現代社会における影分身の使い所のなさよ 作:ヒモになりたいナマケモノ
中学校に入学して2週間が経過した。小学校とは違い毎日の服装を指定されているのが楽でしょうがない。制服万歳、学ラン万歳。家から中学校までの距離もそこまで離れていないので生活リズムが全く変わらないところも最高。だがしかし、そんな平穏を崩しかねない要素が一つある。
部活である
残念ながらこの中学校では部活は強制で入らない選択肢は無い。一応担任にどうにかならないかと聞いてみたが、
「特別扱いはできないな、部活はみんな入っているんだからお前も入れ。それで入ったからにはきちんとサボることなく活動しろ。」
とのことだった。あくまで例外は許さず、目立つようなことはさせたくないという模範的日本人教師回答をいただいた。
前世での知り合いに部活を途中でやめて帰宅部になったやつが居たには居たが、先生たちの評判はすこぶる悪く、ほとんどの先生がそいつに対して部活に復帰しろという圧をかけていた。脅し文句は「内申に響くぞ」。
さて、俺はどうしようか。学校に行っている間も影分身が頑張ってくれているので別にどうしても部活をしたくないというわけではない。だけど運動部には絶対入りたくないし、唯一の文化部は美術部のみ。一見美術部なんてまさにうってつけのように思えるけれど、実態はいろいろなイベントごとの飾りを作らされる雑用部だったはずだ。
しかし他の選択肢もない。どうにか早めに帰らせてもらえるように美術部顧問にお願いするしかない。
「……ということで、父子家庭の都合上他の人には申し訳ないんですが早めに帰らせてもらいたいんですけど」
「うーん、まぁ最低限の活動をしてもらえるのなら私は構いませんし、他の部員も特に気にしないでしょうけど他の先生方がどういう反応するかわかりませんよ?」
「それで構いません。ちなみに今の時期はどんな活動を?」
「今は学校から応募する絵画コンクールに出品する人を決めるための部内コンペの時期ですね。一応一年生も参加できますけどどうしますか?まだ仮入部の段階なので見学でも問題ないですよ」
「あー、一応参加します。早く帰る上に参加しないのはさすがに悪いので」
「わかりました。それじゃあ「秋の風景」をテーマにラフでいいので描いてみてください。紙はそちらにあるので自由に使用してください」
「はーい」
どうにか早上がりは許してもらえたが、ある程度の手伝いはしなきゃいけないか。一応参加する姿勢を見せるため画用紙を取り出し、空いている適当な席に座って悩むふりをしてあたりを確認する。男女比としては3:7で女性優勢、ラフを描いているのは半分くらいで残りの半分は雑談に興じているようだ。この人たちにとって美術部は少し雑用しなきゃいけないけど雑談してても怒られない駄弁り場という感じなのかな?残りの半分、ラフを描いている組も大抵は俺と同じ新入生で少しすれば真面目にやる組も減っていくのだろう。
前世で周りから見ていた時の印象とはかなり違うゆるゆるな感じだ。まぁそうは言っても最初位はやる気出すかなんて思いながら図鑑などを参考にトンボを描いて、背景に適当な山と畑を描いてラフを進めていく。
「あら?ずいぶん絵がうまいのね。てっきりサボり目的だと思ってたわ」
いつの間にか後ろで俺の絵を見ていた顧問に声を掛けられた。
「いや、まぁ絵を描くのは嫌いではないですから」
「そう、でも嫌いじゃないってだけじゃない努力が見えるけど?何枚も何枚も毎日毎日書き続けたような努力が見えるわ」
(絵見るだけでなんで分かるの?やっぱり先生になるような人は違うのか?)
「まぁ漫画が好きで模写はけっこうしましたよ。でもそれだけです」
「漫画が好きなのね、だったらあっちにいる人たちは漫画が好きでうちに入った子たちだから話し合うかもしれないわね。せっかく部活に入ったんだから少しでも交友は広げたほうがいいわよ。時間が許す限り楽しんでね」
そう言って顧問は他の生徒の方に向かい、そこでも何か話しているようだった。
先生の中でもやっぱり差はあるんだな。前世では関りがなくて知らなかったけどいい先生だったんだな。