ここさえ書ければ後はどうでもいい。燃え尽きたって構わない。
征くぞっ!デッデッデデデデ(カーン)デデデデ
一人、集団から遠く離れた場所に出された村正は夜空のような樹海特有の天井を眺める。
「嵐の前の静けさってヤツか」
剣裁の音も天蓋が行進している気配もない。これ程までの静寂など、こちら側から攻めない限りあり得ない。
一つ分かるのは赤嶺がいるということ。
人を害することを第一とする天蓋がこうも押え込まえられているのならば確定だろう。
「おい」
「―――――――――」
目の前にいるのは
「はい、ド~ン」
精神と肉体が分離された。
終わりを視認できない真っ白な空間。
この空間はなんだ?
空想具現の類ではないとは思うが、ほんの数秒で景色が変わった。それなら、場所が塗り替えられたのではなく俺自身が何処かに飛ばされた可能性が高い。
なら、何処に俺は飛ばされ········
目の前に何の変哲もない木製の椅子が現れ、俺と瓜二つな者が座る。
すぐさま再度攻撃をと二振りの抜き身刀を構えるが、それよりも早くソイツは口をいた。
「攻撃は通らない。
ここを出るには俺からの問いかけに答えるしかない。
どうだ?解り易い説明だったろ」
「·········わかった。さっさと始めてくれ」
罠の可能性もあるが、現状を把握しているのはコイツのみと考えると従うしかない。もし、破るのならば、その時は刀を振るおう。
「1.何故、諏訪を守る?
2.何故、結末を知って尚、奇行に走らない?
3.何故、人理の防人の役割を受け入れた?
4.何故、自身の死を厭わない?」
四つの問いを聞き、確信した。
どういう原理かは検討もつかないが、コイツは俺の記憶を持っている。持っているからこそ、四つ一気に問いかけてきたのだ。
「すぅ·······はぁ、――――」
他者に想いを伝えるというのは難しい。
例え、自身が嘘偽りなく告げたとしても相手が嘘と受け取ったのならそれまでなのだ。だからこそ、目を合わせるとか真剣な表情とか様々な手段ができた。
まぁ、そんな小細工はいらないと思う。なら、何が必要か。それは――――
「俺が、歌野と水都が大好きだからだッッ!!!!」
「だろうな」
全力で叫ぶ、コレに限る。
········小っ恥ずかしいな。もし、今のを歌野か水都に聞かれたら自死する自信がある。
だが、これでこの空間ともおさらばだ。さっさと戦線復帰を―――
―――擬似心象世界を破棄
記憶接続三名から一名へ
霊基千子村正へ接続
神経再接続 ―――
「―――――――あっ?」
瞼を上げようとするよりも早く、斬撃が胴体に直撃する。
左肩から右腰へと斜めに切り開かれた傷から血が噴き出る。数秒もすれば多量出血で死ぬであろう傷の深さだ。だいたい鎖骨半ばまでやられている。
一度に血を失い過ぎたせいか体勢を維持できず倒れそうになるが、右手で意味もなく傷口を抑えることで立て直す。
目覚めの一発にはキツ過ぎる一撃。それも斬撃となると誰が放ったかは自然と絞られる。
造反神に示すための短い期間であれば、と高を括っていたのが間違いだったと改めて認識させられる。彼は一人じゃない。なら乗り越えられると勝手に思い込んでいた。
ああ、それも間違いだったな。
「俺もお前も、悲しい奴だったな········」
「――――――――――――」
悪役へ正義であった彼が贈った言葉。
信念を曲げた先は地獄―――あぁ、そうだとも。自分らしく生きれたのならどれだけ幸せか。きっと、ここからなのだ。ここから歩いて行くんだ。
元来、戦争に善悪はない。己が信念を突き通すためのもの。
だからこそ俺は、ここで、この身砕けようとも彼の幸せを邪魔しなければならない。
一歩前に進むべき右足を前に出そうとするも、自重にすら抗う力を失くした体が樹海の根へと崩れ落ちる。
「··········くそっ」
どれだけの時間を費やそうが、この出血は止まらないだろう。証拠に未だに止め処なく流れ続け、樹海の根を赤く染めていく。
段々と瞼を上げることすら難しくなっていき、まだ目の前にいるかどうかも確認できない。
本当に詰みだ。退去を待つしかない。
時は遡り樹海化してすぐの勇者一行。
いつも通り星屑を殲滅するため、御影とシャルルを先頭に樹海を遠足かと見誤る程の和気藹々とした雰囲気で進行していた。
と、そんな勇者御一行様の前に見慣れた顔の少女が現れた。
「赤嶺·······」
「随分余裕そうだね」
三週間顔を出してなかった敵の登場にシャルルが警戒するが、他は雰囲気変わらず同級生に接するような気さくさのままだ。
「驚いた。三人目がいるとは」
「二度あることは三度あるって言うしね」
「三つ子かしら?」
初対面である歌野、棗、雪花がそれぞれ恒例の言葉を呟きながら自身の得物を握り締める。
「そうだったら、私は次女かな」
「高嶋ちゃんが長女だねっ!」
「かわいい妹が二人も········お姉ちゃん嬉しいっ!」
周りから見れば瓜二つな三人。三姉妹と言われてもおかしくないが、血は一切繋がってない。不思議としか言いようがない。
「それで、今回はなんの用だ。赤嶺 友奈」
勇者部を代表して若葉が先頭に立ち、赤嶺へと問いかける。ただ三姉妹芸をしに来たのではない筈だ。
「おっと、そうだった。危うく忘れる所だったよ」
わざとっぽく笑いながら、なにかの準備を始める。
「秘策があるんでしょうか?」
「うん、あるよ。ということで、じゃじゃーん」
そう言い、精霊を出すようにして現れたのは須美そっくりさん。相違点としては勇者服ではない事と若干目がくすんでいる事だろうか。
「私、そっくりな人間········?」
「うーん、確かに須美とそっくりだけど、なんというか········変だな」
「劣化コピーというところかしら」
「何の真似だ、赤嶺」
偽物が本物に敵わないという道理はない、と言いたいのを抑えシャルルが一歩前に出て赤嶺へと問いかける。その手にはジュワユーズが握られており、返答次第では斬ると言外に言っている。
「今回は趣向を変えて自分同士の戦いをしてもらうよ」
「自分殺しをしろっての?」
「そんな物騒じゃないよ。そもそも攻撃しても意味ないからご安心。例えば、こんなふうに·······勇者パーンチ、と攻撃を仕掛けても」
敵対者へと向ける時と同じように仲間であろう須美そっくりな精霊へと腰の入ったパンチを放つ。当然、間近にいた精霊が避けれる訳がなく理想的な決まり方となった。
「ほらね、なんともない。わりと強く仕掛けたのにさ」
傷一つなく、痛みに悶える様子もない。赤嶺の言う通り、そっくり精霊には物理攻撃が一切効かないのが立証された。
しかし、赤嶺が須美を殴ったのは事実。精霊であるというのは理解しているためかすぐさま襲い掛かるといった事はしないが、腹は立つ。
眉間に皺を寄せ、赤い瞳で赤嶺を睨む。
「そんな怒んないでよ。怖いからさ。
で、話は戻すけど、変身した精霊は元ネタである本人にしか倒せないんだ」
「えーっ、凄く強いルール。何かしら制約があるのかな?」
「そうだよ。すぐばれるから自白するけど、変身した精霊からは肉体的な攻撃が一切できない。つまり、物理的には無害なんだ」
「じゃあなんだ。抵抗しない奴を一方的に殴って殺せってか?」
本人の手によって抵抗しない自身に酷似した人物を殺す。心優しい彼女達には効くだろう。だが、そんなことさせても赤嶺が得るものはない。旨味がないのだ。
「勘違いしないでよ。この精霊は肉体的に、じゃなくて、精神的にしか倒せないんだ」
「精神的に········」
「··········?」
「簡単なことよ、須美」
「うぁああ!!喋ったぁ!!?」
首を傾げていた須美を見てか、変身した精霊が不敵な笑みを浮かべて声を掛けてきた。
喋らないという先入観があったのか、何名か悲鳴にも似たようなな驚きの声を上げる。
「この精霊はね。変身した人に対して質問を投げかけたり、議論を仕掛けてきたりするんだ。
その質問に対して答えられなかったり、議論の末に論破されたりしたら········悲しいことが起きる」
「悲しい事、とは?」
「さあ?まぁ、これから先戦えなくはなるだろうね」
赤嶺の口振りからして、敗北したら精霊に取り込まれるか、廃人となって置物と化すのだろう。つまり、事実上の死である。
「議論は心の中?精神世界?そういった所で行われるから、プライバシーの面も安心だね」
「プライバシー考慮するんならアタシ達のそっくりさん作んないでくださいよ」
「それは無理な相談かなー」
変な所で気を使うなぁ、と考えながら話に飽きて刀身審美をしている御影を横目に確認する。
今一番、最悪のもしも、が出る可能性が高いのは御影だ。
彼は自分自身の胸の内を知らない。一歩前進しているかも怪しい現状で自分自身との戦いに行かせるのは不安が残る。
「これは得手不得手に分かれそうですにゃあ」
「まっ、ああだこうだと悩んでもしょうがないし、気を引き締めていきましょ」
「当たって砕ける、ですね!」
「いやいや、砕けちゃダメでしょ」
確かに、もう自分自身との戦いは決定しているのだ。なら、勢いよくぶつかりに行こう。砕けた時はそん時で。
「それじゃあまずは鷲尾 須美ちゃん。バトルに行ってらっしゃい」
「どーーーん!!」
そっくり精霊が言い放った何処かで聞いたような掛け声によって須美は強制的に精神世界へ連れて行かれた。
わかった事は、そっくり精霊が特定の掛け声を元ネタに言えば強制的に連行、そっくり精霊と元ネタは抜け殻状態となり立ちつくすのみとなる。それぐらいだろうか。
「阻止しないんだ」
「する必要がない」
「そう········まあでも、貴方も心配できる立場じゃないよね」
「なに?」
考えもしなかった言葉に、須美へ向けていた体を赤嶺へ向けようとするが、間に入るように誰か立っている。
誰か、ではない。誰かは俺が一番知っている。
「どんっ」
肉体が離れていく感覚がした。
視点は移り、いつの間にかどんされた御影。
見覚えのある壁と天井、家具までもが真っ白な小さい空間。いや、正確には硝子で区切られているだけでこの小さい空間の外がある。家具はベットのみで生活感は全くない。
誰かを観察する目的で作られた部屋なのだろうか。
「·········ん」
周りを見回していると隅に縮こまっている背中を発見。
この場に自分以外となるとそれは必然的にそっくり精霊だ。だが、それにしては様子が可笑しい。
聞いた話では、元ネタである俺に質問を投げかけてくる筈。しかし、アレはただ縮こまっているだけでこちらに話しかけてこない。そもそも、俺に気づいているかも怪しい。
このままでは埒が明かないとし、自らそっくり精霊へと近づき、肩に手を――――
「イヤだ、―――痛いのも、苦しいのも、辛いのもっ!イヤだイヤだイヤだ!!
死にたくない········死にたくない。見ず知らずの奴らのために死にたくなんかない」
「··········」
思わず手を引っ込める。
これは問答なんかではない。ただの腹の底をブチ撒けているだけだ。だから、俺に答える義務はない。
そっくり精霊がそのままの体勢で俺へと問いかけてくる。
「なぁ、俺は―――お前は誰の為に生きているんだ?」
「···········さあ?」
全て、間違いだったのだろうか。
タマと杏を救うために命を差し出したのは
千景へと命を差し出したのは
―――人類のために命を差し出したのは
俺という存在が今になってあやふやな物だと自覚出来た。
勇者と共に戦う―――誰の為に?
人類を救う―――誰の為に?
俺の誇りは·········誰のものだった?
········わからない、なにもわからない。
俺は、――――俺は誰の為に生きているんだ?
刃紋が一切淀みなく平坦な抜き身刀を手にする。
「ああ、そうだな。一度ぐらい自分の為に生きてみるか」
硝子をたたっ斬り、真っ白な部屋から出た。
やっぱ、コロナきちぃ!!
インフルB経験した今はなんとかなるんですけど、キツイもんはキツイですね。もうちょい早く上げる予定だったんですけどね·······。
次はなんとか早めに上げたいと思います!では。
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