【完結】おいしいおにくがたべたい   作:Leni

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8.ぶつかる魔法少女だよ

 この世界に存在しないはずのリーガルマンモス、その幼体。ハナコはそれを見て、自分と同じようにリーガル島から迷いこんだのかと考えた。ならばこの個体を調べれば、もとの世界に帰るための何かが分かるのではないか。

 そこまで考えたハナコだったが、彼女は一瞬で意識を切り替える。

 

 リーガルマンモスは幼体でも月村家の屋敷よりも大きい生物だ。

 ちなみに月村家の屋敷は三階建てで、一階あたりの個室数も二桁台である。その広大な屋敷より、このリーガルマンモスの幼体は大きいのだ。

 しかも、ただのマンモスとは違い肉食である。

 

 そんなリーガルマンモスが暴れ出しては敵わないと、ハナコは自身に宿るグルメ細胞の能力を行使した。それはすなわち、植物の種生成と促成栽培。

 

「『ウォールローズ』!」

 

 ハナコが手の平から種を前方にばら撒くと、突如バラの生け垣が地面から生えてくる。

 いや、それは生け垣というよりも、壁であった。

 五階建てのビルほどの高さの壁が、リーガルマンモスとハナコ達を隔てる。

 

「みんな、今のうちに避難して!」

 

 ハナコはそう叫んで大跳躍し、バラの壁の天辺に跳び乗る。

 その跳躍力に、武術家である恭也は驚きの表情を浮かべた。だが、それも一瞬のこと。彼は忍とすずか、メイドの二人、アリサ、そして妹のなのはと一緒に庭園から避難しようと動く。

 しかし……。

 

「なのは!? お前どうした!?」

 

 恭也の叫び声が周囲に響きわたる。なのはが突然桃色の光に包まれ、私立聖祥大付属小学校の制服に似た白い服に一瞬で着替えたのだ。

 しかも、手には赤い宝玉が先端に付いた杖を構えて、肩にはフェレットのユーノを乗せている。しまいには、杖を構えてその場でふわりと浮きだした。

 

「ごめん、お兄ちゃん。説明は後で!」

 

 なのははそう言って飛行し、壁の向こうに消えて行った。

 

「なんだっていうんだ、全く!」

 

 恭也は混乱しつつも、その場からの離脱を優先した。

 

 その一方で、バラの壁の向こう側では、ハナコがリーガルマンモスの幼体と戦っていた。

 彼女は地面からツタを生やし、リーガルマンモスを捕らえようとする。だが、リーガルマンモスも素直に大人しくはせず、二本の鼻を振り回してハナコを襲った。

 

「リーガルマンモスの子供かぁ……。つまり、宝石の肉(ジュエルミート)が採取できるってこと? 研究所の設備がないから摘出は難しいかもしれないけど、そこはツタを使って頑張れば……どうする? 屠殺する? でも、飼い慣らせば、この世界で何度も宝石の肉を手に入れることが……それにわたしの世界からやってきたのだとしたら……世界移動のための貴重な研究サンプルで……」

 

 リーガルマンモスの鼻の一撃をアイアンローズのツルで作ったムチで迎撃しながら、ブツブツとつぶやくハナコ。彼女は思考を巡らせ、とりあえず月村邸の庭園をこれ以上破壊される前に、どうにかしようと決めたところで、上空からなのはの声が響いた。

 

「ハナコちゃん、援護するよ」

 

 すると、なのはは手に持った杖の先から、桃色に輝く光の弾を数個、リーガルマンモスに向けて発射した。

 攻撃を受け、叫び声を上げるリーガルマンモス。その一撃を見て、思わず舌打ちをしそうになるハナコ。

 

「なのはさん、とりあえず生きたまま捕獲するから、殺さないよう気を付けて!」

 

「えっ、えっ、えーと、殺さないようにも何も、そもそも生き物じゃないと思うけど……」

 

「どう見ても生きてるでしょ!」

 

「多分、思念体だから生きてはいないんじゃ――う、うん、分かった。捕まえるんだね?」

 

 ハナコにギロリとにらまれて、なのはは首の裏がヒヤッとなった。

 そして、なのはは自分の杖に話しかける。

 

「レイジングハート、捕縛用の魔法ってある?」

 

『バインド魔法を推奨』

 

 その間にも、リーガルマンモスはハナコと攻防を続けており、急成長する植物のツタがリーガルマンモスの動きを少しずつ止め始めていた。

 

「よし、ハナコちゃん行くよ!」

 

『Restrict Lock』

 

 なのはが杖を振るうと、桃色の光を発する輪が複数出現し、リーガルマンモスの六本の脚と二本の鼻を拘束する。

 ハナコは見覚えのある光の色に警戒を強めるが、光の輪がハナコの作り出した植物を消し去ることはなかった。

 

「なのはさんナイスぅ! よし、食い込め、アイアンローズ! 『ローズノッキング』!」

 

 ハナコはムチを伸ばし、リーガルマンモスの太い胴体に巻き付ける。そして、植物操作の能力でムチのトゲを伸ばしてリーガルマンモスの皮膚にトゲを食い込ませた。

 トゲはリーガルマンモスの体表深くの神経に突き刺さり、中枢神経を刺激されたリーガルマンモスの全身が一時的に麻痺した。

 突起物で神経を刺激して動きを止める。これこそ、『ノッキング』と呼ばれる高等技術であった。

 

 リーガルマンモスは神経をトゲで圧迫され、ピクリとも動けなくなる。それにハナコは満足し、なのはは魔法とは違う謎の攻撃に驚愕を覚えた。

 

「ふふふ、待ってなよー、美味しいお肉ー」

 

 早速、その場でリーガルマンモスの幼体の体内から宝石の肉を採取しようと、ツタを成長させて体内に送り込もうとするハナコ。

 だが、次の瞬間、どこからか帯電した金色の光が複数飛んできて、リーガルマンモスの横っ腹をうがった。

 

「何事!?」

 

 ハナコは、突然の事態に作業を中断し、光の発生源を注目する。

 すると、そこには黒い服を着込んだ金髪ツインテールの少女が、空を飛んで杖をリーガルマンモスに向けていた。

 

 ハナコは思う。なんだか、なのはさんと同じ系統の能力を持つ人っぽいな、と。

 

「なのはさん、あれ、お友達?」

 

「ええっ、違うよ!? でも、わたしと同じ魔法使い……?」

 

「なるほど、なのはさんは魔法使いなんだね」

 

「うっ、そうだね……」

 

 そんな言葉を交わしている間にも、金髪の少女は杖の先からリーガルマンモスに光弾を放つ。

 

「ああっ、もう! これは生きて捕獲するんだよ!」

 

 ハナコは、相手の暴挙にプリプリと怒る。

 だが、少女は聞く耳を持たず光弾を撃ち続ける。

 

『Protection』

 

 と、そこでなのはが光弾に割り込み、彼女が持つ杖の音声と共に魔法陣が展開。魔法陣はそのまま盾となり光弾を弾き飛ばした。

 

「なのはさんまたもやナイスぅ!」

 

 ハナコはとりあえず、この少女を妨害者と判断。大怪我をさせない程度に痛めつけて捕らえておこうと、トゲのないツタをムチにして、空中の少女に放った。

 だが、空を飛ぶ少女は、ハナコの一撃をヒラリと交わす。そして、ポツリとつぶやいた。

 

「魔導師……と、もう一人は魔力反応なし……? 何者?」

 

 少女は手に持った杖を変形させて鎌の形状にした。そして、ジグザグに飛びながら、ハナコの方へと近づいてくる。

 

「ハナコちゃん、危ない!」

 

 思わず、なのはが叫び声を上げる。

 だが、空を飛ぶ植物をまだ用意していないハナコとしては、接近戦は望むところだった。

 

『Scythe Slash』

 

 少女の持つ鎌からそんな音声が鳴り響き、鎌から金色に輝く光の刃が伸びる。

 

「会長直伝、『フライパンチ』!」

 

 光の刃と、ハナコの拳。それらが正面からぶつかり合い……少女は大きく上空に吹き飛ばされた。

 

「くうっ!」

 

 少女は空中で体勢をなんとか立て直し、空の上で静止した。

 対するハナコは、よく分からない物を殴ったなと、初めて覚える拳の感触に首をかしげた。

 

「強い……! でも、目的はあなた達を倒すことじゃない!」

 

 少女はそう言って、飛び回りながら光弾による射撃を再開した。標的は、ハナコやなのはではなくノッキングされたリーガルマンモスの幼体だ。

 それを見て、ハナコは叫ぶ。

 

「あっ、ずるい、それずるい! こらー! 卑怯!」

 

 ハナコも手の平から大きな種を砲弾のように飛ばして少女を狙うが、殺さないよう抑えた弾速ではなかなか当たらない。

 時折、種砲弾が命中して少女はフラつくが、少女の防御性能がハナコの想定を上回っていたため、墜落には至らなかった。まるで頑丈な鎧を着こんでいるみたいな相手だと、ハナコは警戒度を一段上昇させた。

 そして……。

 

『Thunder Smasher』

 

 空を飛び続ける少女の杖からそんな音声が流れると共に、雷のビームがリーガルマンモスを襲う。

 そこへ、防御の魔法陣でリーガルマンモスを守り続けていたなのはが、ビームに割り込んで受け止めた。しかし。

 

「きゃあああ!」

 

 なのはの魔法陣は破壊され、ビームがリーガルマンモスの胴体に突き刺さった。

 すると、どうしたことか。リーガルマンモスの身体の中から、光る石が飛びだしてきた。それは、ハナコがネックレスにしていた菱形の青い石。

 

『Sealing』

 

 少女の杖がそんな音声を発すると、石は少女に引き寄せられていき、杖の先端に付いた金色の宝玉に石が吸い込まれていった。

 それを見て、ハナコはハッとする。もしや、少女の目的はリーガルマンモスではなく、あの石なのではないか。

 ならば、宝石の肉を奪われる可能性はないのでは……とそこまで思ったところで、リーガルマンモスが突如、まるでそこに何もなかったかのように消え去った。

 

「えっ」

 

 ハナコは愕然(がくぜん)とした。

 せっかく捕獲したリーガルマンモスの幼体が、消えた。

 せっかく食べられると思った宝石の肉が、消えた。

 

「なんで……?」

 

 ハナコの目の前には、ただ破壊の跡だけが残されていた。

 

「なんでぇー! 宝石の肉なんでぇー! わたしのお肉ー!」

 

 慟哭(どうこく)するハナコのもとに、ビームで吹き飛ばされていたなのはが空を飛びながら戻ってきて、告げる。

 

「あれはただの思念体だから、どのみちお肉は食べられなかったと思うの……」

 

「思念体! なにそれ!?」

 

「んー、魔法で作られた仮初めの存在かな……?」

 

「魔法! 魔法による幻覚! ひどい!」

 

 ハナコは、その場に膝を突いてガックリとうなだれた。

 膨れあがった食欲のぶつけどころが、完全になくなってしまったハナコ。彼女がメソメソと泣いている間に、なのはが金髪の少女となにやら言葉を交わしていた。

 しかし、久方ぶりの美味しいお肉を食べ逃したショックで、ハナコは二人の会話を全く聞いていなかった。

 


 

リーガルマンモス(哺乳獣類)

捕獲レベル:48(原作の個体の数値)

トリコ原作の宝石の肉(ジュエルミート)編に登場するメインターゲット。体内に宝石の肉を持つ、体長1500メートル、体高1000メートル、推定体重5000万トンの大怪獣。ただし、トリコ世界では、でかい=強いの公式が簡単には成立しない。

 

ウォールローズ(植物類)

捕獲レベル:1以下

オリジナル食材。壁のような形状の樹に成長する木バラで、四季咲きの赤い花を咲かせる。天然物は五階建ての建物に匹敵する巨大な壁を造り上げるが、一般家庭向けに品種改良されたものは二メートルから三メートルほどの高さに抑えられているので、家の塀代わりの生け垣として利用される。

花弁は食用可能で、実であるウォールローズヒップも美味しくいただける。ウォールローズの生け垣を構えた屋敷を通り道にする子供達が、こっそり花をつまみ食いすることも多いのだとか。

 

アイアンローズ(植物類)

捕獲レベル:3

オリジナル食材。ツル性のバラで、極上のローズティーの材料になる美しいバラの花を咲かせる。

ツルには鉄を切り裂くほどの固いトゲがあり、花を採取しようと不用意に触れて思わぬ怪我をする事故が絶えない。このツルをムチとして愛用する美食屋も複数おり、より強靭なアイアンローズのツルを求めて品種改良も進められている。

 




本編で明かされない裏設定:リーガルマンモス幼体は、ジュエルシードさんがハナコから毎日思念を受け取り知識を深め、願いが来たので頑張って魔力で肉質を再現した思念体なので、神経もあればお肉もあります。ノッキングが効いたのもそのため。ゆえに、謎の金髪少女がジュエルシードを封印しなければお肉は食べられました。栄養にならなくても味はする。原作でも子猫の望みを安全に叶えていたので、このジュエルシードシリアル14さん優秀なんです。
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