書いてる内に女の子は素の黛冬優子っぽさが出てきたので黛冬優子が演じてるみたいなつもりに思ってます
「ねぇねぇ、ゆかりさん。コレってなぁに?」
「ちょっ……後にしなさいよ、リック!」
「えー、気になるんだけどなぁ」
そんなやりとりをしながら、私――一ノ谷ゆかり――は、背の高い温和そうな顔付きの青年――リカルド、愛称はリック――と共に、長い廊下を走っている。
……あー、いや、まぁ、正確には走っているのは彼で、私は横抱きの腕の中で彼にしがみついてるだけなんだけど。
ここは私の学校。そして今は昼休み。真上からの太陽光に照らされた白い壁と高い塀の中……と言うとちょっと聞こえが悪いか? まぁいいや。そんな感じの頃合いでそんな感じの建物で、ようやっとの長い自由時間に思い思いの過ごし方をしようと活気付くはずの校舎内は、突然の不審者侵入と破壊活動と暴力行為に慌てふためき、悲鳴と怒号で溢れかえっている。ホント大混乱ですわ大変ですわ。そしてその中心にいるのが私達。……そう、狙いはまたしても私な訳ですわ。ちくしょう。
別次元からの侵略宇宙人――通称をインベーダーとか言う――の作戦計画を目撃した……とかなんとかされてしまっている私が襲撃を受けるのは、もうかれこれ何度目だろうか。こうしてド派手に逃走劇を繰り広げる事もあれば、私が寝てたりお風呂入ってたりトイレ行ってたりなんだかんだで気付かない間にリックがケリをつけていてくれて、後から事実を知らされる事もあるので、最早数えきれないし覚えきれない。別段記録を付けてる訳でもないしね。
まぁリック曰く――
『軽くバリア張って砲撃を母船目掛けて弾き返したり、ちょっと土手っ腹殴り付けて風穴開けてやったり、スペシウムとか八つ裂きで尻焼いたり両手足ふっ飛ばしたり、念力で骨折ったり窒息させてやったら、慌てて逃げ帰るような情けない小者のちょっかいばかりでしかないから、そこまで心配は要らないよ』
と言う事らしいけど……いやいや充分戦ってますやんとか、そのレベルの対応してるのはちょっかいとは言い難いとか、色々と思ってしまうのはおかしくないハズだ。と言うか多分だけど、規模的には最低でも町の一区画くらいは焦土になるような戦闘してますよね? そんなの普通に地球人の私も消し飛ぶんですわと。そんなの怖いに決まってんじゃないのよと。それをさぁ、毎回呑気に茶ぁシバきながらのほほんと笑顔で報告してくれちゃってさぁ。まぁホント、いや、感謝してますけどさ。
……あぁ、今ので分かる通り、このリカルドと言う青年こそが、私の前に現れたあのウルトラ戦士なのだ。
地球より遥か三百万光年離れたM78星雲は光の国・ウルトラの星から、宇宙の平和を守る為と、あと私の護衛の為に派遣された宇宙警備隊特務部隊『UUU(Unnamed Ultrawarrior Unit――名無しの超兵隊。通称はトリプルUとか名無し隊とか単にユニットとか。トリプルファイターは違うってさ)』の隊員・四一六号。めっきり使う事がなくなって久しいと言う個人名の発音で地球人類の言語に最も近しいのがリカルド。そこはかとなくイタリア系の響きを感じる名前だったので愛称はリッキーになるのだろうけど、なんか個人的に呼びにくかったのでリックとしてやった。ドムとかディアスとかディジェとかは付かないし宇宙生まれでもジオニックなサムシングとは関係無い。勿論ツィマッドも関係無いからガノタな奴らは黙って座ってろ。
この呼び方を彼自身が気に入ってるかどうかは知らんけど、まぁ文句言って来ない辺り大丈夫なのだろう。いや、気に入らんでも私はそう呼び続けてやるから、その内無理矢理にでも慣れさせるんだけどね。
リックと初めて出会い、やむを得ず同居を始めてから半月程が経っているが……私を狙う命の危機と言う奴は一向に収まる気配を見せない。さっきも言ったが別段数えている訳では無いのだけれども、もうとっくに両手足の指では収まりきらないぐらいの回数になってしまっているのだろうとも思う。ギリ収まってても収まってない気分だから収まってないとする。
オイオイ怪獣頻出期も真っ青な勢いだな、重病人の発作だってここまで激しくはないぞ……ってな感じで、正直割りとキツい。いや真面目に、秘密裏に処理してくれてる部分があるだけ、まだマシに生きていられてるんだろうとも思う。これで毎朝毎晩毎時間と、ピンチのピンチのピンチの連続だなんてなってたら、あっと言う間に発狂してるか、そうでなくとも精神疾患に陥って日常生活すら困難になりかねない。そんなの洒落にもならない。こちとら花の十代美少女だぞコノヤロー、青春を棒に振らせるつもりかってね。どうにもこうにもならないそんな時、ウルトラマンが欲しいとかなんとか歌ってる曲もあったけど、割りとガチ目にそうなってそうだ。……現状もういるから叶ってるねって? やったね。F**K。
まぁ、実際の所はそこまで陥らずに済んでいるので、マジで色んな意味で助かっている。生活支援までは必要無いくらいの精神的な疲弊具合で収まってるし。……仮にリックに身の回りの世話まで頼む事になってたら、渡航経験の無い異国かぶれな外国人みたいに妙な所で地球文化に詳しくない彼では、中々難儀してそうだ。あと彼は男で私は女だし。そう安々と触れてほしくはない部分だってあるし。ウルトラマンを痴漢で訴えるだなんて御免だ。
……え? んな事言うならウルトラウーマン寄越してもらえば解決だろ、って? ……確かに。今からでも光の国にお願いしたら交代要員とか送ってくれるのかな。……いや、なんか申し訳無いからやめとこ。
まぁとにかく、彼が知らぬが仏を理解してるかどうかは分からないけど、一応実行してくれてる事にはマジでありがたいとしか言えないのだなぁと。
ただ、こうして既に私自身が巻き込まれている時は、飄々と余裕しゃくしゃくな態度なんてとってないで、なるべく早く片付けてほしいんだけどなぁとも思ってしまう。傍から見たら結構冷静な澄まし顔してるように見えるかもだけど、内心私はビビりまくりで今にも色々吐き散らしそうなのだから。
いやホントマジで、心臓は早鐘を打つってレベルじゃないし一秒間に十六連射かってくらいだし、胃の中は緊張し過ぎて煮え滾るマグマがひっくり返りながら登ってきてんじゃないかってくらいにクッソ熱いし、下は力抜いたら今にも……待て待て品が無さすぎるな。でももし今腕の中でそうなったら、リックは多分、昼食前のタイミングって事だけが幸いだったとか感じるようになるだろうとも思うよ、割りと真面目に、ってか本気で。
「リック!? いつもみたいにさっさとアイツぶっ飛ばして終わらせらんないの!?」
と呼び掛けてみるも、どうやら彼には届いていないようで、視線は先程拾った何か小汚い塊に向けられている。……ってかホントになんだこれ? ぶっ壊れた黒板消しかな? 恐らくついさっきのビームの衝撃波か何かでふっ飛ばされてきたのだろう。
一応リックは逃げながらも二次被害を防ぐ為に、インベーダーの光線の全てを得意のバリアで受け止めて、流れ弾を極力出さないようにしているのだが、それでも飛び散った破壊エネルギーの残滓が辺りを僅かに焼き焦がしたりなんだので吹き飛ばしてしまう事がある。どうやら幸いにも人的被害はまだ出ていないみたいで良かったが、いくつかの教室が破壊光線の粒子を食らって爆裂した時に、入り口近くに置かれていた備品を巻き上げたようだ。この黒板消しはまぁ、だから半分焼損していて、メッチャクチャに嫌な異臭を放っている。リックはそれを呑気にもサイコキネシスで摘み上げて、しかもよりにもよって私の胸の上に乗せやがって――なだらかだからってか? ぶっ飛ばすぞ?――まるでクリスマスのプレゼントを眺める子供か新種の化石に触れる学者のような顔をしながら見詰めている。そしてそうする傍らで、攻撃や障害物を避け、巻き添えを食らいそうな生徒や教職員達をバリアで防御しつつ、駆ける足は緩めない。これがウルトラマンの持つ超感覚の為せる技か、とちょっと……いや割りかし本気で羨ましくなる。ホントにウルトラ器用な事でさぁ。
それはさておき、いやまぁ確かに珍しいんだろうよ。だって地球より遥かに優れた科学技術を持つ光の国で、わざわざ黒板とチョークなんざ使うはずもないんだから。なんならペンすら使ってるか怪しいぞコイツら。リックがメモとか記録取る時は全部拡張現実的なホログラム、俗に言う所のARなサムシングしか使ってるとこ見た事ないし。本国なんてその極みみたい事になってんじゃないの? だとしたら、異文化交流って感じになってて当然かねと。
いやいやけどよ、そんな事してる場合かよと。命掛かってんだわこっちはさ。
「リック! そんなモンより私を見なさい! ってか聞きなさい!」
「大丈夫、聞いてるよ。いつもみたいに変身しろって事でしょ?」
「そうよ! 分かってんじゃないの!」
「うーん、まだちょっと無理かなって」
「はぁ!? なんでよ!? この期に及んでもったいぶってる場合!?」
思わず掴み上げてぶん投げた黒板消しが、間近に迫ってくる黒服マッチョの不審なオッサンの顔面に直撃して、もうもうと中身や炭化した欠片や白い粉塵を浴びせ掛ける。人間に擬態している間はインベーダーの呼吸器官もそれらしくなるのか、黒服の男はゴホゴホと咳き込んで速度を落とした。あら、苦しかった? ごめんなさいねこの野郎、まぁ狙ってやったんですけどね。ざまぁみやがれ、そのまま失せろ、このクズで間抜けのクソ○○……
「こらこら言い過ぎだよ、ゆかりさん。淑女がはしたない。いや、口には出してないから言ってないつもりなんだろうけど、激情に駆られた思念はテレパスには伝わるんだよ?」
あぁ、そう言やぁそうだっけ? 忘れてたわ。けどいいじゃないのよこんくらい。こちとら命狙われてんだし。
「まぁ、そうだけどさ」
「と言うか、あなた……まさか今にも殺されそうなのに、ネビュラの星から指令が無いと変身出来ないとか抜かすんじゃないでしょうね!?」
「いやいや、そんな公害Gメンに所属してそうなヒーローじみた理由じゃないけどさ」
苦笑いしながら身を屈めて、ビームだかブラストだか言うような眩い銃弾を躱す。そして何食わぬ顔で目を光らせ、それをウルトラ念力で歪めた力場によって掴むと、流れ弾が誰かを傷付ける前に射手の元へと返した。彼の肩越しに、黒服の腹が穴でも開くんじゃないかってくらいに凹んで、文字通りに体をくの字に折り曲げてすっ飛んで行く光景が見えた。
「だってまだ人の目があるからね。正体バレたら困るじゃないか」
「……え? こんだけ能力使っといて今更そんな事言う!?」
「え? いや、超能力者くらい地球人にもいるでしょ? 自衛でこれくらいしてるんじゃないの?」
「んな訳無いでしょ! 地球人はそう言う特殊能力とか他と違うって事に忌避感とか嫌悪感とか侮蔑とか差別意識ばっかり持つ生き物なのよ、みんな隠してるに決まってるじゃない!」
……なーんか言ってて情けなくて悲しくなってくるけど、何一つ間違ってないんだよなぁコレがなぁ、ちくしょう。こんな低俗な種族、ウルトラマンに守ってもらう価値あんのかしらね? まぁそれはともかく……
「大体そもそもよ、そんなにゴロゴロいてたまるモンですか!」
「マジで?」
「どこでそんな俗語覚えてきたのか問い詰めたいし、あなたこそ使うなって言いたいけれど、取り敢えずマジでよ!」
「……マジかぁ、これ学校中の記憶消さないといけないかなぁ。規模が大きいとすっごい手間かかるし、あんまやるなって言われてるんだよなぁ」
サラッとそんな事を言う辺り、やっぱり上位存在的観点で物事を捉えているのが分かって嫌だ。地球人類からした非人道的行為は、彼ら異星の超人達にとっては極普通の行いだったりする訳で。だから、極力そうしなくて済むように動いてくれているのだけど、最悪巻き添え被害で酷い障害を負ったりだとか命を落とした人間がいても、『でぇじょうぶだ、ナンとかボールでどうのこうのしてやる』って勢いでしれっと治したり蘇らせたりしてから、どうにか記憶消しちゃって違和感すら残さなかったりとか平然とやってしまうのだ。実際、以前目の当たりにした時はなんと言うか、慈悲があるのか無いのか分からない気分になってしまった。私の中のウルトラマンってこんなイメージじゃなかったはずなのになぁ。
「あぁ、大丈夫だよ。こんなろくでなしみたいな事してるのウチの部隊だけだから。宇宙警備隊はウルトラ兄弟みたいに、至ってクリーンで人道的な正義の味方さ」
そっか。それなら良かった。……彼の口から聞かされると胡散臭くて敵わんけど。
「まぁ記憶やらイメージやらそんなのは後でいいや。今は熱烈アプローチしてくる追っ掛けさんをどうするかだけど……」
「小癪な言い回ししてないで、どうするのよ?」
「僕がどこに向かっているのかが分かれば、すぐに答えも出るはずだよ」
はぁ? 向かってる先ぃ? そんなモン分かるわけ……
と思って、気付く。彼、階段を駆け上がってる。
私の教室は四階建て校舎の二階中央にあって、今は北端の特別教室が並ぶ区域を抜けて、隅にある階段を登り、三階を過ぎようとしている。残すは倉庫代わりの狭い踊り場と屋上への扉だけだ。
「なるほど、分かったわ」
一応言うと、昔いじめられっ子が飛び降り自殺したとかしなかったとか、イキったしょうもない不良崩れのカスどもが溜り場にしてリンチしたり処刑と称して突き落としてたりとかで危険だからと、生徒の立ち入りは禁止になっていて、扉には職員のみが扱える鍵が掛かっているのだが、まぁそんなモンがウルトラマンと異星人の足止めを出来る程頑丈だと言うのなら、今頃は政府だの国連だの防衛隊の技術開発に引っ張りだこになってるハズなので……ね? お察し下さい。
「そこなら巻き添えも出しにくいし、飛べるし、まだ戦いやすいでしょ?」
「えぇ、そうね」
リック、ホントあなたって……意外と考えてるのよね。流石は光の国の特務隊員かしら、と。
なんて思っていると、間もなく視界に屋上への鉄扉が見えてくる。
「と言う訳でハイ、ドーン」
ズッシリと重い衝撃波が飛んで、扉がひしゃげて転がった。
いや、ちょっと待て、今のは考えてやったのか? なんとなくそんな気分だったってだけじゃないのか?
「あなたねぇ……いくら後で直してもらえるからって……」
「いや、だってこのほうが早いしさ」
そうだけどさぁ、なんかこう、もうちょっと……あるでしょ?
呆気にとられていると、リックは屋上の隅まで行って私を降ろした。
「ふぅ、ようやくだな……やっと……」
深い息を吐いてリックが言う。敵に挑むとなれば呼吸を整える必要もあるのだろう。だけど……なんか戦闘に向けての言い方じゃないように聞こえたぞ。オイコラそこのウルトラマン、今の溜息はなんだテメー?
「あなた、まさか重かったとか言わないわよね? ウルトラマンでしょ、ねぇ? 年頃の女捕まえといてまさかそんな事言うんじゃないでしょうね?」
「いやいや違うよ、腕が自由に使えるってだけさ。念力とバリアに頼りっぱなしだと疲れて仕方ないからね」
「んな事言いながらわざとらしく肩揉んでグルグル回してんじゃないわよ!? 腰を叩くな! 重かったって言ってるようなもんじゃないのよ!?」
「……体ほぐしてるだけだよ? 準備運動は大切だからさ」
「なんでちょっと言い淀んでんのよ。あとこっち見なさい。ニヤけながら目ぇ逸らしてんじゃないの!」
クソっ、コイツたまにこうしてイジってくるのがムカつく。まぁ多分、こうして和ませて緊張続きにしないようにしてくれてるんだろうけど、やり口がガキみたいで腹立つわ。……いや、まぁ、ガチで余裕だからって事で暇を持て余してるだけなのかも知れないけれど。
と、そこにインベーダーの黒服男が、なんだかヨレヨレの姿で現れた。いつも同族どもが着こなしてるパリッとしすぎたスーツも、量産型ロボットかってくらいに無個性な清潔感溢れすぎた髪型も、今は乱れに乱れて、雨の日に傘も差さずに踊る男も目じゃないくらいにズタボロだ。まるで、そう、台風の日に外で全力疾走でもしてたかのような感じと言うかね。
あれ、もしかして割ともうお疲れ気味ですか? って言うかそこら中から緑の血が吹き出してるし、結構もう瀕死な感じもするのは気の所為かしら。
「さて、ではお出迎えと行こうかな」
「いやアレいい加減お見送りしてさしあげたほうがいいんじゃないかしらって私は思うのよ」
「うーん、確かにそうだね」
と頷きながら、リックが上着の懐に手を入れて、変身アイテムのフラッシュライトみたいなスティックを取り出そうとする。日中でもアホほど眩しいんだよなぁアレって、とか思いながら、私はその時に備えて身構える。が……
「あれ?」
「……どうしたのよ?」
「ベーターカプセルが無い」
「は?」
「落としたかな」
「はぁ!? 何、アンタ、マジで言って……えぇーッ!? 変身アイテム落とすウルトラ戦士なんている!?」
「まぁ、割りといるけどね。セブンとかよく落としてたって聞くし、どっかに置き忘れてたり、挙げ句は盗まれてたらしいし」
「うっさい、そうかも知れんけど聞きたくないわ! あと名指しにすんなって、後々苦情来たらどうすんのよ!」
「いや、苦情って……」
「いいから! え、どうすんのよ、変身出来ないなんて……! あなたそのままでも勝てるの……!?」
「あー……うん、まぁ無理寄りの難しいかな。ぶっちゃけ無理かも? 全力出せないから倒しきれないんだよねぇ」
ハハッ、だなんてあっけらかんと笑ってる場合かよと。洒落にならんわ、大ピンチじゃないのよ。
そう思っていると、インベーダーが光線銃と反対の手に持った何かをチラチラとコチラに向けてアピールしてくる。
「お探しの物はこれかな?」
「あっ、ベーターカプセル! 拾っててくれてたのか、ありがとう」
「馬鹿かお前? 盗んだんだよ!」
言うが早いか、ウルトラ念力の波動を避けて握り潰すインベーダー。って、いやマジかよ、あれってそんな簡単に壊れるのか。踏んづけたら割れるのかな? ……まぁ、少なくともひん曲がりそうだ。
「なぁーッ!? 宇宙科学技術局今年度春の新作カプセルタイプがーッ!?」
リックが情けなく叫ぶ。ってか年度別やら季節毎にモデルチェンジとかスマホかファッションアイテムかなんかか?
「高かったんだぞそれ!」
「……えーっと、一応聞いとくけど……幾らくらいよ?」
「日本円にして三百万くらい」
「は!? たっかいわね変身アイテム!?」
「しかも支給品じゃなくて私物だから任務中の修理補償とか全部適用外で自腹だし……ちくしょー、お気に入りだったのにコノヤロー」
う、うん、それはショックだなって。でもいわゆる社用車じゃなくて自家用車で勤務してるみたいなモンなのかなと。だったら私物は適用外なのも頷ける……? あー、なんかこんなシステマチックな部分知りとうなかったなぁ、夢壊れるっての。
「いや、お前ら値段気にしてる場合か?」
インベーダー、いいツッコミしながら追い打ちするように床に叩き付けて踏み潰してビームで焼いて……ってどんだけ徹底してんのか。あっと言う間にベーターカプセルは欠片とシミみたいな焦げ付きしか残らなくなってしまった。
「これで変身は完全に不可能だなぁ?」
ついでに修理も不可能そうだなぁと。残念ながら買い直ししか道は無さそうだ。……って、そんな事を思っている場合でもない訳で。
「さて、どうする? 光の国の使者さんよ?」
「そうよ、どうするのよリック!?」
ウルトラマンがウルトラマンになれなくなったら、私の命は誰が守んのよ。
「はぁ……まぁ大丈夫だよ、心配しなくても」とリックはサラリと言ってのける。「今まで通りインベーダーをブチのめして終わりかなって」
「でも、変身が……!」
「そう、変身がな!」
クソッ、調子こき始めたインベーダーがドヤ顔で私のセリフに合わせてきてる。なんか憎めないのが腹立たしい。
「だから大丈夫だって。じゃあ、今回は……コレにするかな」
少しの間あらゆるポケットを漁っていたリックがやれやれと首を振ると、左の袖を捲って腕をもたげた。腕の時計の文字盤がエメラルドのように輝いている。前からなんかやたらめったらSFチックな時計だなぁとか思っていたけど、まさかそれって……?
「ジャン、ファイト! ……は別の星から怒られるから、ウルトラファイト……かな?」
腕を頭上に掲げて力を集めてから、
「デェアッ!」と胸の前に構えた瞬間、光が溢れ出して、リックの姿は変わっていた。
――ハイ、変身したよ。
二メートルそこそこの人間大になった銀色の超人が、お馴染みの右拳を天に突き上げるようなポーズをとりながら言った。
「はあぁぁぁッ!? 二つ持ちとかアリかよお前ぇ!?」
インベーダーが叫ぶ。でも気持ちは分かる。マジで分かる。ごもっともですわ。
――いやいや、こう言う時の対策に予備くらい持って来てるモンだから普通。大切な物には予備を用意しておくだなんて常識でしょう?
「いやそうだけどテメェ、ソレに関しては邪道ってモンだろうが!」
――ルール無視の奴らに愛の掟で戦う戦士は別宇宙にいるけど、僕がわざわざそうやってやる義理も無いかなって。だって昆虫じゃないし。
「お前マジで、よくウルトラマンやってんな……クビにならんのが不思議だわ」
――ありがたい事に、汚れ仕事専門のはぐれ部隊ってのには価値があるもんでね。中々切られないのさ。
なんだろう、ちょっと切ない気持ちにもなるな。正義の組織に出来ない何かをさせられる存在って、どの世界でもどうしても必要なんだろうかなって……
――あと僕優秀だし? 上には敬意も払うし取り入るから。やっぱちゃんと持ち上げとけば可愛がられるんだよ。
おいコラ切なさ返せ。
「マジでロクでもねぇなこのゴマすりクソトラマンが」
インベーダーの物言いも分かる気持ちになってしまうわこれは。
――え、ひっどいなぁ! そこまで露骨にはやってないって。ただちょーっとお土産渡したり? 無礼働いた若造に裏でお灸を据えたり? 不都合な相手消すだけで……
「え、古っ!? 考え方古いわね!?」
――そりゃそうだよ、数万年単位の組織だよ? 古い所もあるに決まってるさ。
「あーもういい聞きたくない聞きたくない! いいからリックさっさとやっちゃって!」
銀色の背中を押しやって戦いを急かしてみるが、びくともしないのが腹立つ。
「そうだそうだ! 俺達の憧れと夢をぶち壊すな、黙って戦え!」
いやお前も憧れとかあったんかい。敵だろお前ら立場的に。
――ホラ、正規軍になれなかったテロリストとかいるし。
……世知辛いわね、それって。
「おいコラやめろ同情の目を向けるな! そんな理由ではないわ! 倒すべき敵としてみたいなそう言うのであって決して……えぇい、もういい! こうなれば二人まとめて死をもって黙れ!」
インベーダーが極彩色の毛皮に包まれた獣人のような姿に変化する。見た目はアレだし目的もアレだけど、この不良(ワ)ルトラマンと比べたらまだ真面目だから思わず応援したくなってしまう。まぁ、命狙われてるから絶対に応援しないんだけど。
「じゃあお互い出揃ったって所で……リック、そろそろやっちゃいなさい」
――了解、黄門様。じゃなかった、お嬢様。
ヘアッだのデアッだの言うような声と共に頷いて、ウルトラマンが構えた。インベーダーも銃を構える傍ら爪を伸ばして、戦闘態勢に入る。ただ……ウルトラマンのとった構えはそんな肉弾戦だの格闘戦だのの構えではなくて。
――ハイ、これでもう自由は失ったね。
シュアッと短く声を発しながら指先から光を放ち、ウルトラマンが言った。光はインベーダーの胴に当たってすぐに全身を包み込む。
「な、なんだ!? 体が動かん……!」
「そらそうよね。だって彼、初手でウルトラエアキャッチ使ってんですもん」
「は? それ停止光線だろ!?」
「そうね、そう聞くわ」
「いや、ちょ、オイッ! 初っ端からそれってお前マジでウルトラ戦士としての戦い方って奴を無碍にする気かコラぁッ!」
気持ちは分かるわよ、マジでね。ただまぁ伝わる事は無いと断言出来るかなって。
――だってこのほうが楽だもん。無駄に疲れたくないし。
呆れて溜息を漏らすように大仰に肩をすくめて言うウルトラマンの姿は、実に違和感に満ち溢れていると言うか。なんとも馴染まない。
――で、どうする? 一応お仲間には毎回聞いてるんだけどさ。洗いざらいそっちの機密全部吐いて二度と手を出さないと誓ってから帰るか……もしくは散々痛め付けられて本当に吐き散らかしてから無様な体で逃げ帰るか。選んでいいよ。
「そんな脅しは通用せんぞ! 今までの雑魚どもと一緒にするな!」
――いや、別にこっちはそれでもいいけどさ。そしたら残るはバラバラ死体か、微粒子レベルで跡形もなく消滅して空の墓で葬式してもらうかだね。僕知らんよ? 遺族がどんな顔して涙を流すか……。
表情の無い銀色の顔が冷めた雰囲気を醸し出している。無機質な顔立ちが、より冷徹で冷酷な気配を纏っている。それもあいまってだろうかなって。引くわ。味方だろうが普通に引くわ。もうエグいのよ、あなたの選択肢はいつもどれもこれも。
「そ、そんな脅しは……通じん、ぞ……!」
あ、通じまくってる。メッチャ動揺してる。人間とは全く違う顔立ちなのにやたらと不安が滲み出てるのが分かる。ってか普通に可哀想になって嫌だわ。
――どうする? 選んでよ。
「くっ……殺せ……! 俺達はそんな事には屈しない……!」
え、何を言ってるのよあの人……? そんなのは……
「ちょっと、やめてよ……!」
――え? ゆかりさん、どうして? アレは君を殺しに来た敵だよ?
「止めるな小娘……! 俺達だってな、侵略宇宙人としての誇りがあるんだ……仲間が必ずやお前達を殺して、目的を果たす……」
なんか勘違いされてるみたいだ。私が気にしてるのはそう言う事ではなくて……
「違うわよ、野太いオッサン声でくっころなんて萎えるからやめてって事よ!」
そう言うのは美少女こそ至高にして唯一、異論は認めないのよ私は。……インベーダーの生死の行方? 侵略者が死のうが興味もないわね。
「え、そう言う事!?」
――あー、そう言う事?
二人の声が重なって聞こえるが、どうでもいい事ねと切り捨てておいた。
「と言う事でさっさとやっちゃって。本人もそれがお望みなんでしょ?」
「ちょ、ちょーっと待て! 少し待て! しばし待て! 考え直す!」
至極慌てふためいてそんな事をほざいて、何が誇りがどうのよ。言える立場かって。
「大体こんなぞんざいな扱いもないだろ!? こんなの言わば捕虜だぞ捕虜! もっと相応しい対応ってのをだな……!?」
――盗人猛々しいって奴だなぁ。でも……畜生、そう言われたら一応正規軍同士だから飲まざるを得ないや。
「ハハッ、そうだろう!? では投降した相手に相応しい扱いをしてもらおうか!」
クソっ、いい気になりやがって、態度がデカい。ムカつく。ってか割りとみみっちくないかインベーダー? こう言う時の侵略者ってもっとこう、武人気質とかなんとかあって、敵ながらあっぱれ的なサムシングがあるもんじゃないのか?
とかなんとか思っていると、ウルトラマンが続けて思念を放つ。
――でもウチ、汚れ仕事専門部隊なんでね。
言うが早いか、ウルトラマンが波動を放つ。インベーダーの身体を激しく壁に叩き付けてダメージを与える。
――捕虜の扱いってその場その場で臨機応変にしてるんだよね。
光の輪っかが幾つも浮かんで、ウルトラマンの周りに並ぶ。あ、八つ裂き光輪でマジで八つ裂きにするつもりだコイツ。
――そうだなぁ、今日の気分はスライスかなって。あー、なんかお刺身が食べたくなってきちゃったな……丁度いいかな?
「え……何、コイツ……倒した相手食ってんの……? なぁ嬢ちゃんマジか……!? 嘘だろ!? なぁ嘘だろ!?」
インベーダーが痛み以上の恐怖に顔を引き攣らせて聞いてくる。表情豊かな宇宙人ねぇ。それはさておき……。
「まさかお前もか!?」
「違うわよ! 食べてるわけないじゃない、気持ち悪い!」
「それは良かったけど気持ち悪いってのもなんかアレだぞ!」
贅沢な……なんかやかましいわねコイツ。
とかなんとかやってると、風切り音的な甲高い音と共に、インベーダーの顔の真横に光輪が突き刺さった。
人間だったら耳無し芳一にでもなっているくらいの間近だが、宇宙人で良かったなぁと思う。体毛が一部根こそぎゾリっと失せてるだけで済んでいる。もしも薄毛やハゲをバカにする文化が共通するならば、あれはバカにされるどころか諸々の尊厳を奪われてそうだなって感じで、それはもうゴッソリと逝っている。
――さて、どこから行くかな?
「ち、ちくしょう! やるなら一思いにやれ!」
インベーダーが叫んだ。人間とは違う場所にある目から涙を流しながら。あんな側頭部についてんのね、前とか見辛そうだわ。ってか死んでも機密は吐かないつもりなのね。見上げた根性だわ。
――いいよ。でも殺さずに送り返して上げるよ。
ウルトラマンがインベーダーの首元を掴み上げて宙に浮かぶ。インベーダーもあの姿でも呼吸が必要なのか、息苦しそう呻いている。てかこっわ、悪役のする奴やでそれ。いい子の味方としては見せられない姿ね、このウルトラマン。
――そのほうが脅しとしては有効的だしね。
ゴッ、と鈍い音がして、衝撃波とともにインベーダーの身体が打ち上がる。その一瞬後に光輪が飛んで、ジョキンジョキンと言う音を立てながら手足がバラバラになる。
「ぐ、グロい……」
――まぁ、死んでないだけマシさ。
そしてウルトラマンがシュゥワッ! と掌を突き出すと、激しい光が迸って、インベーダーの胴体と手足が天高く吹き飛んで行った。遠くに痛ましい悲鳴を響かせながら。
――綺麗に切ったから後で着けてもらえるといいねー。
直後に、ドシャッと音がして、屋上のコンクリートの上に腕が一本叩き付けられて、ド派手な極彩色の肉塊として飛び散った。私はウルトラマンの張ったバリアに包まれていたので汚れてはいなかったけれど、バリアには肉片がこびり付いて光の壁でジュウジュウと焼け焦げている。
「……ぐ、グロい」
嫌な色の焼肉だわ、食欲無くなる……。今夜は肉抜きにしよ。
――うーん、これは義手になりそうだね。残念。
「酷い」
ホントにウルトラマンとしては人前に出せんわコイツ。
※
それから、騒動が生んだ混乱に包まれる学校から、私とリックは人知れず離れた。まぁ、リックがウルトラマンとして私を抱えながら空を飛んで家に帰っただけなんだけど。荷物は後でリックが転送してくれるらしい。登下校もやってくれんかなぁ、それ。
「あー、はい。……はい。じゃあそうしますか。はい。お疲れ様です失礼しまーす」
リックは居間の窓から空を見上げている。何かブツブツと喋っているが、まるで業務連絡でもしているみたいだ。
「ウルトラサインで名無し隊に聞いたら、ド派手にやりすぎて記憶処理も校舎修繕もやりづらいから、今回は無しだって。まぁ誰も僕らの本当の姿を見てないから、宇宙人騒動にはならないんじゃないかな? 精々で超能力者の大暴れとか」
「だからそんなにいないんだってそれ」
地球のトラブルは基本的に宇宙からの侵略者がメインだったから、そっちに転がるんじゃないかしらね。まぁ久しく活動してない防衛隊も、これで本格的に動き出すかも知れないし、そうなればインベーダーも攻め辛くはなると思いたいけど……。
ハァ……、と思わずため息が出た。安心ではなくて疲れたのが大きい。
「ゆかりさん大丈夫?」
「これが大丈夫そうに見えるの?」
「まぁ割とダメージ負ってそうには見えるね」
「割とじゃないわよかなりよ」
のほほんとしてるが命のやりとりが常のウルトラマンと違って、平凡な生活が普通の日常だった身としては、今回の襲撃はかなり堪えた。いい風に捉えるなら、こう思えるのも生きてる証、とは言えるけど……ふざけんなそんな実感の仕方望んでないっつーの。
「……やっぱりもっと傍にいたほうがいいよね」
リックが呟いたのが聞こえた。もっと傍にって、これ以上傍にいられるもんかしら。
「前に、ゆかりさんを守る為なら、僕はどこにでも付き従うって言ったよね」
「ハイハイ聞いたわよ、お風呂とトイレ以外はどうぞ」
「ベッドの中もいいの?」
「いい訳無いじゃない、バカ!」
「残念だな、もっと仲を深めてからかな」
クソッ、この姿で言われると悪い気がしなくてちょっとムカつく。なんで好みの顔になってるかなぁ、このウルトラマン。
「……わざと、さ」
「え? なんて?」
「なんでもない」
リックはウルトラマンの時と似たように微笑んでこっちを見ている。毎度の事ながら、何考えてるのか分かりにくい奴だなぁと思う。
「だから、僕も学校に行くよ」
「へ?」と声が漏れた。何言ってるのかしら、彼は。
「今日みたいに外から監視してて助けに入るよりは早いだろうからさ」
確かに今日は襲撃者が現れて、遅れてリックが飛び込んできた。傍にいられれば、そのタイムラグも無くせるだろう。しかしだね。
「いや、どうやってよ? あなたかなり年上に見えるし戸籍も無いじゃない。書類偽造して見た目変えたりするのかしら?」
「書類なんてどうとでもなるよ、宇宙警備隊だよ? けど……うーん、この見た目気に入ってるからさぁ、変えたくはないんだよねー。まぁ、学生以外にも方法はあるよ。教師でも用務員でも購買のおじさんでもさ」
「いやいいけれど、そんなにベッタリ引っ付ける訳でも無いと思うわよ、それらだと」
「それもそうか。それじゃあもしくはさ……」
リックが近付いてくる。段々と距離が迫ってきて、私の座っているソファにまで乗り込んできて、そのままグイッと身を乗り出すように手を伸ばして……
「ちょ、ちょっと……リック……!?」
「大丈夫、信じて」
「あ……待っ……」
胸の辺りに温かい感触がして、次第に全身がそれに包まれて、柔らかな光が満ちて……やがてそれらが収まると、静かな部屋で一人になっていた。
「え……リック……?」
自分以外に人の気配が無い。
両親を亡くした直後の家と同じ冷たさが来る。
途端に、寂しさが沸き起こってきて、不安が襲い掛かってくる。
「リック? どこ行ったのよ? リック!?」
辺りを見回しても、影も形もない。
さっきまでそこにいたのに。そこに立って話していたのに。
久しく感じる孤独に、心が激しく乱されているのを感じる。それだけ、リックの存在は寂しさを紛らわせてくれていたのか……そう思わせられる。
「返事しなさい、リック!」
――大丈夫だよ、ゆかりさん。僕はここにいるよ。
「へ!? リック!?」
突然声が聞こえて、驚いた拍子にソファからずり落ちてしまった。クソッ、恥ずかしい。でもそれだけビックリしたって事だから仕方ない。
――そんなに慌てて、もう……可愛いトコ見ちゃったな。いやいつも可愛いけどさ。
リックの声はいつものウルトラマン姿の時とも違って、頭に届くようではなく、どこか胸の奥から響いてくるような……ん? 胸の奥?
「あ、アンタまさか……」
――おや、気付いたかな? そうだよ。
「勝手に合体したな!?」
――御名答。左手見てごらん。
「左手ぇ? 何よ一体……!」
袖をめくって手首を探ると、着けた覚えの無い、リックと同じ形の腕時計が巻かれていて、エメラルド色に輝いている。もしやこれがその証って訳?
――そうそう。ウルトラ戦士と合体すると、アイテムが相手のほうに残るんだよね。僕みたいに二つ以上持ってると、好きなほう渡せたりもする。まぁ今回はベーターカプセル壊れてるし、持ち歩きに違和感無いようにそのベーターブレスレットにしといたよ。
喋る度にピカピカと明滅している。なるほど、面白いな……。
「じゃなくて! なんで合体なんてしたのよ!?」
――そりゃあ一緒にいて守る為さ。
腕時計が輝いて離れて、目の前に浮かび上がり、人の形を作る。気付けばまたリックがそこに立っていた。
「こうすれば片時も離れずにいられるでしょ? 一緒に変身すればインナースペースで保護も出来るし、便利かなって」
「そうだけど……そうだけど!」
なんか嫌だ。異性が身の内にいるのもそうだし、何より……何より、顔を合わせて話せないのは、寂しい。
「え、いつでも分離出来るからすぐに出てこられるのに?」
「それでもよ! ……ってそうやって読むな心を!」
「やっぱり可愛いな」
リックが微笑むのを見る度にムカつく。でもこのムカつきが無くなるのは嫌だ。悲しくなる。だから、首を振る。
「とにかく、合体は無し! やめて! ちゃんと人間態で傍にいなさいよね」
「分かったよ。でも緊急時は別でね」
緊急時もよ、と言いたかったけれど、流石にそれは難しい所だろうか。いや、そんなような状況無いようにしとくれ、ウルトラ戦士よ。
「どんな形でも、君の命は絶対に守るよ。僕がなんて思われようが、どうなろうがね」
クサいセリフで誤魔化そうとしてんじゃないわよこの……と張り倒したくなる気持ちを抑えて、リックを睨むように見た。