【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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研究少女ハナコReflection/Detonation
31.新しい季節の再会だよ


『闇の書』の事件が収束してから三ヶ月と少しが過ぎ、四月となった。ハナコは相変わらず海鳴市で小学生を続け、週末にマウクランに向かう生活を続けていた。

 そんな彼女の生活に、今回ちょっとした変化が現れる。

 

 すずかやアリサ、なのはにはやてという仲の良い同年代の友人達に、新たな顔が加わることになったのだ。

 その子の名は、フェイト・テスタロッサ。ちょうど一年前に、なのはとジュエルシードをめぐって争った別の世界出身の魔導師だ。

 

 彼女がなぜここ海鳴市に再びやってきたのか。これには順を追って説明する必要がある。

 

 まず、彼女はジュエルシード事件の最中に、なのはと時空管理局の武装局員達に逮捕された。

 その後、次元犯罪者として時空管理局の裁判にかけられたわけだが、先日ようやく判決が出た。判決は保護観察処分。保護観察官に監督されながら、通常の日常に戻ってよいとされたのだ。

 

 だが、通常の日常と言っても、唯一の保護者であるプレシア・テスタロッサはジュエルシード事件の主犯格として現在も裁判中。そして、プレシアの判決は長期間の幽閉になるとの見込みのため、保護者を別に用意する必要が出てきた。

 そこで名乗りを上げたのが、先日の闇の書事件を解決してから次元航行艦アースラの艦長を辞した、リンディ・ハラオウン提督だ。

 彼女は現在、本局勤務の総務部次長。一児の保護者、及び保護観察官となるだけの時間的余裕があった。

 

「ジュエルシード事件は、私の担当事件だったから責任があるわ」

 

 そう宣言したリンディは、無事にフェイトの保護者の座に納まった。

 

 そして、どこでフェイトという幼い子供を育てるべきかという話になった。フェイトは元々、第一管理世界ミッドチルダのアルトセイム地方にある辺境でプレシアと共に暮らしていた。

 だが、そこに戻すことには問題があった。周囲に自然しかなく、同年代の他者と交流ができる環境にないのだ。

 では、ミッドチルダの首都圏に移住させるか。この案には、実母のプレシアが否を唱えた。

 

「このままミッドチルダで生活させても、あの子は大罪人の子供として扱われる。あの子のことを想うなら、裁判結果が届かないような辺境世界に連れてやってちょうだい」

 

 メンタルの治療によって平静を取り戻し、フェイトに対する認識をいくらか改めたプレシアが、そう語った。

 その意を酌んだリンディは、管理外世界である地球の海鳴市へフェイトを連れて移住することに決めた。

 海鳴市には、フェイトと心を交わしたなのはとハナコがいる。彼女達と一緒ならば、フェイトは健やかな心と体に成長することだろう。リンディはそう考えたのだ。

 

 それから管理外世界に住むというとても面倒な手続きを提督という権限をもってこなし、リンディとフェイトは海鳴市にある高級マンションに移り住んだ。

 

 そしてリンディは、同年代の友人達と交流するというフェイトの一つの目標のために、フェイトを小学校に入れることにした。

 ハナコやなのはと同じ、私立聖祥大学付属小学校だ。学年も同じく、四月から四年生となる。

 

「テスタロッサさんは海外からの転入生です。日本の生活に慣れていないので、フォローをしてあげてくださいね」

 

 始業式の日、新しいクラスで自己紹介が行なわれる中、フェイトの自己紹介が終わると共に、担任教師がそんなフォローを入れた。

 外国人の転校生。珍しい存在に、クラスメート達は一気に興味を深めた。

 

 明確な異分子なので、いじめに発展する可能性もある。だが、そうならないよう、学校側は配慮を行なった。クラスメートとして、フェイトの知り合いのなのはとハナコを配置したのだ。

 ちなみに、このクラスにはすずかとアリサも所属している。なぜ、このメンバーが同じクラスに固まっているのか、それには明確な理由がある。それは……。

 

「さて、皆さん。最後まで自己紹介が終わりましたが、今日は通院のためお休みしている子が一人居ます。八神はやてさんといって、明日からの登校となります」

 

 はやてもこのクラスの一員となったからだ。

 

「八神さんは現在、病気のリハビリの最中です。しばらくの間は車椅子登校となりますので、皆さん、率先して手助けしてあげてください」

 

 車椅子生活の不便や、異分子を排除しようとするいじめを心配した学校側が、はやての友人であるすずか、アリサ、なのは、ハナコを一つのクラスにまとめたのだ。

 クラスの女子の半数近くが一つのグループにまとまることに対する懸念はあったが、それでも学校側は彼女達を一緒にすることを選んだ。

 担任教師もベテランが選ばれており、学校側の本気がうかがえた。

 

 そんな裏の事情があるとは露も知らず、放課後、ハナコ達は一緒のクラスになれたことを喜んでいた。

 

「うふふ、フェイトちゃんと一緒のクラスだー」

 

 昇降口で上履きから外靴に履き替えながら、なのはがほわほわとした声で言う。

 

「うん、嬉しい」

 

 慣れない靴の履き替えに戸惑いながら、フェイトが答える。

 すると、先に靴を履き替えて待っていたアリサが、フェイトに向けて言った。

 

「これから友人としてよろしくね! まあ、フェイトとは何度もビデオメールでやりとりしたから、もう親友って感覚なんだけど」

 

 この一年間、なのはは裁判中のフェイトとビデオメールを互いに送り合っていた。

 近況の報告が主で、撮影のメンバーによくアリサとすずか、ハナコが借り出されることがあった。最近では、そのメンバーにはやてと守護騎士(ヴォルケンリッター)も加わっていた。

 そのため、フェイトは問題なく、アリサ達の仲良しメンバーの一員として入り込めている。

 

「よろしく、アリサ」

 

「うん!」

 

 靴を履き替え終わり、五人は昇降口から外に出る。

 本日は快晴で、春の陽気が眠気を誘ってくる。

 

「良い天気ねー。眠くなってくるわ」

 

「授業中に寝ないようにね」

 

 空を見上げながら言ったアリサに、すずかが冗談めかして軽いコメントを入れる。

 

「大丈夫よ! それより、こんだけ天気がいいとお花見をやりたくなってくるわね」

 

 そのアリサの言葉に、ハナコがピクリと反応する。

 

「お花見! 楽しみにしていたのに、雨ばっかりで……」

 

 そう、ハナコはずっと今年の花見を楽しみにしていた。花見に相応しい料理をすずかと一緒に考え、秘かにマウクランで新食材も作りだしていたのだ。それが、ことごとく雨で中止になった。

 

「それなら、今週末にやる? もうだいぶ花は散っちゃったけど、まだ残っているところがあるみたいだし」

 

「やるー!」

 

 アリサの提案に、即座にハナコが飛びついた。

 

「で、他のみんなはどう? 参加できそう?」

 

 アリサが聞くと、各々が大丈夫と答えた。急な開催なので家族の参加は難しいかもしれないが、小学四年生は基本暇なのだ。

 そして、どこで開催するかをすずかと話し合ったアリサが、皆に言う。

 

「それじゃあ、それぞれの家族に参加できるか聞くこと。知人友人もドンドン呼んでね。はやてへの連絡は、誰がする?」

 

「今日は病院だっていうから、わたしの携帯で連絡できるよ」

 

 すずかが、スカートのポケットから携帯電話を取り出しながら言った。はやては闇の書事件の事後処理で、別の次元にある時空管理局に出向いていることがあるため、たまに連絡がつかないのだ。

 

「じゃあ、頼むわ。うちのパパとママはどうかなー。急な予定じゃ無理かなぁ。フェイトは親……じゃなくて、保護者のリンディさんも誘ってね」

 

 アリサがそう言うと、フェイトは「うっ」とひるんだ。

 それを見て、アリサは呆れたように言う。

 

「フェイト、まだリンディさんと打ち解けてないの?」

 

「向こうは優しくしてくれているけど……どう接していいか分からない」

 

「そんなの、甘えちゃえばいいのよ。相手は保護者で、わたし達はまだ子供なんだから」

 

 笑顔で言うアリサのセリフに、すずかはふと先日あった小さな出来事を思い出す。

 

「アリサちゃん、この前、子供扱いされて怒ってなかった?」

 

 アリサを子供扱いしたのは、八神家のシグナムだった。あの時は、何が原因だったか……と思い返す、すずか。

 

「いいのよ! 都合のいいときにだけ子供になれるのが、今のわたし達の特権よ!」

 

 十歳とか九歳って、大人と子供の立場を切り替えられるような年齢かな? と、すずかは思ったが、口には出さなかった。

 少なくとも、今度誕生日を迎えて十歳になるハナコは、立派に大人として研究者を続けていると気づいたからだ。

 だが、そのハナコは普段、とても子供っぽいことをすずかは知っている。そう、たとえば今も……。

 

「お花見楽しみだなー。どれくらいお弁当持っていけばいいかな。ね、フェイトさん。フェイトさんってご飯どれくらい食べる?」

 

「え、そ、そんなには……」

 

「いっぱい食べなきゃダメだよー。もう、こんなに細いんだから、少しくらい太らなきゃ」

 

「太るのは嫌かな……」

 

「えー、女の子は、少しくらいふくよかなくらいがモテるそうだよー」

 

「ハナコちゃん、そのへんでストップね」

 

 フェイトにウザ絡みをしているハナコに、すずかは近づいて脳天チョップを入れる。そして、「おうっ」と変な声を出したハナコに笑いながら、すずかは花見で出す弁当の献立を考え始めた。

 ハナコと出会って丸一年。この一年で、すずかは大きく変わった。

 ぼんやりとしていた将来の夢が料理人という道に定まったこともそうだし、新しい友達を得たこともそうだ。そして、最近ではグルメ細胞が馴染み始めたのか、身体能力がより向上してきた。

 

 自分を変えてくれたハナコにあらためて感謝を伝えることは気恥ずかしいが、せめて花見ではハナコが喜ぶ料理を出すことにしよう。すずかはそう考えながら、はやてを花見に誘うメールを携帯電話で打ち始めた。

 

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