二人、この世界にて   作:一般ラインハルト

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9話 慟哭

どれほど泣き腫らしただろうか。

未だ夜は明けることなく、辺りは暗闇に包まれている。

 

 

この先どうすればよいのだろうか。

自分の罪と向き合ってしまった今、今更今までのようにルフィに接することなどできない。

だがこの世界にはもう自分達二人しかいない。

他に頼れる相手などいるはずもない。

この後に及んで、一人になりたくない自分が憎かった。

 

 

そんな時だった、後ろから歩んでくる音が聞こえてきたのは。

足音の主が誰かなど、考えずとも分かった。

 

「こんなとこ来てたのか」

三角座りで顔を伏せていても、声の主がそう言って隣に座り込むのが分かった。

 

 

「…なんで来たの」

荒れに荒れた喉から、自分でも驚くほど冷たい声が出てきた。

「ん?起きたらウタがいなかったからよ…探しに来たんだ」

そんなことを聞きたいんじゃない。

 

「…なにも言わないの?」

「おれが?何言うんだ?」

 

 

「……とぼけないでよ…!!」

顔を上げられないまま叫ぶ。

「…ウタ」

 

「…なんで、なんでそんな落ち着いてられるの!!」

 

 

「あのときは散々断ったのに!!

あんなにこの世界が違うって言ってたのに!!

…もう、このまま今度こそ一生外に出れないかもしれないのに!!」

一度さらけ出した言葉は、止まることがない。

 

「私があんたから全部奪ったんだよ!?

仲間も、冒険も、未来も、夢も!!」

 

あれほど輝いて見えた日常が、もう戻らないかもしれない。

戻る確率よりよほど高いはずだ。

 

「私のこと嫌いなんじゃないの!?ほんとは殺したいほど憎いんじゃないの!?」

考えたくもない予想が口から出てくる。

 

「…私、ルフィから奪ってばっかなのに…なのになんで…」

叫び続けて体力の尽きた体が膝をついた。

 

 

 

 

「…なんで……そんなに優しいの…」

 

 

 

分かっていた。

ルフィがこちらを見る目に、怒りも恨みも憎しみもないことくらい、いくら鈍い自分でも分かった。

仮に本当は恨んでいたと罵詈雑言を向けられれば、きっと耐えられない。

それでも、それならそれでいいと思った。

少しでも憂さ晴らしになってやれるなら、今ならなんでもできる気がした。

例え殴られようが、ひどいことをされようが受け入れられる気すらする。

…最も、ルフィはそんなこと、望みはしないのだろう。

だからこそ分からなかった。

この先どうすれば良いのか。

何故ルフィは優しくしてくれるのか。

その優しさにどう答えればいいのか。

 

 

 

上げることのできない私の体に…やがて、何かが乗せられた。

それが麦わら帽子だと認識するのには、少しばかり時間がかかった。

 

「…え?」

つい顔を上げると、ルフィと目が合う。

 

「…ここに来てすぐのときよ、ここがどういうとこなのか知って…おれ、少し安心したんだ」

「……え?」

信じられない言葉に、つい間抜けな声が溢れる。

 

「おれは海賊王になるの諦めるつもりもねェし、ここから出るのも諦めねェけど…最期まで諦めねェでいれるなら、もし死んでもいいんだ」

こちらを見たままルフィが話し続ける。

 

「おれにとっては、痛いのより死ぬより、一人になる方がずっと辛ェし嫌だ…だからよ」

 

「お前がここにいてくれて良かったし、お前を一人にすることがなくて、良かったって思ったんだ!!」

 

その言葉に目を見開いて…また、散々出したと思ったものが溢れてくる。

こんなことになっても、まだルフィはこちらのことを思いやってくれているのか。

 

「…ルフィ…!!」

「だからよ、おれ諦めねェから、お前も諦めんな!!…そうすりゃ、またあいつらやシャンクスに会えるかもしれないしよ!!」

 

そう言って笑うルフィに、まだ整えきれてない下手な笑顔で頷いた。

 

 

 

 

今まで勇気が足りなかった。

なんでも出来る夢の世界をなくし、ここから出る勇気が足りなかった。

心のどこかで、二人だけのこの時間を望み、喜んでしまっていた。

 

 

でももう迷わない。

優しくしてくれたルフィのためにも。

そんなルフィに償いたいと思えた自分のためにも。

なんとしてもこの世界を終わらせてみせる。

 

仮に、その先にあるのが、本当の孤独だとしても。




to be continued 『活路』
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