二人、この世界にて   作:一般ラインハルト

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7話 煩悶(参)

〜〜

 

「…ほんとに空の上に島なんてあったんだ…」

「ああ、しかも下の海から飛んできた島まであるんだぞ!!すげーよな海って!!」

 

ルフィ達の冒険の記憶は、ジャヤという島のあと、更に空の上まで飛んできていた。

遥か上空に雲の海と雲の島と…更には海から飛んできた陸があったというのだから驚きだ。

 

「…ルフィ、雷効かないんだ…そりゃゴムなら効かないか」

「おう、おれも初めて知ったよ!!しかしすごかったな〜あの鐘!!」

相変わらず無茶ばかりだったが、少し関わったという友人達のために

全力で戦うルフィの姿は…はっきり言ってかっこいいと言っていいだろう。

それこそシャンクスを思い浮かべるようだ。

 

「それでな、これで黄金手に入れて次が…」

 

〜〜

 

「……大丈夫か?」

「うん…大丈夫、ちょっとビックリしただけ」

 

また気遣わせてしまったのだろうか。

仕方ないだろう。ボロボロになった直後に氷漬けなど衝撃以外の何でもない。

 

「あれが海軍の強い人なんだ…」

「ああ、他にも赤犬ってやつと黄猿っていう…」

「…黄猿?」

そんな名前聞いた気がする。確かライブ会場にもいたはずだ。

…シャンクス達がいなければ、私もこうしてあっさり殺されてたのだろう。

 

〜〜

 

「………」

「…ウター?大丈夫かー?」

「…あんた、嘘つくの下手だよね?」

「え?そうか?」 

 

ウォーターセブンという随分綺麗な街に来たと思ったら、

その街での序盤の思い出は散々だった。

船は余命宣告、金も奪われ、傷ついた仲間との大喧嘩。

今までの街ではなかったタイプのアクシデントだ。

 

…何故か印象に残ったのは、船を捨てるとウソップに宣告していたときのルフィの表情だった。

声は聞こえないものの、一見明るく見えるようなその顔に…見覚えがあった。

あの時、ルフィが船に帰って寝ると言ったときの顔にそっくりだった。

…あの時、ルフィはどんな気持ちだったのだろうか。

 

〜〜

 

「いやー…これでメリーと別れちまったんだよなァ」

映像の向こうで、火に包まれながらメリー号が海に消えていく。

 

「あんときはメリーに助けられちまったからなァ…あいつが喋ってくれたときはびっくりしたけどよ」

「へぇ…船が喋る…」

正直ここらへんの話は衝撃続きだ。

まさか世界政府の施設を一つ落としてしまうなんて、流石の私もやばいということは分かる。

そんな中必死に助けに来てくれた船は、まさに奇跡なのだろう。

 

「…そういえば、昔シャンクスが言ってたような…」

あれはなんていう逸話だっただろう。

確か…

 

「げ、じいちゃん!!」

「じいちゃん!?」

 

 

7人目 フランキー

 

〜〜

 

「……凄くいい人じゃんあの骨の人…!!」

「だろ?ブルックのやつおもしれーし音楽家だし骨だし、仲間になってくれて良かった!!」

 

まさか随分前のあのクジラがこんなところで名前が出るとは思わなかった。

互いに約束を覚えて、一度死んでも何年経っても互いに約束を守り続けていたというのだ。

海賊といえど、本当に立派なことだろう。

 

…私は、信じ切ることが出来なかったのだから。

 

〜〜

「アヒャヒャヒャヒャ!!」

「アッハハハハハ!!」

 

…少々失礼ながら、流石に笑ってしまった。

これは仕方ないだろう。

まさかあの「すべてを飲み込むような虚ろな瞳」がこの世に存在していたとは。

ルフィから聞いた事情には同情してしまったが、あの顔は思い出しても笑えてしまった。

 

「なんだよウタ、お前もあのサンジの手配書見たことあったのか!!」

「そうそう、他にもシャーロット・リンリンって子とかドフラミンゴって人とか!!」

「……そいつらか〜…」

「あれ?ルフィ?」

なんかすごい微妙な反応された。

なんだったのだろう。

 

「それにしてもクリミナルの人?と関わってたなんていいな〜…それで次は?」

ここまで来ると私も少しルフィたちの冒険が楽しくなってきてしまった。

次はどこに行くのだろうと思いルフィを見ると…少し、違和感を感じた。

 

「…ルフィ?」

「……いや、なんでもねェ」

 

〜〜

 

「…ルフィ、大丈夫?」

「ん?何がだ?」

 

シャボンディ諸島というところに入って以来、ルフィの様子がおかしい。

少し目も声も違和感を感じてしまう。

 

目の前で、私のライブにもいたあの天竜人が殴り飛ばされる。

やはり酷く嫌われていると同時に恐れられた人なのだろう。

音がなくとも、動揺が伝わってくる。

その後シャンクスの若いときの副船長というレイリーという人と会って別れていく。

その間もずっとどこかルフィの様子が変だ。

また手に自然と力が少し痛いくらいに籠もっている。

この違和感はなんだろう、そう思ったときだった。

 

突如、風景が荒れる。

なんだと思ったとき、初めて風景の音が聞こえた。

 

 

『全員逃げることだけ考えろ!!今のおれたちじゃあこいつらには勝てねェ!!』 

『仲間一人も…!!!救えないっ…!!!!』

 

「……っ」

これまでとは雰囲気が違っていた。

異様に黒ずんだ映像の奥で、仲間達が次々消えていき…最後には、ルフィの慟哭が響いた。

 

「…ルフィ…?」

「…おかしいな…こんなはずじゃねェんだけどな」

 

ルフィ自身も、こんなことにしたいわけではないらしい。

何が起こっているのか分からず混乱と強がりが見えてしまっている。

それでもルフィは手を離そうとせず、より強く握っている。

…ならば、未だ暗いこの先も見届けようと思った。

 

しばらく、ルフィの声だけでも音を取り戻したかわりのように目に見えるそれは黒を帯びたままだった。

時々ハンコックという女性やボンちゃんというアラバスタの時の人、イワンコフという凄い人、更にライブにいたジンベエという人達が出たときは少し明るさを取り戻したが…

同じくアラバスタで出たお兄ちゃんのエースの処刑の記憶は、とても暗かった。

 

インペルダウンに潜入からから脱出して、海軍本部に行って…

その間の記憶は、凄く痛々しいものだった。

毒に苦しみ、治療に苦しみ、海軍本部での戦争、その中でボロボロになるルフィを見るのがとても辛かった。

思わずルフィの手にかける力がこちらも強くなってしまう。

それでも、進み続けて、いよいよルフィがエースに届いた。

つい一息ついてしまう。良かったと思ってしまった。

助けられたのだと。

 

 

─そのすぐ後、ルフィを庇うように、エースの腹が貫かれるのを見るまでは。

 

 

…映像が黒く染まる。

「……しばらく寝ちまってたからな、ここらへん」

ルフィが言う。

「…ルフィ…あのエースって人……」

 

「…死んじまったんだ…助けられなかった」

そう静かに言うルフィの表情が…凄く悲しく見えてしまう。

 

「…辛かったんだね」

仲間を守れず、つらい戦いをし続け、その果てに兄も失った。

その苦しみと悲しみが現れたかのような黒い映像達だった。

 

…それでも、立ち直れたというのか。

 

「…どうやって?」

 

やがて映像が再びつき…そこには森の中で傷だらけで暴れるルフィと、それを抑えるジンベエがいた。

ジンベエがなにか言って、ルフィが少しずつ何かを涙ながらに数えていた。

 

『仲間がいるよ!!!!』

 

 

〜〜

 

「…なんか、すっかり弱いとこばっか見せちまったな…」

「…そんなこと…」

 

 

そんなことない。

ルフィは強い。

例え挫けそうになっても再び立ち上がっているのだから。

言葉にできないそれを、せめてもと手を握る力で伝えた。

 

映像の時間が飛ぶ。

ルフィ達の再出発の映像が始まっていた。

 




to be continued 『煩悶(肆)』

回顧録(新世界編)
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