二人、この世界にて   作:一般ラインハルト

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0話 牢獄

ウタワールド…と言っていいのかも分からない、形容しがたい空間。

今ここには私と、目の前に座るルフィしかいない。

最後の力を振り絞った歌で生まれたこの世界では、今は二人きりだった。

「いつの間にか、ルフィの方が背が高くなってたんだね。」

最初は気づかなかった。

いつまでも私の後ろにいるだけの子供のようだった幼馴染は、いつの間にか私の遥か前を進んでいた。

知らないうちに色々な出来事があり、障害があり、成長があったのだろう。

よく見れば傷だらけの、それでも立派な体がそれを物語る。

…最も、今の私にそれを詳しく知る手段も時間もないが。

 

「私にとっても大事な帽子…いつかきっと、これがもっと似合う男になるんだぞ?」

メモリーにしていた破れた麦わら帽子を修復し、ルフィに返す。

 

海賊王になって新世界を作る。

確かにルフィはそう宣言した。

昔からやるといったらやるのがルフィだった。

きっといつか、シャンクスも超えて海賊王になって、そして新時代を作るのだろう。

 

それで十分だ。誓いあった目の前の友が成してくれるなら、私の新時代はもう終わりでいいだろう。

あと少しで、現実での歌も終わる。

既に自分達二人以外は現実に帰った。あとはルフィを見送るだけ。

 

…そして、私も夢の世界に行くだけだ。

やっとこれで楽になれる。

肉体の死が間際というのに、私は冷静だった。

 

…あくまでルフィの頬を伝ったそれからは、目をそらしながら。

 

 

 

 

 

ブツッ

 

 

 

「………え?」

ふわふわとしていた感覚が急にはっきりする。

 

淡い光に包まれていた世界がしっかりと輪郭を取り戻している。

 

…何より、何かが切れるような感覚の後、現実の私の見てる光景が見えなくなった。

 

…いや、最後に…最期になにがあったか、それだけは認識していた。

 

 

 

倒れる体。口から溢れ出る血。開けることの出来なくなっていく目。

 

そして、

 

『ウタ!目を開けろ!ウタ!!』

 

必死に呼びかける、父の声。

 

 

 

つまりこれは、そういうことなのか?

 

ひょっとして私達は今、最悪の状況に立たされてるのではないか? 

 

生まれてしまった疑念は、少しずつ確信に至ってしまっていく。

 

 

 

「……ウタ?どうした?」

 

様子のおかしい私に気づいたのか、ルフィが顔を上げる。

 

「……あの、ルフィ…その…ごめん。」

 

 

 

 

 

「今のやり取りの間に外の私死んじゃって……その……私達二人帰れなくなっちゃったみたい……。」

 

 

 

「え?………………。」

 

「……………………。」

 

…しばらく二人で沈黙していた。

 

 

 

 

 

「えーと…その…あー…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まっ負け惜しみ〜……?」

 

 

 

「エエエエエエエエエエ!?」

 

ルフィの絶叫が響く。

 

 

 

この日がルフィと私の、この無限の牢獄での生活の始まりだった。

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