二人、この世界にて   作:一般ラインハルト

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0.5 終焉

ただ呆然と見ていることしかできなかった。

ボロボロの娘が薬をはたき捨てるのを。

夢とも現実とも違う狭間に閉じ込められた者達の解放のための歌も。

…歌い切る直前、ウタが血を吐いて倒れようとするのも。

 

後ろに倒れるウタをギリギリで支える。

 

「ウタ…!目を開けろ、ウタ!」

なんとか励まそうとするが、腕の中のウタの命はもう風前の灯だった。

かろうじて開けられた目には何も映さず、体にも力を入れられていない。

 

「………ッ…」

「…ウタ!……」

 

最期に掠れた声でつぶやいた言葉すら聞き取ることすらできなかった。

ほんの少し上げられた手が落ち…ウタは動かなくなった。

 

 

また、喪ってしまった。

 

 

 

四皇シャンクスもその仲間達も、しばらくその場を動けなかった。

少しずつ体温を失くしていく娘の体を抱き続ける。

このまましばらくそうしていたかったが、周りは許してくれないようだ。

 

「おやァ?ほんとに死んだのかい〜…?」

「………。」

 

 

大将黄猿。同じく大将藤虎、中将モモンガ。

民間人の鎮圧をしていた海軍が、赤髪海賊団に銃を向けている。

 

「死んだなら楽だけど、その死体を渡してくれるかいィ?死人とはいえ大犯罪者だからねェ〜?」

 

 

「……おれ達は今、機嫌が悪いんだ…。娘との時間の邪魔をしたいなら…。」

 

 

「………死ぬ気でこい!!!」

 

 

黒い稲妻が走る。

四皇の本気の覇王色の覇気が、集っていた海軍を襲う。

 

「…クッ……」

「…中将すら気を失いかける、これが赤髪のシャンクスの覇気かい…?」

「…やめときやしょう。市民もまだ寝てる中で戦争をおっ始めるのは。」

 

藤虎の言葉に従うように、黄猿とモモンガが撤退を合図する。

気を失った者たちを抱えながら、海軍が撤収を始めていった。

 

そんな中、ただ一人藤虎は、ウタを抱えるシャンクスの元に歩む。

 

「…なんのようだ、大将藤虎。」

「その娘さんの歌は、あっしも聞いたことがありやすが…まさに姫に相応しいものでした。」

「……こいつはおれの娘だ。当然だろう。」

冷たくなった頬を撫でながら答える。

 

「…海軍大将としては、今回民衆の方々の被害を抑えられたことはひとまずヨシとするつもりですが…。」

 

藤虎の手に力が籠もる。

本来民間の犠牲者は出したくなかった藤虎にとって、それを切り捨てての作戦に思うものがあったのは確かであった。

 

「……もう一つの方は、喜べばいいのか嘆けばいいのか、あっしも分かり兼ねてやす。」

「…なんのことだ?」

 

藤虎の言うことが理解できない。

シャンクスがそう問えば、すぐに答えが帰ってきた。

 

「…分りやせんか?…声が一つ、帰ってきていないのが。」

「…なんだと……!?ヤソップ!」

「あ、あァ!」

 

 

すぐに意識を巡らせる。

もしそうだとすれば、未だ魔王の世界かあちら側に取り残された人間がいるということになる。

そうなれば一大事だ。

一般人、海賊、政府の役人、海軍。

あちこちに覇気を巡らせ、声を聞き続け…最悪の答えにたどり着いた。

 

「…シャンクス…。」

「………お前の見聞色でも、駄目だったか…?」

「あァ…ルフィの声だけが、聞こえねェ

 

よりにもよって、自分たちにとっても、ウタにとっても大事な友人が、こちらに帰っていなかった。

 

「"麦わらの"…よりによってお前さんとはね…。」

 

小さく呟きながら、藤虎とまた背を向け去っていいった。

 

 

 

少し時間が立ち、何名かの意識が浮上し始めた。

 

「ん……ここは…。」

 

最初に目覚めた男…最悪の世代、トラファルガー・ローが起き上がる。

 

「……ハッ、ベポ!」

「グゥ……」

「戻ったか…ひとまず解決だな。」

 

一息ついたローだったが、すぐに愛刀を構え、後ろに立つ男たちを見る。

 

「…なんのようだ…?赤髪海賊団。」

 

「………お前に、頼みがある。」

 

 

エレジアに、夜が訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

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