未だ香川すら開放していないというね。あの死闘はなんだったのか·······。
前回の襲撃から二日後の放課後。依頼といった依頼がないためか各自部室でだら〜っとしている。年相応で良きかな良きかな。
「改めてこう見ると精霊ってのはバラバラなのね」
そう呟いたのは精霊が存在しない時代から来た白鳥 歌野。もちろん勇者システムがアップグレードされていることもあって彼女にも覚という精霊は追加されてはいる。
「牛に武士に狐に········綿毛?」
「木霊ですっ」
「剣もありますよ」
「いや、これは精霊ではないのだが·······まぁ、それでいいか」
もう一種の百鬼夜行だな、この景色は。軽く二十体はいるだろうか。
悪霊、鬼などの不である存在が多数だが、勇者システムに納められているためかかなり可愛らしいビジュアルになっている。
「こんなちっこいのがバーテックスから守ってくれる時代になるなんてな」
「だなぁ······」
「誰見て言ってるんだ、士郎?」
バーテックスの攻撃から·······特に一撃必殺級の初見殺しを防げるのはデカい。毒霧とか針毒、などなど。
「·········そう言えば、士郎の精霊を見たことがないな」
「あー·····それは·····」
御影 士郎の勇者システムも歌野、西暦勇者と同じくアップグレードをされている。なら、精霊の一匹は彼を守護するためつくのだが········一度も防いだことはないな。
「―――私だ」
「「「!!?」」」
「小さい·····」
「おじさん?」
一斉に声がした方向へと視線を向ける。そこには机が置かれており、さらに集中して見れば········なんかちっちゃいおじさんが座っている。顎の髭が長いのが特徴的だ。
「おじさんではない。そもそも、私に歳の概念はない」
「なんか語りだしたぞ······」
「だねぇ〜。ハエ叩き取ってきた方がいいかな?」
「待って、そのっち。もしかしたらゴっ、ゴゴ、ゴキ、·······の親戚かもしれないわ」
「ひぇ〜」
「待て、そこの勇者。私は確かに生命力は高いが、そんなものの親戚では断じてない」
こんな流暢に喋るゴキブリがいてたまるか。軽く失禁してまう。いやガチで。
「貴方はアレがなにか知ってるの?」
「知るか、あんな奴。俺も初対面だ」
「あんな奴っ!?酷くないか!」
「お、······おう、すまん」
ご尤もな怒りに驚きながら一応謝罪する。その謝罪を聞き入れたのかは不明だが、一つ咳払い。
「さて、大分話が逸れたな。本題にいかせて貰おう」
閑話休題、閑話休題。
「まずは名乗ろう。私の真名は建速須佐之男命、御影 士郎の精霊をやっている」
「なに·······!?」
「さっすが、士郎。ビッグネームな精霊持ってんな」
「神様·······それだったら流暢に喋れるのにも納得が······」
「これは偉いことになりましたね」
「··········」
建速須佐之男命という名に驚愕する士郎を除く西暦組。だが、それとは正反対にそれ以降の者達はピンと来ていない様子。それもその筈。なぜなら―――
「スサノオノミコト········聞いたことないけど、何処の神様?」
「? 建速須佐之男命をご存知ないんですか?」
「ないわね」
「私も〜」
「すいません、ないです·····」
「私も聞いたことないよ」
「私が知らない神様がいるだなんて······っ!」
「どういうこと·····!?」
「まぁまぁ、知らないことは恥ずかしいことじゃないんだからさ。落ち着けって」
「後で一緒に勉強してやっから」
「私もする〜!」
どうやらシャルルを除く神世紀組は建速須佐之男命の伝承どころか名前すら知らないようだ。原因は勉強不足、ではない。
「そう狼狽えるな、勇者達よ。原因は私にある」
「その原因は······」
恐る恐るではあるが水都が建速須佐之男命に問いかける。
「私は⬛、いや、千子 村正だったか·······アレ同様世界から名前·······はあるが、存在自体が消されている。何処からか·······与えられた知識を見るに神世紀298年か?多分そこいらだろう」
「アタシらの時代じゃん」
「·······貴様達はギリ範囲外だ」
ちらっとシャルルへ視線を向け、すぐさま戻す。
神世紀298年。それは⬛⬛ ⬛⬛がシャルルマーニュとしてこの世界に来た年だ。薄々気づいてるかもだが、シャルルが最初に会ったお爺さんの正体は建速須佐之男命ということになる。
「須佐之男。何故、今になって姿を現した?」
シャルルが問いかける。
御影は軽く二回は命に関わりそうな攻撃を受けている。その内の一回は実際に死にかけている。
「情報量が多くてな。処理に大分時間を要した」
「その情報とはなんだ?」
「現状、経緯、打開策。そして勇者を守れ、とのことだ。故に私は御影 士郎を護衛する」
「その言い方·········貴方は士郎さんの精霊ではないんですか?」
精霊とはどんな時でも勇者が死なないように発動する。そこに精霊の感情、勇者の意志などは関係ない。にも関わらず建速須佐之男命はまるで自分のやりたいように殺っているような感じがする。
「まぁ、そうだな。私は元来剣に宿っていたものだ。御影 士郎のではなく、村正のな。」
「草薙剣に·······あぁ、なるほど。あれは、そういう·······」
一人、納得したように目を細める御影。そんな彼に気づいたのは高嶋のみだった。
「であれば何故、村正を守護しない?」
「そんなの決まっているだろう。奴が勇者でな――」
その言葉を遮るようにして須佐之男へ鞭と共にこの場を支配するかのような殺意が向けられる。
「はいお口チャック。その先を言えば······」
「どうなる?」
「落ち着け、白鳥。それは精霊と言えども神だ。あまり軽率な行動はしない方がいい」
「········、はぁ」
渋々といった感じではあるものの鞭を下げ、勇者服から制服へと戻る。それと同時に身構えていた御影も姿勢を戻す。
「クラス、とは難儀なものだ。こうも勝手が違うとは」
「クラス·······?」
「なんのことかしら·······」
「さぁ?」
ちなみに建速須佐之男命のクラスは
「本来ならば私に殺意を向けた者ならば、宴の慰み物と―――」
シャルルは即座に換装。御影は傷を開かない速度で立ち上がり、戦装束へと。そして自身の得物を―――
一刀、窓を突き破り須佐之男へと飛翔する。
窓の側に座っていた西暦組へと窓の破片が飛び散るが精霊によって守られる。ひなたへと飛び散った破片は士郎が左腕で全て防ぐ。もちろん刺さり血が出るが、気にせず須佐之男へと歩み始める。
「今回もか」
その場から一歩も動かず、軽く振った右手の風圧のみで弾く。風圧で弾かれた刀は水都へと当たりそうになるもその前に粒子となり消えた。
「―――俺に喧嘩売るの好き過ぎじゃないか?」
粒子が集まるようにして須佐之男の前に⬛⬛が立ち塞がる。けれど、その姿を須佐之男は鼻で笑う。
「この程度で一々座から這い上がってくるな、煩わしい」
その言葉と共に⬛⬛が目視出来ない速度で眼前へと近づき、その拳を振るう。その攻撃を一切の防御なく受け、廊下へと飛ばされる。
「すまん、散らかした」
殴られた後の言葉がそれでいいのか、と普段の勇者部なら誰かしらから飛んできたと思うが今回はないようだ。
たった一撃、魔力強化などないパンチ。だと言うのに、受けた本人は粒子となり散っていく。無論、退去だ。
「圧倒的までの戦力差だというのに、これでも負けを認めないか。だから、貴様とは反りが合わんのだ」
「ああそうかい。だから、お前は俺に勝てねぇんだよ」
「なに―――、·······そうきたか」
薄ら笑いと共に消失。その姿に空白を開ける。それだけで須佐之男の敗北が決定した。
須佐之男を全方位から包囲する十二勇士。ジュワユーズを首元へ突きつけるシャルルマーニュ。そしてもう時期辿り着く御影 士郎。完全に詰みだ。
「降参だ。今後一切私は危害を加えんし、許可なく喋らない。それでいいだろう?」
「·········いいだろう」
「――、ふぅ·····」
約束を破る、闇討ちなど考え得るが須佐之男は
「っ―――!」
「あっ、うたのん!」
戦いが終わったと判断するや否や部室を飛び出し、何処かへと走り出す歌野。その後ろを水都も追いかける。
この間、実に11秒程度しか経っていない。正に怒涛の出来事に一同騒然である。
「さて、早速だが話せ。今のはどういうことだ」
「どうもこうもない。奴は以前から私が白鳥 歌野、藤森 水都に危害を与える予備動作をすれば、座から這い上がってくる。いつ何時でもな」
完全なるセコムである。ちなみに⬛⬛は単独顕現を有していない。つまり、気合のみで座から這い上がっている。それ故に少しの攻撃でも退去に直結する。
「ならば、先程の村正は新しく召喚された者か」
「そうなるな」
村正の生存確認よしっ·······いや、死亡してるから········ああもうややこしいな。
「ちょっと待て·······お前らはなんの話してんだ?」
そう問いかけるのは現在進行形でひなたによって左腕に刺さっている硝子の破片を抜いてもらっている御影。その問いにやってしまった、と思いつつ重い口を開く。
「········座とは過去、現在、未来に名を遺した英雄。偉業を成した者達が記されたものだ」
「召喚ってのは?」
そこへ畳み掛ける風先輩。
「一種の降霊術だ。本来存在しない者の楔を世界へと穿つ」
影法師云々はカット。そこまで話せばさらに話がややこしくなる。もうこの時点で何人かはお茶で一服し始めている。
「·········貴方は本物の
カール大帝か否か。その答えに全員が注目する。既に答えを知っている中銀、中園子は行く末を見守る。
「
とあるカフェ、と言うよりは以前御影と高嶋が訪れたカフェと言った方が伝わるだろう。
やはり、知名度とは凄いものだ。平日だと言うのにほぼほぼ席は埋まっている。
「·········ほれ、テラス席のだ」
「了解ですっ!」
当然そうなれば厨房は大忙し。まぁ、コックは一人だけなのだが。よくもまぁ一人で回せるものだ。
「ふぅ·····」
これで今多されているオーダーは仕上げた。束の間の休息を、と思い吸着性抜群の手袋を脱ぎ捨てる。
最初、この記憶を読んだ時はやべっと思ったがなんとかなるものだ。それ以外にもツッコミ所沢山だったが·····まぁ、いいや。
また一人扉の鈴を鳴らす。
「はぁ······っ、······!」
「ぜぇ、·····はぁ···んっ、う、うたの···ん···」
肩で呼吸する歌野と水都。一瞬、店内の視線を釘付けにするがすぐさま視線を戻していく。
「うぉ、なんで此処に歌野と水都が·······どうした?なんかあったか?」
異常事態か、と心配になりながらカウンター席の向こう側から身を乗り出しながら声をかける。ちなみにこの店は元々ラーメン屋のため構造がラーメン屋のそれである。
「よ゛っか゛た゛ぁ゛〜·······」
「はふぅ·····」
「なんだなんだ?」
「村正さんの知り合い?」
「そうなんだけどなぁ·······どうしたもんか」
カウンター席にへたり込みながら脱力する歌野。それに続き盛大な安堵の溜め息を零す水都。まぁ、傍から見れば不思議でたまらないだろ。
「はぁ·······しょうがねぇ」
再度手袋をつけ、厨房へと入っていく。その数分後、巨大なパフェを持って出てきた。
「ほれ、二人でコレでも食って落ち着きやがれ」
ゴトッと音がする程の質量。これならば二人であったとしても充分だろう。
「わぁ·······」
「いっ、ただきま〜す!」
即座にかぶりつく歌野と恐る恐るスプーンを運ぶ水都。それを見守る村正。完全に―――
「お孫さん?」
「随分と若作りだな、俺は。ンな訳あるか」
「お金ない·······」
「無銭飲食しにきたんか、お前らは」
「すいませんすいません······!」
「えっと·······?」
「·······俺の給料から引いといてくれ」
今回はシャルルとか御影がいたので一瞬で片がつきましたが、いつもはゾンビ戦法で勝負しかけてます。その度に座から這い上がるヤバい奴。それが⬛⬛ですよ。
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シャルルマーニュ
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御影 士郎
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⬛⬛ ⬛⬛
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結城 友奈
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東郷 美森
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犬吠埼 風
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犬吠埼 樹
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にぼっ······三好夏凜
-
乃木 若葉
-
上里 ひなた
-
高嶋 友奈
-
郡 千景
-
土居 球子
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伊予島 杏
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白鳥 歌野
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藤森 水都
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乃木 園子
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三ノ輪 銀
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その他(北野とか柚葉とか)