―――あった!
あれから数分程走っていると神樹の根本にひと一人入れそうな穴を発見した。鎧を解き、体を穴へと滑らせる。
穴はとても狭く息苦しさを感じる。通行するには更に時間を要する。そうなってしまったら本当に手遅れになってしまう。ならば―――
「息苦しい―――なッ!」
圧縮した五大元素を体全体から解き放つ。いくら神樹の一部といえ破壊の塊を受け、原型を留めることは不可能だ。
体の周辺にあった神樹の一部は消し飛び、大きな空洞と化す。当然そうなってしまえば、今まで体を支えていた物も共になくなる。落ちる、それが摂理だろう。
「ぐっ········!」
凹凸を感じない地面へと落ちる。筋肉に力を上手く込めれないためか受け身も出来ず、衝撃を全身で受ける。目を開くのに幾分か掛かってしまった。
体勢を立て直し、ようやく瞳を開く。辺りは一面真っ暗だが自身の立つ下から光が差している。無意識的にそちらへと目を向ける。
「―――友、····奈···?」
目線の先には何十もの白蛇に体を拘束された友奈の姿があった。
白蛇·······神の化身、神の使い―――!
「友――ッ、この程度の障害など······」
友奈へ手を伸ばそうとするが目視出来ない壁によって阻まれる。阻むなら壊すまで·······鎧へ換装する。
左腕に五大元素を収束、圧縮していく。
「砕け散れ――ッ!!」
音速すらも超える速度で壁に衝突する。轟音を鳴らすが、傷一つとしてつくことはなかった。
五大元素を収束、圧縮し放つ。ジュワユーズの真名解放には劣るがそれでも現時点での最高打点。それが通用しないとなると当然他の攻撃では突破出来ないだろう。だが、その程度で諦める者は此処にいない
「ハァ――ッ!」
斬り、突き、燃やし、凍らせ、吹き飛ばし、砕き、輝き―――どれも決定打に届き得なかった。
「あぐっ·····!」
未だ侵食が止まらない天の祟りを受けながらもこの男は止まらない、止まれない。
先に天の神を打つ。
救出された時点でそれは結城 友奈ではなくなっている。概念と化した置物に成り下がっている。よって、今やらなければ全てが駄目になる。
詰んでいる。この局面でシャルルマーニュはとことん詰んでいる。
友を見捨てれば天の神打倒は成し得ない。ここで友を救えば、天の神へとジュワユーズは放てない。どちらにせよ結末は視えている。
戦犯を探すならば、すぐに見つかるだろう。
敗北を認め、自身達だけでもと思った愚者。命懸けで戦う者達の意見など見ないただのバカ共。
ここに馬鹿がもう一人。
「輝かしい未来を我が手に」
ジュワユーズが光り輝く。誰もが欲する程の色彩を真っ暗闇の空間を照らし出す。
ここまで来たならば意地だ。誰にも譲らない。例え神様が欲していようが、俺の友達だ。それを、こんな、生贄のような結末を認めない。お別れはもう少し後にとっておくもんだ。
「無限の色彩よ。我が王剣よ。」
三対、計六個の翼を羽ばたかせる。
「全て―――」
十二勇士は此処へ集わない。誰もが勇往邁進し、おのが信念、誓いを果たすため剣を振るう。であれば、俺は一人で果たさなければいけない。
「全てこの輝きに屈せよ――ッ!」
アンタらに感謝はしている。だが、友奈は返して貰うぞ。誰が来ようとも絶対に―――
「――
―――ナニか割れた音がした。
「―――·······あれ?」
結城 友奈は目を開く。
先程まで一寸の光もない真っ暗だったのが、明るいばかりの世界に移り変わった。神婚が終わったのかと周りを見渡す。
「樹海········なんで、だって私······」
信じ難い光景に頭を抱え、途方もない絶望感を味わう。
「おっ、友奈、やっと······起きたか」
「!シャル······くん、体が······」
助け舟と思った友達は既に死に体。体を粒子にしながら根に背を預けている。そこに王たる威厳など存在せず、ただのシャルルマーニュだけが静かに存在している。
「どこも、痛く、ないか·····?」
「なん、で·····っ、私なんかのために·····」
訂正しよう。馬鹿野郎と言った方が正しいな。
友奈の言葉に少しむっとした後、ゆっくりと重い口を開く。
「お前、だからだよ。ほら、そんな顔しないでさ·······笑顔、笑顔」
「〜っ゛!」
私よりキツくて苦しいのに無理矢理指で頬を上げて笑顔を作る。今にも弱音を吐きたいのに、必死に抑え込んで私を気づかっている。それだけで、もう―――
「起きて、早々悪いん、だけどさ·······みんなの、援護に行って、くれねぇか?俺も、すぐ追いかける、からさ」
「―――う゛、うんっ!」
シャルくんが私を頼ってくれた。いつも追いかけてた人が私を頼ってくれている。それだけでダメだった。こんな状況なのに、涙が溢れ出す。堪えていたのが一気に溢れ出す。
「頼ん、だ―――」
勇者システムを起動し、後ろを振り向かず走り出す。頬を伝い、雫が口に入る。水にしてはちょっと、しょっぱかった。
心臓が鼓動する。血液が体中を巡る。まだ、俺は生きている。なら、諦める訳にいかねぇな·····!
残っている力を振り絞る。輝かしい未来の為に俺は立つ。皆の為に俺は立たなければいけない。
「ぐっ、ォォォォ―――!!!」
喉から音が聞こえる。諦めが悪い愚者の声が。何者にもなれなかった愚者の妄執が。
「―――シャルルマーニュ」
掠れた声が聞こえた。俺ではない。
水溜まりを歩いているような音と共にこちらへ近づいてくる。そちらへと視線を向ける。
「あ―――」
思わず変な声が出た。それ程までに目を伏せたくなるような風貌―――
両腕は肩まで破裂したかのようになくなっている。足は原型を留めているものの骨が露出している部分がいくつもある。
胴体に関しては本当に惨たらしい。肉が千切れかけており、臓器が全て空気に接している。顔は火傷のような損傷の仕方で左目が潰れている。誰かもわからない。
全身から血を流し、血溜まりを作りながら歩いてきている。足音はそれらを踏みながら歩いてきた音だろう。
「戦いは終わらない。まだ、お前の冒険は続く。立ちやがれ、勇者」
「そんぐらい、わかってんだよ·······っ!」
それが出来れば俺は困ってない。いくら力を込めようが立てないから雄叫び挙げて奮い立とうとしてんだよ。
「もうお前しかいない。過去の影法師は最早いない。今を生きるお前が最後の砦だ」
「俺だって、影法師、だろ·····っ、とっくの昔に、俺は死んでんだよ······っ!」
俺だってわかってんだよ。あの最期が俺のだって。誰でもない俺の最期が首吊りだってことぐらい夢を見た日からわかってんだよ!俺がどうしようもない愚者だってことも―――
「じゃあ確かめてやんよ」
大気の流れが奴へと集中する。
「うおっ······!?」
この感じ········宝具か――!?
「御影 士郎の生きた証を此処に―――さぁ、集えよ勇者。誰よりも気高き者達よ、我等が希望の灯火に篝火を」
祝詞と共に溢れんばかりの輝きが満ちる。
御影 士郎を英雄たらしめる宝具。人類史を存続させた救世主への鎮魂歌。誰もが夢見た空虚な物語。
この宝具を一言で表すならば、勇者への大号令。
人類史を支え続けた者達を一時的にであるが、精霊として現世へ引っ張る。ただそれだけだ。だが、この宝具の真骨頂はそこにある。
【継受】と【誓い】
勇者達総意で認められた者へ志と巨大な魔力リソースを継受する。そして、その者は勇者達へ揺るぎない誓いを立てなければいけない。もし、虚偽の誓いを立てれば·········文字通り破裂することになるだろう。
「もう一度言うぜ。―――立て、シャルルマーニュ。お前の王勇はそんなものだったのか?」
「そんな、もの―――」
俺の王勇とはこの程度のものだったのか、だって······?舐めやがって·······カッコイイ友への侮辱と受け取ってやんよ······-っ!
ジュワユーズを地面に刺し、握り潰さんとばかりに柄を握り締める。
「俺は、世界だとか·····っ、神々だとかはどうでもいいんだ·······だがな。これだけは譲れない、バカにされたくない―――」
そうだとも、俺は―――
「友達が悩んでいるなら一緒に悩む。苦しんでいるなら一緒に苦しむ。どんな時だって支えになってやりたい。アイツらの助けになってやりたい。」
世界を守っていた勇者達には酷く滑稽に見えるだろう。だが、それで結構。どんなに強大な力を有していたとしても俺はバカな奴だ。どうしようもないバカ野郎だ。
「それが俺だ。シャルルマーニュなんかじゃない俺だ。見届けてくれよ?誰にも覚えてられないのは悲しいからなっ!」
体中は完全に祟りに侵されている。にも関わらず、ソイツは立っている。へっちゃらかのように笑っている。
目を瞑る程の輝かしい色彩を放っている。その姿は正に―――
「お前は、立派な勇者だよ········誰がどう見ても―――」
そう言い切るや否やその場に崩れ落ちる。それを皮切りに光輝く精霊達がシャルルマーニュが手に持つジュワユーズへと吸い込まれていく。
「―――!」
それと同時にいくつもの感情が流れてくる。
彼女等は戦った。
今を守るために。友を守るために。この日常を守るために。色彩を与えてくれた人を愛すために。
誰も彼もが自身の譲れないものを振るい、自己を鼓舞し、仲間と共にいくつもの戦場を超えてきた。
「これ、は―――」
自分のこの思いは持ってもいいものだと。間違えてなどいなかったと。静かに彼女達はそう教えてくれる。それと同時に体の奥底から感じたこともない程の勇気が湧いてくる。
「友を守る―――この一瞬だけでも構わない。この一瞬だけは気持ちを重ねてくれ。この一撃に全て載せる。」
ありとあらゆる気持ち。そして―――自身の命すらも炉に焚べる。
「一夜一時の幻と言えど此処に我は楔を穿つ!」
チャンスはこの一度きり。これで果たさなければ、全てが水の泡に消えるだろう。だが、不思議と失敗は思い浮かばない。
「伝説よ甦れッ!」
十二勇士を含め、何百ものジュワユーズが加算される。これは勇者達の気持ち。何ものにも変えられない掛け替えのない思い出。だからこそ俺は天を仰ぎ見る。
「我が剣に彼らの力を―――!」
天へと飛び立つ。全ては友を守るため。いつもの日常を過ごすために俺は全てをかける。
「――
誰も彼もがその輝きを見ていた。目に焼き付けるように。最期を見届けようと。泣き顔を晒しながらいつまでも眺めていた。
何者にも負けない色彩は天を穿たんとあらゆる障害を突破していく。
天の神は見惚れていた。どんな宝石よりも価値がある。どんな輝きよりも眩しい男の最期を。勇者たる者の剣を。
「―――」
笑っていた。
体はとうに果てようとしている男は笑っていた。これから自分が死ぬことがわかっているというのに笑っていた。
徐々に天の神を守る障壁に罅が入っていく。だが、そこまでだ。あれ程輝いていた色彩はもう風前の灯火だ。後数秒で重力に従い落ちていくだろう。
「―――ッ、········あぁ」
全てを出し切り、彼は落ちる。体が粒子となり、空へ散っていくの眺めながら地面へと近づいていく。
未だ天の神は健在。だが―――
“都牟刈、村正だぁ――!!”
―――空が割れた。
天の神がバラバラに崩れていき、地へと堕ちる。それは、神代が終わったことを示していた。
「やっぱ、すげぇや······」
最早、此処にはいない男へ賞賛の声を·······いや、そうじゃないな。
未だ機能する口を開く。
「最後の勇者から最初の勇者へ、心よりの敬服を。アンタは誰よりもカッコ良か―――」
―――もう、その場には誰もいない。
彼は地に落ちることなく世界から消えた。誰にも弱い所を見せず、誰よりも気高いままその生に幕を降ろす。
願わくば、彼女たちの未来に幸福を―――
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