【急募です】状態異常《共依存》の治癒方法   作:流星の民(恒南茜)

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22_『装いを変えて』

「——ここ、ね。ありがとう。柑野さん」

「……ん、どういたしまして」

 

浅黄さんに連れてこられた先は、外から見る分には普通のカフェでした。

そこまで大きなものではありませんが、ガラス張りの壁に加えて、見える範囲でもたくさんの本棚が置かれており、所狭しと本が詰められています。

その量を見るに純粋なインテリアとして本を置いているカフェ……というよりは、ブックカフェとしての側面が強そうです。

 

真っ先に入っていく浅黄さんと傘をすぼめたのちに、カフェに入っていく友梨奈ちゃん。

正直、あまりこういう場には慣れていません。中々一緒に行く相手がいませんでしたから。

ですが、ここはどちらかというと雰囲気はおとなしめです。これくらいであれば、わたしでもきっと問題がないはず。

 

「Acht」と記された看板は新しめ。しばらくじっと見つめたのちに、ある程度気持ちも固まって。

わたしも二人に続いて、店内に入りました。

 

◇ ◇ ◇

 

◇ ◇

 

 

「コーヒーを一つと……あと、ブースを一つ」

「じゃあ、あたしはカフェラテで」

「えっと……わたしも同じものを」

「かしこまりました」

 

なんとか、注文は滞りなく終わりました。

一息吐きつつ、間を埋めるようにして取り敢えずは水を啜ります。

……とはいえ、本題はわたしのカフェデビューではありません。もっと重要な話題があるはずです。

 

「……それで——浅黄さん。色々聞きたいことはあるんだけど……まずは、何をしたいのか教えてもらってもいい、かな?」

「え、ええ。もちろんよ。むしろ、そのために呼んだんだもの……ただ、もう少しだけ待っていてもらえるかしら?」

「……あとどれくらい?」

「そう、ね。頼んだものが届くまで?」

 

またしばらくの沈黙です。

浅黄さんも、友梨奈ちゃんも、わたしも、もう話題は特にありません。

本題だって、彼女が口を開かない限りはわからないのですから。

他の客はいない様子。しばし店内を観察したのちに、本棚に並べられた背表紙に目を滑らせて。ある程度傾向を把握しながらも時間が経つのをひたすらに待ちます。

 

歴史物や結構古い装丁の本が並ぶ中、いくつかちらほらと挟まるライトノベルの背表紙。確か——20年前くらいに刊行されていながらもVRMMOを題材にしていたもの、でしたっけ。有名なタイトルなので見覚えは十分にあるものです。ここに並んでいる分には、少しミスマッチな気もしますが。

それとも、店主さんも案外ゲームが好きだったりするのでしょうか……なんて、少し考え事をしていて。

 

「——こちら、カフェラテです」

 

ようやく、注文していた品は届きました。

カフェラテが二つにコーヒーが一つ。やっと話が進められる、と若干空気が綻んだ時、でした。

 

「——そして、ブースの使用券です。階段を上がった先にございますので」

 

最後に置かれた見覚えのないカード。

ここの雰囲気にはあまり合わない蛍光色強めでカラフルな見た目のそれを手に、カップに蓋をしてコーヒーを手に持つと、浅黄さんは立ち上がります。

 

「それじゃあ、ブースに。詳しくはそこで話すから」

「ブースって……なんのこと?」

「来てみればすぐにわかるわよ」

 

顔を顰める友梨奈ちゃんについて、妙な予感と共にわたしも階段を上っていきます。

暖色から黒へと。狭い階段は、次第に雰囲気を変えていきます。そして——2階に辿り着いた時、でした。

 

そこにあったのは、薄い壁で区切られたブース——要するに——。

 

「あの、浅黄さん……ここって、普通のカフェじゃない……ですよね……?」

「ええ。ブックカフェ兼ネットカフェ——『アハト』。要するに……ここはネットカフェ部分ね」

 

兼ねているとして済ませてしまうには、あまりにも趣向が離れすぎています。店長さんの顔が見てみたいもの……ではありましたが、そんなことを考えている間にも浅黄さんは奥へと進んでいきます。

そこそこ古い据え置き時代のハードも置いてあるのか、ちらほらと音漏れによって聞こえてくるゲーム音を潜りつつ、浅黄さんがわたしたちを連れてきたのは一番奥。鍵がかかるタイプの、VRゲーム用のブースでした。

中には、ヘッドギアが四つほど。結構な設備です。

とはいえ、狭いことには違いない部屋に3人で腰を下ろし、申し訳程度に置かれた机に各々飲み物を置いて。

状況もうまく飲み込めないまま、ことは進んでいき——。

 

「それで……こんなところまで連れてきて……ねえ、浅黄さん。そろそろ、何がしたいのか教えてくれない……かな?」

 

友梨奈ちゃんの疲れたような声のあと、少し深呼吸をして、そののちにわたしたちを見据えると——浅黄さんは、ようやく本題を口にしました。

 

 

「……お願い。白帆さんに柑野さん——強い二人だからこそ一緒に、《スカーレット・フルール》にダイブして欲しいの」

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