【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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51.地上の勇士はグルメだよ?

 忍の子供が無事に産まれた。

 性別は女の子で、忍と恭也の夫妻が相談し『(しずく)』と命名された。

 

 初孫の誕生に、月村俊と月村春菜の夫妻は大喜び。次の子供が産まれたら自分達が名前を付けたいなどと、早速、二人目の話をして忍に呆れられていた。

 

 すずかとハナコも、もちろん新しい命の誕生に喜んだ。

 そして、少しでも育児の助けになろうと、ヴィヴィオで学んだ育児法を実践しようとしたが……ヴィヴィオは生後十ヶ月の状態でマウクランに来たため、生まれたての赤ん坊にその知識は役立たない。結果、すずかとハナコの二人は、忍と一緒に雫に振り回される毎日を送った。

 

 そして、慌ただしく時間は過ぎていき、ハナコは二年生の修了式を迎えた。

 来年度からいよいよ中学三年生。本来なら受験生となるが、私立聖祥大付属はエスカレーター式の学校のため、受験は不要で高校に上がれる。なので、余裕を持った一年を過ごせそうだと、ハナコは友人達と話していた。

 

 なお、時空管理局の局員となったなのは、フェイト、はやては、中学卒業と共に海鳴市を去る予定を立てている。

 本格的に時空管理局の仕事を始めるために、第一管理世界のミッドチルダに移住するつもりなのだ。

 地球での最終学歴は中卒ということになってしまうが、次元世界の存在が日本では知れ渡っているため、その後の経歴も日本でしっかり通用する。時空管理局でしっかりとキャリアを積めば、エリートコースを進んだ人間として地球の人々から一目置かれるだろうと、フェイトの保護者であるリンディは話していた。

 

 そんな時空管理局だが、本日、ハナコは彼らのミッドチルダ支部である地上本部で会食の予定が入っていた。

 終業式を終えて月村邸に帰って早々、ハナコはフォーマルな格好に着替え、転送施設にやってきていたリンディと顔を合わせる。

 

「あら、大人っぽい格好も似合うようになったわね」

 

 リンディに服装を褒められ、ハナコは素直に笑みを返した。

 そして、リンディと共に転送施設を使い、次元世界の中心地、ミッドチルダへ移動する。

 地球とミッドチルダは次元的に距離があるため、本局を経由することになる。

 

 その間、転送待ちがあるため、自然とリンディとの会話が発生することになるのだが……リンディは不意に、ハナコが予想もしていなかったことを口にした。

 

「実は、ジュエルシードが盗まれたの」

 

「えっ、ジュエルシードって確か、何年も前に海鳴市に落ちてきたロストロギアだよね?」

 

「そう。そのジュエルシードが、保管先から地方へ研究のために貸し出されていたのだけど……」

 

「見事に盗まれたと」

 

「そうなのよ。で、盗まれたのは一個だけで、シリアルナンバーは〝XIV(14)〟」

 

「全部で二十一個あるんだったかな?」

 

「ええ。で、このシリアル〝XIV〟だけれど……これって、ハナコさんが一時期身につけていたという記録がある番号なのよね」

 

 リンディのその言葉を聞いて、ハナコは「ジュエルシードなんて身につけていた事があったか?」と記憶を探る。

 そして、思い出す。月村邸の庭を耕しているときに拾って、何日間かペンダントにして首から下げていたことを。そのジュエルシードは、ハナコの願いを叶えようとリーガルマンモスの幼体になり、フェイトに回収されていった。

 最終的にはプレシアの手に渡り、魔力を流されて起動したことで『食霊の門』をプレシアの居城に作り出すことになった。

 

 そんなシリアル〝XIV〟のジュエルシードが盗まれた。

 だが、ジュエルシードは出力が不安定なロストロギアで、願いを叶えるという本来の機能は正常に働かないはずだ。なぜそんな欠陥品を盗んだのか、ハナコは不思議でならなかった。

 

「何か心当たりは?」

 

 リンディがそう尋ねてくるが、ハナコは心当たりなどてんでなかった。

 そんな不可解な事件を聞かされながら、ハナコ達はミッドチルダの時空管理局地上本部に到着した。

 

 そして、そのまま会食の席へと案内された。

 以前ならばハナコが会食に呼ばれることなどなかった。だが、ハナコが十四歳というミッドチルダでは働き始めても問題がない年齢になったことにより、こうして方々に呼ばれることが増えてきた。

 ハナコとしてはDr.ゼロに外交面は全て投げ出したいところであるのだが、彼は元違法研究者。素顔が失われているとは言え、管理世界の人と直接顔会わせさせるには無理があった。

 

 今回の会食の主催は、時空管理局地上本部。地上本部は、次元世界全体を守る本局とは違い、一つの世界を専念して守る部署である。ここの場合、第一管理世界ミッドチルダを担当している。

 ミッドチルダでは、近年マウクランからの食料輸入が盛んになってきており、マウクランの農園にもミッドチルダからの出稼ぎ農夫が何人も訪れていた。

 マウクランの農園には、地球のグルメエイジ社からも人が派遣されており、地球人とミッドチルダ人の間で自動翻訳装置を使って交流が盛んに行なわれていた。ハナコが見るに、そのうち異世界婚をする人が出そうだったが、彼女としては人の恋路に介入する気はない。

 

 少なくとも、ミッドチルダ人と地球人は交配が可能なほど種が近く、食性も完全に同じであった。

 そのため、今日の会食も、種の違いによる料理の味の違いという心配はしなくてよい。だからか、ハナコは気楽な姿勢で会食に臨んでいた。

 

 会食の参加者は、ハナコとリンディを含めて六名。

 その中で一番偉い者が、地上本部の首都防衛隊代表であるレジアス・ゲイズ中将だ。地上本部におけるトップだが、ハナコに対する人当たりは柔らかい。

 以前はやてからハナコが聞いたところによると、非常に厳格な人物らしい。だが、ハナコとしては恰幅のいい優しいおじさんというイメージしか湧かなかった。

 

「儂は、特にこの海老が好きでな」

 

 レジアスは、ヒゲをたくわえた口元をゆるめながら、大ぶりの海老の身をナイフで切り分けた。

 それを見て、ハナコは食材に当たりを付ける。

 

「オマール海老の身が生る木の海老ですね。こう見えて、木の実なんですよ」

 

「らしいな。実に、グルメ細胞とは不可思議なものだ」

 

 そう言って笑いながら、レジアスは切り分けた身をフォークに刺して口へと運ぶ。

 そして、強面が笑みに包まれた。本当に、この海老が大好きなのだろうと、ハナコは理解した。

 

 にこやかに会話をするレジアスとハナコだったが、他の地上本部からの参加者は緊張しているのか、どこか動きが固い。

 会食には、地上本部の者がレジアス以外に三名同席している。地上本部の幹部達……ではなく、レジアス曰く、地上本部の首都防衛隊に所属するエース達らしい。

 名前はそれぞれ、ゼスト・グランガイツ、クイント・ナカジマ、メガーヌ・アルピーノといった。

 

「ほれ、ゼストも、もっと食わんか」

 

 レジアスが、隣に座るゼストを急かすようにそう告げる。

 

「あ、ああ……」

 

「たくさん食わんと、グルメ細胞も適合せんぞ」

 

「そうだな……うむ、美味い」

 

 レジアスに促されて、ゼストはスプーンでスープをすくって口に運んだ。

 そこへ、ハナコがそのスープの食材にまつわる小話をはさみ、場の空気が明るくなる。緊張していたゼスト達も、次第に会食に慣れてきたのか、現在注力している事件について話せる範囲でハナコに聞かせてきた。

 

 すると、ハナコは聞き覚えのある単語を耳にすることになった。

 ゼストによると、レリックというロストロギアを巡って、ミッドチルダで自律兵器による襲撃事件が起きているらしい。さらには、自律兵器の親玉らしい怪しいヘルメットの女性が現れ、武装局員達が何人も撃退されてしまったとのこと。

 ゼストもそのヘルメットの女性を捕まえるために戦ったが、相手の身体能力がすさまじく、みすみす逃してしまうことになった。

 

膂力(りょりょく)も素早さも俺より上だった。あれはもしかすると、グルメ細胞に適合した犯罪者なのかもしれん」

 

 ゼストは苦々しい顔をしながら、パンをちぎって口に運んだ。すると、パンが美味だったのか、すぐに表情がゆるいものへと変わった。

 

「グルメ細胞の適合者ですか。そうなると、肉弾戦で挑むのは不利でしょうね」

 

 ハナコがそうコメントを入れると、ゼストはうなずいて言葉を返してくる。

 

「俺も早急にグルメ細胞と適合して、これに当たらねば……」

 

 そう言って、パンを噛みしめるゼスト。

 だが、それにはハナコが苦言を呈する必要があった。

 

「直接注入でもしない限り、グルメ細胞の適合は長期戦ですよ。そして、直接注入は下手すると死にます。なので、諦めて毎日マウクランの食材で美味しい食事を取ってください」

 

「むう……」

 

 眉をひそめるゼストだが、そうしたところでグルメ細胞が適合するわけでもない。ハナコは、言って聞かせるようにゼストに語る。

 

「私が住んでいる世界に、恭也という名の武人がいます。その彼も、毎日コツコツとグルメ細胞を摂取し続けて、結果、無事に適合しました。諦めないで続けることが肝要です」

 

「む、グルメ細胞に適合した武人か……手合わせしてみたいものだ」

 

「その人は魔法が使えないので、さすがに空を飛べるグランガイツさんが圧倒的有利ですが……向かい合って地上で戦うなら、どちらが勝つかは私にも分かりませんね」

 

「そこまでか! むぅ、魔法を使わぬ武術、奥が深いものだ……」

 

 そんな会話をハナコがゼストとしていると、クイントという女性も武術に興味があったのか、ハナコに恭也の話をせがんでくる。

 クイントはローラーシューズ型デバイスを履いて格闘する魔法戦闘スタイル『シューティングアーツ』が得意なようで、身体能力が上がるというグルメ細胞の適合にも意欲的だった。

 もう一人の参加者であるメガーヌも『近代ベルカ式』と呼ばれる、古代ベルカの魔法を現代風にアレンジした戦闘術を使うようで、ぜひともグルメ細胞に適合したいと語っていた。

 

 その三人を見て、ハナコはなるほどと納得した。

 レジアスは、この会食で三人のエース達に、グルメ細胞に関する解説をしてもらいたいと思っているのだろう。ハナコはそう解釈した。

 ゆえに、ハナコは自分が語れる限りのグルメ細胞に適合する方法と、適合後にやるべきことを語っていき……結果、ハナコは地上本部のエース達に気に入られるのであった。

 

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