砂のサイレンススズカを超えろ 作:ステイヤーな馬好き
トレセンでの調教はそれはハードなものだった。
俺が入厩した厩舎のセンセイは若い女性調教師で、優しそうだなぁ…と思っていたらバチが当たったのか、ミホノブルボンもかくやのハードトレーニング。
まぁ母父ミホノブルボンだし…
2歳の夏に坂路を2本とダート5ハロン1本の一杯。これがかなりのハードで。
「うーん、この子って牡馬だよねぇ」
「そうですね」
おい、いくらセンセイでもマジマジと秘部を覗くな!
「なんでこんなに華奢なんだろうねぇ。こんだけハードに乗り込んだら牡馬じゃなくてもムキムキになってもおかしくないよねぇ」
「ですね」
センセイの隣で相槌だけ打つのは、多分俺の担当厩務員。50代くらいの男性で、調教厩務員らしく俺の普段の調教を担当している。
「しかし、乗り心地はかなり良いですよ。GIは分かりませんが、未勝利で終わる馬ではないでしょう」
「…あなたがそう言うならそうなのでしょうねぇ」
とりあえず、調教終わったんだからなにかよこせ。氷砂糖か?リンゴか?バナナか?今の季節なら梨もそろそろいけるか?
「あぁ、氷砂糖の催促か。ほれ」
「こんな小柄で華奢な馬でも、飼い葉食いはうちの厩舎で1番なのだから不思議ねぇ。人間でもたまにいる細身の大食いタレントみたいなものかしらねぇ」
「ありすちゃんも乗ってみるといいよ。技術調教師時代には結構乗り込んでたじゃないか」
「…口調崩れてますよぉ」
「…ですな」
うまうま。
あまーい!
梨でもいいのよ?
「さて…今年のダービーも終わって、いよいよこの子も新馬戦の時期ですよぉ…」
「
ん?
2007年のダービーはウオッカの年だったよな?
「まさか
ら、ライスシャワー産駒だと!?
ライスシャワーは宝塚記念で予後不良だったはず…
……あ、まさか牧場にいたテイエムオペラオーの横にいた黒い馬、まさか…!
うひょー!俺の好きな馬の1頭にライスシャワーがいるんだよな!嬉しいなぁ!
「ライスシャワー産駒は牝馬ばかりGI勝ちが出ていたものねぇ」
ライスシャワー産駒相手なら致してもいいゾ…!
マックイーン産駒もいいゾ。
…いや、ちょっとテンションおかしくなってたわ。やっぱり無理ぃ。
「葵ちゃんも予定大丈夫みたいだし、来週末は楽しみねぇ」
「こいつも勢いに乗って欲しいですな」
新馬戦か…
どこ行くんやろ。
☆☆☆☆☆
『さぁ、本日の第4R、2歳新馬戦、メイクデビュー東京。芝1,600mで争われます。馬場は朝からかわらず重馬場。8頭の出走予定でしたが、3番のタネボーシサマが体調不良で出走取消となっています。予めご了承ください』
『パドック解説はテンエー新聞の天野記者です。どうぞよろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
『ではパドックでの注目馬を教えてください』
『えー、1番のアオサンブースト…5番のエンゲルケイスー、8番ホワイトステップ…でどうでしょうか』
『まずは1番手に挙げられましたアオサンブースト』
『この子はサンデーサイレンス産駒で、母父はトウカイテイオーの血統。スラリとした馬体にしっかりと走り込んだのが見て取れる筋肉。トウカイテイオーの血を感じる柔軟性。毛艶もいいですから、期待できそうです』
『2番手評価はエンゲルケイスー』
『えー、そうですね。この子は父フジキセキですから、早熟傾向にあると思います。馬体は結構しっかりしてますから、あとは実力を出し切るだけでしょう』
『3番手にホワイトステップ』
『父セイウンスカイ、母父ミホノブルボンと、逃げ馬の血筋。血統評価もさることながら、馬体は貧相で小柄。正直勝てる馬には見えません…が、私はこの馬に何かを感じます。何かを起こしてくれる気配を』
東京4R
着順
1 エンゲルケイスー
2 アオサンブースト
・
・
8 ホワイトステップ