【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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21.ギガうまな出会いだよ

 グルメ研究は順調に進み、時は過ぎ、肉質の向上した動物が無人世界マウクランに少しずつ増え始めていた。

 農園も無事完成し、日々生産される野菜や果実、穀物を時空管理局本局や地球の次元世界系コミュニティに流して研究費を稼ぎ、研究用の資材をどんどん購入していた。

 そして、十一月の中旬。地球のカレンダー上では平日のある日、ハナコは一人、マウクランへと飛んでいた。

 

 研究所の廊下を進み、食堂へ。そこではDr.ゼロが娘のナンバーズ達と料理研究を行なっており、ハナコは邪魔しないように食堂の角へと移動する。

 そこには神棚が設置されており、ハナコはそこへ向けて手を合わせて祈りを捧げた。

 

「ユーノさんが、食運に恵まれますように!」

 

 そう言って、ハナコは美食の神々に祈願した。

 

 ハナコがいた世界では、宗教と言えば美食神アカシアを祀るのが一般的であった。

 だが、ハナコは、人間の美食屋が神格化された存在である美食神アカシアには祈らない。

 

 この世界はハナコがもといた地球の並行世界だ。ならば、こちらには美食神アカシアは存在しない。数億年前に分岐し別の歴史を辿った地球には、アカシアは生まれてこなかったはず。ハナコはそう考え、神棚にアカシアの像は置かなかった。

 代わりに、美食の神々に対してハナコは祈る。一三七億年前に『グルメビッグバン』が起こる以前、『最果ての地』で暮らしていたという本物の美食の神々。その彼らなら、きっとこちらの世界でも存在しているはず。だからハナコは、美食の神々にユーノ・スクライアの食運が上がるよう願った。

 

「おや? ハナコか。確か今日は平日のはずではなかったか?」

 

 食堂のキッチンから出てきたナンバーズの一人、銀髪少女チンクがハナコに気づいて声をかける。

 声をかけられたハナコは、神棚に拝むのを止め、振り返った。

 

「ああ、ちょっと食材を取りに来たんだよ。明日、送別会があるから」

 

「ふむ。送別会か。学校とやらの関係か?」

 

「いや、ユーノさんっていう前にここに来た男の子が、地球から時空管理局の本局に行っちゃうから、そのお別れ会だね」

 

「ああ、あの考古学一族の……」

 

「うん。半年前にあった事件の裁判に証人として呼ばれているらしいんだ。そしてそのまま、地球には帰ってこないみたいだから」

 

「なるほど。それなら美味しい料理で送り出してやるべきだな」

 

 そんな会話を交わし、ハナコは神様への挨拶も終わったので食材庫に向かうと言って、食堂から出ていこうとした。

 すると、チンクは手伝いを申し出て、一緒に廊下を歩いていく。

 

 ロボットが時折通りかかる廊下を行きながら、チンクはハナコにグルメ研究の進捗を話す。

 

「新作のナスが、遺伝子異常を起こしたみたいなんだが……」

 

「ああ、じゃあわたしがそれ食べてみるよ。わたし、病気になった植物を食べたら健康な姿が分かるんだ。その健康なデータをもとに調整してみて」

 

「そんなこともできるんだったな……食料庫に収穫したナスがあるから、早めにデータを送ってくれ」

 

「了解ー」

 

 そして、食料庫に到着すると、ハナコは用意してあったダンボールに野菜や果物を詰め始める。

 チンクはハナコが予定している料理を聞きながら、野菜類の運搬を手伝った。

 やがてダンボールは一杯になり、ハナコは満足げに笑みを浮かべた。

 

 食料庫から出てダンボールを抱えたままハナコが転送施設に移動しようとした、そのときだ。ハナコとチンクの目の前に、Dr.ゼロからの通信画面が開いた。

 

『ハナコ君、少し良いかな?』

 

「ん? 研究の話なら次来たときにしてほしいけど」

 

『残念だが、そうじゃない。この世界に侵入者だ』

 

「は? 侵入者?」

 

 ゼロの想定外の言葉に、ハナコは困惑する。侵入者って、何しに? ハナコは本気で不思議がった。

 

『第三ビオトープで、空色トータスのボスが魔導師に狙われている』

 

「あそこのボスというと……スミヨシさんが!? まさか、密猟者?」

 

『だろうね。どこからこの世界の話を聞きつけたのか……肉はまだ出荷していないというのにね』

 

 ゼロがそう言うと、現地の映像がハナコ達の前に投影された。

 赤い服の小さい少女が、空色の甲羅を持つ巨大な亀にハンマーで攻撃している様子が映っている。

 

「スミヨシさん達は、わたしだってまだ食べていないのに! 許すまじ!」

 

『では、捕縛に向かうかね? 輸送機なら出せるよ』

 

「いや、時間が勿体ないから直接向かうよ。博士はそのままモニター続けていて。チンクさん、このダンボール、転送施設の前に置いておいてね」

 

 ハナコはそう言ってダンボールをチンクに渡すと、その場で両腕を横に広げた。

 すると、ハナコの両の手のひらから、時空の歪みが発生する。

 

「向かうは第三ビオトープ! 『ワープロード』!」

 

 ハナコは、『星のフルコース』の食材、ニュースを食べて得た『裏のチャンネル』を作り出す能力で、目的地への道を作り出した。

 そして、できた道を通ることで、ハナコは遠く離れた第三ビオトープへとワープするのであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ハナコがワープによって現場に到着したとき、密猟者の少女は殺した空色トータスから光る何かを取り出していた。

 ハナコは、肉を運ぼうとした瞬間捕まえてやる、と気配を消す。しかし、少女はなぜか、宙に浮きその場から立ち去ろうとした。

 

「こらー! 密猟者ー!」

 

 ハナコはとっさに腕からツタを生やし、空を飛ぶ少女に絡みつかせた。

 

「んなっ!? くっ、離せこの!」

 

 少女は暴れるが、ツタは頑丈でほどける様子はなかった。

 やがて、ツタは少女の全身をグルグル巻きにし、地に落とした。

 

「ふー、密猟者確保!」

 

「くそっ! 無人世界じゃなかったのかよ!」

 

 ツタに両手両足を拘束され、地面の上でのたうちまわる少女。

 そんな少女に、ハナコは近づいていく。

 

「密猟者さん、反省しましょうねー」

 

「密猟者? ……ああ、密猟か。そうだな。悪かったよ。謝るから離してくれよ」

 

 地面に転がりながら、ハナコの顔を見つめて懇願してくる少女。

 そんな少女の言葉を受けて、ハナコは目を空色トータスに向けた。空色トータスは、甲羅を砕かれて完全に死んでいた。

 それを見つめながら、ハナコは少女に言う。

 

「密猟も許せないけど、それよりもあれ! 生き物を仕留めたのに、肉を持ち帰ろうとしてなかったことが許せないよ!」

 

「えっ」

 

 ツタに捕らえられて顔だけ露出した少女が、驚きで声を上げる。そんな彼女に、ハナコは説教をするように告げた。

 

「このスミヨシさんはわたしが大切に育てたお肉! それを狩ったんだから、あなたにはこのお肉を食べる責任があります」

 

「ええー……」

 

「というわけで、解体するから手伝って!」

 

 そう言って、ハナコは少女のツタを解いた。

 急に解放された少女は驚きながら立ち上がり、そして空に浮こうとしたところで、ハナコに鞭のようにしなったツタで打たれた。

 

「お肉を食べるまで帰しません!」

 

「……分かったよ。ちゃんと帰してくれるんだな?」

 

「こっちには密猟者を罰するような権限がないからね。スミヨシさんの被害は泣き寝入りだよ」

 

「……すまねーな」

 

 そんなやりとりを終えてから、数十分が経ち……。

 

「ギガうまだな! お前の料理マジで美味い! はやてのご飯にも負けてねえ!」

 

 第三ビオトープに用意してあった研究施設で亀肉料理を作ったハナコは、ヴィータと名乗った少女と一緒に食事を取っていた。

 

「はやて?」

 

「あっ……、いや、なんでもねえ! お前料理上手いな!」

 

「いや、これはお肉がいいんだよ。特別製のお肉なの」

 

「へえ?」

 

「それを知らないで狩りをしていたみたいだけど、この無人世界マウクランは、グルメ研究を行なっている場所なの。要は、美味しいお肉を作るための実験世界」

 

「なるほどー。だからこんなにうめーのか」

 

 ガツガツと亀肉を平らげていくヴィータに、ハナコはほっこりとした気持ちになった。

 そして、食事も終わり、自分の世界に帰ると言ったヴィータに、ハナコはお土産を持たせることにした。

 

「はい、お土産の亀肉」

 

「お、おう。すまねーな」

 

 大きな葉っぱに包まれた肉塊をヴィータは素直に受け取る。

 そして、ヴィータに向けてハナコは言う。

 

「残りはこっちで食べるけど、構わない?」

 

「ああ、もともとお前の亀だしな。……ところで研究をしているって言ったけど、お前はこの世界の住人か?」

 

「んー、管理者ではあるけど住人ではないかな」

 

「管理者なのか! なあ、ちょっと頼みがあるんだ」

 

 ヴィータがハナコの答えに食いつき、顔を近づけて迫った。

 ハナコはそれを両手で押さえ、落ち着いて話すようにさとす。

 

 するとヴィータは、はっとなって顔を遠ざけ、ゆっくりと話を始めた。

 なんでも、リンカーコアの採取とやらをこの世界の生物から今後も行ないたいというのだ。

 それに対し、ハナコは少し考え込んでから言った。

 

「それってその生物を殺す必要ある?」

 

「いや、今回は激しく抵抗されたから仕方なく殺したけど、基本的に殺す必要はねーな」

 

「殺さないならやっていいよ」

 

「本当か! ありがとうな!」

 

 ヴィータは、肉の包みを両手で握りながら、その場でピョンピョンと跳ねた。

 

「もし定期的に来るなら、残りの亀肉をこの施設の冷凍室に保管しておくから、来たときに自由に持っていっていいよ」

 

「お前、いいやつだな!」

 

 そんなやりとりをした後に、ヴィータは肉を持ってどこかへと去っていった。

 そして、ハナコも亀肉を冷凍室に収納した後、肉を一塊持って研究所へと戻った。

 

「ただいまー。スミヨシさんのお肉、持ってきたよ」

 

 食堂にハナコが顔を見せると、ナンバーズとゼロがそろって亀肉料理の準備を進めていた。

 ハナコは彼らに肉を渡すと、第三ビオトープで何があったかをゼロに話していく。

 

「ふむ、『闇の書』の守護騎士プログラムか」

 

「ん? 何か言った?」

 

 ゼロがポツリと口にした単語に聞き覚えがなかったハナコは、彼に聞き返す。

 

「いや、君は特に気にしないでいいよ」

 

 そう言って、ゼロは亀肉の調理をナンバーズ達と一緒に始める。

 ハナコも、いい加減帰宅しなければ、と食堂を後にした。

 

 こうして、ハナコと守護騎士ヴィータの出会いがあり……その一方で、リンカーコアを狙った魔導師襲撃事件が管理世界で騒がれ始めていた。

 


 

空色トータス(爬虫獣類)

捕獲レベル:10

オリジナル食材。無人世界マウクランの固有種である巨大亀に、グルメ細胞を直接植え付けた実験生物。群れを作って生活している陸亀で、グルメ細胞を含む草を好んで食べる。空色をした頑丈な甲羅を持つが、甲羅の下にある肉と内臓は上質な味に仕上がっている。リンカーコアを持ち本能で魔法を使用するため、もし敵対すれば空を飛んで魔力砲撃を連発する装甲戦車と戦う気分が味わえるだろう。

空色トータスという名称は見た目からとった仮称で、ハナコとDr.ゼロは生態や肉の味を調べてから正式名称を考えるつもりのようだ。

 




Reflection/Detonationの設定資料集を買ったら中身は作画資料で、思ってたのと違うってなりました。次は映画パンフレットを買ってリベンジです。今度こそ時空管理局東京臨時支局の設立理由が載っていると信じて……!
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