場から動けなかったがすぐさま抱きかかえられた。

 

「大丈夫!?助けにきたわよ!」

 

「ネカネおねえちゃん・・・・それにスタンさん」

 

「ふん、怪我は無いようじゃな」

 

「間に合ってよかったわ。私、ネギが食べられそうになっているのを見て血の気が引いたもの。こんなところに一人で来て、とても心配したわ」

 

「・・・ごめんなさい」

 

涙を浮かべホッとした表情を浮かべるネカネお姉ちゃんにぼくは申し訳なくなり謝る。

 

「・・・・どうやら話している暇は無いみたいじゃ」

 

食事を邪魔された悪魔は未だ捕縛されたままだが明らかに怒気を放ちこちらを睨みつけていた。

 

「もう時間が無い。いいかネギ、よく聞け。ここに転移符がある。これを使いお前をメルディアナへ逃がす。生憎これは一人用でな、ワシらは一緒に行けん」

 

「だからネギ。これでお別れになると思うけど元気でね」

 

「ま、まって!みんないっしょに!」

 

ぼくは必死で二人に訴えるが、スタンさんは首を横に振り、ネカネお姉ちゃんは苦笑していた。

 

「・・・・そうできれば良かったんじゃがな。お前は何に変えても守る。じゃから安心せい。・・・・それにしても十中八九この村に恨みを持つ者の仕業じゃろうがこれほどの規模の召喚となると個人にできる範囲を超えておる。まさか本国の?」

 

「ほんごく?」

 

「ああ、気にするな。ただの独り言じゃ。それじゃあのネギ、達者でな」

 

「さようならネギ。あなたを愛しているわ」

 

「まっ」

 

ぼくが言い終わる前に転移符が発動された。最後に見たのは、にこやかに微笑むネカネお姉ちゃんとスタンさん、そして戒めの風矢の効果が切れ自由になった悪魔の爪が二人を引き裂く光景だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

転移後、ぼくはメルディアナ魔法学校に保護された。事態に気づいたおじいちゃんがすぐさま応援を送ったが村は壊滅状態で生存者はぼく以外にはいなかった。ぼくはピンチになればお父さんが助けてくれると信じていたが、結局お父さんは現れなかった。

 

あの事件でネカネお姉ちゃん、スタンさん、アーニャ、アーニャの両親と親しい人は殆ど死んでしまった。ぼくがお父さんに会いたいからとピンチを望んだからあんなことが起こったんだと一時期は部屋に篭もり、ずっと自分を責めていたがおじいちゃんにそのままではぼくを守った二人に顔向けできないぞと言われ少しづつ学校に行くようになった。

 

しかしどうしても二人の最後の光景が頭から離れず、悪夢にうなされていたがふとスタンさんの言葉を思い出した。ほんごくがどうのと言っていたが何のことだろうと調べ、ほんごくとは魔法世界にあるメガロメセンブリアのことだと知った。だがそれとどういう関係があるのか分からず、襲撃の日に偶然村を出ていた人たちに話を聞いて回るとやはり多くの事を話してくれなかったがみんなが酔っている時に再度話を聞きに行くと気になる事が聞けた。

 

曰くお父さんはぼくの想像していた性格とは違い、いろいろやんちゃだったらしくメガロメセンブリアの議員には恨まれているようであの事件の犯人はメガロメセンブリア元老院にいるのではないかと。

 

その話を聞いたぼくは喜んだ。必ず犯人を見つけ出し復讐するのだと決心していたのだから。今まで手がかりが無かったのだが何を調べるか方向が決まる。

 

しかし未だ魔法学校を卒業していない上に未熟な魔法使いのぼくではダメだ。今のぼくは力も知識も足りない。なのでまずは魔法の修行と勉強に励んだ。生きていくためにはお金が必要で子供のぼくが働くことはなかなかできない。それを理解していたため、戦闘用の魔法だけではなく変身魔法も覚えた。ぼくはあの時の光景が忘れられず火の魔法を重点的に習得していった。ときおりお父さんの仲間だったタカミチが様子を見に来てくれたのでついでに咸卦法を教えてもらった。タカミチはぼくの修行への取り組み方に危機感を覚えたのか心配してくれたがぼくは大丈夫だと言って修行を止めることは無かった。流石に究極技法と言われるだけあって修得するのに時間がかかったが発動自体はできるようになる。

 

あの事件から数年経ち、僕はメルディアナ魔法学校で主席になり卒業の時期が近づいた。だが最終試験を受けるつもりは無い。何故なら最終課題でいつまで拘束されるか分からないし僕は卒業前に魔法世界へ密入国し剣闘士として腕を磨くつもりだったからだ。これならば修行とお金稼ぎの両方ができるし一石二鳥だ。そして密入国を実行し魔法世界へ足を踏み入れた。

 

魔法世界に来て更に数年経った。剣闘士になり何度も死にそうになったり騙されて色々痛い目にもあったが着実に実力を上げていった。どうやら俺を探しているようだがネギとしてではなくで変身魔法で髪と目の色を変え灰色に変え、名前もネギ・スプリングフィールドではなくルキと名乗るようにしている。なのでそう簡単には見つけられないだろう。

今ではほぼ無敗で有名になり火の魔法ばかり使い焼き尽くすことからか『灼焔』と呼ばれるようになった。表や裏の権力者との繋がりができたし沢山の賞金が溜まったので、それを使い情報を集めやっとあの襲撃に関わった者達を見つけ出すことができた。その情報を得たとき俺の顔はきっと笑顔だっただろう。その情報を持ってきた情報屋の顔は引きつっていたが。

 

それから俺はすぐさま行動に移した。標的以外を襲うつもりは無いがわざわざ手加減するつもりは無い。標的は十分苦しめ、気が済んだら焼き殺していった。どうやら襲撃に関わっていた者はメガロメセンブリア元老員の中三分の一にのぼった。その三分の一の元老院は全て殺したせいでメガロメセンブリアは多大なダメージを受け大荒れになったが気にもしなかった。襲撃に関わった者全てを殺したがその過程で過去の大戦について情報を得ることができた。

 

どうやら俺の母はオスティアの王族のようで公式には処刑されているらしいが、生まれた時期と比べると処刑執行後も生きていたのだろう。母が処刑された理由は責任の押し付けのようであったが怒りを覚えるかと思ったらそうでもなかった。やはり会った事もない上に直接聞いたわけでもないからかそこまで感情を揺さぶられなかった。俺自身が親を欲する歳でもなくなったからかもしれないが。そして過去の大戦の裏には『完全なる世界』という組織が関わっているようであった。詳しい目的は分からなかったがどうも魔法世界を救うのが目的らしい。そんな組織が戦争を裏で操るなどなんの意味があるのだろう。

 

メガロメセンブリアに壊滅的なダメージを与えた俺は当然賞金首になっていた。賞金は1000万ドルでかの『闇の福音』を大きく上回っていた。正直、もう殺したかった相手を殺し尽くし目標を失い虚しくなっていたが、死ぬつもりは無いので襲いかかってくる者は全て返りちにした。そんななかルキの名は悪の魔法使いとして有名になっていった。

 

いつも通り賞金稼ぎを叩き潰していた時、白い少年が声をかけてきた。

 

「やあ、初めまして。僕の名はフェイト。君が『灼焔』のルキで間違いないかい?」

 

「・・・・確かににそうだけどいったい何の用で?」

 

「君をスカウトしに来たんだよ。僕ら『完全なる世界』へ」

 

「っ!・・・・へぇ。魔法世界を救おうなんて目標を持つ貴方達が手駒であるMMを襲撃した賞金首の俺を?」

 

「よく知ってるね。そうさ、僕ら『完全なる世界』の目的は魔法世界の救済。でもね自分たちが正義なんて思ってはいないよ。見る人によっては悪なのだからね。それにMM襲撃に関しては君が仲間になってくれればお釣りが出るくらいだよ。話だけでも聞いてくれないかい?」

 

「まぁ、やることもないし話を聞こう」

 

「助かるよ。なら魔法世界の現状でも話そうか」

 

それから『完全なる世界』の詳しい目的、魔法世界の真実、メンバーや計画について話、彼らに力を貸すことにした。

今更魔法世界に思うところも無いが話を聞く限り魔法世界はもう3、4年しかもたないようでかなり切羽詰まった現状のようだ。話を聞いた後、彼らの本拠地に行きメンバーとの自己紹介をした。仕事の合間にフェイト達に魔法を教わり火以外の魔法も使えるようになったので戦闘の幅も増える。

まずは『黄昏の姫御子』を奪取する為、今まで集めた情報を見せてもらった。そのなかで『赤き翼』とともにいたという目撃情報があったのでもしやと思い麻帆良を調べてみるとタカミチの元に神楽坂明日菜という女性がいた。彼女の写真を見たときネカネ姉さんに似ていてとても驚くが遠い親戚のようなものなので納得はした。

斥候に軽い魔法を使わせてみるとやはり魔法を打ち消したので彼女が『黄昏の姫御子』で間違いないだろう。

 

その後オスティアと麻帆良間のゲートを起動させフェイト達、アーウェルンクスシリーズや旧世界の協力者である月詠さんと共に彼女が勤める麻帆良学園を襲撃。殺してはならないという制限があったため全力を出すことができなかったが咸卦法をマスターしていたので体術と剣術、比較的殺傷能力の低い魔法を使い『黄昏の姫御子』奪取に成功。

一部のアーウェルンクスは別行動を取っていたが特に問題は無かった。

変身魔法で色を変えフードをかぶった俺にタカミチは驚いていたようだが俺の正体に気づいたわけではなく同じ咸卦法を使うことにだったようだ。

麻帆良にある結界は創造主の使徒であるアーウェルンクスたちに影響は無いようでこちらは人数こそ少ないが圧倒的な戦力を持って蹂躙し、最大の懸念事項である『闇の福音』も麻帆良の結界により本来の力を出せずフェイトにより無力化された。

 

そして本拠地に戻り、儀式の準備に取り掛かる。儀式の準備はアーウェルンクス達がするので神楽坂明日菜との会話で時間を潰そうと考え彼女の部屋に向かう。扉を開けた瞬間殴り掛かられたが気配で分かっていたので受け止めるのは簡単だったが展開していた多重障壁が全て砕かれたのには驚いた。やはり完全魔法無効化能力は強力だと再認識した。

俺は『黄昏の姫御子』奪取の際、囮として麻帆良の戦力を叩いていたため直接見ることが無かったので、顔を合わせるとやはり彼女はネカネ姉さんに似ていた。そんな彼女を利用することに今更ながら罪悪感を覚えたがもう止まることはできない。彼女はフェイトによって封じられた記憶を取り戻しているようで父達の事を色々聞くことができた。初めは自分を攫った者達の仲間ということで警戒していたようだが俺の正体を明かしたら警戒を解いたがそれからは遠慮なく説教をされてしまう。どうやらタカミチから俺の話を聞いていたみたいで行方不明になった恩師の息子が心配だと言っていたようだ。タカミチが心配してくれていたのは正直嬉しいがもう終わったことと言ったらまた怒られた。彼女も話に聞いていただけの俺の事を心配してくれていたみたいで少々過激だが優しい人のようだ。

 

彼女と話し時間を潰しているとフェイトのパートナーに呼ばれた。どうやら『完全なる世界』の主が現れたようだ。

黒いローブを纏ったいかにもラスボスな創物主。少々胡散臭い格好だと思ったがそのフードの奥を覗いた瞬間心臓が止まるかと思った。その顔は映像で見たことのある父、ナギ・スプリングフィールドであったからだ。そのことを問うとナギの身体を寄り代にしているらしい。

かなり混乱してしまったが一つだけ理解できた。父は助けに来なかったのではなく来れなかったのだと。彼は麻帆良にある神木・蟠桃の地下に封印されていたようで別行動していたアーウェルンクス達は彼の開放が目的だったようだ。子供の頃は助けに来てくれなかった父を憎んでいたが月日が経つにつれ父が死んでいると理解できたので思うところは無かったが、封印されていたのならば仕方がない。それにもうすぐ『完全なる世界』に送られ全てが終わる。『黄昏の姫御子』は球状の鳥籠みたいな物に入れ儀式はまもなく完成する。魔法世界各国の軍隊がこちらに向かっているが間に合いはしない。

 

そして魔法世界は光に包まれ全ての生命は『完全なる世界』へ移った。

 

俺は光に包まれながら思う、復讐を終え怒りは収まったが心は虚しく意味は無かった。せめて『完全なる世界』では違う道を歩みたいと。

 

意識は遠のき浮遊感が襲うがそれに逆らうことなく身を委ねた。

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