また、どうしてこうなっている?巨大な鉄塊の前で俺はこれまで起きたことを思い出す。そうあれは……。
この作戦は作戦と言うにはとてもシンプルだ。俺の率いる部隊は囮として相手の前線に取り付く。フランソワ軍はまだ塹壕を掘りきっていないので、有刺鉄線と土嚢を使った簡易陣地や蛸壺塹壕がポツポツとあるぐらいで地雷すらない。イスパニアでよく見た組み合わせだ。多くの部隊は平地に野営をしている。そして、あのイスパニアとフランソワが違うのはこちらの哨戒機や諜報部隊並びに斥候と俺も飛んだ散発的な航空魔導師による威力偵察で分かったのは、最前線に徴兵したての新人を並べて後方に練度が高い部隊を置いていることだ。これはイスパニア軍よりよほど手強い、フランソワの軍首脳部は子供殺しと親やその兵士の子に親殺しと言う批判を受けても戦う姿勢を崩していない、極めてまだやる気だということを示している。
つまり、今の最前線にいる練度の低い徴兵したての兵士は坑道のカナリアであり、肉壁に過ぎないのだろう。諜報部隊によると後方に少ないはずの野砲が揃えられてるとしている。これは自軍ごと砲撃する態勢だ。しかし、相手が新兵である程にこちらの作戦の成功率は上がり揺るがないのはそうだが、こんなことになってしまう前に、フランソワが開戦当初になぜ帝国本土に100個師団も突っ込ませたのか気になる。それにこれもそうだが集団運用していないはずのフランソワの戦車が見えない。まだ見える範囲にはいないのはなぜだ?出し惜しみだろうか?
「いや、おそらくは‥‥。」
フランソワ軍帝国本土強襲部隊の速さを見るに彼らは戦車にタクシー、トラック、自転車など本土にある運送資源をすべて集めた博打に出たのだろう。パール・ハーバーだ。真珠湾攻撃と違うのは橋頭堡である係争地のアントウォーペンを確保していた。フランソワ軍は賭けにはこの時点では勝っていたはずだった。計算ではありえないはずの海戦で負けて補給路を絶たれただけで……フランソワの誤算は巡洋戦艦と戦艦を主力にして正面から殴り合いをしようとしたのが間違いだっただけだ。霧とともに帝国の巡洋艦と駆逐艦と魚雷艇に水雷艦が高速で奇襲をかけてくるのを理解していなく、退路には大量の帝国の潜水艦が待ち構えていたのを知らなかっただけだ。
そんなことは置いといて、俺の部隊が会戦間近になると空挺師団が浅く後方に降下して、こちらが前進することで最前線のフランソワ本土のフランソワ軍を挟撃、その後突破し、空挺部隊と戦線を離脱するだけの簡単な任務だ。そもそも、航空において複葉機が比較的多く混ざっているフランソワ軍に対して、帝国は何故か単葉空冷エンジンで量産性と性能で勝っているようで制空は取っている。しかし、空からいくら爆弾を落としても上陸しなければ敵を占領できない。だから、結局のところ歩兵は防衛と攻撃において最も重要度が高い兵科なのだ。
が、複葉機も侮れないフランソワが気がついていないだけで夜間にエンジン音を抑えて低空で飛べば第2次世界大戦や朝鮮戦争であった遅すぎて捕捉できない夜間爆撃に使える。観測機にもその持ち前の失速速度の下限でなれる。何より練習機に多くの国が複葉機を使うことからわかるように扱いやすい点も考慮するとこの夜間飛行は複葉機のほうが良いかもしれない。
フランソワの前線を目指す。空は何時も平等だ。
「将軍!最前で飛ぶのはやめてください!」
副官がうるさいが実際、防殻が有るのだからこちらの方が安全だ。それに補足情報が入っていて気になっている。空は考え事を進めてくれる。雲のように。
「降りてきてください!」
何回目か忘れた副官の声に仕方ないと司令部付き装甲車に乗り込んだ。考えはまとまった。このまま一気にやる。迷いは捨てた。自分の頭をかち割られる前に相手の頭をかち割ればいい。あのクーデター勘違い将校が失敗した理由もそれが出来なかったからだ。雲耀だ。相手より早く振り下ろし叩きつけてやるのだ。シンプル・イズ・ベストで王道が強いのはシンプルでそこからも応用も展開も効くからだ。
出撃する前に帝国軍のスパイから連絡があった。やはり、フランソワは120万近くの動員と国土決死隊なる200万規模と言われる民兵組織を立ち上げたようで全部、予算はアルビオンからの持ち出しではないか?と言われている。民兵組織の装備に対する資料を見たが、国民ライフルと言われる鉄板と鉄パイプをプレスなどで加工しただけの単発式ライフルや単発式拳銃が主な装備らしく中には木の棒や鉄パイプが配られた部隊もあるとの報告書には書いてあった。
極めて原始的だが市街戦において路地の裏から単発式銃やポールウェポンで叩かれたら厄介だ。それに民兵組織ゆえに彼らは軍服を着てないと来るのだから、厄介なゲリラ部隊でしかない。腕章さえ見えていればと言われるが極限状態で視認できるか?そもそも腕章すら怪しい、あのイスパニアの時は平服に武器持ってるから分かりやすい民兵だろとかいう狂った理論で平服ゲリラをイスパニアが使いまくってたからな。
まぁ、俺には関係がない話だな。浅く前線を動かして、誘引するのが俺の役目だから。引き釣り出して、挟撃をして、戦うだけだ。簡単に言うとピンポンダッシュみたいなものだ。本国深くにいるフランソワ軍を更に前に出して来るのを誘発するために。
簡単だなと思って移動する車の中から、フランソワの国土を見る。土の香りがする夏の香りで命の香りだ。時期も時期でそこは中の畑が大地の偉大さを実らせている。この大地を覆い尽くさんともする穂波も、もうじきに収穫が出来るだろう。
麦の集団のうねりが風に揺れる。いや、風を揺らしている。これこそが美しい風景だろう。金に輝くこの大海は多くの旧大陸人の深層心理にこびりつき憧憬を抱く故郷と言われた時に思い浮かぶであろう景色。灰色の石が織りなす都会の建物よりも軍隊の行軍よりも大地に根ざして揺れる穂よ、穂がつくる波よ。この波こそが人の望む風景だろう。この大陸の原風景だろう、人は自然から離れられないのだ。
人もまた自然なのだ。大地が育む生き物だ。だからこそ、人工と言われるかもしれないが田畑は人間の魂なのだ。神には大地が生み出す恵みを自然の厳しさを人の夢を、人の思いをこれらを作れはしない。所詮は多くの場合神は人がいるから神であるだけに過ぎない人がいて神がいて初めてそこに神になる。人を家畜として扱う神だけで神は成立しないのだ。家畜に神は必要ない、信仰も必要ないただ種としての繁栄として繁殖だけをし縄張りを守るだけの人間牧場だ。そうなってしまっては相互理解も愛も勇気も抗うことすら何もせずに増えるだけ増えて地に満ちて、自然に感謝もせずに自然を調伏と思い上がり、自分たちこそ正義だと他責により相手を迫害して権利のための権利主張を繰り返す万人の万人に対する闘争に陥る。神が人を家畜すると行動するのは人をヒトにするだけの神の格すらも落とす行為にも関わらず存在Xは戦いを起こし、人を家畜にしようとする人から理性という皮を剥ごうとするその傲慢さはやはり滅ぼすしかない。お前を絶対に許さない、苦しませてのたうち回らせて命乞いをする中で一番お前が苦しむ方法で息の根を止めてやる。
お前に慈悲など生易しいモノが必要なものか!慈悲により惨たらしく殺す。これがお前に対する俺の慈悲だ。お前が人を愛さないのだから人はお前を愛さない、自分が愛されたいが為に人を害する愚かなケモノの存在Xよ。信仰がなぜ減ったのかはお前が人を愛さず、人に敬意を払わず、人という種を信仰しなかったせいだ。その他責性がお前を神から存在Xにまで落とした。人を愛さずして人に愛されようなどとは片腹痛い、お前の汚点はお前自身であったことだ。多種多様な形をしても自分自身しか愛さずに多種多様に数を揃えて馴れ合いで会議をする自分自身との会議はさぞ問題を隠せて気持ちよかっただろう。お前は掲示板で自分でスレッドを立てて自演でコメントして、自分で荒らして自分とレスバしてるようにして、盛り上がってる話題のふりをして自身の問題から逃避し続け、全能感に浸る悲しいネット民と同じなんだ。他者がいてこそ自身が確立される。お前は自身しか要らなかった究極の個人主義にして、自分だけで対話が成立すると思って数万アカウントを使ってSNSをやり、自分専用の掲示板で自演書き込みを続けて、それをまとめて自分の作った動画サイトに載せて、スクリプトで再生させ続けて自己満足に浸り、それを他者から評価されないからと凶行に及んだと言えるような怪物だ。
信仰云々を言うのであれば何かを信仰してみせろ!自分ができないことを他者に求めるな!だからお前は存在Xなんだ。到底許されるなような存在ではない。自己満足に浸りたいなら自身のクローズドな世界で一生自分の分身同士で会話をしているが良い。それがお前に許された誰も傷つかない、誰もお前を傷つけない、誰もお前を必要としない故に信仰が減っても問題ない最高の社会だろ。だから、お前は誰にも愛されないんだ存在X。それが嫌なんだろ?じゃあ、俺が愛を持ってお前を殺して終わらせてやる。そして、俺が死ぬまでお前を覚えておいてやる。それがお前に対する手向けだ。
「ここを叩く。」
地図に書かれた地点を叩く。最前線のフランソワ軍の中央を撃ち抜くのを決めた。降下と共に挟撃だ。中央は危ないと思うだろうが現状はそうではない。相手がやってこないと想定する場所を叩くのだから、動揺は絶対にする。特に相手は新兵だ。叫びながら震えて銃も撃てないかもしれない。予備役の下士官や尉官の消費は致命的だ。動揺と臆病は流行病だ。伝染し増幅し蔓延する。それを抑え込んで命令に忠実に動けるようにするのが下士官と尉官だが、マニュアル通りにすら動けないだろう。そして何より、中央だけは有刺鉄線と土嚢が積んである。つまり、指揮をする者がいるのだろう。
「中央は危ないのでは?」
バーグマンの兵力の一部を借りた為にいるクリンゲンベルク大尉が疑問を述べた。割りと緩いのが帝国軍だ。疑問はもっともだが……。
「一番硬い部分だから叩く。こうすれば敵は我々を包囲しようと前進してくるだろう。包み込みたいのが教範だからな。敵が進んできてところに後方から攻撃部隊がやってくると混乱に陥る。彼らフランソワ軍は士気は高い。が、徴兵されたばかりの兵士ばかりだ。戦闘を知らないが故の士気の高さは不利を見ると恐慌状態に陥るものだ。例え後ろから軽装部隊が来ると知っていても退却の経路が絶たれてしまえば怖いだろう。一部、降下部隊が陣地を取ってしまえば後ろからも機銃で撃たれる羽目になる。」
それに彼らの分隊支援火器は今も変わらずショーシャもどきだ。それに引き換え何故か帝国軍はもうMG42もどきで省力化型を生産している。前線はこれが始まる前にM1917もどきとM1918BARもどきの権利を全て合州国の会社から買い取っていて、気が付いたら独自にM2もどきを作っているのだから不思議である。国民の麦とは一体?まぁ、ステンガンもどきの生産力特化の兵器も作ってるし、気にすることはないのかもしれないがあの組織はおかしい気もする。水冷エンジンの戦闘機に空冷エンジン載せて一つのラインで2機の戦闘機が作れるとか意味不明なことをしてる。
戦闘機に航空機用のロケット弾も着けてるのが飛んでるからおかしいよな?歴史の流れが変わってきている気がする。
「それでは司令官自ら囮となるの形で危険では?戦死の危険性も…。」
それはそうだしやりたくはないがやるしかない退くも地獄進むも地獄ならば俺は地獄に踊ってやる何度だって踊ってやる。
「魂には眼があるのだ。それによってのみ真理を垣間見ることができる。今はただ死者のみがこの戦争の終わりを見るのだろうが、その魂が帰るべき帝国やフランソワが戦争の終わりを見れないのならば生きてるのに死んでると変わらないだろう。死中に活はある。誰かのために皆戦ってるのならば小官が彼らのために戦い囮になるのはさしたる問題ではない。問題はこの戦争に駆り出された人間が両陣営ともにいくら生き残るかだ。営みがある限り彼らは隣人だ。それを愛せないのに国を愛するのなど不可能だ。戦争は好きで始まらない、好きでも終わらない。戦争は社会法則だから彼らをそんなもので殺す勝手も我々の手にはないだろう。一人でも多くの人間を返すのが軍人だろう。」
意味がわからない事を言ってしまったために帽子を深く被り直すと俺たちの軍団は進んでいく。
「空は青く、畑は肥えている。しかし、人の腹は満たされていない。」
覚悟は決まったが釈然としないままに進む先には鉄の嵐と本当になんでこんなことになったのか考えてもわからないままやっている。おかしい!やっぱりおかしいよこの世界!俺は一般人なのになんか気がついたら出世してるし!ふざけんなよまだ全然終わりそうにないじゃないか!仕方がないからやるしかない。
仕方がないね!