現代社会における影分身の使い所のなさよ 作:ヒモになりたいナマケモノ
今日も一日学校が終わり下校する。いつもであればまっ直ぐ帰って友達の家に遊びに出たりするのだが今日は少し違う。
昨日影分身たちと会議をして勉強用やイラスト用など10体の影分身を運用することになったのだが、発動してみて気づいたのだが影分身10体、本体を含めると11人の子供が子供部屋に入るとぎゅうぎゅう詰めでとても勉強、お絵かき、筋トレなんてできないのである。他の部屋があれば二組に分けるなどできるのだが、残念ながら家はそこまで広くなく常時母親がいるので子供部屋以外を使用できない。これではせっかくの会議が無駄になってしまう。
ということで今日は家のほかに影分身を使える場所、所謂秘密基地というものを作るために場所の選定の旅である。といっても現在住んでいる場所は前世と変わらないのだから大体の当たりも付いている。
秘密基地というのは年代を問わず男の子を引き付ける魅力がある。そうすると近所の使い勝手がいい場所は大抵先客がいるものだ。しかもやんちゃなタイプの先客が。となると、俺みたいなガキンチョが使えるのはとんでもなく遠い場所や外から丸見えの秘密基地とは呼べないような場所しかないのだ。だけどそんな場所では俺も使えない。ではどうするか?近所にあるのに誰も使わない、使えないところを使えるようにするのだ。
そんなこんなで着きました!自宅から徒歩5分!とんでもなく急な階段をゼーハーするほど登った先にあるのはつぶれた神社!この神社の本殿の中もあまり人目に付かないのだが、今回の本命はこちらではない。本殿よりも目に付きにくい境内社(境内にある小さなお社)のほう!本殿は信心深い近所のおじいさんが偶に掃除をしに来ているので見つかるリスクがあるけれど、境内社の方までは手が届かないはず。境内社へ向かうと荒れ果てたお社が見えた。幸い屋根の瓦は無事そうなので雨漏りはあまり心配ないだろう。中は朽ちた梁が落ちていたりと今にも崩れそうな雰囲気があるけど影分身なら万が一があっても大丈夫だろう。それじゃあここに決定!俺の、俺たちだけの秘密基地!
秘密基地が決定したとはいえすぐに使えるようなものではない。まずは掃除から始めよう。学校からかっぱらってきた雑巾と麓の公園の水道からベットボトルに入れて持ってきた水を取り出して影分身をフルで出す。
「「「「「「「「「「ボンッ」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「俺が本体じゃないのか……」」」」」」」」」」
「それはもういいよ、それより掃除よろしく。左から3人は中にある梁の撤去と細かいクズとか片付けて、それ以外は雑巾と水を使って拭き掃除よろしく!」
「あいあい、了解本体」
「あー、肉体労働はめんどくさいなぁ」
「そういうなって、さっさと終わらせようぜ」
「本体は見てるだけでいいの?僕たちの秘密基地なんでしょ??」
「バカ、本体が怪我したらどうすんだよ。こういう危険な場所には影分身しか入っちゃダメだよ」
「分かってるよ、ちょっと嫌味を言いたかっただけ」
十人もいると一気に騒がしくなる。影分身にも言われたが、今回の掃除や使用に俺は入らない。中に入る=つぶれる危険を負うってことだから入るわけにはいかないのだ。秘密基地なんて作ってる時が一番楽しいのにそれに関われないのは少し悔しいけど、解除したらその経験値も俺に入ってくるのだから我慢しよう。
「それじゃあ俺は帰るけど周りにバレそうになったり、暗くて作業にならなくなったら各々で術を解除して戻ってきてね。くれぐれもバレないように!」
「了解、ちなみに本体はそのまま帰るつもり?」
「?そうだけど……」
「せっかくだからここに来るときに上った階段を何往復かして帰りなよ。筋トレ始めるんでしょ?」
「え゛、いやもう少し軽いものにしようよ……」
「清掃係のうち一人監視に回すよ。もしも逃げたら俺たち全員で本体を見下しながら術を解除するよ」
「やめろ!気持ちがダイレクトに伝わるのって結構きついんだぞ!」
「じゃあ頑張ってね!」
なぜ本体が分身に脅される羽目になるのか。俺はそんなことを考えながら階段を上り下りするのだった。