砂のサイレンススズカを超えろ   作:ステイヤーな馬好き

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プロローグ

俺は…何を…

 

 

そうだ。2桁人気馬3頭の3連複が当たって…

 

払い戻しは確か、550万くらいだったか。

 

それを1000円購入していた俺の手元には5,500万円が手に入る…

 

 

それを知った時に、血の気が失せて…

 

で、死んだらしい。

 

 

俺はどうやら馬…それもサラブレッドに生まれてしまったらしい。

 

もう一度言う。サラブレッドである。

 

どう考えても馬肉行きが目に見えている。ガッデム!

 

 

 

 

ところで、この牧場、実はやっぱり零細なのよ。

 

だって繁殖牝馬が俺の母ちゃん含めて4頭…いや、今年繁殖入りする馬が居るらしいから5頭か。

…オープン勝てば牧場の功労馬になれないかなぁ…

 

まぁそれはともかく、俺と母ちゃんのお世話係らしきお兄ちゃんはよく俺と母ちゃんに話しかけてくれる。

俺の母ちゃんは今年で繁殖を引退するようで。

 

 

驚いたことに、この牧場のおやっさんは稀代の逃げ馬を作り出そうとしたらしく、母父ミホノブルボンの牝馬にセイウンスカイを付けたそうで。

インブリード的にはミルリーフの4×4がある。

逆を返せば直近のインブリードはそれくらい。

 

つまるところ、俺がもし重賞でも勝てれば一気にセイウンスカイ後継種牡馬としてニシノの馬主さんに引き取られたり…しないかなぁ…

ってか俺のこの血統で走るのか…?

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

牧場の持ち主…オーナーブリーダーである『彼』は、元々とある競馬ゲームのプレイヤーだった。

そんな彼が生まれ変わった先は何故か2022年の競馬番組が毎年繰り返され、世代だけが変わっていく不思議な世界だった。というか障害競走がないのに障害コースはあるわ、レースが11レースしかないわ…

『彼』は気がついた。この世界は『ウイニングポスト』なのではないか?と。

 

彼は両親の残した遺産を使って極小規模な生産牧場を買い取り、オーナーブリーダーとしてのスタートを決めた。

 

彼は史実知識を活かしていわゆる名牝を大枚を叩いて買った。

時代にして1973年。

その名前はタイプキャスト。その時代の繁殖牝馬の価格としては驚異の落札価格90万ドル。およそ3億円。

その後彼はタイプキャストを始祖に牧場の繁殖牝馬を増やしていった。

 

そして、その仔であるプリティキャスト。その9番仔となる93年生まれの牝馬がスイートブドウ…つまり当時はまだ期待されていたミホノブルボン初年度産駒だ。

 

 

その後、スイートブドウは2勝をあげたものの引退。繁殖牝馬となる。

これまで98年産駒、99年産駒、00年産駒、01年産駒、02年産駒の計5頭が中央競馬で走っているが、99年産駒が唯一3勝クラスにあがっただけで、他は未勝利。

スイートブドウに見切りをつけた彼は今年の産駒…スイートブドウの05を最後に繁殖を引退させることを決めた。

 

そのスイートブドウの05なのだが…セイウンスカイという異端血統に母父ミホノブルボンという血統に、周囲の関係者達は彼を冷笑した。

 

 

その中身が普通の馬では無いことに気付かずに。

 

 

 

「…流星、か」

 

 

既にオーナーブリーダーとして一角を形成していた彼が、『その馬』に目をつけた。

 

「もう若くはないと思ってたんだがね…」

 

御歳55歳。23歳の頃にタイプキャストを購入してから四半世紀を超えて、かつての面影もない程に禿げあがった彼の目に、確かな意志の光が宿っていた。

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