【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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54.姫は楽園にてたわむれる

 冒険開始早々、巨大な獣の襲撃で足を止めたハナコ達一同。

 すずかの活躍で仮称ムーンビーストは仕留められ、彼女達は本来の目的であるブドウ探しに、島の奥へと進み始めた。

 

「はー、なかなかスリリングな島ですねぇ。慎重に歩かないと……」

 

「あ、クアットロさん。そこ危ないよ」

 

 周囲を警戒しながら歩くクアットロに、ハナコが不意に声をかけた。

 その声を聞いたクアットロは、とっさに歩みを止める。すると、突然、クアットロの前方の地面から炎が吹き出した。

 

「な、なにごとー!?」

 

 クアットロの叫びに、ハナコが言う。

 

「ここから先は、地面から炎が吹き出すフレアゾーンだよ。気を付けてね」

 

「なんで山でもないのに噴火が!?」

 

「噴火というか、間欠泉的なものかなー」

 

「火が出る間欠泉があるぅ!?」

 

「あるんだよなぁ。ちなみにマウクランの自然現象としては危険度は中ってとこかな」

 

「研究所の外、魔境過ぎない!?」

 

 ハナコの言葉に、次々と突っ込みを入れていくクアットロ。

 だが、ハナコはその突っ込みを笑って流す。

 

「土地レベルでグルメ細胞が馴染んでいるせいだねー」

 

「グルメ細胞が……」

 

「地殻や地表へのグルメ細胞の植え付けは、全部、ゼロ博士がやったんだよ? つまりこの状況は博士のせいだね」

 

「おおお……ドクター、あなたのせいで今、愛しの娘が大ピンチですよぉ……」

 

 クアットロは、震えながらエネルギーを自身の身体にまとわせて防御を整え、のんきに歩き始めたハナコとすずかの後を必死で追う。

 火に飲みこまれそうになるたび、すずかが救出してくれたため、クアットロはなんとか無傷でフレアゾーンを越えた。

 ちなみに、ハナコは笑っているだけでクアットロを助けはしなかった。クアットロが着ているDr.ゼロ特製のナンバーズ用戦闘スーツは炎の間欠泉程度では破れないと、普段の冒険でセインを見て理解していたからだ。

 

 そして、その後も空から飴の隕石が降り注ぐゾーンを越え、何倍もの重力がかかるゾーンで触手の生物を撃退し、ようやく山の麓に到着した。

 さっそく周囲を探るハナコ達だが、あっさりと目的のキラ星ブドウが見つかった。

 

「ようやく見つけましたよっ……!」

 

 親の仇でも見るような表情で、キラ星ブドウに近づくクアットロ。

 しかし、その怒りの表情は長続きしなかった。キラ星ブドウが、あまりにも美しかったからだ。一面に実るキラ星ブドウは、太陽の下であっても夜空の星々のごとき(きら)めきを見せていた。

 

 クアットロは、しばらくボーッとした顔で、キラ星ブドウを見つめる。

 すると、その横でハナコとすずかが早速収穫を始めたため、クアットロはハッとして自分のすべきことを思い出す。そしてクアットロは、疲労で一杯の体に鞭打ち、キラキラと輝く星形の粒が連なるブドウを収穫し始めた。

 

「はあ、帰ったらすぐにヴィヴィちゃんに食べさせるんだから……」

 

 ヴィヴィオの笑顔を想像しているのか、クアットロはなんとか気力を振り絞ってハナコが持参した容器にブドウを詰めていく。

 だが、一緒に収穫作業をしていたハナコが、横から言う。

 

「今日食べるのは無理かなぁ」

 

「なんでよっ!」

 

「だって、初めての食材だからね。毒がないか調べないと」

 

「毒……」

 

「野生の食材だもん。毒がある食材なんて、無数にあるよ」

 

「ううーん、これがもし毒だったら、ヴィヴィちゃんが悲しむ……ヴィヴィちゃんのお星様……」

 

 しょんぼりと肩を落とすクアットロに、あわててハナコが言う。

 

「大丈夫、私の直感だと、このブドウは美味しいよ。ね、すずかさん」

 

「うん、美味しく調理できそうな予感がありますよ」

 

 その言葉に、気力を取り戻したのか、クアットロは収穫のペースを上げていった。

 それから、大きな容器二つ分のキラ星ブドウを収穫したハナコ達は、その場で『ワープロード』を使って、マウクラン中央研究所へと戻っていった。

 

 そして、研究所に戻るや否や、ハナコはクアットロにせっつかれてキラ星ブドウの毒性検査を開始する。今が夏休みでよかったと、ハナコは夜更かしを覚悟するのであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 明くる日、クアットロはヴィヴィオと共に研究所の食堂で席に着いていた。

 昨日にハナコが行なった調査によると、キラ星ブドウは毒性なしと判明。念のためにパッチテストを行なうと宣言したハナコに言われるがまま、クアットロは一晩待った。そして今、クアットロはヴィヴィオと一緒に生のままのキラ星ブドウを食していた。

 

「まま! おほしさん、おいしー!」

 

「そうねぇ。美味しいねぇ」

 

 クアットロは、ヴィヴィオと一緒にキラ星ブドウの味を楽しむ。

 それは、今まで食べたどんな果物よりも美味しく、胸がいっぱいになる味だった。

 純粋にこのブドウが美味しいのか、ハナコ達が言う冒険を繰り広げたから感慨深く美味しく感じるのか、ヴィヴィオと一緒に食べるから美味しいのか、クアットロには判断が付かなかった。

 

 ヴィヴィオはキラ星ブドウを皮のまま口へと運び、時折口をもごもごさせて種を吐き出す。

 種はキラキラと黄金のように輝いており、それがまた楽しいのか、ヴィヴィオは種を手の平で転がしてキャッキャと笑った。

 

 そして、そんな二人のもとへ、キッチンから出てきたハナコとすずか、セインが近づいてきた。

 

「お待たせー! キラ星ブドウの料理だよ!」

 

 ハナコがそう告げ、三人はクアットロとヴィヴィオの前に次々と料理を並べていく。

 

「クア姉、これとか自信作! 『ムーンビーストのロースト、キラ星ブドウソースを添えて』! ムーンビーストは海老の仲間みたいだから、柔らかくてヴィヴィちゃんでも問題なく食べられるぞ!」

 

 セインが、プリプリの身にキラキラと輝くソースが載った皿をクアットロに勧めた。

 すると、次はすずかがヴィヴィオの前にジュースのコップを置く。

 

「『ガラナワニのブラッドガラナ、キラ星ブドウジュース割り』。炭酸は抑えてあるから、ヴィヴィちゃんでも飲めると思う」

 

「じゅーす!」

 

 甘い物が大好きなヴィヴィオが、早速とばかりにコップを手に取り、ゴクゴクと飲み始めた。

 

「げぷっ」

 

 そして、微量とはいえ炭酸が含まれていたためか、ヴィヴィオが思わずげっぷをする。

 

「ままー!」

 

 ジュースのコップを手にしたまま、不意にヴィヴィオがクアットロのことを呼んだ。

 すると、ヴィヴィオを見守っていたクアットロが、笑顔で「なあに?」と問い返す。

 

「おいしい!」

 

「……そうね。美味しいね」

 

 それからヴィヴィオは、クアットロに介添えされながら、お腹いっぱいになるまで特別に柔らかく作られた料理の数々を楽しんだ。

 食べ終わると同時に、眠気が来たのかヴィヴィオは寝落ちてしまい、クアットロは慌ててヴィヴィオを抱き上げる。

 ヴィヴィオは、眠りながらも「おいしー、おいしー」と寝言を言っており、それを聞いていた周囲の者達は思わず笑顔になった。

 

「ヴィヴィちゃんに、もっと美味しい物を食べさせてあげたい……」

 

 ヴィヴィオを抱きながら、不意にそんなことをクアットロがつぶやいた。

 それを聞いていたセインは、笑顔でクアットロに言う。

 

「この世界には、いっぱい美味しい物があふれているぞ。クア姉も一緒に集めよう!」

 

「世の中には、美味しい物がたくさん……」

 

 クアットロは腕の中で眠るヴィヴィオを抱きしめながら、決意を新たにする。

 最高の食材をたくさん集めて、この子と一緒の食卓を囲もうと。

 


 

キラ星ブドウ(果物)

捕獲レベル:20

オリジナル食材。マウクランのトゥインクルアイランドにある山の麓に実るブドウ。夜空の星のようにキラキラと輝く果実であり、その味わいは思わず美味しさで目をキラキラと輝かせてしまうほど。そのまま食べても美味しいが、ジュースやソースに加工することで、輝きはいっそう増し、味だけでなく見た目でも楽しめるようになる、至極の果実である。

 

ガラナワニ(爬虫獣類)

捕獲レベル:6

オリジナル食材。ガラナの実をおやつとして食する雑食のワニで、その肉はガラナ飲料の香りがする独特の味がする。だがガラナワニの最大の特徴は、肉ではなく血。ガラナワニの体には最高級のガラナ飲料の血が流れており、肉のガラナ臭も血の香りが移ったものである。

捕獲レベルはそこまで高くないが、その血を加工した『ガラナワニのブラッドガラナ』はハナコとすずかの大好物であり、ハナコの『人生のフルコース』のドリンクになったほどである。

 

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