二人、この世界にて   作:一般ラインハルト

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んでも万国からエレジアの空白は一切が謎のままだねぇ


8話 煩悶(肆)

〜〜

 

目の前に、再びあのシャボンの光景が広がっている。

ルフィ達が再集結を誓った場所、シャボンディ諸島が映し出されている。

 

「……いや、本当にあんた馬鹿だよね」

「え〜!?なんでだよ!!」

「いや普通分かるでしょ流石に!?」

 

あんなあからさまな偽物に気づかないことがあるか?

なんなら自分の偽物すらいたというのに。

 

「…ハァ……」

 

ある意味ルフィらしいといえばルフィらしい。

昔から純粋だからこういうのには騙されやすいのだ。

 

しかし、その後のルフィは凄かった。

二年前は総員でなんとかだったあのロボを倒してみせたのだ。

…話によると、あれのモデルとなった彼は恩人であるが、既に心を無くしたと聞いているらしい。

肉体だけが残ってしまっていると聞いたときは悲しさを感じてしまったが。

 

やがてルフィがサニー号に到着し、海賊女帝に援護されながら2年ぶりの出航を果たしていた。

 

「いやー、ハンコックにはほんと助けられてばっかりだからな〜、またあったらお礼言わねェと」

「…そうだね」

 

ルフィを助けてくれていたことは私としても嬉しいことだが…結婚を何度も言われたという。

断ったというが、あんな女性すらルフィを好いているのだ。

…なんとなく引っかかりを覚えたが、忘れることにした。

 

〜〜

 

「…なんでおれ殴られたんだ?」

「……一応!」

 

この際無茶はもう諦めた。

どうせこの先も無茶は続くと割り切っていた。

それはそれとしてまだ幼い人魚姫をよわむし連呼する上

体の上であんなことしていたらそりゃ失礼だろう。

…いや、ずっと守ってはいたし本人は気にしてる様子もなかったが。

 

「というかあんたクリミナルにマリア・ナポレさんに…羨ましいィ…!!」

魚人島の名ブランドに加えて彼女とも接点あったなんて知らなかった。

私の中でカリーナさんと並んでの憧れだというのに。

 

「そうだったのか〜…お菓子ばっか食ってたからなァ」

「信じられない…いやお菓子も気になるけど」

服にお菓子にナポレさん…一度は私も魚人島に行きたかったな。

 

〜〜

 

「あいつ嫌い」

「だろ?」

「でもトラ男君は親切だしシロクマかわいいから嫌いじゃない」

「だろ!」

次の島のパンクハザード…ルフィからの説明と記憶で見える顔だけですぐ分かった。

あのシーザーとかいうの絶対悪い人だ。

本当に悪人だし確実に反省しないような人だ。

ああいうのは本気で大嫌いだ。

 

「あの子達かわいそうだな…ちゃんと帰れるのかな…」

「トラ男の話だとデカパンツ?だかに治してもらうんだってよ」

そのデカパンツというのがどんな人かは知らないが…きっと治してくれると祈ろう。

せっかくの親子が引き離されるのはあまりにかわいそうだ。

 

…まさか、そんな感情を2連で思うとは思わなかった。

 

〜〜

 

「……大丈夫かウタ?」

「……大丈夫じゃない」

「そっか」

 

あのサングラスがとんでもない代物だったのはさておいても、だ。

こんなことがあったのか?

おもちゃになって忘れられる?

死ぬよりよほど最悪の出来事ではないか。

ルフィの記憶によく出てきたキュロスという人とレベッカという女の子なんて特にだ。

ずっと子供に忘れられながらも守っていた父親と、国の人達に罵倒されながら戦い続けていた女の子。

こんな悲しい話があるだろうか。

 

「…というかルフィ、もう一人お兄ちゃんいたんだ」

「おう、サボのやつ今何してるかな〜」

もう一人のルフィのお兄さんのサボが、エースの炎の能力を受け継いだらしい。

死んだら悪魔の実がまた現れるというのを実際見たことがなかったが、よく分からない三者よりよほど良い結果だったろう。

 

一つ驚いたのが、ライブ会場にもいた盲目の海兵の人だった。

ルフィ達と面識があったのはともかく、あの状況から瓦礫を外すなんてことがあるだろうか。

…この時、あのおじさんは何を考えていたのだろう。

 

ルフィがあのライブ会場にいたニワトリのような海賊の船について話している。

…確かに見た目は色々言いたいが、頭の中にあったのは別の光景だった。

 

ルフィがあのレベッカという子を背負っている光景。

ルフィによれば、父親の方はもう会う気がなかったらしい。

前科があるからと、王宮で幸せに暮らしてほしかったと。

…あのレベッカという子は、その立場も投げ捨てて無事父親のもとに送り届けられたらしい。

ルフィはその後の二人は確認していないが、きっと大丈夫だと言っていた。

…つい、その姿を自分と重ねてしまう。

もし仮にもっと早く真相を知れていたら、シャンクスの隠していたのであろう望みを知れていれば、

もっと別の形があったのだろうか。

 

…いまさら考えても、仕方のないことだった。

 

〜〜

 

その後もルフィの旅の話は続いた。

巨大な象に登ったこと。そこにいたミンク族のこと。

海賊王への道のり、やたら熱の入った忍者の話。

 

お菓子ばかりの国のこと。サンジの家族という人達のこと。

あのライブにもいた枝の人や、名前はかわいいリンリンという海賊のこと。

サンジと喧嘩して、捕まってジンベエに助けられて、それでサンジと仲直りしたこと。

その後あのベッジという悪そうな海賊と…あの嫌な奴と手を組んで結婚式をめちゃくちゃにしたこと。

サンジが父親と決別したこと。逃げるときにあの一緒にいたペドロという人が犠牲になったこと。

その後あのカタクリという人……ライブ会場で姿を見たような気もする人と戦い、なんとか勝って脱出したこと。

…そうして、やがて映像が終わった。

 

「…いや〜長かったな〜…このあとお前のライブのこと聞いてよ、みんなで行こうってことになったんだ!!」

「そうなんだ…本当に長かったね」

 

一応かいつまんでいはしたらしいが、それにしても長い旅だった。

いつの間にか周りの風景が一変して真っ暗になってしまっている。

 

「…面白い人達だね、ルフィの仲間も」

「だろ?みんな面白ェやつばっかだからな!!」

「うん…ルフィの仲間もルフィの相手は疲れるんだろうね…」

 

「…少し、羨ましいな」

つい溢れたその言葉を、ルフィはしっかり聞いていたようだ。

「……だろ?シシシ!!」

そう笑って、ルフィが甲板に寝転ぶ。

 

「もうおせェし、今日は寝るか…グー」

「…寝るの早いね」

 

この世界にも夜はある。

と言っても、夜になったからと言って星空はない。

あの怪しい光が鳴りを潜めるだけだ。

それに夜が来るのも確実ではない。

来る可能性がある時間帯はなんとなく普通の夜と同じなのは分かるのだが、

それにしても夜がない日もあったりする。

おかげで時間感覚はすっかり狂ってしまい、ルフィも寝たいときに寝てる感じだ。

…それでも、なんとなくルフィの食事のタイミングで時間は分かるのだが。

 

…先に眠ったルフィに一応毛布だけはかけて、メリー号を降りる。

そのまま少し歩いて…やがて、ある海沿いの崖についた。

あの日、ライブ直前もここで一人海を見ていたのを思い出す。

 

本当に記憶の中のルフィは楽しそうだった。

はじめは一人だったし、辛いこともたくさん経験していたが、

それでもいろんな人と出会って、色んなものを見て、

それで色んな仲間を得て…

自分の夢にまっすぐ進んで…

 

 

 

 

 

 

─それを、私が奪った。

 

 

思わず伏せてしまう。

吐くものなど何もないはずなのに、吐き気に口を抑える。

しばらく、辺りに嗚咽が響いた。

 

 

「………ごめんなさい…」

 

今更になって、自分のした罪が理解できてしまった。

 

私が、ルフィからすべてを奪ってしまった。

冒険も、仲間も、自由も奪い取ってこんな世界に閉じ込めてしまった。

これまで、ルフィはどんな思いでここにいたのだろう。

どんなに辛かっただろう。

…どれほど、こちらが憎かったのだろう。

顔に隠していないだけで、この原因が殺したいほど憎いはずだと言うのに、

何故あれほど笑ってられるのだろう。

 

 

「ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさい……!!」

 

臆病な私には、ただここで泣いて謝罪を口にするしかなかった。

 




to be continued 『慟哭』
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