ネギま!~もうひとりのネギ~   作:gankon

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2話 麻帆良についてからの出来事

 世界樹前に現れた魔法使い、ルキについて対応は決まり周知された。その内容は『闇の福音』、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの元に身を寄せ、警備員兼ネギ・スプリングフィールドの補佐という仕事が割り振られるという事。

 

 その周知を聞き、やはり反発する者は多かった。正体不明、目的不明という事に加え、いつの間にか結界を抜かれ侵入を許してしまった事もあり学園を守る者としてはあからさまに怪しい人物を身の内に入れるという行為は感情的に受け入れ難かったからだ。

 

 しかし学園長の鶴の一言で決定された。証拠はないが信用できるとの言葉に呆れてしまう者もいたが、学園で信頼の厚いタカミチの言葉やエヴァンジェリンがその実力を認めているという話を聞くと反対の言葉も小さくなっていった。

 

 確かに学園の戦力が増えるのは歓迎すべきことであったし、ルキが警備員に参加したことにより警備を担当する魔法使い達の負担が減った事もルキを容認することに繋がった。彼の実力は学園の魔法使い達の中でも頭抜けていたために他の魔法使いを組んで戦うよりも一人で戦うことが多かったが、ときおり応援に入り火力の足りない魔法先生や未熟な魔法生徒の補佐を進んで行ったため徐々に学園の魔法使い達にも受け入れられていった。基本的に魔法の射手で弾幕を張り敵の接近を許さず遠距離から仕留めていたため殆どの魔法使いはルキのことを典型的な後衛型の魔法使いと思っていたがタカミチとエヴァンジェリンはそうとは思わなかった。彼らはルキが短時間ではあるが戦エヴァとの戦闘で虚空瞬動にエヴァンジェリンが避けることもできずガードの上から吹き飛ばされたという事から格闘戦ができないはずはないと判断している。ただ、実力を隠すというより魔法だけで対処できるため態々格闘戦をしないのだろう。

 

 魔法生徒の中には年の近い実力者のルキに魔法を教わりに来る者もいて、同じ火の魔法を使うからか佐倉愛衣が良く訪ねてくる。それに釣られてか高音・D・グッドマンや夏目萠とも知り合いになる。初めのうちはルキを警戒していたが魔法の勉強や警備で組んだりして人となりを理解したのか突っかかる事も減った。自分達とさほど変わらない年齢でありながらすでに立派な魔法使い(マギステル・マギ)である魔法先生達を凌駕する実力を待っていることに多少の嫉妬を感じないではないが年上であるルキに一定の敬意をもって接していた。

 

 

side 【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル】

 

 

 ルキを住ませ初めた頃、私はルキの顔がナギに似ていることからルキ個人というよりナギに似た誰かを近くに置いておきたいという気持ちが強かったが一緒に生活しているとルキ個人に対する興味の割合が増えた。

 

 結界により弱体化しているとは言え別荘の中ではある程度の力は戻ってくる。吸血鬼の真祖である私が全力ではないとはいえ経験と技術を用いて戦い、容易く敗北した。火力もだがルキの障壁は強固で神殿クラスの硬さのうえ十枚以上もあるので低級、中級の魔法ではダメージを与えることはできないだろう。バカげた防御力だ。実力を測るため挨拶がわりに放った魔法の射手が消滅したように見えたのが気になるが見間違いだろう。後に放った闇の吹雪は障壁に当たっていたのだから。魔力量や魔法の才能もずば抜けて高いが恐らく格闘戦も得意だろう。

 

 これほどの実力者が今まで何をしていたのか気になるがルキという名は聞いたことがない。どんな過去があるのか気になるが聞いてもはぐらかされる。なんとなくルキは私と似ているような気がする。今まで見てきた正義の魔法使いというよりは悪に近い何かを感じる。

 

 警備員の仕事がない時は読書をしていたり別荘で身体を動かしたり茶々丸の手伝いをしたりするが、ときおり何か過去の行動を後悔しているのか考え込んでいるようだった。

 

「・・・・ふぅ」

 

「辛気臭いタメ息なんぞ吐いてどうした?」

 

「エヴァ」

 

「何かあるのか?」

 

「いや、何でもない」

 

「ならばそのタメ息を止めるんだな。何か悩んでますとでも言わんばかりだぞ」

 

「ああ、気をつけるよ」

 

「・・・・まぁ、何か言いたくなったら言うといい」

 

「ありがとう。そのときは頼らせてもらう」

 

 というやり取りがあったがルキから何か話してくることは無かった。そのことに少し悔しいというか私を頼れとも思うがルキ自身が話したくないなら無理に聞いても話はしないだろう。アイツもあれでなかなか頑固だからな。アイツから話してくるのを待ってやるとしよう。まぁ、余りにも焦らされると強制的にでも聞かせてもらうがな。

 

 

side end

 

 

 ルキの朝は意外と早い。年齢的には若いのだが地形把握のため朝からランニングをしていると以外に楽しく、日課になってしまいエヴァンジェリンからはジジくさいと言われてしまった。しかしその早朝ランニングで意外な人物と遭遇する。それは早朝から新聞配達のバイトをしていた神楽坂明日菜である。

 

「アス、ナ?」

 

「・・・・アンタ、誰よ。なんで私の名前を知ってんの」

 

「ああ、すまない。俺はルキ。君の事はタカミチから聞いていたんだ」

 

「え、高畑先生から!?ど、どんなこと言ってたの!?」

 

「えぇと、明るく元気で妹みたいな子と言っていた」

 

「い、妹かぁ。・・・・はぁ」

 

「ん、その、なんだ・・・・どんまい?」

 

「うっさい!・・・・なんだか朝からやる気がゴッソリ削がれたわ」

 

「それは悪かった」

 

「んー、まあアンタが悪いわけじゃないし気にしないでいいわよ」

 

「そうか」

 

「ところでルキ?だっけ。高畑先生とはどんな関係?」

 

「まぁ、同僚であり友人、かな?」

 

「なんで疑問形?てか高畑先生と同僚ってことはルキも教師なの?見た目は私より上だとは思うけどそんなに離れてないように見えるんだけど」

 

「教師という訳じゃない。タカミチって広域指導員やってるだろ?それの同僚なんだよ」

 

 俺の仕事は警備員と新任教師の補佐なのだが、その新任教師が来るまで昼間は暇だろうと広域指導員の仕事も追加された。まぁ、その分の給料も追加で貰っているから文句はない。

 

「あー、そういうことね。ん?もしかして最近名前を聞くようになった灰色の悪魔(グレイデビル)ってルキの事かしら?」

 

「なんだそのイタイ呼び名」

 

「なんか格闘団体の起こしていた騒動を止めに入り総勢30人以上居た男達を完膚無きまでに叩き潰した指導員がいるって。それを見ていた人達がその髪色から灰色の悪魔(グレイデビル)って呼びだしたらしいよ」

 

「安直だな。まぁいいか。恐らくそれは俺のことだろうな。その時の事は覚えている」

 

「へー、そうなんだ。もしかしたらウチのクラスの娘が勝負を挑んで来るかもね」

 

「・・・・何?どういうこと?」

 

「ウチのクラスに古菲と長瀬楓っていう娘がいてね。二人共強者と戦うのが好きなのよ」

 

「変わった中学生だな」

 

「まーね。だから気をつけなさいよ?」

 

「留意しとく」

 

「そう?それじゃ私はバイトの途中だからこれで」

 

「ああ、引き止めて悪かった」

 

「気にしないでいいわよ。なんだかんだで私からも話を振っていたんだし」

 

「そうか、ならバイト頑張れよ」

 

「ええ、またね」

 

「ああ、また」

 

 こちらを向きながら手を振り走っていく明日菜を見送り、自分も走り出す。正直、名前を呼んだ瞬間、しくじったと思ったが最後の時、自分の正体を話すことができた彼女に再び会えたことが嬉しかった。この麻帆良学園に彼女がいることだけは分かっていたが前回、彼女を自らの目的のために利用したことに罪悪感を感じ、自分が会いたいのか会いたくないのか分からなかったが会えて嬉しかったという事はやはり会いたかったのだろう。彼女はまたねと言って去っていったが“またね”という事は少なくとも嫌われてはいないのだろうと思う。そもそも俺の正体を知るアスナではなく初対面の明日菜なのだから別人と言いえるが、やはり彼女の性格はそこまで変わっていないと感じた。

 

 

 

 あるとき広域指導員の仕事で見回りをしているとベンチに座る一人の少女が目に入った。彼女は先日あった麻帆良襲撃の際、運悪く巻き込まれてしまった一般生徒でその時の縁で俺が保護している。

 

「どうした千雨」

 

「ん?あールキか」

 

 彼女、長谷川千雨はどうやら認識阻害の結界が効かない、もしくは効きづらいようで麻帆良の非常識を知覚し悩んでいた。そんな時、その体質のせいか人払いの結界を素通りし異形の者達との戦場に迷い込んできた。その体質以外は一般人と変わりない彼女は異形の者に為すすべなくその命を奪われそうになっていたがその区域担当の魔法使いは優秀とは言い難く、自身の眼前に広がる者たちの相手をするのに手一杯で彼女には気づいていなかった。だが自らの担当する区域の異形を駆逐し終わったルキが援護に向かい、襲われている千雨に気づきすぐさま救出した。

 

 迎撃を終え、こちら側に踏み込んでしまった彼女の記憶を消そうとしたとき、彼女は先程までの異形の者に対する恐怖と自分の記憶を弄られることへの恐怖で震え近くにいたルキの服を掴む。彼とて魔法使いなのだから彼らの同類なのだろうが、自分を救ってくれた彼に助けを求めた。すると彼は自分が面倒を見るから記憶は消さなくていいと周りに言った。そのことに対し反対する者もいたが我々がしっかりとした対策を取れていればこのような事は起こらなかった、それに怯える彼女に無理強いするのは果たして正義か?と彼は問うた。今度こそ反論は出ず(無くなった訳ではないだろう)話し合いは終了。千雨は解放された。

 

 初めは魔法という非常識に抵抗があったが慣れてしまえばこれも常識、と思えるようになり、今までおかしいと思っていた事も魔法があるからありだなと半ば諦めて受け入れることができるようになり精神的苦痛は和らいだ。ルキも魔法使いという非常識のカテゴリーに入るが、今では自分もその非常識に当てはまるので気にしても仕方がない。

 

 千雨の先生役はルキが努めており、初めは敬語を使っていたが楽にしていいとルキが言うと素で話すようになった。千雨自身、自分を助けてくれたルキを信頼しており愚痴を聞いてくれる相手でもあるのでときおりルキの巡回ルートで待っていたりする。周りからそれをどう思われるかは気づいていない。

 

「いや、うちのクラス奴らがまた騒動起こしやがってな」

 

「千雨のクラスは相変わらず話題に困らないな」

 

「まぁな。でも前ほどイライラしたりしねぇから楽だ」

 

「千雨もこちら側に来たから大抵のことは許容できるようになったんだろうな」

 

「だな。自分が魔法使いっつう非常識になっちまったからどうやってるのか分かっちまうしな」

 

「・・・・後悔してないか?」

 

「んー、いやまぁ、あの時は記憶を消されるなんて嫌だったからな。それに結果的にこちら側に居たほうがストレス溜まりにくいしルキも愚痴を聞いてくれるからな。だから良かったと思ってるよ」

 

「そうか。なら良かった」

 

「おう、ルキが気に病む必要はないぞ」

 

「ああ」

 

「さてと、私はそろそろ寮に戻る」

 

「そうか、気をつけてな」

 

「はいよ、またな」

 

 ルキは千雨と別れ巡回を続ける。麻帆良は悪質な問題が起こることはほぼないが、その代わり普通ではありえない問題が発生する。ロボ研の実験機が暴走しただのストリートファイトで通行できないだの。それを解決するためルキは奔走する事となる。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 麻帆良に来て数ヵ月経ち、ついに新任の教師が来ることになった。新任の教師といっても仮の教師で学園長の出す課題を合格しなければ正式な教師になれないらしい。10歳で教師などその子には同情するが俺も補佐するから頑張れと思っていた。その教師の名を聞くまでは。

 

 その名はネギ・スプリングフィールド。かつての大戦で活躍した英雄で『紅き翼』(アラルブラ)千の呪文の男(サウザンドマスター)、ナギ・スプリングフィールドの息子である。学園長からそれを聞いたとき大物だなと他人事のように言ったが、冷や汗かきまくりであった。俺か!と突っ込みたかったがそれを言うわけにはいかない。

 

 まさか自分の補佐をするハメになろうとは思わなかった。教師をするというのは魔法学校の最終試験の内容だろう。俺はそんなこと聞いた覚えはない。ならば自分が行方をくらました後にあった話なのだろう。しかしここが過去、もしくはそれに準ずる平行世界ならこの世界の俺であるネギは最終試験を受けず、魔法世界に行くかもしれない。そう思いネギ・スプリングフィールドについて調べてみると自分の境遇との違いがあった。まず故郷を襲撃されたのは同じようだが死者はおらず、けが人と永久石化による被害者のみ。ネカネ姉さん、アーニャは無事でスタンさんは石化しているようだ。このことに俺は安堵した。石化している人がいるとはいえ、もう二度と会うことのできない大切な人達が生きているのだから。石化についてはフェイトに教わり研究し俺の魔法で解除することは可能なので治療に行こうと思う。そして肝心のネギ・スプリングフィールドだが勉強にのめり込み主席を取ったのは同じだが何があったのか立派な魔法使い(マギステル・マギ)を目指しているようだった。そのことに何らかの原因があるのだろうとは思ったがこれで分かったことがある。ここはただの過去ではなく並行世界の過去なのだろう。まぁ、過去というのは俺の主観から見た場合だが。

 

 しかし魔法学校の最終試験通達のかなり前に新任教師の話があったがこれはやはり元々から仕組まれていたのだろう。でなければこんな早い段階から補佐役など用意するはずがない。まぁそのこと自体はこちらに害がなければどうでもいいのだが、並行世界だと認識したからかもしくは今までの人生の半分をルキとして生きてきたからだろうか。この世界のネギに対し自分の過去ではなく別人だと感じてしまうのは。まだ直接会ったことも無いからどう対応するか決めてはいないが。

 

 彼が俺と同じ道を歩む可能性は少なくなったとはいえゼロではない。ならば今の補佐役という立場を利用し俺のようにならないよう指導しよう。どうやら学園の魔法使い達もネギに期待しているようだし。エヴァは何か企んでいるようだがそれは今度聞いてみるとしよう。

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