Illigal The Lilybell   作:Lycka

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#03:Deal and backside

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~喫茶リコリコ~

 

 

 

 

「千束、御天ちょっといいか」

 

「ん〜なになに先生、もしかしてDAからの依頼とか?」

 

「よく分かったな。先程、楠木から連絡があった」

 

「いつもの当てずっぽうだろお前のは」

 

 

 

千束と御天の二人がリコリコに到着してすぐに奥から出てきたミカに呼び止められ、どうやらDAからの依頼がきたのだと言う。何かあれば"DAからの依頼?"だとか"楠木さん何か言ってましたか?"等と言うので、千束は毎回当てずっぽうで聞いていると御天は思っていた。

 

 

「銃の密売取引現場にフキ達が居るらしいが、どうやら膠着状態が続いていて困っているんだとさ」

 

「それで、自分達に白羽の矢が立ったと?」

 

「まぁそう邪険にするな御天」

 

「そういうわけではないんですけど、何かあった時の保険みたいに思われてませんかね」

 

「いやいや〜、やっぱり私が頼りになるからでしょ〜」

 

 

何故か誇らしげに胸を張っていた千束に、灸を据える意味で横腹を突いて大人しくさせた御天。ミカから話を続いて聞く限り、どうやらリコリスが一人人質に取られてこちらも身動きが取れない状況らしく困っているのだとか。

 

 

この状況でリコリスに構わず対象の捕獲を命令しないのは、やはりDAの甘さ......というよりは楠木の判断ミスだろうと御天はミカへ告げる。そういった答えに御天が辿り着くのも当然であり、MAのリリベル達は命令には絶対で時には仲間のリリベルすら手にかける連中で、そんな中で生き残り続けた御天だからこその答えとも言えた。

 

 

「御天、リコリスとリリベルを同じに考えては駄目だ」

 

「それは重々承知してますし、それだけリコリス達の事を考えてるってことでしょう。リリベル達には任務を行う上で人間性なんて必要無いものでしたからね」

 

「でもさ、そんなので楽しいの?」

 

「楽しくはなかったさ。リリベル達の頭の中にあったのは、ただ任務を成功させる事と、その中でどれだけ人を殺せるのかってだけだ」

 

 

 

長くなりそうな話だったのを何とかミカが途中で切り上げ、すぐに現場へ向かう準備を始めた三人。千束はリコリスの制服に一通りの装備を持って、移動手段であるバイクがあるガレージで御天を待っていた。

 

 

 

「女の子を待たせるとはお仕置きが必要なのかな〜?」

 

「お前はそいつ背負うだけで準備終わるだろ」

 

「千束、くれぐれも気を付けて行くんだぞ」

 

「先生もあんまり無理しないようにね」

 

 

 

そうしてヘルメットを被ってバイクの後ろへ座る千束。その様子を見たミカは御天に目線を送り、そうしてミカからの視線の意味に気付いた御天は溜息を吐いて千束へと今更ながらこれからの動きについて説明する。

 

 

「俺と先生が二人で後方から援護、千束は単独で現場に向かってくれ」

 

「えぇ!?何それ聞いてないんだけど!」

 

「今言ったからな。俺は先生と車で援護ポイントまで行くから、お前も早く現場行けよ」

 

 

その後、御天へ文句を言いながらも帰ってからということで一旦話を終えて、御天とミカの二人は現場にいるリコリス及び千束を援護するべく援護ポイントへ、そして千束は単独で現場に急行した。

 

 

 

 

 

~援護ポイント~

 

 

 

 

「よいしょ......っと。本当コレ重いですね」

 

「すまないな御天。私の分も持って辛いだろう」

 

「いえ、重いって言っても銃2丁なんで大丈夫ですよ」

 

 

 

リコリコで千束と別れて車でこのポイントまで来た二人。とあるビルの屋上から援護の予定であり、その為のスナイパーライフルを2丁肩に乗せてここまで階段を登ってきた御天。大丈夫だと言い放ったが、実際のところスナイパーライフルだけあって重量もかなりのものとなっている。それを息一つ上げずに持ち運んだ御天に対し、ミカは驚きながらも"毎度のことか"と呆れた様子を見せる。

 

 

 

「じゃあ取り敢えず状況確認してきます」

 

「頼んだ......が、くれぐれも───」

 

「撃ちませんよ。下手して外れてリコリスにでも当たれば、またおばさんからお叱り受けますからね」

 

「君の場合、外すことの方が難しそうだがな」

 

「買い被りすぎですよ」

 

 

 

そう言い捨てて片方のスナイパーライフルを抱えて、ビルの際へと向かい銃の構えてスコープを覗き状況確認を進める御天。その様子を見つつ、ミカは携帯を取り出してDA司令官である楠木に連絡を取り、こちらもリコリスの状況確認とDAの司令官である楠木の判断を待っていた。

 

 

 

「ん〜......あれ、もしかして前の模擬戦の子か?ファーストなんだからサッと任務終わらせてくれたらありがたいんだが──」

 

 

 

誰にも伝わらないであろう独り言を言い切った瞬間、御天の耳に取り付けていた連絡用の無線デバイスへ通知が入る。

 

 

 

『もしも〜し、こちら千束さんですよ〜』

 

「サボってないで早く現場行けよ」

 

『こちとら原付で頑張ってんですよ。無理を言うな、無理を。それよか状況は?』

 

「聞いたままの状況だ。模擬戦の子が何やら連絡取り合ってるみたいだが、いつまで相手が待ってくれるか」

 

 

 

早くしないとヤバいじゃん、と千束はハンドルをもう少し強めに捻って速度を上げる。対する御天は、離れた道路で先程とは速度を上げて走行するバイクを発見し先程と同様にスコープで覗いていた。

 

 

 

「法定速度遵守な。あと、その原付100キロまで頑張れば出るから」

 

『だ・か・ら!さっきから無茶言いなさんなアンタは!』

 

「御天、楠木から変わってくれと」

 

「分かりました。千束、おばさんと話してくるから切るぞ」

 

『あ、ちょいちょい待って私どうすれば───』

 

 

 

千束が最後まで言い切るのを待たずして連絡を閉ざした御天。そして、その後すぐに同じデバイスへミカが転送してDA司令官である楠木と通話が繋がる。御天はわざと相手に聞こえるか聞こえないかの絶妙なタイミングで一つ溜息を吐き、嫌々出ましたよ感を曝け出しながら一言目を放った。

 

 

 

「良い大人が困ったらすぐ千束や俺頼りですか」

 

『そこはDAの支部だということをもう忘れたのか。それに、貴様とはそういう契約だったはずだ』

 

「はいはい。それで、御用件を伺いましょうか」

 

『一々癇に障る言い方をする奴だ』

 

 

 

お互い言い合いながらも、すぐに切り替えて情報の交換と各々の考えやどうするべきかを数秒の間話し合った二人。DAとしては犯人達は生かして捕らえたいらしく、御天は多少なりとも強引な手を使ってでも状況の打開をすべきだと判断する。しかしながら、決断する時間を与えまいと最悪と最高のタイミングでそれはやってくる。

 

 

 

『こちらは───、おい──ている──。へん───』

 

「......ん?」

 

『ど───、────』

 

「どうした御天」

 

「通信障害ですかね。途中から聞き取りづらく......すみませんが、先生にも協力してもらって良いですか」

 

「わ、分かった」

 

 

 

ハッと何かに気付いた御天はミカに協力を依頼して、先程まで自分が行っていた監視をミカに引継ぎ、御天はもう片方の銃を構えて即座に千束へ連絡を取る。

 

 

 

「千束、大丈夫か」

 

『っと、ビックリしたぁー。なに、動きがあったの?』

 

「おばさんと通信が取れなくなった。それよかお前は何してるんだ」

 

『さっき着いてから、今は階段で向かってる最中ですよ』

 

「6階だから急げよ」

 

 

取引現場のビルに沿って設置してある階段を見ると、銃を構えて登る千束の姿を発見する。取り敢えず千束の無事が確認出来てホッと一安心する御天だが、やはり嫌な予感は的中し取引現場の状況が一変する。

 

 

 

「御天!千束に近付いては危険だと伝えてくれ!」

 

「っ!!千束、死にたくなかったら避けろよ!」

 

『えっ!?どゆことどゆことぉ!?』

 

 

 

ミカの警告を受けた御天が瞬時に確認すると、少し離れた場所に居た一人のリコリスが軽機関銃を持ち上げて犯人達へと銃口を向けていた。そして次の瞬間、取引現場のすぐ近くまで来ていた千束の目の前のガラスが割れて、けたたましい銃声が鳴り響き次々と弾丸が流れるように撃ち出される。

 

 

一部始終をスコープ越しに見ていたミカと御天は慌てて千束の居る方向を確認すると、そこには若干引き攣った笑顔を浮かべながらも無傷な千束の姿があった。その後、ミカの撤退判断を千束に伝えて帰宅準備を整えていた時、ふと気になり再び千束へと連絡を取る。

 

 

 

「なぁ、一つ聞いていいか」

 

『どうぞご自由に』

 

「最近誰かに付き纏われる様なことをしでかした覚えは?」

 

『ん〜......昨日、御天の分のプリン一個食べたくらい?』

 

「別にそのくらいじゃ俺は怒らないから。というか、やっぱアレお前が食ってたのか」

 

『ごめんちゃい♪』

 

 

 

仕舞い込む途中だった銃を一丁取り出して、弾が込められていることを確認し少し身を乗り出して構える御天。その視線の先には、千束を追いかける様にして空を移動するドローンが1機。

 

 

 

「覚えが無いならMA絡みか?それとも、ただの興味本意か......」

 

『ドローン?止まって撃ち落とそうか?』

 

「このままお前を餌にもう少し泳がせようかとも思ったが、リスクに対するリターンが見合ってない気がするからヤメだな」

 

『そこは"千束は俺のモンだ!"くらい言ってくれても良いんじゃない?』

 

「お前も俺も、誰かの所有物になるようなタチじゃないだろ。タイミング見て撃ち落とすから、合図出したら止まってくれ」

 

 

 

軽く返事をした千束は、少しながら遠回りをしつつもドローンにバレないように自然に立ち振る舞っている。そんな中、御天はというとミカに事情を説明して一発だけ射撃許可を得ていた。

 

 

「ふぅ......距離ヨシ風向きヨシ、偏差もヨシ」

 

「お手並み拝見といこうか」

 

「久し振りなので緊張しますね」

 

「私が代わりに撃っても良いが」

 

「それなら撃った後のアドバイスでもお願いします」

 

 

 

ミカと軽い冗談を交えながらも遠い場所で宙に浮くターゲットを正確に撃ち抜く為、細かな微調整と読みを進める御天。千束が信号に差し掛かる手前で、御天は千束へ連絡して撃ち落とすことを伝える。

 

 

「その信号で止まった瞬間撃ち落とす」

 

『おっけー』

 

 

 

信号が青から黄、そして赤へと色を変えてゆっくりと減速し止まる千束。それを確認したドローンも、同じ様に千束から見え辛い場所にて待機し再び動き出すのを待っていた。

 

 

 

そして、再びそのドローンが動き出すことはなく、御天の正確無比な狙撃がドローンの中心を捉え無残な姿で地へと堕ちていく。スナイパーライフルを構えて鋭い眼光でスコープ越しにドローンに狙いを定め、全身で反動を受け流すかのように身体ごと少し後へ退きながら撃ち放った。その一部始終を見ていたミカは、天晴れといった様子で御天を褒め称えた。

 

 

 

『ねぇ外れた?それとも外した?』

 

「前者はともかく後者は意味が分からん。一応堕としたけど、帰ってくる時も周り良く見てろよ」

 

『はいはーい』

 

「......にしても、アイツを追ってたのは偶然か?」

 

「お疲れ様。取り敢えず、私達もここから離れるとしよう」

 

「そうですね。銃は持っていくので、お先にどうぞ」

 

 

 

行きと同じく、ミカが先に階段を降りつつ後ろから御天が着いていく。ビルの細道まで降りて、すぐそばに停めてあった車に乗り込み御天の運転でリコリコへと帰還した二人であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「......ん、了解。また何か分かったら連絡してくれ」

 

 

 

リコリコへ帰ってから、ミカと千束と御天の三人で色々と話し合ったが答えに辿り着けるはずもなく解散となってしまった。千束がリコリスであることを知っている人物の仕業、何かしら千束個人に恨みを持っている人物の仕業、果てには千束のストーカー......等の懸念点が幾つか挙げられたが、今悩んでも仕方ないという結論に至った三人。

 

 

 

それから、御天と千束の二人は家へ帰り現在は千束のお風呂タイム中である。その間、御天は個人用の携帯で誰かと連絡を取り合っている様子であった。

 

 

 

「はぁーさっぱりした!」

 

「ちゃんと髪乾かしてから出てこいよ」

 

「いーじゃん別に。そんで、誰と電話してたの?」

 

「昔馴染みだよ。今回の件で、ちょっとした協力をしてもらおうと思ってな」

 

 

 

それを聞いた千束は何かを察した様子で、未だ濡れている髪をドライヤーで乾かす為に洗面所へと戻っていく。千束の反応も御天には予想がついており、昔馴染みということは少なからずMAやその辺りの組織関係だと推測出来る。それを理解した千束は、あまり深く踏み込もうとせず御天から話してくれるのを待っていた。

 

 

 

そんな千束に心の中で謝りながら、今一度今日の件について自分の中で整理しておこうとソファを立ち上がった瞬間、携帯の着信が鳴り画面を確認して電話に出た御天。

 

 

 

「もしもし」

 

『こんな夜遅くにすまないな』

 

「いえ、丁度暇だったので大丈夫です」

 

『千束は?』

 

「髪乾かしてます」

 

 

 

珍しい夜遅くのミカからの連絡に、何かあったのだと思いテレビの電源を消して声を聞き取りやすくする。

 

 

 

「もしかして、今日の件で何か分かったんですか?」

 

『それはまだだが......先程楠木から連絡があってな』

 

「また厄介事ですか?」

 

『お前からすれば厄介事なのかもしれんな』

 

 

 

ミカの口振りから察するに、千束からしてみればそうでもない様な事だが、御天からしてみれば厄介事に分類される様な事柄なのだろうと溜息を吐きながら渋々話の続きを聞くことにした御天。

 

 

 

「はぁ......それで、その厄介事って何でしょう」

 

『リコリスから一人ウチに異動してくることになってな』

 

「もしかしなくとも、今日現場で軽機関銃をぶっ放してた奴ですよね」

 

『当たりだ。それで千束と、ついでにお前ともパートナーを組んで色々と教えてやって欲しい』

 

「左遷されるようなリコリスに教える様なことってありますかね......」

 

『それを言えば千束も似たようなものだろう?』

 

「アイツは特別でしょう。俺が教えるまでもないですし」

 

 

 

だがしかし、ミカには面倒くさそうな態度を取っている様に見せていても、頭の中ではそのリコリスの行動の裏にはどのような想いがあったのかを御天は見抜いていた。そして、こうして支部で千束や自分が居るリコリコへ左遷させる意味も若干理解出来ている。

 

 

 

要するに、DAの組織としての体裁を守る為の体の良い手段だったという訳だろう。DA上層部の転属の判断は、上に立つ者として間違ってはいない。しかし、やはりそうせざるを得ない所謂"大人の事情"というものが、御天にとっては忌み嫌うべきものでもあった。

 

 

 

「こっちにはいつ来る予定ですか」

 

『明日の予定だ』

 

「そういうところはリリベルと変わりませんね」

 

『それはどういう......?』

 

「いえ、すみません。アイツには伝えておきます」

 

『悪いな。よろしく頼む』

 

 

 

こうして、予想の斜め上をいく展開を迎えた今回の一件。その日は、そのまま千束に続いて御天もお風呂へ入り、1時間も経たない内に布団に入り眠りについた二人。

 

 

 

千束へ事の顛末を伝えると嬉しそうに聞きつつも、途中から何をするか等をブツブツ独り言で考えており半分話を聞いていなかった。しかしながら、そんな楽しそうにはしゃぐ千束を見て、それもアリなのかもしれないと独り考え耽る御天であった。

 

 

 

 

 


Continuation:04→

 

 

 

 






リコリコロスが激しい今日この頃......
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