二人、この世界にて   作:一般ラインハルト

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11話 讃歌

「おい、あれまた呼んだら大変なことになるんじゃねェか!?」

そう言ってルフィが肩を揺さぶってくる。

 

「ちょ、ま、待って…一旦やめて!全部話すから!」

 

 

これを思いついたきっかけの一つは、ルフィの冒険の記憶の中にあったあの奇跡だ。

ルフィたちが昔乗っていた羊の船が言葉を話すという奇跡を見たとき、

何かを思い出しそうだった。

そしてルフィの持ってきてくれた本を読んでいたとき、その違和感の正体に気づいた

かつてシャンクスが話してくれたおとぎ話が、まさにそのものだったのだ。

 

 

『クラバウターマン』。

船乗りに大事にされた船に宿る妖精の話。

歌を愛する者たちの負の感情によって生まれたトットムジカの、ある意味逆を行くような存在でもある。

 

そしてどういうわけか、そのクラバウターマンに覚えがあった。

あのとき妨害のメンバーにいたあのサニーと鳴くライオンだ。

もしかしたら、両者は等しい存在なのかもしれない。

…そして、もしあれが本当にクラバウターマンだったのだとしたら。

 

ウタワールドは、トットムジカのような負の感情だけじゃない…正の感情も形として具現化し、生み出すことができる。

ならばそこから先は自分の使命だった。

 

 

寂しさのような負の感情ではなく、優しさ、慈愛の歌を作る。

その歌で魔王のように現実に干渉してみせる。

そうすればあのような存在と戦わずとも、現実とこの世界をつなげ、

帰り道を生み出すこともできる可能性がある。

 

「よく分かんねェけど、出れるってことか!?すげェなウタ!!」

「うーん…まあそんな簡単な話でもないんだろうけどね」

 

問題は、トットムジカは大勢の感情の集合だったことに対し、

ここにいるのは二人のみ。

しかも曲を作るのは自分くらいなのだから、実質一人でそれを為さないとならないということだ。

 

「…でも、うん…任せて、絶対成功させてみせるから!!」

「おう、ウタなら出来る!!」

 

 

果たしてそれほどの力を持つ曲を作れるのか?否、作ってみせる。

自分は世界の歌姫であり、赤髪海賊団音楽家であり…未来の海賊王の幼なじみなのだから。

 

 

〜〜

 

そんなこんなで始めたこの「神曲」作り、ルフィがこちらの出した食事片手に本を取りに行ったりあの人形達と戦う間、

こちらは曲を作っては試しに歌ってみてを繰り返しの日々だった。

 

…が、はっきり言って成果はとぼしい。

 

 

「…駄目だ。」

新しく作った楽譜を横に重ねる。 

既に楽譜の山は私の座高に並ぶのではないかという勢いに迫っている。

ひたすら思いつく曲を片っ端から書いているが、どれも足りない。

個人的に出来がよいと思っても、実際に歌うと違和感が溢れてくる。

 

こうしている間も時間は過ぎている。

焦るばかりで頭が一杯になっていく。

早くしないと。いつまでもルフィの体が無事とも思えない。

 

情けない。

私の問題だというのに。

私がなんとかしないといけないのに。

私が─

 

 

 

 

「ムグッ」

「ほら、お前も食えよ」

 

いきなり口に何かを突っ込まれた…と思ったが、先程ルフィにあげたチキンの一つだった。

どうやら早めに引き返してきたらしい。

 

「いや、私はもう少し…」

「腹減ってても曲作れないだろ。無理しないで一旦休むぞ?な?」

「…ありがと…」

 

そう言われると何も言えない。

確かにしばらく何かを口にするのを忘れていたし、焦るばかりでは何も産み出せないだろう。

そう思ってチキンを頬張る。

昔から親しんでいた味だ。

 

「…美味しいよね、マキノさんのチキン」

「そうだな。マキノ元気にしてるかな〜」

 

そのまま二人でしばらく食事していると、何本かを一気に飲み込んだルフィが突然口を開いた。

 

 

 

「なァウタ…お前今楽しいか?」

 

「……え?」




to be continued 『交錯』
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