気持ちのいいバカ(偽物)をブチ込んでみた   作:王勇を示す者

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花■イノキ■■キ【 46】

 

 

 

 

 

 シャルルマーニュと御影が相対する同時刻。精神世界とも違う内部世界にて、老いぼれた爺さんが倒れ伏す⬛⬛を見つめていた。

 

「おい、起きやがれ。体治ってんぞ」

 

 ツンツンしようがコンコンしようが未だ意識はない。完全に飛んでいるようだ。

 体が治っていようが精神が起きないのであれば意味がない。操縦者のいない肉体など、ただの肉塊だ。

 

 意識を起こすのを諦め、しゃがみ込んでいた体を起こし、固まった肩を解すように回す。

 

「ったく、世話の焼ける坊主だ。仕方ねぇ、出るか」

 

 

 

 

 

 

 人類悪出現により早急に対処をしなければいけない抑止力もとい英霊の座にて。今現在暴れている者と瓜二つな者が頭を悩ましていた。

 

「にしてもネガ・メサイアとは··········自己の否定って訳か。それが俺にも刺さるんだから笑えねぇな」

 

 此度顕現した人類悪が指す理は『■■』ビースト■と断定。対人理『はじまりを告げる終焉(アナザー・ジェネシス)』、固有スキルのネガ・メサイアを捕捉。

 どれも救世主(セイヴァー)の金型に嵌まる彼にはキツイものだった。

 

「救いを求める声は··········聞こえない。もうちょい拡げるか」

 

 樹海内で救いを求める声を上げる者はいない。良い事ではあるが、彼にとっては死活問題だ。抑止力から渡された権利を幻想の騎士に渡してしまった以上、彼は救いの声がなければ現界出来ない。

 一刻も現界したいため樹海内という括りを跳ね除け、香川、四国、別軸へと範囲を拡大していく。

 

 微かに救いを求める声を、彼の耳が拾った。

 

「聞き届けた」

 

 ニッと笑い、亜種単独顕現を起動した。

 

 

 

 

 

 

 樹海にて相対した人類悪と幻想の騎士。1対13という戦隊物超えの人数差に戦慄するが、それでも勝ちの目は1に傾いている。

 人数差では埋まらない圧倒的なまでの力量差。暴力の権現かと疑いたくなる程の筋力。それを振り回すは神速に近しい速度で翔ける人形の化け物。

 

「エリュプ―――、うぐッ······!!」

 

 脳天目掛けて振るわれる棍棒であったが、届く前に無防備となった胴へ強烈な蹴りが叩き込まれる。十二勇士が阻もうが、易易と包囲網を抜けられてしまう。抑えようがない。

 樹海の根をドラゴンボールかとツッコミたくなる程の数を通過し、叩きつけられる。

 英霊基準の耐久B(王勇加味)であっても骨の何本かが折れる一撃を受けたが、なんてことないと言いそうな顔で立ち上がる。

 

 追撃の一刀をジュワユーズで受け止める。

 

「ッ、ぁぁぁぁ゛·······ハッッ!!!!!」

 

 雄叫びと共に右へ弾き、弾いた勢いのまま回転し、御影の右腹にジュワユーズを叩き込む。

 常人であれば上下に別れる一撃だったが、出血すらせず右斜め上空へ少し飛ばされただけだった。

 

「かっっっっっ、た!!!??」

 

 聖剣と謳われたジュワユーズの刃が肉を断てなかったなど、これまで一度たりともなかった。だと言うのに刃の一ミリも入らないないとは。驚愕を通り越して意味不明である。

 

 未だ吹き飛ばされている御影へ追撃を入れるべく、人影が駆け出した。

 

「うぉ、らあァ!!!!」

 

 一度は目を奪われる程の名刀を型もクソもない構えで振り切る。

 またもや御影の肉体に傷一つ付かず、振るわれた抜き身刀は砂状になり空気に溶けた。一応勢いは消えず、樹海の根に打ち付けられてはいる。

 

「刃が通りゃしねぇ!!」

 

 愚痴を一つ溢しながら降り立つ、上半身裸の⬛⬛。見たところ切開された胸の傷は閉じたようだ。

 だが、所々⬛⬛とは違う。

 肉体は間違いなく⬛⬛だが、瞳の色が暗めな金色になっている。服は斬られたからで納得は出来るものの瞳の色は誤魔化せない。と言ってもそんな些細な点で見分けがつく訳がなく。

 

「おぉ!アンタは!!」

 

「助太刀するぜ」

 

 新たに抜き身刀を投影し、霊基を変更する。

 彼が村正一派を作り上げた頃のものではなく、野武士のような姿となった。下はいいが、上は左腕に赤い弓篭手のみという⬛⬛が聞けば卒倒しそうな格好だが···········悲しいかな、先程よりは布面積は大きいんだよね。

 

「刃は通んねぇが確実にダメージは蓄積されてる筈だ」

 

「マジか!?」

 

「マジだ。じゃなきゃ不死になっちまう。死なずの人間なんて聞いたこたぁねぇだろ?」

 

「·········だなっ!」

 

 寿命では死なない種が何匹かはいるが、致命傷を喰らえば誰であろうが死ぬ。死んでから復活する者もいるにはいるが、死んでいるためノーカンで。

 

 御影が起き上がってきたため、会話は終わり。

 村正は右手に持っていた羽織りを離し、両手で構える。彼にとっても御影の動きは辛うじて視えるレベルであり、瞬きなどしようものなら、それが最期となるだろう。

 

()()()()殴るぞ」

 

「了解」

 

 例え、仲間であった者であろうが敵になったのであれば倒す。それが騎士の務めだ。

 下手に感情移入でもしてみろ。その時点で彼の王勇は自身へと牙を剥く。それ以前に全力で応じないのはカッコ悪い。

 

 十二勇士の輝剣が体勢を起こそうしている御影の頭上で円陣を組む。

 

「落ちてこいッ!!」

 

 シャルルマーニュの号令で五大元素を纏った十二勇士が御影へと降り注ぐ。それに伴い、五大元素が爆裂。

 様々な色が広がる幻想的な光景とは裏腹に威力は絶大。マトモに喰らえば肉体は間近で手榴弾を受けたが如く原型を留めれないだろう。

 

 そんな攻撃を受けてなお無傷な御影が爆風によって飛び上がる。すかさず村正が追撃を―――

 

「ッ―――」

 

 御影の刺突が村正の右頬を掠める。薄皮一枚で済んだが、後ほんの少し反応が遅ければ口を裂かれていただろう。

 先程とは段違いに反撃が速い。

 やられっぱなしのサンドバッグではいてもらえないようだ。

 

「おらよっ!!」

 

 お返しに一振り叩き込み、同じように樹海の根へ―――、とはいかず根に反射されたように村正へと射出される。

 

「輝けよ!」

 

 直立で弾丸のように村正へ迫る御影に四つの輝剣が刺さり、更に追撃とばかりにシャルルマーニュがジュワユーズを突き刺す。

 突然の横槍に御影は対応できず、村正までの軌道から大きく逸らされてしまった。が、根に着地すると同時に走り始める。それもソニックムーブが発生する程の速さで。

 

 標的は攻撃してきたシャルルマーニュ、ではなく村正。

 

「やべっ―――――――――」

 

 見えはする。だが、命を軽々奪い取る一刀を防げるかと問われれば否である。

 僅かではあるが数ミリ体を逸らす時間はある。

 腕か死か。葛藤するまでもなく―――

 

 青い閃光が御影の脳天を射止める。

 

 軌道がズレ、勢いよく樹海の根に衝突と思いきや根を蹴り軌道修正。村正へ再度攻撃を仕掛けようとするも、再び青い閃光が脳天へ奔る。

 

「―――――――――」

 

 行動を中止する。

 いくら村正を殺すべく動こうが青い閃光により妨げられる。であれば、原因の大元を殺せばいい。

 そう判断し、狙いを変える。

 

「! 絶対阻止だ!!」

 

 シャルルマーニュが促すより早く十二の輝剣が翔ける。遅れてではあるがシャルルマーニュもジュワユーズを構え、走り出す。

 攻撃の標的となっていた村正は彼が起きたのを感じ、樹海の根へと身を隠す。とは言っても、何の役にも立たないが。

 

「数十秒で状況把握しろよ、⬛⬛」

 

 瞳を閉じ、意識を手放す。

 頬の傷のみで引き継げたことのは上々な仕事だろう。ただの鍛冶師で人類悪と相対するなどたまったモンじゃない。

 

 シャルルマーニュ現界から5分が経過。

 精霊加護消失が二名。戦わせなくない者が三名。ゾロゾロと精神世界から脱する頃合い。事実、一部の西暦勇者とシャルル以外はもう目を覚ましている。

 それに続き、⬛⬛が目を覚ます。

 

 ―――瞼を上げる。

 

(精神攻撃は全体に。シャルルは起きていないが、ガチモンのシャルルマーニュがカウンターで来てる。ジュワユーズが通らない程の硬さ。動きの最適化がそろそろ終わる。本番はこっからか)

 

 ―――霊基をいつものに換装する。

 

冠位(グランド)はまだ。だが、人類悪が誕生した以上は必ず召喚される筈。なら、勝ち目は十分ある)

 

 ―――使い古した一刀を握り締める。

 

「よし、やるか」

 

 時間にして13秒。

 状態は変わらず、シャルルマーニュが御影の一振るいを阻止すべく十二勇士と共に振り下ろす前に受け止めている。衝撃をモロに受けてだが、阻止は出来ている。

 斬撃が出る一撃、だいたいマッハ8の速度を受けているということは········考えたくもない。

 

「ぐぅ、―――うっ!やっぱダメかぁ!!」

 

 五度目にしてシャルルマーニュの篭手が砕け散るのと同時に弾き飛ばされる。

 六度目を阻止する者はいない。十二勇士とシャルルマーニュでやっとのものを阻止しろなど、到底無理だ。故に射撃手である東郷への斬撃は諦め、御影を攻撃すべく駆け出す。

 

 音が聞こえた時には手遅れ。

 少し遅れて樹海が破壊されていく音が耳に届く。

 回避は不可能。ならば防御するしか選択肢はない。

 

「輪入道っ!!」

 

 切り札による精霊降ろしの影響によって巨大化した自慢の盾を樹海に突き立てる。

 見事斬撃を防ぎ切り、損傷もせず未だ絶対なる守りを示している。

 

「ここを神の籠もる屋(神殿)とする······!」

 

 切り札の代償か、神屋楯比売命との同期が少し進んだ。

 御影と同じように切り札を常時使用していれば、神に指先程度は近づけただろうか。流石に御影のように肉体そのものが書き換えられる手前まではいかないと思うが。

 

「ありがとうございます、球子さん」

 

「········タマは出る。そのままにしとくから上手く使ってくれ」

 

 引き金を弾きながら感謝を述べる東郷を置いて、何の得物も持たず前へと歩を進める。

 いつもバカしている時の雰囲気とはガラリと変わり、真剣そのもののような面持ちで既に村正やシャルルマーニュと肩を並べようと走り出していた者達を並び超え、威風堂々たる態度で前へ出る。

 当然、そこまで接近するとなると図らずとも標的はタマとなる。どうやら、彼の誇りとやらは消え失せたようだ。

 

「士郎にとって、ここからが大切なんだ。だから、―――タマがッ、背中ぶっ叩いてやる!!!」

 

 切り札によって大幅に強化された身体能力をフル活用し、御影の懐に入り込む。

 対応すべく刀を逆手持ちにし、切っ先をタマへ突き立てようと振り下ろす。それを小柄な体を利用することで避ける。

 脚一杯に力を溜め、右手を突き上げる。

 

「うらぁぁぁぁあ!!!」

 

 顎への強烈なアッパーカット。蹌踉めいたところに続けざまに右足での蹴りを腹へと叩き込む。

 普段の御影であればノックアウトする連撃。しかし、その程度の連撃が今の御影に通じる訳がなく、蹴りの衝撃で少し後退したタマの首目掛けて刀を振るう。

 すかさず村正が間に入り、受け止めようと試みるも―――

 

「うッ、·········がぁ!!」

 

 押し切られると判断し、受け止めるのを諦める。

 タマがしゃがみ、軌道上にいないのを確認すると共に地面に着けていた足を浮かすために軽く飛ぶ。これにより、状態を維持しようとする力はなくなり、押し切られてしまうが体の一部ではなく全体で飛ばされるため体勢を崩すことにはならない。そればかりか、わざと押し飛ばされることで一先ず勇者達と合流できる。懸念点があれば、前線をタマとシャルルマーニュに託すことになるだろうか。

 

 進行形で宙を飛んでいるが最後尾にいる勇者達と合流。そして、タマが突き立てた神屋楯比売のおかげで自分にかかっていた推進力を0にすることができた。

 

「―――銀と銀で錯乱、園子はそれのサポート、東郷はそのまま、須美は溜めの一撃をいつでも撃てるようにしてくれ!!俺が合図する!!」

 

「「「「はい!!!」」」」

 

 適材適所に割り振り、矢継ぎ早に指示を出していく。

 指示を言い切るや否や神屋楯比売を蹴り、樹海を蹴る。さっさと雪花達と合流し、指示を伝えないといけない。

 無策で割り込んで生きていける相手ではないのだ。

 

「あっ、村正大丈―――」

 

「―――歌野は行動阻害、雪花は銀と銀のサポート、高嶋と結城は絶対に前に立つな、夏凛は爆発以外何してもいい、棗は体勢崩し!!」

 

「えっ。待って待って、小学生も―――」

 

「全員でやらなきゃ勝てねぇんだよ!!」

 

 小学生だの子どもだの言っている内は勝てもしない。使える戦力を総動員してようやく勝ち目が出てくる戦いなのだ、これは。

 誰も欠けないようにするための策を作り、修正し、破棄する。そんなことをする裏腹に意識を水底に近づけようとするが、ある事に気づく。

 

(須佐之男がいない··········)

 

 何故か、いた筈の須佐之男が何処を探してもいない。仕方なしとここは割り切り、錬鉄の方に意識を寄せる。これである程度は動体視力は上がる。

 

 ぶっ飛ばされて1分後。戦場に舞い戻る。

 

「うっ、らぁぁぁあ!!!!」

 

 装飾の円環は既に砕け壊れ失っており、両腕の袖は邪魔になったのか破り捨てており、華奢な腕が外気に触れている。

 外傷はほとんど掠り傷に押さえているようだ。

 

 タマの殴りによってできた隙へ槍を構えた騎士が突貫する。

 

触れれば転倒(トラップ・オブ・アルガリア)―――!!」

 

 アストルフォの馬上槍がすれ違いざまに御影の右足に接触した。これにより、御影の右足は強制的に霊体化する。

 振るったシャルルマーニュとその場に居合わせた村正はそう思った。

 

「なっ、―――ぐぅ······!!?」

 

 変わらずの速度でシャルルマーニュへと接近し、目にも止まらぬ四連撃をシャルルマーニュへと叩き込む。

 誤差約一秒の四連撃。

 十二勇士と共に捌くが、三連撃弾くのがやっとで四連撃目を篭手が失くなった左腕へと撃ち込まれる。全力で防ごうとするも敢無く左腕が手首の少し前から切断された。

 切断された左手が樹海に落ち、地を赤く染める。

 

「〜〜〜〜ッッ゛!!」

 

 痛みを歯を食いしばることで耐えながら飛び退く。その間十二勇士と水元素で氷を精製し、足止めをするが全く意味をなさず退かされ砕かれた。

 

「士郎の敵は、タマだっ!!!」

 

 氷を砕くために刀を振るい終わった状態の御影へ一撃を入れるため駆け出したタマが無防備な頭部へ速度を乗せた殴りを――――――

 

「あぎゅ―――――!?」

 

 刀を手放したかと思えば、体を仰け反らせ頭部へのパンチを回避。そして、困惑しているタマの腹へ蹴りを繰り出した。

 もちろん、避けれる筈がなく、防御なし精霊の護りなしの状態でシャルルマーニュ超えの筋力によって放たれる蹴りを喰らってしまった。

 

 内蔵が潰れてか口から血反吐を吐きながら、ありえない高さまで打ち上げられる。

 追撃しようとする素振りがないところを鑑みるにタマはこれ以上戦うことは出来ないのだろう。生きているかも怪しい。

 

「二天一、がぁ·······っ!!」

 

 二振りの刀を構えて突撃する村正だが、軽く振り上げられた一振りによって刀は折れ、肩に浅くはない切り込みが入る。盛大に出血こそするが、可動には問題ない。

 体勢は崩れ武器を失った格好の餌を見逃す訳がなく、振り上げられた刀を振り下ろす―――

 

「御影先輩、覚悟ッ!!!」

 

 御影の背後にあった根の影から飛び出るは双斧を構えた三ノ輪 銀。

 迷いなく双斧を御影の両肩へと叩き込む。言わずもがな御影に傷はつかず、反撃へと移行する。

 振り向きざまに横一文字に切り裂く。が、既に銀はおらず姿を消していた。

 

「セイッ!!」

 

 同じように御影の死角から波打つ剣を構えた三ノ輪 銀が這い出る。

 不意打ち上等と波打つ剣を御影の背中へ叩き込む。

 即座に振り向き、袈裟斬りを繰り出す。振り下ろされた正面が根諸共斬り裂かれるがそこに銀達の姿はない。上手く動けているようだ。

 

 外傷こそ出来ないが、確実にダメージは蓄積されているだろう。このまま削っていけば倒れる筈。

 そう確信し、新たに二振り取り出す。

 打ち上げられたタマは樹の糸で勢いを殺し、回収されていった。

 

「シャルルマーニュは万全になるまで下がってくれ!」

 

「すまん、すぐ治してみせる·······っ!」

 

 シャルルマーニュ現界8分目にて一時離脱。代わりにと言ってはなんだが、現状戦える勇者が合流。

 クリア条件が倒す以外わからないが、今できることは攻撃し続けることのみ。できれば、御影を起こしたいというのが総意ではあるが········果たして可能なのか。

 

(なんで触れれば転倒(トラップ・オブ・アルガリア)が効かなかったんだ?強制霊体化の筈·········対人理のスキルか?)

 

 沈黙している御影の一挙手一投足に目を光らせながら先程のありえない現象について考察する。納得できるような答えはでないが、対人理のスキルに目星をつける。

 ―――御影 士郎が地を蹴り飛ばす。

 根が抉れ、大地が揺れる。あまりの速さに一瞬面喰らうが、大振りなため回避することはできる。

 

「ッッ········!!」

 

 右脚側にしゃがみ込む。胴があった場所を刀が通り過ぎ、後方の根が切断されていく。

 体勢を崩そうと足払いをしかけるが、びくともしない。

 

「くそっ······!!」

 

「結城 友奈いきますっ!!!!」

 

 少しでも動くだろうと仕掛けたのに一切揺れもしない。どんな体幹をしているのだろうか。

 振り下ろした刀を結城が踏み込み、避けれない天の逆手の一撃を御影へ見舞おうと拳を前に突き出す。

 

「勇者パンチっ!!」

 

 御影の心臓があるだろう場所へ当たらず、空を穿つ。

 

「避けた!?」

 

 あろうことか御影は結城が放ったパンチを避けたのだ。自身の得物からほんの一瞬手を離してまで。これが意味することは―――

 

「天に属する者か―――ッ!!」

 

 勝機が見えた。

 すぐさま空振ったことにより硬直している結城を蹴り飛ばし、御影からの振り上げを避ける。お返しに一刀振り切る。ダメージはなく、すぐさま後退するために飛び退く。

 

「結城と高嶋主軸だ!!全力でサポートしろ!!」

 

 天に属するというのであれば、ソコを徹底的に攻めてやる。

 天の逆手持ちは三人いるが、内一名は既に帰宅済み。だが、天の逆手最高峰の結城 友奈がいる。それだけでお釣りが出る。

 

「友奈、行くわよ!」

 

「うっ、うん!」

 

「高嶋、防御は考えなくていい」

 

「期待に応えられるよう頑張るよっ!」

 

 唐突に主役となり、少し不安ではあるものの皆とならやれるという確信があってか震えは見られない。後は状況の作り手次第。

 

「歌野、合わせてくれ!!」

 

「オッケー!!」

 

 気づいたら目の前に立ち、首を切断すべく迫る刀。本来であれば防御も回避も間に合わないであろう即死の一刀。だが、二人なら、この二人であるからこそ対応できる。

 

「ッ··········!!」

「ふんっ!!」

 

 村正は姿勢を低くし、歌野は鞭で刀を絡め取り軌道を斜めへとズラす。そうすることにより、紙一重ではあるが御影の一刀を空振らせることができた。

 

「ハッッ!!!」

 

 初の腰が入った一撃が御影の胸部へと当たった。

 されど出血、ましてや傷ができず、ただ御影の袴が破れただけだった。

 

 村正と歌野がコンビを組むとどうなるか。

 答えは至って単純。攻撃は当たんねえし、カウンターは喰らうし最悪、でした。

 三年間共に自分より遥かに強い敵を相手にしていたのだ。どうすれば軽傷で大打撃を与えることができるのかを模索し続けた者の末路がコレだ。

 互いに守り合い、確実に反撃の一手を打つ。

 簡単そうに見えて至難の業を軽々とする二人は正に熟年夫婦のそれだ。

 

 刀を振り切り隙を晒している御影を見かねて小銀が根の影から飛び出す。

 

「りゃあ、―――あっ!!?」

 

 鈍く光った金色の瞳が銀を射抜く。

 双斧が触れた瞬間振り返るなど、当然銀は予想しておらず思考の波に脳が打たれる。

 精霊の守りなんてものがあろうがなかろうが確実に仕留めるべく銀の頭部へ向けての刺突。

 刀が銀の頭部を貫く―――よりも速く園子が傘状にした槍を持ち、銀に向けられた刀を逸らす。

 

「ん゛〜゛〜゛〜゛っ!!!」

 

 未発達の体ながらも友のため全力を絞り出す。

 傘の表面が削られるような音を轟かせながら、なんとか逸らすことに成功。すぐさま銀と共に根の影へと身を隠す。

 

 刀を突き出した状態の御影。これまた隙だと判断し、中銀が波打つ剣を掲げ、根から飛び出る。*1

「園子をいじめんな!!」

 

 波打つ剣を左肩へと振り下ろす。それと同時に逆手持ちとなった刀の切っ先が銀の頭部目掛けて振り下ろされる。 

 が、読んでましたと言わんばかりのしたり顔で刀の側面を槍の切っ先で打つ雪花。

 奇襲が成功するとすぐさま根の影へと逃げる。相手からすれば面倒な策戦だ。

 

 標的を逃げた者から目前の歌野&村正へとチェンジ。そんなことを悠長にしている間に左右から走り込まれており、回避するか防御するかの二択を迫られている。という訳でもなく、なんら驚異でもない。

 両隣から攻める二人とは別に、真正面から棗が飛びかかるようにして御影へと距離を詰める。もちろん狙いは―――

 

「ハッ―――!!!!」

 

 御影、ではなく地面。それも御影が立つ地面を落ちる最中横回転と共にヌンチャクの基根部を地面に叩きつける。

 棗の一撃により根が砕け散り、木片となった。そうなると、その場に立っていた御影は下の根に落下することとなる。

 

 空中であれば身動きは身をズラす程度しかできない。つまり、絶好のチャンス。

 

「「ダブル―――」」

 

 天の神に属する存在へ致命的な一打を与える天の逆手。それを保有する者が二人。

 これだけは喰らうと不味いと判断したのか、片方どちらかを始末すべく刀を横一文字に振るう。が、二度の青い閃光と十二勇士総出の妨害によって阻まれる。

 

「「勇者パンチッ!!!!!!」」

 

 ――――――必殺の一撃が炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ白い空間に王たるシャルルが二人。

 問いかけて答える、問いかけて答えるを繰り返し早3分。樹海では丁度千子 村正とシャルルマーニュが共闘し始めた頃だろうか。

 

「何故、友を助ける?」

「我が王勇を指し示すためだ」

 

「何故、王勇に従う?」

「カッコよく在るためだ」

 

「何故、カッコよく在ろうとする?」

「俺が先達として皆に明日(あす)を示すためだ」

 

「何故、皆に明日を示さなければいけない?」

「決して明日が絶望に満ちた物ではないという事を伝えるためだ」

 

 シャルルとしてはうんざりしてくる質問の内容だ。

 ほとんどの質問がカール大帝によってされている。既に通過した時のことの掘り下げに過ぎない。記憶が共有されているそっくり精霊だと言うのなら、する必要はない筈だ。

 

「平行線だな。まだ続けるか?」

 

 飽き飽きした質問を答え、次の質問が来る前にそっくり精霊へと問いかける。

 ここが問答の場と言うのであれば、そっくり精霊にも答える義務がある。

 

「もちろんだとも。なにせ、まだお前の真意が知れていない」

 

「真意はもう伝えた筈だ。変わりようがない」

 

「ああそうだな」

 

「? であればもう終着だろう。疾く出せ」

 

「いいやまだだ」

 

「?」

 

 先程の肯定から一転する。そっくり精霊のバグかと疑問になるが、神由来の物がバグなど起こすわけがない。恋が始まるのであれば可能性もあるが、自分自身にそんなものが出てくる筈がない。

 

「ふぅ·········それじゃあ、改めて自己紹介だ」

 

 ドロドロとシャルルマーニュの霊基がそっくり精霊から剥がれていき、二十数年間共にした体が現れる。

 

「俺の名前は⬛⬛ ⬛⬛。さあ、逃避行は終わりにしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
完全に罠であると察知しているが雪花からのゴーサインがあったため飛び出している。決して猪な訳ではない。

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  • シャルルマーニュ
  • 御影 士郎
  • ⬛⬛ ⬛⬛
  • 結城 友奈
  • 東郷 美森
  • 犬吠埼 風
  • 犬吠埼 樹
  • にぼっ······三好夏凜
  • 乃木 若葉
  • 上里 ひなた
  • 高嶋 友奈
  • 郡 千景
  • 土居 球子
  • 伊予島 杏
  • 白鳥 歌野
  • 藤森 水都
  • 乃木 園子
  • 三ノ輪 銀
  • その他(北野とか柚葉とか)
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