どれほど泣き腫らしただろうか。
未だ夜は明けることなく、辺りは暗闇に包まれている。
この先どうすればよいのだろうか。
自分の罪と向き合ってしまった今、今更今までのようにルフィに接することなどできない。
だがこの世界にはもう自分達二人しかいない。
他に頼れる相手などいるはずもない。
この後に及んで、一人になりたくない自分が憎かった。
そんな時だった、後ろから歩んでくる音が聞こえてきたのは。
足音の主が誰かなど、考えずとも分かった。
「こんなとこ来てたのか」
三角座りで顔を伏せていても、声の主がそう言って隣に座り込むのが分かった。
「…なんで来たの」
荒れに荒れた喉から、自分でも驚くほど冷たい声が出てきた。
「ん?起きたらウタがいなかったからよ…探しに来たんだ」
そんなことを聞きたいんじゃない。
「…なにも言わないの?」
「おれが?何言うんだ?」
「……とぼけないでよ…!!」
顔を上げられないまま叫ぶ。
「…ウタ」
「…なんで、なんでそんな落ち着いてられるの!!」
「あのときは散々断ったのに!!
あんなにこの世界が違うって言ってたのに!!
…もう、このまま今度こそ一生外に出れないかもしれないのに!!」
一度さらけ出した言葉は、止まることがない。
「私があんたから全部奪ったんだよ!?
仲間も、冒険も、未来も、夢も!!」
あれほど輝いて見えた日常が、もう戻らないかもしれない。
戻る確率よりよほど高いはずだ。
「私のこと嫌いなんじゃないの!?ほんとは殺したいほど憎いんじゃないの!?」
考えたくもない予想が口から出てくる。
「…私、ルフィから奪ってばっかなのに…なのになんで…」
叫び続けて体力の尽きた体が膝をついた。
「…なんで……そんなに優しいの…」
分かっていた。
ルフィがこちらを見る目に、怒りも恨みも憎しみもないことくらい、いくら鈍い自分でも分かった。
仮に本当は恨んでいたと罵詈雑言を向けられれば、きっと耐えられない。
それでも、それならそれでいいと思った。
少しでも憂さ晴らしになってやれるなら、今ならなんでもできる気がした。
例え殴られようが、ひどいことをされようが受け入れられる気すらする。
…最も、ルフィはそんなこと、望みはしないのだろう。
だからこそ分からなかった。
この先どうすれば良いのか。
何故ルフィは優しくしてくれるのか。
その優しさにどう答えればいいのか。
上げることのできない私の体に…やがて、何かが乗せられた。
それが麦わら帽子だと認識するのには、少しばかり時間がかかった。
「…え?」
つい顔を上げると、ルフィと目が合う。
「…ここに来てすぐのときよ、ここがどういうとこなのか知って…おれ、少し安心したんだ」
「……え?」
信じられない言葉に、つい間抜けな声が溢れる。
「おれは海賊王になるの諦めるつもりもねェし、ここから出るのも諦めねェけど…最期まで諦めねェでいれるなら、もし死んでもいいんだ」
こちらを見たままルフィが話し続ける。
「おれにとっては、痛いのより死ぬより、一人になる方がずっと辛ェし嫌だ…だからよ」
「お前がここにいてくれて良かったし、お前を一人にすることがなくて、良かったって思ったんだ!!」
その言葉に目を見開いて…また、散々出したと思ったものが溢れてくる。
こんなことになっても、まだルフィはこちらのことを思いやってくれているのか。
「…ルフィ…!!」
「だからよ、おれ諦めねェから、お前も諦めんな!!…そうすりゃ、またあいつらやシャンクスに会えるかもしれないしよ!!」
そう言って笑うルフィに、まだ整えきれてない下手な笑顔で頷いた。
今まで勇気が足りなかった。
なんでも出来る夢の世界をなくし、ここから出る勇気が足りなかった。
心のどこかで、二人だけのこの時間を望み、喜んでしまっていた。
でももう迷わない。
優しくしてくれたルフィのためにも。
そんなルフィに償いたいと思えた自分のためにも。
なんとしてもこの世界を終わらせてみせる。
仮に、その先にあるのが、本当の孤独だとしても。
to be continued 『活路』