今日、ネギ・スプリングフィールドが麻帆良に来る。
学園長が朝から担当するクラスの生徒二人に迎えに行かせている。ルキは担当クラスの資料を確認しつつ職員室で待機していていたが、タカミチも迎えに行くようなので自分も行こうと腰を上げる。
何かあるわけでは無いが並行世界とはいえ自分と同一の人物をを迎えに行くというのは妙な気分だった。少し低めのテンションで待ち合わせ場所の校門前まで向かう。
「はぁ・・・」
「ははは、そんなに気負わなくてもいいよ。彼は英雄の息子とはいえ今はまだ見習い魔法使いだからね」
「そういうことではないんだけどね。まぁ、気にしないでくれ」
「そうかい?そう言うなら気にしないでおくよ」
タカミチとは麻帆良学園に在籍して以来、エヴァの別荘で修行する関係で何度も顔を合わせ、色々話したり修行の相手をしていく内によく話すようになった。並行世界の別人ではあるが友人と言ってくれた彼を裏切り、麻帆良を襲撃したことのある身としては少し後ろめたい気持ちもあり、積極的に彼の修行を手伝っていたのが功を奏したのだろう。
タカミチもなかなか負けず嫌いなようで咸卦法を使い、本気ではないだろうが強力な攻撃を放ってくる。攻守共に上がっているのでルキも砲台型の戦い方のままではやりづらく、格闘戦も交えて魔法剣士スタイルで戦った。何があるか分からないので自分の手札はできるだけ伏せておきたかったがタカミチも本気を出してきたため、それに合わせてルキも少し本気を出した。ルキも負けず嫌いという事なのだろう。
タカミチとルキが世間話をしながら校門に向かうと、そこにはすでにネギと出迎えの生徒、アスナと黒髪の女の子がいた。黒髪の女の子は学園長の孫でアスナのルームメイトで名前は近衛木乃香。
目の前には不可解な光景が広がっている。アスナは何故かネギをアイアンクローしている。事前に生徒達の成績を見てみたがアスナは頭はあまり良いとは言えない代わりに身体能力は高いようだ。しかし“あの時”話した彼女はそんなに頭は悪くは無かったはずでなのが、記憶の封印が関係しているのか少々アホっぽい印象を受ける。それはいいとして今現在アイアンクローを受けているネギを助けなければならない。あれを見ているとルキ自身こめかみが痛くなる。
「アスナ、そろそろ離してやれ」
後ろから声をかけるとビクッと肩跳ね上げルキ達の方へ振り向く。アスナはルキを見て驚き、タカミチを見て顔を引きつらせ、ネギを落とす。アスナの顔付近の高さから放り出されたネギは尻餅をつき、痛そうにし涙目になっていた。
「高畑先生!それにルキも!なんでここに!?」
「ははは、暴力はいけないよアスナ君。あと、なんでかと聞かれれば僕らはネギ君を迎えに来たんだ」
「そうゆうこと。しかしいきなり新任教師を吊るし上げるとは・・・・実はアスナ、不良だったのか?」
「違うわよ!!ていうか教師ってこのガキ、じゃなかったこのお子ちゃまなの!?」
「言い直してもあまり変わらないじゃないか?」
「ルキ君もそんなにいじらないでやってくれ」
「そうだな。話が進まないし」
「君が言ったんだろう?」
「まぁね。それよりそちらの新任教師を紹介しなくていいのか?」
「おっと、そうだった。アスナ君、近衛君こちらが今日から僕に変わって君たちのクラスを担当する“ネギ先生”だ」
そういったタカミチは尻餅着いたダメージから立ち直っていたネギを紹介する。しかし紹介されたネギはルキを見て呆然としている。まるで探し求めていたものを見つけたかのように。
「と・・・うさん?」
「どうしたんだいネギ君?」
「あ、ううん。何でもないよタカミチ」
ネギは頭を振り先ほどの考えを頭から追い出す。ナギに似た容姿を持つルキを一瞬、父と見間違えたが、彼の父は赤髪でこの目の前の青年はくすんだ灰色の髪をしている。顔の作りはよく似ている気がするが記憶の中の父よりも若いし、本人であればタカミチが何か教えてくれるはずなのでよく似た別人だろうと判断した。
「えー、コホン!この度、この学校で英語の教師をやることになりましたネギ・スプリングフィールドです」
「えぇー!!なんでこんなガキンチョが高畑先生の代わりなんですか!」
「アスナ、アスナ。口が悪いえ」
「ははは、心配しなくても彼は頭が良いから大丈夫だよ」
「タカミチ、そういうことじゃないと思うんだが」
「ん?」
「はぁ、まぁいいか。それと俺はネギ先生の補佐として仕事があるからこれからよろしく」
「ルキも!?まぁルキなら分かるけど・・・って
「へぇー、注意される心当たりがあるのかぁ。さてと、どうしようか?知り合いだからって手加減しないからな」
笑顔を浮かべほんの少し威圧するルキを見たアスナは冷や汗を流し両手をばたつかせ焦る。実際はただの冗談でからかってるだけでだが。
「あわわわ」
ルキとアスナのやり取りを見て疑問に思ったのか木乃香が質問する。
「えーと、アスナとルキ先生は知り合いなん?」
「ん?ああ、俺が朝に散歩していたら新聞配達しているアスナに会ってな。タカミチから聞いていたから声をかけてみたんだ」
「そうそう、そうだったわね」
「そうなんやー。うちは近衛木乃香や。これからよろしくなー、ルキ先生」
「ああ、よろしく。近衛」
「あの!ルキさん。僕も先生として頑張りますのでよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく。ネギ先生」
ネギとルキの挨拶も終え、学園長室に向かう。その途中、アスナはやはり不満そうではあったがルキが怖いのか特に文句を口に出したりはしなかった。ルキはネギが背負う杖をみて魔法の隠匿する気があるのかと思ったが、自分自身そこまで魔法バレについては重要視していないので特にツッコミは入れなかったがネギは『
学園長室に着き、中にはいると早速学園長へアスナが文句を言うがはぐらかされる。そのことでむくれていたが木乃香になだめられていた。
「ようこそネギ君。修行のために日本で教師とは大変じゃのう。しかしチャンスは一度きり。頑張るのじゃぞ」
修行内容が言い渡される数ヶ月も前に新任教師の話が出ていたためよく言うなとルキは思っていたが、別に文句があるわけだはない。妙なことを口走る厄介で面倒な老人だとは今までの経験から判断しているが。
「はい!よろしくお願いします」
アスナや木乃香は修行の言葉に疑問を浮かべているが質問はしてこなかった。
「うむ、3月までは教育実習となる。あとすでに自己紹介はしたかもしれんがネギ君の補佐をするルキ君じゃ」
学園長は一歩後ろに居たルキを紹介する。
「さっき自己紹介はしたが改めて、ルキ・フリューリンクだ。ルキでいい」
ルキという名も偽名であるのでファミリーネームが無い。それでは少々面倒事があるかもしれないと学園長に言われとりあえずつけた。候補には近衛やらマクダウェルやらが上がったが誰が何を推したかは謎である。ルキは特にファミリーネームを名乗るつもりは無く十年近くルキとだけ呼ばれていたので何でもいいと適当にフリューリンクを選んだ。その時、特にキティな人に散々文句を言われたがスルーした。
「はい!」
「フォフォフォ、それでこのか、アスナちゃん。ネギ君を泊めてやってくれんかの?」
「い、嫌ですよ!」
「うちはええよ」
「すまんの」
「もう!このかまで!」
「別にええやん」
「ルキのところじゃダメなんですか!」
それを聞いた学園長、タカミチ、ルキは顔を見合わせ意見を共にした。
「「「それはダメだ」」」
「何でですか」
即答され少しは勢いが引いたのか幾らか落ち着いた声で聞く。
「ルキ君のところはすでに三人で住んでおるからのう」
「それに同居人がネギ君に何をするか分かったもんじゃないからね」
「嬉々として様々な嫌がらせをしそうだな」
「ど、どんな奴よそいつ。というかそんなのと一緒に住んでてルキは大丈夫なの?」
なんだかんだ文句を言っていても人の心配できるアスナにルキやタカミチは笑顔になり、学園長はいつもどうりフォフォフォと笑う。ネギは嫌な人だと思っていたが少し認識を改める。
「ああ、数ヶ月も一緒に暮らしてれば慣れる。それにそこまで悪い奴じゃない」
「確かにのう」
「そうだね」
「まぁそういうわけで俺のところは無理だから、アスナ達に頼むしかないんだ。ネギ君を泊めてやってくれないか?」
「僕からもお願いするよ」
自分のことの様に頼んでくるルキとタカミチにアスナは折れる。
「ルキ、それに高畑先生まで・・・はぁ、分かりましたよ」
「そうかい、いやぁ助かるよ」
「悪いなアスナ、それに近衛も。何かあったら言ってくれ。力になる」
実際、今の
ルキが考え事をいている間に話は進み、アスナと木乃香はすでに教室に戻っていた。それに気づきネギを連れ教室へ向かう。ネギはタカミチからクラス名簿を渡されていた様でそれを読みながら歩いている。
教室へ向かう道中、ルキとネギに気がついた他のクラスの女子生徒達の歓声やカッコイイ、可愛い等二人に関する声が聞こえて騒がしかったがルキはさして気にせず、ネギはクラスメイトの名前と顔を覚えるのに集中していて気付かなかった。
担当の教室が近づき、廊下から教室に視線を移すとエヴァと視線が合う。彼女はかなり驚き、座っていた机から滑り落ちた。それを見たクラスメイト達から笑われエヴァは怒りと羞恥で顔を赤くする。
ネギは教室の前に着き、年上の女の子達が沢山いる様子に尻込みしていたが、深呼吸して教室の扉を開け足を踏み入れる。すると黒板消しが頭上から落ちてきた。本来はそのまま頭に当たり、真っ白に染め上げるのだがネギは常時障壁を展開していたためネギの頭に当たらず頭上で停止した。それを見た生徒たちは驚き、疑問を持つ。幸いすぐに障壁を解除したため一部を除き特に騒ぎにはならなかった。しかしチョークの粉を食らったネギは次々とトラップに引っかかり教卓まで転がりぶつかる。状況が分からず涙目になっているネギに生徒たちはすぐさま駆け寄り謝る。そこにルキも近づき、ハンカチで汚れを拭き取り、生徒達を席に着かせ自己紹介するようネギを促す。
「え、えと。初めまして!今日から三学期の間まで皆さんに英語を教えることになりましたネギ・スプリングフィールドです。よろしくお願いします!」
「それとネギ先生の補佐をすることになったルキ・フリューリンクだ。何か困ったことがあったらネギ先生か俺に相談してくれ」
ネギとルキの自己紹介を聞いた生徒たちは何かを溜めるよう静かになり、次の展開が読めたルキは自分の耳を押さえる。ルキが耳を抑えた瞬間生徒達は一斉に歓声をあげた。その歓声をもろに聞いてしまったネギは目を回しルキは耳を抑えたにも関わらず響いた歓声に驚いていた。次々に生徒達が質問してきてネギはアタフタし、ルキは困惑していたが一人の生徒、朝倉和美が生徒達を代表して質問をすることになった。
「じゃあ、報道部のあたしが皆に変わって質問しまーす!。まず出身地はどこですか?」
「え、えとウェールズです」
「イギリスの田舎の方だ」
「次に、何歳ですか?」
「10歳です」
「18だ」
「ほっほう、それじゃあ次の質問です。ズバリ!恋人とかいるんですか?」
朝倉のその質問に生徒達はゴクリと喉を鳴らし静まる。
「こ、恋人!?い、いませんよ~」
「・・・・いないな」
ネギとルキの返答に残念そうな者、嘘だーと疑う者、あからさまに安堵する者。さまざまな反応があった。
「そろそろ質問は終わりにしよう。ネギ先生、授業の準備を」
「あ、はい!」
ルキの宣言にまだ聞きたい事あるのに、と文句を言う生徒もいたがまた今度な、というルキの言葉でとりあえず引き下がった。
その後、授業で何度か失敗があった物のルキが補佐を行っていた為、最初の授業としてはちゃんとできたと言えるだろう。授業中、ずっと睨みつけるエヴァに辟易しながらルキはこういうのも悪くはないなと新たな仕事に取り組んでいく。