爽やかくんとみゆりさん   作:いちばんだめなあるじ

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胎動編

 

 園芸部、温室内――

 

「……さてさて、爽やかくん。ひとつ、質問なのですが。」

 

「な、何でしょうか……都先輩。」

 

「……あらあら、先日お話した時はみゆりさんと呼んで下さったのに……どうしてそんな他人行儀になってしまったのでしょう。」

 

「……みゆり……さん。」

 

「はい、よくできました。その調子でみゆりの質問にも……ちゃ~んと、答えてくださいね?」

 

「……………はい。」

 

 僕は――拘束されていた。

 

 

 

 

 

「では、最初の質問から参りましょう――」

 

「えぇ……さっきひとつって……いくつ質問があるんですか……」

 

「……あらあら、お心当たりがないのでしょうか。」

 

「……うっ……何でもないです。」

 

「フフフッ……そんなに怯えないで下さい。ただみゆりの質問にお答えいただきたいだけですから。」

 

「コホン……では改めて、あの日――みゆりと爽やかくんが、それはそれは素敵な出会いを果たしたあの日から既に五日が経過しています。ですが、爽やかくんはまだ入部届を提出していないご様子……これは一体どうゆうことなのでしょう。」

 

「うっ……そ、それは……」

 

「……ふむふむ、それは?みゆり、気になります!」

 

「……いや……だって、あやしいでしょ。」

 

「あら……あやしいとはどうゆうことでしょうか。どうしましょう、また質問が増えてしまいました。あの日、爽やかくんはみゆりの誘いに応えてくれたではありませんか。文芸部に入部してくれる、と――みゆりの記憶違いでしょうか。」

 

「確かに……言いましたよ。文芸部に入部させて下さいって……言いました。」

 

「これはこれは驚き桃の木山椒の木、その事を覚えているというのに入部してくれないだなんて……もしかして、みゆりはフラれてしまった、ということでしょうか。それならそうと言ってくれれば……」

 

「いや、そうじゃなくて!……そうじゃ……なくて。」

 

「では、一体全体どうゆうことなのでしょうか。……爽やかくん、無知でおばかさんで察しの悪いメイドに教えてはくれませんか?」

 

「………メイド?」

 

「……コホン。そんなことはどうでもよいのです。入部届です、入部届をどうして出さないのかという話です。」

 

「……だって、おかしいでしょう!何で文芸部に入るのに、園芸部に入部届出さないといけないんですか!?」

 

「……………大丈夫です、園芸部の部長にはしっかりと話を通してありますので。」

 

「いやいや、そうゆうことが言いたいんじゃないんですよ!」

 

「……………園芸部は予算が増える、文芸部は人が増える、Win-Winの関係ということです。」

 

「あーーーもう!ですから、僕が言いたいのはそうゆうことじゃなくて―――」

 

「うぅぅ……だってだって!そうするしかなかったんですぅ!しょうがないじゃないですか!部員が一人だけでは部活動として認めてもらえないんです!」

 

「……え………ひとり?」

 

「そうですよ!?去年の春から部員はみゆり一人になったんですぅー!だからこうして園芸部に居候させてもらってるんですぅー!わかりましたかぁー?わかりましたよねぇー?これでスッキリずっぽり入部しますよねぇー?」

 

「え?……えっ?」

 

「何ですか?まだ何かあるんですか?そーやってみんないつもそうなんです。思わせぶりなことばーっかりです。いいですよぉーだ。どうせ爽やかくんだって?その場の流れとかいう日本人にありがちな?社交辞令的な?そんな雰囲気で?てきとぉーに言っただけなんですよね。はいはい、わかってました。わかってましたよー。みゆりにはちゃーんとわかってましたー。」

 

「ちょ……ま……」

 

「ばーかばーか。爽やかくんのばーか。」

 

「えぇぇ……」

 

「おばか。おたんこなす。へんたい。そうろう。どうてい。」

 

「わ、わかりました!入ります!入りますから!」

 

「あら、そうなんですか?そうならそうと最初からそう言ってくださいね?無知でおばかさんで察しの悪いメイドにはハッキリ伝えていただきませんと。」

 

「……だから何でメイド?」

 

「さぁ、そうと決まれば善は急げです。今から園芸部部長のところに行きましょう!さぁ、さぁさぁ!」

 

「えっ、今から?えっ……えぇぇ!?」

 

 こうして僕――爽やかくんは、文芸部(園芸部)に入部することになった。

 

 

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