現代社会における影分身の使い所のなさよ   作:ヒモになりたいナマケモノ

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どうやら日刊ランキングに乗せていただいたようで、ありがとうございます。
この作品は私の妄想を書き連ねているだけのものですが、皆さんに楽しんでいただけているのであればこれほどうれしいことはありません。

よければ皆さんも日頃しているであろう妄想を描いてみませんか?
学校にテロリスト、どこでもドアが使えたら、超能力が使えたらなどの妄想も、自分の中にとどめるのではなく形にしてみることで広がる発想があったりします。


十話

「ただいまー」

「お、おかえり本体」

「掃除とかは終わってるよー」

「料理も下ごしらえは終わってるから後は炒めるだけ」

「卵が無くなりそうだから買い物だけ本体よろしくね」

「絵の練習はいつも通り、まぁ分身解除してから自分で描いてみれば分かるよ」

「美術部のコンペの結果は?今日だったよね?」

「やっぱりだめだった?なんでかバランスが崩れちゃうんだよね」

 

学校から家に帰ると10人の影分身たちが出迎えてくれる。父さんとの二人暮らしも3か月が経ち、家事もすっかり慣れたものだ。といってもほぼすべてを影分身に任せているので、本体の俺がやるのは外に出る必要がある買い物位しかないのだが。

 

「コンペはダメだったよ。先生曰く背景練習サボりすぎだって」

「えー、そんなサボってるつもりないけどなぁ」

「でも言われてみれば俺たちが練習してるのって漫画の模写とオリジナルキャラクターを作ってるだけだから背景は気にしたことないかも」

「まぁその練習も正直マンネリ化してるけどね。最近なんて髪とか目とかのパーツをサイコロ振ってランダムにキャラ作る遊びまで始めちゃったし」

「いや、あれはだいぶいい練習だと思うよ?少なくとも変なキャラにはならないようになってきたし」

「でも結局描いてるのはキャラだけだよ。背景練習はほとんどやってない」

「じゃあ背景練習係を割り振るか」

「とりあえずはそれでいいかもだけど、背景がうまくなったら今度は他の下手なところが目立つんじゃない?」

「そうかもしれないけど、他にやりようがないだろ。俺たちはあくまで素人、絵の構成要素とか全く分からないんだから」

「そもそも絵は趣味って話だったろ?キャラがうまく書ければ十分じゃないの?」

「趣味だろうと上手くなるに越したことは無いだろ?」

 

影分身たちは俺がコンペの結果を報告しただけでどんどん話し合いを進めていく。相変わらず自分の事のように頑張って考えてくれるので頼もしい。

 

「あー、それでさ、絵の上達のためには描いた絵をいろんな人に見てもらっていろいろ意見を貰ったほうがいいかなとか思ってるんだけど、どうかな?」

「んー、絵を人に見てもらうのはいいけど誰に見せるの?美術部の顧問?」

「いや、携帯でネットにアップしようと思ってるけど…」

「まだ早くない?ネットはしばらく見るだけでいろいろアップするのはもっと後とか考えてなかった?」

「そうだよ、投資系がうまくいくのかまだわからないんだよ?下手に未来を変えちゃいそうなことは控えたほうがいいんじゃ……」

 

あれ?まさか影分身から反対を食らうとは思っていなかった。みんな元は俺なんだからなんだかんだで納得してくれるものだと……

 

「本体はさ、多分顧問の先生から言われたことがよほどぶっ刺さったんだと思う。だけどそれだけで今までの方針から外れるのはどうかと思うよ?」

「正直絵のためだけに投資のもうけを捨てるのはやりすぎかなって思う」

「多分絵に対して本気になったんだろうけど、それでもその思いはまだ趣味の範疇から抜け出してないんじゃない?絵に人生賭けられる?」

「それに絵をネットにアップしたところで有用な意見が来ると本当に思ってるの?来てもせいぜい中身のない賞賛か根拠のない誹謗中傷。それがネットだって本体も分かってるだろ?」

 

待って、待ってくれ。俺の顔をして俺を否定しないでくれ。頭がおかしくなりそうだ。

 

「まぁ、ネットでの評価は現実に影響してこないし、ちやほやされたいだけならネットにアップするのが一番手っ取り早いかも」

「「「「ボンッ」」」」

 

俺は思わず反対意見を言ってきた分身4人の術を解除してしまった。残りの分身たちは居なくなった分身をちらりと見てから俺に向き直った。

 

「……他に反対のやつはいる?」

「……脅しは無駄だよ。術を解除しても俺たちが死ぬわけじゃない。本体である君に戻るだけだ。」

「ボンッ」

「還元された経験と向き合ってみなよ。今日一日での本体の変わりようにビックリするだろう」

「ボンッ」

「気に入らない意見は封殺か」

「ボンッ」

「身体年齢に引っ張られて中二病発症しちゃったかな?」

「ボンッ」

「還元された経験値から分かるだろうけど、俺たちは決して本体を貶めようとはしていない」

「ボンッ」

「俺たちの記憶から一度自分を客観視してみなよ。方針の変更はそれからでも遅くない」

「ボンッ」

 

…………

分身は全員いなくなってしまい、残っているのは俺の中に還元された分身たちの経験と思い。

 

「……寝よ」

 

俺は自分の中で整理をすることができず、何もやる気が起きなかったのでそのままベッドへ入って眠った。途中父さんが心配そうに話しかけてきたが相談できるはずもなく、一言「大丈夫」とだけ返してまた眠った。

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