気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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 えー、気づいたら181話でした者です。どうも。この調子でダラダラしていれば200話行くと思うので、またアンケートしますね。
 まだ内容決まってない·······絶望。



花結いのきらめき【37】

 

 

 

 

 奪還成功から時は流れ土曜日。それも来週終業式を迎える土曜日である。この頃になると既に夏休みの宿題は出し切られており、遊ぶもよし宿題終わらせるもよしとなっている。

 

 てことで寄宿舎。普段食事をしている共有スペースに長机を三つ連結させ、親戚の集まりみたく勇者部一同で囲う。各々集中して宿題を解いているようだ。

 

「······辛抱タマらんっ!タマはこんな部屋出てくゾ!」

 

「最初に死ぬ人のセリフだ」

 

 毎度恒例の死亡フラグをかまし、ずんどこ歩くタマ。だが、全員が集うこの場から逃れる訳がなくひなたによって阻まれる。

 

「待ってください、珠子さん。夏休みを満喫するには必要なことなんです」

 

「正論パンチヤメロぉ!!」

 

「せいろんパンチ······?とにかく、もう少し頑張りましょう。士郎さんも唸りながらやってますから」

 

 叫び虚しく脱走は失敗し、杏の横へと戻っていた。ちなみに引き合いに出された士郎は、ひなたが言った通り唸りながら宿題をやっていた。

 

「ぐぬ、ぐぬぬぬっ······シャル、助けてくれ!」

 

「ふむ」

 

 既に終わっているシャル含む中園子、そしてそもそも夏休みの宿題がない村正は指導役として回っている。と言っても村正は······

 

「村正、いいか?」

 

「どれだ?」

 

「これなんだが······」

 

「これはー······ちょっと待ってくれ。今思い出す」

 

 ほとんど消え去っている記憶を掘り起こしながらの指導のためあまり効率は良くない。ただし、教え方が教師並に上手いため重宝されている。

 

「歌野は寝んな」

 

「ふがっ」

 

「うたのん、よだれ出てるよ」

 

 眠っていた歌野を定規でベシッ。やはり、朝早くから農作業してからの勉強は眠くなるようだ。

 ·······何処かの世界線で農作業してから学校に行っていたが、この様子では授業中寝ていそうだ。

 

「こんな落とし穴がだったなんて思いもしなかったよ」

 

「だが、これも学生の本分だろう」

 

「棗さん·······そこ、範囲外だよ」

 

「なに?·······すまない、助かった」

 

 雰囲気は完璧だと言うのに少し天然が混じっている。そこも彼女の魅力だと思う。いやまぁ、範囲外まで突き出るのはあるあるだしな。

 

「応用嫌いだぁ〜。須美ぃ、答え教えて〜」

 

「········解らないわ。そのっち、ここ解ける?」

 

「ん〜?ここはね〜、インド人が凄いんよ」

 

「え?インド······え?」

 

「どゆこと?」

 

「違うぜぇ、そのっちぃ。そこはフランス人が凄いんよ」

 

「―――はっ!たしかに!」

 

「だから、どうゆうことだよ」

 

 やはり、天才同士の会話にはついていけない。遠目から眺めていたシャルルと村正も頭を傾けることしか出来ないとは恐ろしい子。

 

「解ける、解けるぞ。これも、これも進研ゼミでやったヤツだ」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、やりたかっただけだ」

 

「そんな抑揚のないソレ、聞いたことないゾ。タマがお手本を見せてやろう」

 

「なに馬鹿なことを······」

 

「―――解けない!進研ゼミでやったのに解けない!お終いだぁ!!」

 

「あれ?なにか·······」

 

「ほへぇ、元はそうなのか。でも、それテスト中にするのか?」

 

「そうだゾ」

 

「コラ、タマっち先輩。士郎さんにデマを教えちゃダメだよ」

 

「デマじゃないし。だいたいこんなもんだぞ」

 

 確かに、進研ゼミで解いた問題だとしても本番で解けるかは別問題だ。にしても、今の声量でテスト中に叫べば即効退場だろう。

 

「う、うぅ〜·····」

 

「どうした、友奈?」

 

「ぼた餅よ、友奈ちゃん」

 

「瞬間移動?」

 

「シャルはわかる。けど東郷。いつ瞬間移動なんて覚えたの?」

 

「愛よ。愛の力は時空を超えるの」

 

「愛すげぇな」

 

「す、凄い·······」

 

 愛とは一体何なのか。真相を探るため我らは剣山の奥地へと向かった。まぁ、あるのは大赦本部だけだけどな。

 

「だから寝んなって」

 

「んがっ」

 

「まだ始めて2時間も経ってないよ、うたのん」

 

 二度目の定規ベシッ。この一時間で進んだ量は数学のワーク一つ。そこから一向に進んでいない。最初ハイペースでやると後々電池切れになることはわかっているだろうに。

 

「えっ。まだ一時間しか経ってないの?これは長丁場になる予感がするな〜····」

 

「集中すればあっという間だ」

 

「そりゃそうだけども。やっぱ、気が進まないよね。てことで村正さん。なんかちょうだい」

 

「なんかってなんだよ」

 

「そりゃあほら、美味しいものとかハグとか」

 

「ハグで喜ぶならくれてやる。だから、さっさと終わらせろ」

 

「やり〜!」

 

 彼としてもこんな茶番に巻き込まれるのは本意ではない。出来れば、歌野の農作業をつきっきりで手伝い所ではある所を渋々教えているのだ。御影が頼まなければ蹴っている。

 

「ほら、うたのん。雪花さんに村正さん取られちゃうよ」

 

 未だうとうとしている歌野に水都が呟く。 

 

「なんどすっ!?」

 

「なんどすは俺の台詞だ。起きたんなら、さっさ終わらせてくれ」

 

「あ、うん」

 

 情緒不安定かと思わせる程の落ち着き振りで静かに座り、シャーペンを手に取る。問題文を静かに読みながら、シャーペンを回す。手癖だろう。

 

「んじゃ、俺は冷蔵庫漁ってくる」

 

 そう言って村正はこの場を後にした。例え、彼であっても人の家の冷蔵庫を漁るなどという失礼極まりない行為をするわけが········

 

「なんもねぇ·····」

 

 普通にしやがった。しかも難癖をつけるとは。これにはシャルルも天を仰ぐしかない。本当に同一人物か?

 

「ちょい買い出し行ってくる」

 

「足りませんでしたか?」

 

「そりゃあな。シャルルや俺はともかく、お前らはしっかり食わないといけんだろ」

 

 シャルルと村正は何も食わず飲まずであっても生きていけるが、それは英霊に限った話。本来であれば何をするにしてもエネルギーがいる。つまり、飯は重要。全てにおいて最優先事項だ。

 

 ということで村正離脱。停滞打破の効力が消えたため、ここからは何事もなく勉強できる。

 

 

 

 

 

「買ってきたぞ〜」

 

 一時間後、丁度11時になったと共に村正帰還。両手には詰めに詰められた食材が入ったエコバック。量だけ見ても軽く一万はしそうな量だ。

 

「代金は後で――」

 

「いい、いい。どうせ使い道なんてないしな」

 

「ブラック企業勤め?」

 

「勤めてんなら、俺はここにいねぇよ」

 

 ひなたの提案は軽く蹴り、風先輩の問いかけを否定する。

 使い道がない、というのはただ自身の趣味があまりお金がかからないというだけであり、決して使う時間がない程のブラック企業に勤めているのではない。

 

「台所借りる」

 

「どうぞ」

 

「シャルルも借りてく」

 

「なんだとっ!?」

 

「すまないが御影につきっきりで動けん」

 

「······水都、手伝ってくれ」

 

「うん、いいよ」

 

 苦渋の決断ではあるが、水都を選択。真面目な水都であれば、ここで終わらずとも夏休み中には必ず終わるだろう。

 二つのエコバックを提げ、水都と共に台所へ移動。食材を冷蔵庫に押し込み、献立を考える。

 

(生姜焼き······いや、昼には重いか。なら、コロッケでいこう。後は適当に味噌汁とかで)

 

 献立を決め、必要な食材を取り出す。そして、じゃがいもを茹でるべく鍋に水を入れ火にかける。ついでに味噌汁用に先程使った鍋の一回り大きい鍋をセット。

 

「水都、味噌汁用の大根切ってくれ」

 

「わかった」

 

 大根丸々一本を水都へと渡す。人数を考えると一本使っても問題ないだろう。なんなら、足りないということもあり得る。

 そんなことを思いつつ、じゃがいもの皮を剥き、丁度湧いたお湯へ投入。体内時計をセットし、玉ねぎをみじん切りにしていく。

 

「うっ、ぅ〜·····」

 

「すまんが我慢してくれ」

 

 耐性があまりない水都へ被害が出てしまっているが、我慢してもらう他ない。非常に心苦しく、本当に心苦しいが、頑張ってくれ。

 

「いりこあんのか」

 

 味噌汁用の大きい鍋も沸騰したため、据え置きしてあったいりこを量に合わせて大量に投入。これはしっかりと二分程タイマーをセットしておく。

 

「切れたよ。次はなにしたらいい?」

 

「目の保養になっててくれ」

 

「目の保養、·······えっ?」

 

「すまん、間違えた。コロッケに使う衣作っててくれ」

 

「う、うん?」

 

 失敬失敬。つい体内時計に集中しすぎて変なことを口走ってしまった。てことでじゃがいもが茹で終わったため、水を切り、鍋に入れたままちょっと形が残る程度に潰す。

 空いたカセットコンロにフライパンを乗せ、油と切ったバターを投入。火にかける。ちょっと溶けてきたらみじん切りした玉ねぎを投入。炒める。

 

 よしっ、いい匂い。てことで合挽き肉を投入。潰したじゃがいもも投入。そこに調味料である砂糖、塩、こしょうを加える。

 混ざり始めたら、フライパンの上で平たく延ばしていく。延ばせたら、均等に別けていく。これでコロッケのタネは完成。

 

「はい、衣出来てるよ」

 

 まずは溶いた卵に入れ、次にパン粉でコーティングする。これによって油で揚げる準備は終了。

 

「それじゃ、今のを後五回だな」

 

「五回······そうだね、人数が多いもんね」

 

 五回も連続して同じことをする。それは停滞を意味するが、今回は間に味噌汁作りがチマチマ入る。つまり、停滞はない。勝ったな。

 

 

 

 

 

 時刻は針が12時を少し過ぎてしまった12時25分頃。ようやくお昼ご飯が食卓へと並んだ。もちろん同じ人が行き来するという停滞を防ぐため、各自取らせに来た。抜かりはない。

 

「「「いただきまーす!」」」

 

 朝からかれこれ三時間も勉強続きの者からしたら、待ちに待ったお昼。脳が糖分を欲していたことだろう。やはり、エネルギー補給は何よりも優先すべきだ。

 

「·······うまいな。ひなたとは違った優しさを感じる」

 

「美味しいですね」

 

「うまいっ、うまいっ!」

 

「タマっち先輩、少し落ち着いて······!ほら、ほっぺについちゃってるよ」

 

「やっぱり、人数が多くなればなるほどご飯がおいしいね♪」

 

「·······そうね」

 

「赤味噌もいいな」

 

「今度からは赤味噌にします」

 

「いや、ひなたのも好きだぜ?」

 

 赤味噌で作られた味噌汁を啜りながら、全体を見回す。皆、笑顔で楽しそうに食事している光景は何事にも勝る何かなある。

 

「いやぁ、このコロッケ凄いな!」

 

「そうね。まるで専門店かと思わせる程の完成度········村正さんは板前だった?」

 

「シンプルイズベスト!コロッケ教に入信するんよっ!」

 

「そのっち落ち着いて。そもそもコロッケ教なんてないのよ?」

 

「作る!」

 

「もう。銀からも言ってちょうだい」

 

「園子、お前········天才か!?」

 

「銀っ!?」

 

 いつも通り仲良し神樹館組であった。

 味付けはシンプルであるというのに、この美味しさ。彼の適量が最適解なのか。それとも何か危ないクスリでも入っているのか。

 

「これは、中々に女子力高めね·······」

 

「なんだか負けた気がします······」

 

「男子ってみんなこんななの?」

 

「そうなの!?」

 

「大丈夫よ、友奈ちゃん。シャルル君みたいな人は稀だから」

 

「俺を珍しい生き物欄に入れないでくれ」

 

 世の男子全員これ程の女子力·······いや、多様性だしな。一応ありえるにはありえるが、このレベルとなると相当探さないといないだろう。

 

「·······シャルのと味違うんだな」

 

「ん〜、そうだねぇ〜。何だか少し違うね」

 

 同一人物であるにも関わらず味が違う。と言っても、毎回適量でささっと味付けを行う彼らからしたら、毎度毎度違う可能性も捨てきれない。真相は闇の中。

 

「まぁ·······上出来か」

 

「これで上出来って、満足一生出来ないでしょ」

 

「私としては素晴らしい一品だと思うが、違うのか?」

 

「少し雑味が残ってる。玉ねぎのみじん切りのスピードが遅かったか」

 

「タイムアタックでもしてる?」

 

「してないが?」

 

 一度だけ見たことがあるゲームのTA実況動画を思い出してしまう程のシビアさ。どうして、そこまでストイックに作っているのか雪花にとっては疑問で仕方がない。

 

「やっぱ、村正の料理は最高」

 

「そうだね。何と言うか······安心する」

 

「ね」

 

 その後、じゃんじゃんおかわりされたため味噌汁と米は空になった。村正はそれを見て、料理人冥利に尽きると言いたげな顔でドヤ顔していた。

 

 結局、今日の勉強会で今出来る宿題全てが終わったのは数名のみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





 停滞打破ダルすぎる。ちなみに停滞するとどうやってそうなんの的な事が起こります。ラッキースケベも起こります。だからこそ、村正がしっかり注意を払っているんですよね。最初の方は慣れなくて、着替えを覗くというラッキースケベが多発してます。

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