気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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花結いのきらめき【18】

 

 

 

 

 

 

「········」

 

 未だ晴れない煙を睨むように警戒する。

 奴の両腕は須美と東郷の狙撃により、使い物にならない筈だ。それを考慮するなら、先程の攻撃は当たったことになるが·······なにか奥の手があるかもしれない。

 

「晴れてきたな·······」

 

「警戒は怠るな。東郷、いつでも撃てるように準備してくれ」

 

『了解』

 

 迂闊に近づこうとする若葉を手で静止させながら、こっから1km離れている東郷へ風先輩の携帯で指示する。

 

「······刀の、破片?」

 

 ようやく目視出来たかと思えば、刀の破片が散らばっているのみで肝心の奴の姿はどこにもいない。血の跡は俺達から離れていっている。

 

「退けた········いや、これは····」

 

 なにか妙だな。この血の量········俺からの攻撃は避けられた?それか、最小限に抑えたか。どちらにせよ奴はまだ動ける。

 

 だが、それでも可笑しい。奴が俺と同じ思考回路ならば、ここでの撤退はない。次やるなら、それは―――

 

「東ご―――ぅ゛·····っ?!」

 

 喉元から刀が突き出る。正しく奴が扱う千子 村正の刀。それ即ち·······コレは

 

「俺とお前が同じ?ハッ、笑わせんなよ。シャルルマーニュ」

 

「シャルくんっ!」

 

「ッ―――!」

 

 射線が被っている以上東郷の援護は見込めない。銀と友奈は間に合わない。

 このような形での奇襲·······ありえるわけがない。ありえるとするなら、コイツは俺ではないナニかだ。

 

「貴様、は·······誰だ?」

 

「テメェに答える義理はねぇ。じゃあな、大帝(マグヌス)

 

 その言葉と同時に喉元から力任せに振り下ろされる。鎧と共に臓器、そして体ごと切り裂かれていく。

 

 死、―――明確なそれが目の前にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰でもない奴に自分を重ねちまったか·······まっそれが、今回の敗因ってこった。()()のな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 安堵の溜め息をつきながら、消滅していく完成体······現在では獅子座と呼ばれるものが消滅していくのを眺める。

 

「勇者システムの向上ってのはこうも凄ぇのか。感謝しねぇとな」

 

 300年前では三人がかりで切り札使っても勝てなかったのを思うと時代の変化とは凄いものだ。まぁ、彼はその勇者システムを使わずに倒しているのだが·······気づいていない様子のようだ。

 

 刀を仕舞い、スマホを取り出す。画面には他の勇者の現在地が示されている。

 

「俺以外固まって·······いや、こっちに友奈が来てんな。それなら、俺もゆっくりしとくか」

 

 入れ違いになったら、阿呆らしくなるのでここは待機を選択。ただボーッと真っ暗な空を眺める。

 

 そんな時、彼のスマホに電話がかかる。不思議に思いながらも、なんの躊躇もせず応答する。

 

『御影 士郎だな?』

 

「········そうだが」

 

 自身と全く同じの声質。そして名前を知っているとするなら、コイツは奴の可能性が高い。だが、敵意はないと推測ではあるが感じる。

 

『あー、俺はちょっとしたアドバイザーだ。警戒せず、聞いてくれ』

 

「アドバイザー、ねぇ········いいぜ、話ぐらいは聞いてやるよ」

 

『うわっ、めっちゃ上から目線······』

 

 彼かれ普通に了承した感じではあるが、聞き手にとっては上から目線と感じてしまうのが御影語。十人十色だからな。

 

『今からお前はある敵と戦う。』

 

「そうみたいだな」

 

 遥か彼方を走る人影を視界に納めながら、刀を取り出す。少し左へ視線を移せば、馴染みのある赤い髪が見える。

 

『人間と思うな、あれはある種の化け物だ。お前は絶対に理解しようとするなよ?』

 

「つまり、星屑共と同じ感覚で殺せってことか?」

 

『それでいい、それがいい。てことで、後はお前次第だ』

 

 その言葉が最後だったのか、唐突に電話を切られる。携帯を仕舞い、赤髪の少女へと手を振る。

 

「士郎くんっ!構えて!」

 

「わかってる。とりあえず、友奈は下がってろ·······一瞬で片付ける」

 

「っ······!」

 

 その目を見た瞬間悟った。御影はアレを人ではなくバーテックスとして見ていると。

 

 刀が御影の握力によって軋みだす。

 

「―――」

 

 まず一振り。刀が砕けると共に目前の樹海の根が割れる。奴は紙一重の所で体を逸し回避する。だが、当然体勢が崩れる。そんな隙を見逃す訳がない。

 

「チッ!」

 

 急接近し首を断とうと追撃をいれようとするが、また回避される。だが、蹴りの一撃で根へと叩きつけられる。

 

「········」

 

「ちょ、ちょっと、士郎くん!?」

 

 対空戦を終え、根に降り立つ。いつでも対処出来るように警戒は怠らない。逃げ、守り、攻め。どれをしようが首を断つ戦略を思考する。

 奴を睨む士郎の元へと友奈が追いつき、声をかける。

 

「なんだ?」

 

 視線をそのままにして返答する。

 

「私、あの人に聞きたいことがあるんだ」

 

「··········さっさとしやがれ」

 

 渋々といった感じではあるものの圧を下げる。

 奴は怪我をしているが、動けない程のものではない。一瞬でも気を抜けばひっくり返される予感がする。故に警戒は解かない。

 

「·········」

 

 尻餅をついた体勢から奴が立て直す。両腕からは少なからず血が流れており、傷が思った以上に深いことがわかる。

 

「あなたは勇者なんですか?」

 

「勇者、ゆう······しゃ····」

 

 その掠れた声を聞いた瞬間、御影 士郎はこの男を()()した。してしまった。

 

「ハハ。ハハハ。ハハハハハハハハハ!!」

 

「っ······!」

 

 身を竦め臨戦体勢に移る友奈と対照的に御影は武装を解く。ただ、心底つまらなそうに奴を見下す。

 

「俺の蛮勇を嗤え!蛮人たる俺に恐怖しろ!―――さぁ、勇者。お前達が正義であるのならば、悪である俺を殺せ。正義を成してみせろッ!!」

 

 その言葉を皮切りに死闘が開始し、終了した。

 なんの抵抗もなく、霊核が存在するであろう心の臓を刀によって貫かれる。そのような状況であっても友奈を右手で制し、口を開く。

 

「お前、悲しい奴だな」

 

「·········」

 

 同情。或いは憐れんだような目で奴を視る。

 

「自己矛盾を赦さないが為に自身の在り方すら捻じ曲げる、ってのは俺でもしない。その先にあるのは地獄、だから、な·······―――。」

 

 刺さっている刀と共に樹海の根へと倒れる。間違いなくあの一刀は命を断つべき場所を斬り裂いている。あと数秒もすれば、御影 士郎は息絶える。

 

 これにて英雄と勇者は地に沈んだ。それ即ち、悪の勝利である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――海原を司る天津神。出雲を統べし国津神。我らが原罪、異議申し立てられよ」

 

 建速須佐之男命へと祈りを捧げる祝詞。何処からかはわからないが、静かに樹海を木霊する。

 

 だが、最早それに応じる者はいない。御影が扱う草薙剣は空っぽの状態········真価は発揮され―――

 

「なっ!?」

 

 突如として倒れている御影の胸が輝き出す。その中心と思われる場所から草薙剣が祝詞に応えるべく、這い出てくる。

 

「―――そうかっ!アイツの魔力リソース·······!」

 

 アレは次へと託す一刀·······それならば、限定的ではあるが真価の模擬は可能になる。だが、それでも模倣しているものに他ならない。よって対義逆転は発動しない。

 

「あぁ、勝敗は決した·······」

 

 勝利と敗北の概念を付け替える。それが、草薙剣の真価。シャルルマーニュと御影は生存し、俺は息絶える。どのような運命が来るかはわからないが、只今をもって決定された。

 

「俺の負けか。それでこそ正義ってもんだ」

 

 負けはしたが満足だ。そもそも負け前提の戦いだったんだよ、コレは。いや、負けないといけなかったんだ。

 

「―――それでお前は満足なのか?」

 

 聞き馴染みのある声が背後から聞こえた。

 

「お前も知ってんだろ。正義は悪に勝つってな」

 

 おびただしい量の血を流しながらもその瞳は未だ曇らず輝いている。不屈とは正にこのこと。

 

「俺が聞いているのはそこではない。もう一度問う―――それでお前は満足なのか?」

 

「満足だ。ほれ、さっさと殺せよ。どうせ、勝敗は決してんだ」 

 

 刀を捨て、両腕を広げる。もう足掻く理由も必要もなくなった。それなら、さっさと死んで俺は還る。

 

「これが最期だぞ。本当に、それでいいのか?」

 

「くどい。さっさと殺せ」

 

 何故、そんなに繰り返し同じ質問をするのか不思議でたまらない。

 

「隠すな、偽るな、象るな、見え透いている。それがお前の本心な訳がない」

 

「俺とお前が同一存在だからか?だが、残念。俺とお前は根本的な部分が違う。お前は死んだ時の記憶ねぇだろ?」

 

「·········」

 

 最初、シャルルマーニュを見た瞬間に悟った。コイツは清いまま·······人類史という汚物を見ていないと。

 

「それが決定的な違いだ。ほら、無駄話は終わり······後はわかるな」

 

 その言葉を了承したのかはわからないが、ジュワユーズを握り締めゆったりとこちらに近づいてくる。

 

「我が王剣を以てして断首されることを光栄に思え。········安らかにな」

 

 ジュワユーズが俺の首へと―――

 

「―――ッ!?」

 

 靭やかな物がジュワユーズを弾き、更にはシャルルマーニュへカウンターを入れる。直撃はしなかったものの体勢を崩し、三歩後退させる。

 

「ギリギリセーフってとこかしら!」

 

 俺の隣に一人の少女が並び立つ。誰もが目指すべき導にして、暗闇を照らす篝火。

 

「まだまだ行けるわねっ!最後まで一緒に戦うわよ、⬛⬛!」

 

 白鳥 歌野、―――諏訪の勇者が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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