気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 一体サムライレムナントのセイバーは誰なんだ······!?
 予想は日本武尊でよろしゃす。



花結いのきらめき【9】

 

 

 

 

 御影と共に樹海を走る。その際に邪魔してくる星屑は御影の一振りで粗方消滅していくため無視だ。皆を完全に置いてけぼりだが、今は少しでも早く急がなければ。

 

 数分程ぐらい走っていると、ようやく西暦組を発見した。どうやら、マシュマロとバーテックスに囲まれているようだ。

 

「俺がバーテックスを斬る」

 

「ならば、俺は星屑を」

 

 牡羊座は増えるから俺が、と思ったが御影ならなんとかなるか。俺はマシュマロを潰すことに専念しよう。

 

 大きく飛翔し、刀を振るっている勇者の近くに降り立つ。スーパーヒーロー着地はこの局面じゃ出来ない。

 

「―――誰だ!」

 

「助力する。説明はここを切り抜けてからだ」

 

 警戒心マシマシだな·········あ、御影が飛んだ。その勢いのまま牡羊座を一刀両断する。

 

「うぉらぁ!――うぇっ、増えた!?」

 

「「士郎(さん)!!?」」

 

 待て。あれ、俺が行ったほうが良くなかったか?いや、もうしょうがない。御影には頑張って貰おう。

 

「士郎·······わかった。手を貸してくれ」

 

 呆れたって感じだな。いやまぁ、牡羊座の初見はああなる。何事もチャレンジチャレンジ。

 意識を切り替え、マシュマロ共を殲滅することに集中しよう。手始めに五大元素を手でゴネゴネする。そして、放つ。

 

「我が威光を受けるがいいッ!」

 

 数十匹程度か·······まぁ、正面は空いたしいいか。後は皆が合流するのを待ちながら、ジュワユーズで斬り伏せていくのが定石かな。

 

「無茶苦茶なのが増えたわね······」

 

「頼もしい増援だね、ぐんちゃん」

 

 わぁ、似てる········そりゃあひなたも一瞬思考停止するわな。

 

 その後他の勇者が来る前に殲滅は完了した。牡羊座はゴリ押しによって消滅したのを確認している。

 

「バーテックスってのは多種多様なもんだ。増えるとはな·······」

 

「なにか分裂する条件でもあるのだろうか······?」

 

「·······切断じゃなくて抉り取る、それが効果的じゃないかしら?」

 

「おっ、いいな。次があったら試してみるか」

 

 和気あいあいとしている話し声を聞きながら、近づいてきている勇者部に手を振る。あっ、友奈が振り返してる。

 

「それにしても、士郎さん。こんなに早く合流出来るとは思ってませんでしたよ」

 

「ん·······どういうことだ?」

 

 御影の位置を知ってたような口振りだな。勇者システムの探知があるにはあるが、俺達の前には障害など皆無だった。精々ちょっとマシュマロがいたぐらいだ。

 

「敵に囲まれてたようですが·······違いましたか?」

 

「いや、違うな······ちょっとスマホ見せてくれ」

 

「どうぞ」

 

 クロスボウガンを扱っていた勇者のスマホを御影と共に覗き込む。確かに言う通りマシュマロとバーテックスが沢山集まっている塊が一つ、ここから大分離れた場所にある。

 

「·········」

 

「第二波·······いや、こちらに来る様子はないな。一先ず風達と合流を優先する」

 

 なにか深く考えている御影を置いておき、西暦勇者へ策戦を伝える。

 

「―――あの塊は俺が向かう。」

 

「一人でか?」

 

 この量はいくろ御影と言えども物量で押される。一人でいくのは蛮勇に入るぞ。

 

「時間がねぇ。一刻を争うんだ」

 

「理由は?」

 

「言えねぇから退け」

 

「言え」

 

 いがみ合うように眉間に皺を寄せながら睨む。どちらも負けず劣らずの頑固者。この勝負は第三者が入らければ、一生続くだろう。

 

「ちょ、ちょっと二人共!喧嘩は、あんま――」

 

 おどおとしながらも高嶋 友奈が二人の間に入ろうとした瞬間だった。

 

「―――士郎っ!」

 

 甲高い金属音が聞こえた。まるで金属同士でぶつかりあったような音だ。

 

「タマ!無事か!?」

 

「勇士達よっ!」

 

 御影は発生元である盾を扱う勇者の元に駆け寄り、俺は十二勇士を展開し周囲を警戒する。

 

「タマはへっちゃらだ。それよりもだぞ」

 

「わかってる·······ッ」

 

 どうやら怪我はないようだ。御影は刀を握り、周囲を警戒する。

 

「全員、背中を合わせるようにするんだっ!」

 

 乃木 若葉の号令によって陣形を組む。これでどの方位から攻撃されようが問題ない。

 奇襲を失敗したら相手はなにを考えるか········次の隙を突く·······っ!

 

「ローラン!オリヴィエ!」

 

 すぐさま風先輩達の所へ向かわす。その間に御影が掛けた電話を俺が受け取る。

 

「風、奇襲に警戒しながらこちらに辿り着け。今、勇士二人を急いで向かわしている」 

 

『わかったわ。そっちも気をつけなさい』

 

 必要なことを簡潔にわかりやすく伝える。この状況では一秒が命に関わる。油断なく基盤を作らねば

 

「御影、第二射に備えろ」

 

「何処から来てるか、だろ?それなら俺より適任がいる。てことで任せたぞ、杏!」

 

「任せてください!」

 

 その言葉と共に陣形から抜き出し、先程放れた方向へと駆ける。

 

「士郎らしからむ·······いや、これが最善か」

 

 御影が走っていく間、こちらの警戒は俺と勇士で固める。風先輩の方へと放たれた際は俺が探る。完璧な作戦だな。

 

「―――、ハッ!」

 

 突如として放たれる刀を難なく弾く。そして射出源は――

 

「七時の方向ですっ!!」

 

「―――」

 

 その言葉が発せられた瞬間、その手には草薙剣が握られる。先程とは比べものにならない程のスピードで駆け、振り上げるように振るう。

 

 樹海の根ごと裂く程の斬撃。どのような物質だろうが、その斬撃を以てして斬れぬものはない。

 

「·········外したか」

 

 未だ晴れない煙を睨みながら、構える。段々と晴れていき、人形のような影が薄っすらと見え、て······

 

「やっぱ、こんぐらいじゃ仕留めきれねぇか」

 

 御影と同質の声。姿形すらも酷似している。唯一違う所と言えば、左腕があるか否かという所だけだろうか。即ち、コイツは―――

 

「それじゃあ、仕切り直しだ。当然まだ続けるよな、四国の大英雄?」

 

「アンタが俺の敵なら続ける。降参するなら今のうちだぞ」

 

 左腕に五大元素を収束、圧縮する。照準は奴の頭部。この一撃で命を断つ。あと、3、2、―――

 

「お前の弱点は把握済みだ。それ、守ってみろ」

 

 降り注ぐ剣群を目にし、収束した五大元素をすぐさま散らす。

 一刀一刀が宝具。数回防げば、精霊の護りなど容易く突破するだろう。そして、そのまま命を刈り取れる。

 

「全軍、撤退準備―――ッ!!」

 

 迷わずその言葉を口にする。御影もその指示に従うように奴から離れる。その際に何本か刀を投擲するが、飛来してきた刀によって弾かれた。

 

「シャルくーんっ!こっちぃ!!」

 

 樹の糸によって練られた防護壁。その後ろならば剣群から身を守れる。だが、そこまでの距離は100m程。身を守りながらの撤退では途轍もなく遠く感じる。

 

「俺とシャルで防ぐ!走れ!」

 

「守りはタマに任せタマえ!!」

 

 猪の如く駆け、俺と御影の横に並ぶ。その手には片手盾が握られている。どうやら、彼女が西暦勇者の守りの要のようだ。

 

「タマっち先輩!まだ、足が――」

 

「走れ、杏!」

 

「あんちゃん!」

 

 御影が大振りに大剣を振るい、大雑把に刀を砕く。そこを通過したものを十二勇士と共に折る。または弾く。そして抜け落ちた剣を盾で防ぐ。この作業を後ろを走る勇者が防護壁へ辿り着くまでする。

 

「―――避難完了だ!士郎達も早く!」

 

 後ろからの合図が聞こえた。降り止まない剣を弾きながら、その言葉に安堵する。後は御影がこの子を担いで全力で走るのみだ。

 

「わかっ」

 

 他の剣とは桁違いなスピードを以てしてタマの盾に迫る刀を士郎の心眼が捉えた。だが、捉えるのみで体はその刀を弾くことは出来ない。

 

「え」

 

 タマを守る盾が刀と共に砕け散る。

 ようやくこの時点でシャルルマーニュが目視する。行動に移すには後一秒要するだろう。

 

 人間離れした動体視力。先読み能力········全てが裏目に出た。たった一秒にも満たない空白を作ってしまう。その空白は敵にとって最大の好機。見逃す訳がない。

 

 ―――二刀目が放たれる。

 

 狙いは一点。誰にとっても明白な必殺の一投。

 シャルルマーニュがジュワユーズを伸ばそうが、タマが庇おうが、時すでに遅し。

 

「―――」

 

 心臓を貫き、背中から突き出る真っ赤な刀身。血を滴り落ちながら、静かに沈黙する。

 誰もが最悪の事態が頭に浮かんだ。いや、認識した。

 

「デュラン、―――ッ!」

 

「いい、それでいい」

 

 園子との約束が過り、デュランダルを翳すことに躊躇する。再度挙げようとするも、御影によって静止させられる。

 

「ぁ、あ゛あ·····!」

 

 降り注いでいた剣は止み、静寂となった。そんな光景をただ一人不服そうに眺める。

 

「ッ―――、若葉ぁ!受け取れ!」

 

 歯を食いしばり、タマの首根っこ掴んで防護壁の方へと放り投げる。

 勇者達は全員避難済み。残るは英雄のみとなった。

 

「シャル、悪いが最期まで付き合ってくれよ」

 

「······いいだろう。とことん付き合うさ」

 

 ―――輝きが満ちる。

 

 『託す』『遺す』ということに関して御影 士郎という男は最大の影響力を持つ。

 誰もが夢見た空虚な物語ではあったけれど、それは何処かの誰かの希望となったのだから。

 

「やっぱ、勝てねぇな·······」

 

 剣群が御影へと降り注ぐ。

 ここでいくら邪魔をしようが彼が仕上げることは重々承知だ。自身が敗北してることなど初めからわかりきっている。故に足掻く。惨めたらしく最後まで足掻く。

 

「―――」

 

 鉄を打つ音がする。一回一回全てを賭けて金槌を振り下ろす。体を粒子としながらもお構いなしに振るう。

 

 いつか誰かが笑えるようになるなら、迷わずこの命を燃やすとも。それが救世主としての役目だ。

 

「シャル―――」

 

 剣が折れる音、ぶつかり合う音·······様々な轟音が響く中、その声は鮮明に耳に届いた。

 

「お先に休ませて貰うぜ!」

 

「········あぁ、存分に休め。四国の勇者よ」

 

 一振りの刀を遺し、風に乗って消えていく。

 遺そされたシャルルマーニュはただその光景を眺めていた。⬛⬛でさえも、苦虫を噛み潰したような顔で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





 誰もが夢見た空虚な物語だって物語だ。当然終わりはあるし、続きもある。終わったってもう一回最初から読むことだって出来る。物語というのはそういうものです。

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