【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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7.野菜もいいけどお肉もね、だよ

 お茶会を終え、子供達四人は月村家で飼われている猫達とたわむれて楽しい時間を過ごした。

 そして昼。引き続き、月村家でお客達と一緒に昼食会を行なうこととなっていた。昼食の内容は、庭でのバーベキューだ。そして、ここでもハナコがやる気を出した。

 

 ハナコは二年ほど前、IGOの会長マンサムにグルメタウンという名の都市へ連れていかれたことがある。満腹都市と呼ばれる場所で、飲食店や調理器具を扱ったデパートなど、食に関連する施設で構成された巨大な都市である。

 マンサムの目的は、新しく建てられたニューグルメタワーという建物の除幕式に、ハナコを参加させることだった。ニューグルメタワーとは、人気料理店のテナントで埋め尽くされたタワービルで、三八〇階建て。

 除幕式から一週間、ハナコはマンサムと一緒にニューグルメタワーの料理店をハシゴした。二五〇階より上の店はほぼ一見さんお断りだが、IGO会長という世界一すごい立場の人物の案内で、ハナコはグルメタワー上層にあるいくつかの料理店に足を踏み入れたことができたのだ。

 

 その店の一つが、『焼き肉へるスィ~』。十段階ある料理店のランクのうち、上から四番目の七ツ星に認定されている超人気店だ。

 ハナコは、その店で提供されていた人気メニューと同じ食材を今回、バーベキューに使おうとしていた。

 

「さあさあ、みんな、美味しい美味しいバーベキューの時間だよー」

 

 庭園のテーブルへメイド達と一緒に食材を用意していくハナコ。そんな張り切り少女を見て、アリサが突っ込む。

 

「バーベキューって、野菜ばっかりじゃない!」

 

「七ツ星料理店、『焼き肉へるスィ~』のメニューだからね。あの店は、お肉も十分上質だったけど、極上の野菜が売りだったんだよ。そして私は向こうの世界のお肉を用意できないから、みんなには野菜だけでも思いっきり楽しんでもらおうと思うんだ」

 

「七ツ星って、星の数インフレしすぎでしょ。うーん、でも、野菜かぁ……」

 

 肉の少なさに、渋い顔をするアリサ。

 

「大丈夫大丈夫、野菜だけで満腹になれるほど美味しいから」

 

「本当にぃ?」

 

「それにほら、こういうのもあるよ。ベーコンの葉」

 

「何コレ……厚切りのお肉?」

 

 アリサは、ハナコに見せられた食材を見て不思議そうな顔をした。

 

「違うよ。お肉っぽい葉っぱだよ。味は極上のベーコン」

 

「あんたのいた世界、なんなの?」

 

「新グルメ時代」

 

「本当になんなの……」

 

「ちなみに、どの野菜にもグルメ細胞っていう特殊な万能細胞が含まれていて、少しずつ摂取することで身体が丈夫になるかもしれないよ」

 

 ハナコの最後のセリフを離れたところで聞いていた恭也が、ギラリと目を輝かせた。彼は武術家であり、食べるだけで強くなるという異世界の食事に興味を持ったのだ。

 恭也は恋人の忍から離れ、バーベキューの用意をするハナコにグルメ細胞の詳細を問いただし始める。それを忍は呆れた目で見ているのだった。

 

 そんなやりとりののち、月村邸の庭でバーベキューが始まった。

 月村家は資産家なので、肉もさりげなく高級品が用意されている。だがしかし……皆が口にしているのはどれも野菜だった。

 ハナコが用意した異世界の野菜。そのどれもが、皆を夢中にさせる極上の美味ばかり。

 そしてそれは、美味しいだけではなく、甘かったり辛かったり酸っぱかったりと味のバラエティが豊かで、ただの野菜には考えられないような姿形も多かった。

 

「この野菜すごっ」

 

 先ほどは野菜なんてとブツクサ言っていたアリサも、ハナコの野菜に夢中になった。

 ハナコは、「さすが七ツ星メニュー」と思いながら、一人、肉を焼いて食べていた。正直なところ、ハナコは自分が作り出す野菜の味に飽き始めていた。いや、それは正確ではない。野菜だけが飛び抜けて美味しい食事に飽きていた。

 

 ハナコは育ち盛りの九歳の子供だ。植物を自在に生み出す能力を持ち、グルメ細胞を成長させる適合食材も植物が中心だが、心身の成長には肉が必要だと彼女は思っている。

 野菜と穀物と果物だけでは、ハナコは満足できない。そもそも、美食屋が掲げる『人生のフルコース』も、前菜(オードブル)から始まり、魚料理や肉料理、サラダにデザートにと種別は様々。

 食事に必要なのは、バランス。美味しい野菜には、美味しいお肉がおともに必要だ。ハナコはそう考えている。お肉と似たような性質を持つ植物もあちらの世界にはたくさんあったが、そういうのはまた別腹、とも。

 

 美味しいお肉が食べたい。そう思うハナコだったが、居候の身でそのセリフを口にするのは、はばかれた。代わりに口をついた言葉は……。

 

「牛豚鳥食べたいなー」

 

「ぎゅうとんちょう……? 何かの料理かしら」

 

 ハナコのぼやきに、近くでベーコンの葉を焼いていたアリサが思わず問い返した。

 

「豚の頭に牛の胴体、鳥の羽根を持つ動物だよ」

 

「何よ、そのへんてこキメラは」

 

「見た目はへんてこだけど、お肉は最高品質だよ。今回の野菜にも劣らないくらいだよ」

 

「それは……食べてみたいわね」

 

「このお肉も、十分美味しいけどね」

 

 そんなハナコとアリサの会話を聞いていた忍は、「今日の肉はA5の黒毛和牛のはずだけど、それでもハナコを満足させるには味が足りなかったか」と思考を走らせて顔をしかめた。

 だが、確かにこの野菜の美味しさの前には高級和牛も霞むので、「この味に匹敵する肉ならば食べてみたい」とも思った。ベーコンの葉のように、肉と見間違えるような野菜がここまで美味しいならば、美味しさに特化した肉とはどれほどのものなのだろう、と。

 

「ハナコちゃんは、向こうの世界で他にどんなお肉を食べていたの?」

 

 スナックサンチュで焼いた牛肉を包みながら、なのはがハナコに尋ねる。

 すると、ハナコはここ一年以内に食べた思い出深い肉のことを思い出した。

 

「そうだね。わたしがいたリーガル島に、リーガルマンモスっていう山脈のように大きな動物がいたんだけど、その動物から採れる宝石の肉(ジュエルミート)ってお肉が、すごく美味しかった」

 

「ジュエルミート……宝石のお肉って、ちょっと味が想像できないかも」

 

「宝石のように輝くお肉でね、一つの塊でいろんな部位の味が楽しめるの。寄生虫の心配もないから、刺身でも食べられるんだ。宝石の肉の刺身盛り合わせは、控えめに言って最高だったよ」

 

「お肉を刺身……」

 

 なのははまだ若く、馬刺しといった生肉食を詳しく知らないため、宝石の肉の刺身盛り合わせという料理を全く想像できないでいた。

 対するハナコの頭の中は、半年前に食した宝石の肉でいっぱいになっていた。

 

「はー、食べたいなぁ、宝石の肉。リーガルマンモス、どこかにいないかぁ。小さな子供でもいいから……」

 

 そんな叶わない望みを口にした瞬間。ハナコの胸元が、突如光った。

 

「ほわっ!?」

 

 何事か、とハナコは慌てる。すると、ハナコの服の襟元から、ネックレスに加工した青い石が飛びだしてきて、強く光を発した。

 それを見たなのはが、驚き声を上げる。

 

「ジュエルシード!?」

 

 光はさらに強くなっていき……青い石が突如姿を消した。

 

 そして、次の瞬間、月村邸の庭園を破壊しながら巨大な生物がその場に出現した。

 それは、赤と黒のまだら模様の毛皮をした、二本の長い鼻を持つ巨大マンモス。脚は六つあり、明らかに地球上の生物とは様相が違った。

 

 ハナコは知っている。この生物の正体を。

 それはすなわち……。

 

「リーガルマンモスの子供!?」

 

 この世に存在しないはずの並行世界の生物が、どういうわけか楽しいバーベキューに割り込んできた。

 


 

ベーコンの葉(植物)

捕獲レベル:2

原作に登場した緑黄色野菜。第8ビオトープに自生していたものと、『焼き肉へるスィ~』の野菜の盛り合わせメニューの一品が登場している。

 

スナックサンチュ

捕獲レベル:不明

原作に登場した葉物。『焼き肉へるスィ~』の野菜の盛り合わせメニューの一品として登場し、料理人小松がこれでカルビを包んで食した。

 




当作品は、オリ主以外のトリコ世界出身者がリリカルなのは世界にやってきてオリ主とワチャワチャ、という展開にはなりません。転移もので主人公以外の転移者が出てくるのが地雷な人も多いと思うので、そうならないことをあらかじめ宣言しておきます。
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