【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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12.宿命の門が開くときだよ

 二泊三日の温泉宿泊を終え、もとの家へと帰ったハナコ達。その日から、ハナコは精力的に動き出した。早急にフルコースの用意をしなければならないのだ。

 ハナコは月村夫妻に頼み込み、家庭菜園の一時的な拡張を願った。フルコースに必要な食材には果樹も含まれるため、面積が必要なのだ。

 

 ハナコが植物を操る不思議な力で庭を自由にいじれるとすでに理解していた月村夫妻は、それを快諾。即日で庭園の一角が畑に開拓された。

 それから毎日、ハナコは庭いじりにはげんだ。もちろん、料理の練習も欠かさない。そんな中、ハナコの助けになってくれた者がいた。すずかだ。

 最近、すずかは料理の楽しさに目覚め始めており、次元航行艦アースラでのフルコース作りの助手にも立候補していた。

 

 そして、フルコースの提供当日に向けて、慌ただしい日々が過ぎていく。

 

 時には、珍妙な食材に周囲が驚き――

 

「ハナコちゃん、これ海老だよね!? 海老が変な樹からぶら下がっているよ!?」

 

「オマール海老の身が生る樹だよ」

 

「これ植物の仲間でいいの!?」

 

「樹なんだから当然植物だよー」

 

 時には鳥獣の妨害を受け――

 

「ハナコちゃーん! なんだか庭にすごい数のカラスが!」

 

「やらせるかッ! 警備に食鳥植物を生やすよ!」

 

「それ大丈夫なやつ!?」

 

「人間は襲わないよ。近隣から鳥が一切いなくなるかもしれないけど!」

 

「それダメなやつ!」

 

 時には、料理の試作に明け暮れ――

 

「……うう、最近太ったかも……」

 

「ははは、父さんは最近の激務で落ちてきた体重が、どうにか持ち直して助かっているよ」

 

「……私も畑仕事手伝おうかな……」

 

「父さんの仕事を手伝ってくれてもいいんだよ?」

 

「……それは、おいおい。おいおいね……」

 

 そうしてフルコースの準備は、順調に進んでいった。

 

 その一方で、海鳴市の魔法少女、高町なのはも頑張っていた。

 時空管理局の助けを得て、新しく所在が判明したジュエルシードのもとに向かったなのは。場所は再建が進む中心街の一角で、そこで謎の黒服魔導師フェイト・テスタロッサと再び戦闘になった。

 

 なのはは時空管理局の武装局員と協力して、これの捕縛に成功。中心街のジュエルシードも無事回収して、次元航行艦アースラに戻った。

 

 逮捕した魔導師フェイトは、なのはと同年代の少女だ。使い魔を一人連れている。

 彼女達は、以前なのはと取り合って持っていったはずのジュエルシードをどういうわけか所持していなかった。

 

「あの石は、母さんが欲しがっていたものだから……」

 

 フェイトとその使い魔アルフへの聴取で、彼女達に指示を出している存在がいることが判明した。

 プレシア・テスタロッサ。フェイト・テスタロッサの母親だ。

 

 プレシアはフェイトを地球に派遣し、ジュエルシードの回収を行なわせていたという。ジュエルシードの使用目的は不明。

 

 アースラスタッフの照合によると、プレシア・テスタロッサは管理世界出身の魔導師で、魔力駆動炉の違法研究に関わり事故を起こした経歴が残されていた。

 

 時空管理局本局は今回の話を受けて、プレシアのジュエルシードに対する一連の行動が次元法に抵触すると判断。アースラでプレシアの邸宅に家宅捜索を行なうことが決まった

 フェイトからプレシアのもとに二つのジュエルシードがわたっており、これの押収が家宅捜索の主な目的だ。

 

 だが、プレシアの住居は次元座標が不明なまま。フェイトも黙して語らず、主の意を酌んだアルフも口をつぐんだ。

 そこで、フェイトが所有していた魔法使用のためのデバイス『バルディッシュ』が解析に回され、内部のデータを調査。そこからプレシアの所在地が割り出された。

 

 プレシアの住居は、『時の庭園』と名の付けられた次元移動庭園。次元空間内を漂っていると判明した。そこに乗りこむべく、アースラに所属する武装局員達による家宅捜索の用意が進む。

 プレシアは優れた魔導師とされており、時空管理局の捜査に抵抗する可能性もあった。そのため、家宅捜索のメンバーには並みの武装局員よりも力量が高いなのはも含まれており……なのはは気合いを入れてアースラ内の訓練施設で魔法の練習にはげんだ。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 結論から述べると、プレシア・テスタロッサは時空管理局によって逮捕された。

 家宅捜索に入った武装局員達に抵抗し、紆余曲折あって取り押さえられたのだ。

 その時の様子を見せる許可が出たと言って、なのはが月村邸に姿を見せたのは、海鳴温泉に向かった日から二週間が経過してからだった。

 

 なのはに呼ばれてアリサも月村邸へやってきていた。すると、すずかは久方にそろい踏みした馴染みの顔に嬉しくなって、感極まって二人に抱きついた。なのははここ最近、学校を休んでアースラに出向していたのだ。

 

 それから三人で家宅捜索の映像拝見、となるはずが、なのはの頼みでハナコがその場に呼ばれた。一緒に映像を見ようとのことだ。

 フルコース準備の最後の追い上げをしていたハナコは、不満を口にしつつもすずかの隣に座った。

 

 そして、メイドのファリンが淹れる美食茶(グルメティー)を飲みながら、再生が始まった記録映像を皆で眺める。

 

『時の庭園』に踏みこんだ武装局員達を迎えたのは、多くの人形兵器だった。『時の庭園』内に存在するロストロギアの魔力駆動炉によって魔力供給された、一体一体がAランク魔導師に匹敵する兵器群。

 家宅捜索は戦闘へと変わり、プレシアは捜査の妨害をしたとして捕縛対象になった。

 

 武装局員は、駆動炉を制圧する部隊とプレシアを取り押さえる部隊の二手に分かれた。なのははプレシアの身柄を確保する部隊に編入され、兵器を蹴散らしながら『時の庭園』の奥へと向かった。

 

 やがて、なのははプレシアのもとへと辿り着く。だが、プレシアは二つのジュエルシードを起動しており、『時の庭園』を次元震が襲った。

 プレシアを止めようとするなのはだが、本気で砲撃を撃ち込むのははばかられた。プレシアの隣に、巨大なガラスのシリンダーに入った女の子の姿があったからだ。

 

 攻撃に迷いが出ている映像の中のなのはの様子に、映像を見ていた現実のなのはがコメントをする。

 

「プレシアさんには娘さんがいて、名前はアリシアさん。事故で二十年以上前に亡くなっているの。あの女の子は、そのご遺体」

 

『私はアリシアを取り戻す! 忘れられた都、アルハザードで!』

 

「アルハザード?」

 

 映像の中のプレシアが発したセリフの中に知らない単語を見つけ、アリサが首をかしげた。そこへなのはが解説を入れる。

 

「アルハザードは、失われた禁断の魔法が眠る地だって。時空管理局の執務官さんが言うには、おとぎ話の中の存在らしいよ。プレシアさんはジュエルシードを使ってそこに行こうとしていたの」

 

「なるほど、おとぎ話の魔法で生き返らせてもらおうってわけね。気持ちは分かるけど、夢を見すぎよね」

 

 アリサの辛辣な言葉に、一同は苦笑する。

 そして、映像に動きがあった。ジュエルシードの力で、空間に穴が空いたのだ。

 それは、直径五メートルほどの円状の穴。それを見て、プレシアは狂ったように笑い、アリシアをともなって穴に飛びこもうとする。

 しかし。

 

『ッ!? どうして!』

 

 穴はプレシアを通さなかった。逆に、プレシアを押しのけるような斥力が働き、プレシアは弾き飛ばされて倒れた。

 やがて、穴は小さくなっていき……消えてなくなり、ジュエルシードも沈黙した。

 

 その隙をついて、なのはの拘束魔法がプレシアに飛び、動けなくなったところでなのは渾身の集束砲撃魔法が直撃する。

 これによりプレシア・テスタロッサは抵抗する力を失い、身柄確保となったのだった。

 

「おおー、なのはやるじゃない!」

 

「すごいね、なのはちゃん!」

 

 アリサとすずかが歓声をあげ、なのはは照れくさそうにした。

 そして駆動炉の制圧班も仕事をちゃんとこなし、『時の庭園』は沈黙。その後、予定通り家宅捜索が進められた。

 

「と、ここまでが今日したい話の前置きなんだけど……」

 

 映像を閉じながら、なのはが言う。その表情は、どこか憂鬱そうだ。

 

「フェイトちゃんのこと」

 

「フェイトちゃんって、あの黒い魔法使いさんだよね?」

 

 そんなすずかの問いに、なのははうなずく。

 

「フェイトちゃんのお母さんは、プレシアさんなんだ」

 

「ということは、あのアリシアって子の……妹?」

 

 今度はアリサが問い、なのはが答える。

 

「私はそう思いたいんだけど、事情はちょっと複雑。フェイトちゃんはね、アリシアさんの記憶を植え付けた人造生命……作られた命なんだって」

 

 人造生命。そう聞いて、アリサとすずかが顔を歪める。

 しかも、なのはが語るには、プレシアの無聊を慰めるために〝アリシアの代わりのお人形〟として作られたのが彼女だというのだ。しかし、プレシアには誤算があった。フェイトはアリシアの記憶を持っているはずなのに、フェイトの利き手はアリシアとは異なり、人格も全く異なるものになった。アリシアの代わりにはなりえなかった。

 

「それで、プレシアさんはアースラでフェイトちゃんにひどいことを言ったの。あなたのことがずっと大嫌いだった、って。フェイトちゃんにお母さんを愛する記憶をあげたのは、プレシアさんなのに」

 

「それは……」

 

「ひどいわね……」

 

 なのはの言葉に、悲痛な表情を浮かべるすずかとアリサ。

 それからなのはは真面目な顔をして、映像の途中からじっと何かを考え続けているハナコに身体を向けた。

 

「ハナコちゃん」

 

 なのはに呼びかけられて、ハナコは思考を中断させてなのはを見る。

 

「ん、何かな?」

 

「フェイトちゃんが、プレシアさんにひどいことを言われてから、ずっとご飯を食べていないの。だから、お願い。フェイトちゃんが元気になるご飯、食べさせてあげてほしい」

 

 なのははハナコの目を真っ直ぐと見て、そう頼み込んできた。

 食事か。ならば、自分の出番だ。そう判断したハナコは、なのはにいくつかの頼み事をして、アースラへ向かうことを決めた。

 

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