【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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6.ようこそ月村邸へだよ

 街中に謎の木々が出現し、そして消えた事件の翌日以降、月村家の大人達は仕事に追われることとなった。

 海鳴市は中心街とその周囲の住宅街に被害を受けており、破壊された建物の取り壊しや道路の修復が始まっている。

 そして、月村夫妻は建設会社の経営者であり、方々に顔を見せるために家へ深夜遅くに帰る忙しい日々を送っていた。

 

 そんな中、訪れた週末の朝。

 

 両親不在の月村家では、忍とすずかが友人を屋敷に招いていた。二人はまだ月村家の仕事を任されていないため、両親の多忙とは無関係。そのため、こうして友人と遊ぶ余裕があったのだ。

 招かれたのは、忍の恋人である高町恭也。そしてすずかのクラスメートで親友の高町なのはとアリサ・バニングスだ。ちなみに高町恭也と高町なのはは、兄妹である。

 

「どうも、ハナコだよ。よろしくー」

 

 そんな三人の前で、ハナコは月村家の客人として挨拶をしていた。

 なんでも、忍とすずかはそれぞれ学舎でハナコの存在を知人達に伝えており、しかもこの三人に対してだけ、細かいプロフィールまで知らせていたのだという。つまり、ハナコが並行世界からやってきた迷い人であると、三人とも知っているということになる。

 

「ふーん、あんたが異世界人を名乗る電波ちゃんね」

 

 アリサが、ハナコを値踏みするように、ジロジロと顔を覗き込む。だが、ハナコは物怖じもせずに「よろしくね」と笑顔で返した。

 

「言っておくけど、わたしはすずかみたいに簡単には騙されないわよ」

 

「アリサちゃん……」

 

 アリサがキッとハナコをにらみつけると、横に居るなのはが困ったように眉を下げる。

 そのなのはの肩には、フェレットらしき動物が乗っていた。

 

「なのはさんもよろしくね。その小動物はペットかな?」

 

 にらむアリサから視線を外し、ハナコはなのはの方へと注目する。

 

「うん、フェレットっていう動物だよ。名前はユーノくん」

 

「へえー……うーん、なんだか食べちゃいけない感じがする生き物だね。お腹下しそう」

 

「ええっ、ユーノくんは食べちゃ駄目だよ!」

 

「うん、食べない食べない」

 

 ハナコはなのはの前で手を横に振って、無害アピールをした。さすがのハナコも、他人のペットを食べる趣味はない。月村家の屋敷には猫が大量に飼われているが、それらを食べようとしたことだって一度もないのだ。

 だが、ハナコは不思議に思った。月村家の猫も、食べようと思えばそれなりに美味しくいただける感覚はある。しかし、このユーノという生物は、絶対に食べてはいけない感覚があるのだ。毒がありそうなわけではない。ただ、何かの禁忌に触れるような、そんな恐ろしさがあった。

 何そのホラー、とハナコはぶるりと背筋を震わせた。

 

「それじゃあ、お茶にしよう?」

 

 すると、ハナコの後ろで彼女のやりとりを見ていたすずかが、挨拶は済んだとみてお茶の誘いをかけた。

 それならばと、お客の三人は移動を開始する。屋敷の建物から出て、庭園に置かれたテーブル席へと座った。

 

 すると、メイドのノエルとファリンが美食茶(グルメティー)と茶請けを持って庭園へとやってくる。

 忍と恭也にはノエルが、すずかとなのは、アリサ、そしてハナコにはファリンが美食茶の紅茶を淹れていった。

 

「これがすずかの言う、天上にも昇る味ね……」

 

 うさんくさそうな目で、アリサが美食茶の入ったティーカップを眺める。

 それをすずかがニコニコとした顔で「騙されたと思って試してみて」と促す。

 

「『騙されたと思って』ってセリフ、リアルで初めて聞いたわ……」

 

「あはは、確かに物語ではよく聞くよね。でも、すごくいい香りだね」

 

 アリサとなのはがそんなことを言い、そしてティーカップを手に取ってふちに口を付けた。

 

「!?」

 

 すると、二人が同時に驚愕の表情を浮かべる。

 アリサは実家が資産家で、美食にも慣れている。なのはは実家が喫茶店で、美味しい紅茶にも馴染みがある。

 だがそんな二人でも、味わったことのない美味。たった一口の紅茶に、二人は圧倒された。

 

 そして二人は、息を吐く余裕すらなくした様子で、熱い美食茶を一杯飲み干した。

 

「……やられたわね」

 

「あはは……これは本当に天上にも昇る味だね」

 

 アリサとなのはは、たった一杯のお茶に魅了された。

 もう一杯飲みたい。依存性があるわけではない。ただ美味しいものをまだ味わっていたいという、よくある欲求が二人を支配していた。

 

 その二人の様子に、すずかとハナコは我がことのようにニッコリ。

 そして、ハナコが言う。

 

「美味しいでしょう。これがグルメ細胞っていう、私がいた世界の万能細胞の力だよ。お茶請けも食べてみて。ミルクビーンズの豆乳バターとヒマワリ麦の麦粉、虹色サトウキビのレインボーシュガーで作った、パウンドケーキ」

 

 ハナコがパウンドケーキをパン切り包丁で切り分ける。すると、ふわりと漂ってきたかぐわしい香りに、すずかとアリサ、なのははごくりとつばを飲みこんだ。

 皿にパウンドケーキが載せられ、それぞれの前にパウンドケーキが置かれる。

 

 アリサは我も忘れてフォークを手に取り、一口サイズに切る手間も惜しいと、フォークでパウンドケーキの中心を刺して持ち上げ、そのままかじりついた。

 そして、アリサは驚愕した。

 こんな美味しい食べ物がこの世にあったのかと。いや、違う。すずかの事前説明が確かならば、この料理はこの世のものではない。まさしく異世界の味だった。異世界は確かに存在していたのだ。

 

 一方、なのはもショックを受けていた。

 彼女は今まで、パティシエールである母が作ったケーキが、世の中で一番美味しいスイーツだと思っていた。

 だが、このパウンドケーキは次元が違った。中に何も混ぜられていないプレーンのケーキだというのに、どうしてこんなに美味しいのか。

 美味しいのは調理技術によるもの? いや、すずかちゃんの事前説明が正しいならば、この料理は異世界の食材によって成り立っているはず。それならば、材料を実家の喫茶店『翠屋』に持ち帰れば、母の手によって新たな人気メニューが……! なのはの頭の中はぐるぐるとした思考で一杯になった。

 

 そんな二人を笑顔で見守りながら、すずかはパウンドケーキと美食茶を交互に味わった。

 さすがにこの何日かで、ハナコの提供する食材の美味しさにも慣れてきた。飽きたわけではないが、我を忘れるほど食に没頭することはやや減った。ハナコ曰く、依存性のないものを選んで提供しているとのことで、美食のために身を持ち崩す心配もなかった。

 

 ハナコは、美味しそうにパウンドケーキを食べる三人に満足し、人に食を提供する側の喜びを初めて知った。

 向こうの世界にいたころは美食屋の仕事に憧れていたが、農家も悪くない。元々やっていたグルメ研究員だって、人々に新たな食材を届ける立派な仕事だったのではないか。ハナコはそう考え、このままこちらの世界に骨を埋めるなら、この世界でも食に関する仕事に就きたいと、ぼんやりと思った。

 

 そして、ハナコは言う。

 

「今日のお昼ご飯は、私が用意した食材も使ったバーベキューだよ。楽しみにしていてね」

 

 それを聞いたアリサとなのはは期待で胸がいっぱいになり、キャッキャと歓声をあげた。

 


 

ミルクビーンズ(穀物)

捕獲レベル:1以下

オリジナル食材。ミルクの香りがする豆。若いまま収穫して砂糖を振り、甘いミルク味の枝豆として食べるもよし、成熟後に収穫して野菜や肉と共に煮込み、ミルクシチューとして食べるもよし、豆乳を絞りミルクとして飲むもよしと、使い勝手のよい万能豆。

ミルクビーンズの豆乳は豆乳独特の青臭さが一切なく、高級な牛乳にも勝る味と栄養価を持っており、ミルク代わりにスイーツの材料としても使える。植物性なのでベジタリアンでも様々なミルク料理を楽しむことができる、人気の食材だ。

一般の農家でも簡単に栽培することができ、安価な農作物として市場に大量出荷されている。

 

ヒマワリ麦(穀物)

捕獲レベル:5

オリジナル食材。ヒマワリのような花の種部分が、麦の粒になっている穀物。花に強い陽射しを受けるほど味が向上する植物で、高原に自生していることが多い。この麦を好んで食べる鳥獣類が多く、一般の農家が栽培するには鳥害のリスクが高いため、市場に出回るのは天然物が大半。

その性質上、夏に花を咲かせないと味が落ちる。だが、劇中は四月であり、ハナコは擬似的な太陽光を放つ植物とセットで育てたようだ。

 




リリカルなのはの原作を確認し直しているのですが、もしかして二次創作で定番の『次元漂流者』ってワード、原作に存在しない……? マシンチャイルドや認識阻害結界の仲間だというのか……。
あと魔力量をアルファベットのランクで表現するのも誤りで、アルファベットを使うのは魔導師ランクであって、魔力量は数字(なのは127万、フェイト143万)で表すんですね。すっかり原作知識が二次知識で汚染されている……。
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